弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。
         理    由
  被告人Aの上告趣意について。
 論旨は結局、被告人は当初から殺害とか金品強取とかの意思はなく、相被告人B
の甘言にのせられて、かかる結果を来したものであると主張して、原審の是認した
第一審判決の判示した「被告人両名は前記CD両名を襲い殺害して両名が持参した
代金を強取しょうと共謀の上……」の認定と、被告人に対する量刑とを非難し、証
人Eの再喚問を求めるというに帰するから、明らかに刑訴四〇五条に定める上告の
理由にあたらない。そして第一審判決の挙示する各証拠、就中相被告人Bの第一審
公廷における「事実はその通り相違ない」旨の供述、被告人Aの司法警察員に対す
る第一回供述調書中の(六)項(記録三八二丁)の「それでもし相手が拳銃を持つ
て居る様であつたら、現場へおびき出して、やつてしまうとBが私に言いました、
そこで私もそんならやろうと決心しました」の記載に徴して前示第一審判示事実の
認定を肯認するに足り、その間反経験則等の違法もない。また、所論証人Eは第一
審公判廷で証人として供述をしており、原審でも法廷外で尋問し、公判廷でその供
述調書の証拠調をなし、被告人等の意見をきいていることが記録上認められるので
ある。されば本件には刑訴四一一条を適用して原判決を破棄しなければ著しく正義
に反するものとは認められない。
 被告人Bの上告趣意について。
 論旨は結局、相被告人Aとは殺害の打合はしなかつたし、金時計を強取したのも、
同人単独の行為であり、被告人の所為は殺人と詐欺の併合罪であつて、強盗殺人の
罪にはあたらないと主張し、第一審判決の事実認定と量刑を非難するに帰するから、
明らかに刑訴四〇五条に定める上告の理由にあたらない。そして被告人が相被告人
と被害者両名を殺害してその所持した金品を強取しょうと共謀して判示の犯行をお
かしたものである旨の第一審判決の認定が肯認しえられることは相被告人Aの上告
趣意について説明するところで明らかであるし、金時計強取は同人単独の行動であ
るとしても、強盗の共謀をしている以上、被告人において相被告人の右所為につい
てもその責を免れえないものであることはいうまでもないし、被告人がCの金包を
受取つたのはEの手からであつたとしても、その際の金包の占有はCに属し、Eは
単なる占有補助者に過ぎないと認めるのが相当であるから、被告人を強盗殺人に問
擬したからといつて第一審判決には毫も違法のかどは存しない。そして記録を精査
するも本件には刑訴四一一条を適用すべきものとも認められない。
 被告人両名の弁護人鈴木重一の各上告趣意について。
 論旨は結局事実誤認量刑不当の主張のいずれかをいでないものであるから、論旨
すべて明らかに刑訴四〇五条に定める上告の理由にあたらない。そして被告人Bに
ついての殺人罪と詐欺罪が成立するだけであるとの主張、被告人Aについては単に
傷害致死罪のみ成立するとの主張のいずれもとるをえないことは被告人両名の各上
告趣意について説明したとおりであつて、記録を精査するも被告人両名に対する量
刑はいずれも不当と認められないから本件には刑訴四一一条を適用すべきものとは
認められない。
 よつて刑訴四〇八条、一八一条、一八二条に従い裁判官全員一致の意見で主文の
とおり判決する。
  昭和二六年一二月二七日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎

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