弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
       事   実
 控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人は控訴人に対し、金三〇万八三二〇円
及び内金八三二〇円に対する昭和五〇年六月一八日から、内金三〇万円に対する同
年七月一七日から、各支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟
費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求
め、被控訴代理人は「主文同旨」の判決並びに敗訴の場合は担保を条件とする仮執
行免脱の宣言を求めた。
 当事者双方の事実上の陳述は、次のとおり付加、訂正するほかは原判決事実摘示
のとおりであり、証拠の提出、援用、認否の関係は、本件記録中の第一、二審調書
記載のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決二枚目裏六行目「同日」から同八行目までを次のとおり改める。
「同月一二日、A集配課主事(以下、A主事という。)を介して、所属長である津
山郵便局長B(以下、B局長という。)に対し、同月一三日につき年休を請求した
ところ、A主事は、一三日は付与できないが、同月一六日であれば年休が与えられ
る旨述べたので、控訴人は一三日の請求を撤回したうえ、改めて同月一六日につい
て年休の請求をし、右同日休暇をとつた。」
二 原判決二枚目裏九行目「当時」から同一〇行目「(以下、B局長という)は」
までを、「B局長は」と改める。
三 原判決四枚目表四行目「知らないが、」を、「知らない。A主事が『同月一六
日であれば年休が与えられる』と述べたとの事実は否認する(同主事は、控訴人が
同月一二日に『一三日を休みたい』旨申し出たので、『一六日頃ならなんとかなる
かもわからない』と述べたに止まる。)。」と改める。
四 原判決七枚目裏末行「しかし」から同八枚目表一〇行目までを、次のとおり改
める。
「C課長は、同月一五日朝の時点で、前日一四日の残配達物数の状況と、更に要配
達物数が増加する見通しを勘案したうえ、翌一六日の配置人員について三名の増員
(即ち三四名による勤務態勢)を予定し、このため同日の計画年休者二名について
時季変更をなした。ところが、同一五日午前一一時三〇分になつてDが一六日につ
いて年休の請求をなし、その理由からみて年休の付与もやむを得ないものと判断さ
れたため、これについては時季変更権を行使しないこととした。そして、控訴人に
対しては、以上の事情から止むなく時季変更をすることとし、同日午後一時三〇分
に、その旨通知したものである(従つて、被控訴人が、一五日朝の時点で必要と判
断した三四名は、結局、確保できなくなつた。)。」
五 原判決一一枚目表一〇行目と同一二枚目表初行にそれぞれ「市外集配」とある
を、いずれも「市内集配」と改め、同一二枚目表九行目の次に、次項を付加する。
「また、被控訴人は、Eが市内一、二区にのみ通区していたから、その補助要員に
当てたと主張するが、もともと市内一区、二区とも一六日の要配物数は多くなく
(一五日の滞留物数は、一区が二一九通、二区が一四五通であり、一六日の要配物
数は、一区が一三九三通、二区が一三九七通であつた。)、控訴人の年休を時季変
更してまで、右Eを右の補助要員に当てる必要はなかつたものである。そしてま
た、仮りに補助要員が必要であつたとしても、市内小包については、一二時三〇分
から一六時の間、FとGが担務指定されており、しかも一六日の小包は、市内外を
合わせて三一八通に過ぎないのであるから、第二案を採用し、市内小包について
は、F、Gに全部を委せ、もしくは一〇時三〇分から一二時一五分及び一三時から
一五時三〇分までの小包配達のうちの一部を割愛し、Eをして市内一、二区の通常
集配に当てることも十分可能であつた。しかも、市内一、二区については、以上の
とおり補助をつけて完配にしたとしても、他の市内各区については、控訴人の時季
変更の有無にかかわらず、当初から補助の予定はないのであるから、滞留を生ずる
ことが必至であつたものであり、従つて、全体からみれば依然として完配となる状
況にはなかつたのである。そうだとすれば、控訴人の主張した前記の代案は、『あ
る程度の滞留物の発生はやむを得ない』ことを前提にすれば、十分採用に価するも
のである。」
六 原判決一二枚目裏四行目「事例も少なくない。」の次に、次項を付加する。
「そして、年休制度は、本来、一定の業務阻害を当然の前提にして成り立つている
のであるから、使用者は年休の請求がなされた場合には、年休労働者の労働力の提
供を期待できないのであり、そのために、使用者は、予備定員の日頃からの確立と
その投入、服務の差し繰り(労働力の再配置)、非常勤の雇傭(労働力の新規購
入)、超勤による補充、管理職、下級職制の代替、他課からの補充等の方法で、事
業の正常な運営に向けて最大限の努力をなすべきであり、このような努力をなさず
して年休の取得を拒むことは許されない。更に、時季変更権を行使するには、当該
労働者が所属する「事業場」を単位として、そこにおける事業が全体として阻害さ
れたか否かにより判断すべきであり、事業場としての有機的一体性を失うような重
度の支障があつて、その程度が、使用者に受忍を要求することが妥当を欠くと思料
されるほどの場合でなければならない。従つて、通常、従業員が休暇をとれば必然
的に生ずる程度の支障、日頃しばしば発生している程度の障害、短期間で容易に回
復される程度ないしは日常の作業工程のなかで自然に解消されるような支障の発生
は、正常な事業の運営を妨げる場合に該当しないものというべきである。また、一
般には、現実に阻害の結果が発生しなくとも、その蓋然性があれば足りるとするよ
うであるが、少なくとも、現実に阻害の結果が発生しなかつたときは、特段の事情
(当時の状況では阻害が生じると判断することがやむを得なかつたと思われる諸事
情)がない限り、時季変更権の行使は違法となるものというべきである。」
七 原判決一二枚目裏一一行目の次に、次項を付加する。
「1 人員配置の不備
 当時、津山郵便局集配課においては、年休の完全消化に見合う人員配置はなされ
ていなかつた。即ち、昭和五〇年度における年休日数は一二一八日と九四時間(即
ち日数にして一二二二日)であるところ(前前年度、前年度繰越を含む。)、これ
に長期病欠者一名の補充のために必要な要員三一二名を加えると、年休を完全に付
与するに必要な人員は延一五三四人となる。しかるに、休暇要員の配置状況は、非
常勤三人雇傭の場合で延一四〇四人、同四名の場合で一七一六人であるから、仮り
にすべてに計画年休制度を導入しても、年休を消化できる状況になかつたことは明
らかである。まして、一日について複数の年休の請求があつた場合や、短期の病気
休暇や特別休暇があつた場合、正常な業務の運営ができなくなる人員配置であつた
といわざるを得ない(原判決は、当時、津山郵便局集配課において、年休の完全消
化に見合う人員が配置されていたとし、その計算の基礎として、一人当り年間二〇
日の年休を付与した場合に必要な人員が延七二〇人であるとしている。しかしなが
ら、右のとおり、昭和五〇年度における年休日数は、約一二二二日であつたのであ
るから、原判決の基本的な考えの基礎が明らかに誤つているというべきであ
る。)。
 このことは、また別の観点からいえば、津山郵便局集配課の内、集配業務に携わ
る職員三六名が、当該年度に取得し得る年休を二〇日とすると、同課全体で七二〇
日となるから、日曜日、祝日を除いた年間労働日を三〇〇日として計算すると、一
労働日当り二・四人に年休を付与しなければ年休の完全消化はできないことにな
る。しかも職員が平均的に分散して年休を指定することは到底期待できないことを
も勘案すると、本件においてH、D及び控訴人の三名が同日の年休を指定したとし
ても、これは前記の一労働日当りの平均年休取得者数にほぼ見合つていることから
すれば、三名全員に付与して然るべきであり、これが付与できないのは、そもそも
集配課において、適正な人員配置がなされていなかつたことを裏付けるものであ
る。
 従つて、このような状況下で『事業の正常な運営を妨げる』ものとして時季変更
権の行使をするのは、権利の濫用であつて無効というべきである。」
八 原判決一二枚目裏一二行目冒頭「1」を「2」と改め、同一三枚目表一三行目
「そして、本件の場合も、原告が五月一三日に、」とあるを「しかも本件にあつて
は、控訴人は、当初、昭和五〇年五月一二日に担当者であるA主事に対し、同月一
三日について年休を請求したところ、同主事は一六日であれば年休を付与する旨告
げたのである。そこで控訴人は一三日についての年休請求を断念し、同日、」と改
め、同一三枚目裏三行目「理解していたものである。」の次に「従つて、」を付加
し、同五行目「著しく違背する。」の次に「仮りに右のような職場慣行が認められ
ないとしても、右のような経過からみて一六日の年休について前日に時季変更をす
ることは、労使の信頼関係を著しく損なうもので、信義則に反し、権利濫用として
無効である。」を付加する。
九 原判決一三枚目裏六行目冒頭「2」を「3」と改める。
一〇 原判決一四枚目表三行目の次に、次項を付加する。
「4 時季変更権行使の不当な遅延
 仮りに、被控訴人において、その事業の正常な運営に支障を来たすものとして控
訴人に対し時季変更をなす必要があつたとしても、被控訴人にとつては、前記に述
べたような事情からすれば、控訴人が年休を請求した五月一三日の時点で、一六日
に郵便物がある程度増加することは当然予測されていたのであるから、この時点で
時季変更をすべきものであつたのであり、直前における時季変更権の行使は、不当
に遅延した行使として許されないものである(このことは、最高裁判所 昭和五八
年九月三〇日言渡、第二小法廷判決(昭和五五年(行ツ)第一四号)の趣旨から
も、是認されるべきである。)。」
一一 原判決一四枚目表四行目の次に、次項を付加する。
「1 再抗弁1について
 控訴人は、津山郵便局集配課においては、年休の完全消化に必要な人員の配置が
なされていなかつた旨主張し、具体的には、年休付与に必要な人員は、原判決の指
摘する年間延べ七二〇人ではなく、一五三四人であると主張する。
 しかしながら、控訴人の主張は、昭和五〇年度の単年度について職員が保有して
いた年休(当該年度分のほか、前前年度、前年度からの繰越分を含めたもの)を、
すべてその年度に完全取得するために必要な人員を算出しているものであるが、こ
れは、職員が自らの都合によつて、一定日数の年休を次年度に繰り越す実情を無視
するとともに、特定の事情をもつて一般的な要員事情を判断しようとするものであ
つて、経験則に反する不当なものである。その他、津山郵便局集配課において、適
正な人員配置がなされていなかつたとみるべき事実はない。」
一二 原判決一四枚目表五行目冒頭の「1」を「2 再抗弁2について、」と改
め、同一二行目冒頭の「2」を「3 再抗弁3について、」と改める。
一三 原判決一四枚目裏五行目「業務に支障を生じてでも」とあるを、「業務に支
障が生じたとしても」と改める。
一四 原判決一四枚目裏九行目の次に、次項を付加する。
「4 再抗弁4について
 元来、時季変更権の行使は「事業の正常な運営を妨げる事由」の発生が一定の蓋
然性をもつて予測される段階に至つて初めてなされるべきものであるところ、被控
訴人においては、一五日朝の段階においても、なお控訴人に年休を付与する方向で
対処しようとしていたが、同日朝、現認した郵便物の数から、最終的に三四名の要
員が必要であると判断したことに加え、同日午前一一時三〇分に至つて、急拠、D
から年休の請求がなされ、しかも被控訴人においてDから聴取した年休請求の理由
について検討した結果、Dに対しては年休を付与するのが相当と思料されたので、
これに対しては時季変更をしないこととし、このため控訴人の年休請求に対して時
季変更をせざるを得ないこととなつたものである(その間の事情は、前記六、2に
おいて述べたとおりである。)。このような事情のもとにあつては、前記に至つて
時季変更権を行使したことも、やむを得なかつたものとして是認さるべきであ
る。」
       理   由
一 当裁判所も、控訴人の請求は失当であり、本件控訴は棄却すべきものと考え
る。その理由は、次のとおり付加、訂正する外、原判決の理由に記載するところと
同一であるから、これを引用する。
1 原判決一六枚目表八行目の次に、次項を付加する。
「二 いずれも成立に争いのない甲第三ないし第五号証の各一、二、第六、第七号
証の各二、第八号証の一、二、第一九、第二〇号証の各三、証人Aの証言によつて
真正に成立したものと認める甲第一三号証、控訴人本人尋問の結果(原審)により
真正に成立したものと認める甲第一四、一五号証、証人C(原審、当審。後記措信
しない部分を除く。)、同A、同H(後記措信しない部分を除く。)、同Dの各証
言及び控訴人本人尋問の結果(原審、当審)に前記争いのない事実を総合すると、
次の事実が認められる。
(1) 昭和五〇年五月七日から同月一〇日までは、全逓及び国労、動労の大規模
なストライキが行われ、このため大量の郵便物が滞留している状況にあつた(その
数は、一〇〇万通ともいわれていた。)。従つて、ストライキ明けには、滞留して
いた郵便物が各郵便局に殺到することが予想され、当局はその対策に苦慮してい
た。津山郵便局にあつても事情は同一であり、当時、局長以下その管理に当る者
は、日々の受入数を予測しつつ、その対策を講じている状況にあつた。
(2) 当時、全逓岡山地区本部美作西支部津山集配分会長の地位にあつた控訴人
は、同月一七日については、組合の分会長会議が予定されていたため、前以て年休
の請求をしていたが、同月一三日も組合が予定している書記局詰めの当番にあたる
として年休をとることとし、一二日午後〇時五〇分頃、Aに対し、『五月一三日は
組合事務所に詰めるので年休をとりたい』旨伝えたところ、Aは担務表を見たう
え、『一三日は休暇者が一杯で駄目だが、一六日なら余裕があるからとれるのでは
ないか』と返答した。そこで控訴人は一三日に休暇をとることを諦め、『それでは
一六日に頼む』と述べたうえ、改めて翌一三日の午後一時頃、一六日についての年
休請求書をAのもとに提出した。その段階で、Aは担務指定表の年休者欄に控訴人
の氏名を鉛筆で記載した。
(3) 一方、同じく津山郵便局集配課所属の郵政事務官であるHは、同月一三日
午前九時一〇分頃、子供が発熱したので病院につれていきたいことと、併せて親戚
の者の病気見舞いのためとして、同月一六日についての年休請求書を提出した。C
は、右のような理由であれば、休暇をとることもやむを得ないものと考えていた
(しかし、この時点で、Hに対し、時季変更をしない等の意思表示をしたものでは
ない。)。
(4) ところで、C課長は、ストライキ明けには集中的に郵便物が到達するとの
予測をしていたが、実際に一一日から一四日までに津山郵便局に入つてきた郵便物
は、もとより通常の量をかなりこえるものではあつたものの、予測された程大量の
ものではなかつた(その後は、原判決添付別表(二)のとおりである。当時の平均
物数は、郵便物一万九〇〇〇通、小包三〇〇個である。)。
(5) そこで、Cは控訴人についても出来得る限り年休を付与する方向で対処し
たいとの考えのもとに、その後の郵便物数の推移を見守つていた。ところが、同月
一五日朝になつて郵便物の数を把握したところによると、一五日の郵便物は異常に
多くなつており、特に市外一〇区については平常の二倍にもなつていたので、C課
長は、これらの郵便物を円滑に配達するには、配達員を三四名確保して処理に当ら
なければならないと判断するに至つた。そこで、一六日の計画年休に予定されてい
た二名については、同人らの了解を得たうえで、急拠時季変更をなし、予備の四名
についても出勤を確保した。
(6) 他方、同集配課に勤務するDは、一四日午後六時頃、I課長代理に対し、
電話で同月一六日についての年休の請求をし、翌一五日午前一一時三〇分頃、E主
事代理に対し年休請求書を提出した。これに対し、Eは、右のとおり、管理者にお
いては、配達員を三四名確保すべく苦心している最中であつたことから、即座に
『わくがない』と言つて休暇を断つた。しかしDは、どうしても休暇をもらわなけ
れば困るとして、直接C課長に会い(Cが、Dの年休請求を知つたのは、この時点
であると思われる。)、『近所の人が亡くなつて一六日に葬式がある。』と述べて
なおも休暇を要求したので、C課長においても、近隣の葬儀に出ることは、社会一
般の習慣からやむを得ないものと判断し、その場で(同日午前一一時四五分頃)D
に対し、休暇を付与する(時季変更をしない)との意思表示をした。そしてまた、
C課長は、一五日、Hに対しても、一六日の年休が出ているがどうしてもいるの
か、出来れば理由を聞かしてくれ、と尋ねたところ、Hは、子供が前日少し発熱し
たことと、親戚の病気見舞のため病院に行きたい、と答えたため、C課長も、そう
かわかつたといつて、右休暇を了承した。なお、右子供の発熱の点は、一五日朝H
の出勤前にも少しあつた。
(7) 以上のとおりの経過で、C課長が、当初三四名は必要であると判断した配
達員は結局確保できず、控訴人を加えても三三名になつてしまうこととなつたた
め、Cは控訴人に対して一六、一七日の二日にわたつて休暇を付与することはでき
ないと判断した。そこで同日午後一時三〇分頃、Cは控訴人を呼んで、『非常に郵
便物が増えているし、これからも沢山到着しそうだから、一七日の休暇は付与する
が、一六日については出勤してくれないか』と言つたところ、控訴人は『用事があ
るから休む』と述べて、C課長の申し入れを受け入れようとはしなかつた。そこ
で、Cは、控訴人が休暇を要する理由が真にやむを得ないものであれば、たとえ業
務を犠牲にしてでも休暇を付与するが、そうでなければ時季変更をするとの考えの
もとに年休請求の理由を質したところ、控訴人は『組合のため必要だ』と答えたの
みで、それ以上の理由は述べなかつたので、Cは、当日の主事代理であるEを立ち
合わせたうえ、一六日については時季変更権を行使する旨をその場で伝えた。しか
し、控訴人は一六日については勤務につかなかつた。
 証人C、同Hの各証言中、右認定に反する部分は、前掲証拠に照らし措信でき
ず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。」
2 原判決一六枚裏一〇行目「繁簡」とあるを、「繁閑」と改める。
3 原判決一七枚目裏八行目の「証人C」の次に「(原審)」を付加する。
4 原判決二三枚目表八行目の次に、次項を付与する。
「なお、控訴人は、津山郵便局集配課における年休付与に必要な人員は、年間七二
〇人ではなく一五三四人であるから、同課においては年休の完全消化に必要な人員
配置がなされていなかつた旨主張する。
 しかし、控訴人が主張する一五三四人という数字は、昭和五〇年度において、職
員全員が保有している年休(当該年度分のほか、前前年度、前年度繰越分をも含め
たもの)を、当該年度に全部取得するために必要とされる人員であるが、このよう
に、全職員が、当該年度に繰越分も含めてすべての年休を取得するということは実
際上は通常あり得ないことであり、そのように通常あり得ないことをも予測して、
これを前提にした必要な人員配置をしなければならないということは、到底できな
いことでもあり、またそこまでの必要もないといわざるを得ないところである。
 そうだとすると、控訴人の右主張は失当であり、その他右結論に消長を来す事情
は存しない。」
5 原判決二六枚目表四行目「原告本人尋問の結果」の次に、「(原審、当審)」
を付加する。
6 原判決三〇枚目表七行目の次に、次項を付加する。
「この点に関して、控訴人は、そもそも年休制度は、本来一定の業務阻害を当然の
前提に成り立つているものであるから、使用者はこれを付与するために最大限の努
力をすべきものであり、このような努力なくして年休の取得を拒むことはできず、
従つて、時季変更権を行使するには、個々の業務阻害の域を超えて事業場全体に重
大な支障を生ずるような場合に限られる旨主張す。
 年休制度が、一面で当然ある程度の業務阻害を伴うものと観念し得るものであ
り、にもかかわらず、年休制度の趣旨からして、これを付与するために使用者が最
大の努力をすべきものであることは、控訴人主張のとおりである。
 しかし、そうした努力にもかかわらず、なお事業運営の必要上休暇を付与し難い
ときは、使用者としては、事業の正常な運営を図るべき使用者としての責任上、時
季変更権を行使し得るものであり、このようにして年休の付与と、業務の正常な運
営との均衡をとり得るものと解されるところである。
 そして、本件がかかる場合に該当することは既に説明したとおりであり、また、
事業阻害の点も、津山郵便局における郵便物の集配業務は、その中心的業務であつ
て、同局の事業の正常な運営を阻害するものと十分みられるところであるから、控
訴人の右主張を考慮にいれても、なお前記認定説示したところは左右されないもの
というべきである。」
7 原判決三〇枚目表八行目の次に、次項を付加する。
「一 人員配置の不備
 津山郵便局集配課の人員配置及び人員配置と年休取得との関係については、二
1、4において認定したとおりである。
 そうすると、同集配課においては、年休の完全消化に見合う人員配置がなされて
いたというべきである。
 控訴人は、同集配課において、昭和五〇年度に、年休を完全に付与するに必要な
人員は延一五三四人であつたのに、休暇要員の配置状況は一四〇四人ないし一七一
六人であるから、年休を消化できる状況になかつた(少なくとも複数の年休請求
や、短期の病気休暇、特別休暇に対応できない。)旨主張する。
 しかしながら、控訴人が、前記の年休を完全に消化するに必要な人員が延一五三
四人であるとする根拠は、昭和五〇年度の単年度において、職員が当該年度分のほ
か、前前年度、前年度からの繰越分も含めて保有していた年休をすべてその年度に
完全取得するために必要な人員の数であつて、結局は、同年度において請求し得る
年休の最高限度を基準にしていることとなるところ、そのような状態が生ずること
は経験則上想定し難く、また、実際にも過去においてそのようなことはなかつたも
のであつて(ちなみに、前認定のとおり、同集配課における中途採用者等を除く昭
和五九年度《三二名》の年休の年間付与日数は六四一日、昭和五〇年度におけるそ
れ《三四名》は七四八日である。)、従つて、およそ想定し難い状態を念頭にお
き、それに対処できないからといつて、人員配置が十分でないとすることはできな
いところである。控訴人の右主張は、その余の点を判断するまでもなく失当であ
る。」
8 原判決三〇枚目表九行目冒頭の「一」を「二」と改め、同一〇行目「C」及び
同一一行目「原告本人尋問の結果」の次にそれぞれ「(原審、当審)」を付加し、
同一二行目「二によれば」を「二並びに前記認定の事実を総合すれば」と改める。
9 原判決三一枚目表一行目の次に、次項を付加する。
「そして、前記認定のとおり、控訴人が当初、五月一二日に、同月一三日について
年休の請求をしたところ、A主事において、一三日は駄目だが、一六日であればよ
いのではないかとの返答をなし、その示唆に従つて一六日についての年休の申請に
替えたという経緯に併せて、休暇の申請をした時に、Aにおいて担務表に控訴人の
氏名を鉛筆で記載した事実を併せ考えると、控訴人が、一六日については休暇がと
れる(時季変更権を行使されない)との強い期待を持つたとしても無理からぬ状況
にあつたということが言える。」
10 原判決三一枚目表九行目「採用できない。」を「採用できないし、また、A
において、一六日ならばとれるのではないかと示唆した点についても、これは、当
時の状況下におけるAとしての判断を述べたもので、その後の状況の変化によつて
その判断が維持できなくなつたとしても、それはやむをえないことというほかない
ものである。よつて、この点における控訴人の主張も採用できない。」と改める。
11 原判決三一枚目表一〇行目冒頭の「二」を「三」に改め、同一一、一二行目
「原告本人尋問の結果」の次に「(原審、当審)」を付加し、同一二行目「によれ
ば、」を「並びに前記認定の事実を総合すると、」と改め、同三二枚目表一〇行目
「認められないし」の次に「(もつとも、Hが休暇をとる理由の一つとして述べた
子供の発熱は、一三日の時点で、一六日に病院につれて行くというものであるか
ら、その病状は、特段緊急を要するものではなかつたともいえようが、しかし、発
熱の反復継続も考えられ、現に一五日朝も発熱があつたのであるから、子供を病院
につれていくことの必要性が乏しい状況にあつたともみられず、親戚の者の病気見
舞いとあいまつて、その必要性を肯認したCの判断は、特に合理性を欠くものとす
ることはできない。)」を付加する。
12 原判決三二枚目裏三行目の次に、次項を付加する。
「四 時季変更権行使の不当な遅延
 被控訴人が、控訴人に対し、五月一五日の午後一時三〇分頃に至つて、翌一六日
についての年休について時季変更の意思表示をしたことは、前記認定のとおりであ
る。しかし、同時に前記認定の事実に照らすと、C課長は、控訴人に対しても出来
るだけ休暇を付与するとの立場で郵便物数の推移、職員の動向を見守つていたとこ
ろ、一四日の段階では、郵便物数は普段よりはかなり多いものの、まだ飛躍的に増
大しているという状況にはなかつたので、他の方策等をも考え、最終的判断をする
状態ではなかつたこと、しかし一五日の朝、郵便物数を確認したところその数は増
大しており、特に市外一〇区は平常の二倍にもなつていたので、これらの状況から
みて、一六日には三四名の配達員を確保しなければ、業務の円滑な運営ができない
と考えられたこと、しかもその頃(同日午前一一時三〇分頃)になつてDから年休
の請求が出され、当初は休暇を思い止まるよう説得したものの、本人の希望も強
く、結局はその理由に鑑み休暇を付与するのが社会的に相当と認められたので、休
暇を承認するに至つたもので、これらの諸事情から控訴人の年休について時季変更
をする必要が生じたものであることが明らかである。以上の事実からすれば、一五
日の午後一時三〇分に至つて時季変更をしたこともやむを得ないものというべく、
従つてこれをもつて時季変更権の行使が不当に遅延したものということはできな
い。」
13 原判決三二枚目裏四行目冒頭の「三」を「五」に改める。
二 そうすると、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であつて、控訴人の本
件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担について民事訴
訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 渡辺伸平 北村恬夫 浅田登美子)

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弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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