弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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平成20年(わ)第2550号,平成21年(わ)第312号,第313号強盗殺人,
覚せい剤取締法違反,恐喝被告事件
判決
主文
被告人を無期懲役に処する。
未決勾留日数中180日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
第1(平成20年11月25日付け起訴状記載の公訴事実)
被告人は,A,B,C,D,E,F及びGと共謀の上,薬物密売人から覚せい
剤及び現金を強取しようと企て,平成20年8月23日午前零時過ぎころ,愛知
県北名古屋市ab番地先路上に停車中の普通乗用自動車内及び同所から同市ac
番地d先に至るまでの路上において,Hに対し,被告人が殺意をもって,その左
背部等を刃物で数回突き刺し,Bが同車内でその上半身に向けて放電中のスタン
ガンを突き出し,Eらが同路上でその胸腹部等を足蹴にする暴行を加え,Hの反
抗を抑圧した上,H所有又は管理の現金約18万円及び覚せい剤約10グラムを
強取し,上記被告人の刺突に基づき,同日午前1時20分ころ,同市ef番地所
在のI病院において,Hを左肺刺創により失血死させて殺害した。
第2(平成20年12月19日付け起訴状記載の公訴事実)
被告人は,法定の除外事由がないのに,平成20年10月19日ころ,静岡県
浜松市g区h町i番地j棟k号室A方において,覚せい剤であるフェニルメチル
アミノプロパンの塩類若干量を鼻孔から吸引し,もって覚せい剤を使用した。
第3(平成21年7月7日付け訴因及び罰条変更請求書記載の公訴事実)
被告人は,Jと共謀の上,Kの運転する自動車がJに接触したと因縁をつけ,
示談金名下に現金を脅し取ろうと企て,別紙一覧表記載のとおり,平成19年9
月29日ころから同年10月20日ころまでの間,前後5回にわたり,静岡県浜
松市l区mn丁目o番p号q駐車場ほか2か所において,Kに対し,Jが,「痛
えな。おまえの方から当たってきやがって。どうしてくれるんだ。何だ酒臭えな。
警察を呼んでもいいんだぞ。若い衆を呼んだから,どうなっても知らんぞ。」な
どと語気鋭く申し向け,暗に現金を要求するなどし,さらに,同県磐田市付近に
おいて,被告人が使用する携帯電話からKが使用する携帯電話にかけ,「この前
のヤクザが俺の家と会社に押しかけてきた。30万円という保険の領収書を見せ
られ,『おまえ払え。』と脅されたので,警察を呼んだ。警察が話を聞き,『お
まえが払ってやれ。』と言われた。警察はヤクザに『20万円で終わりにしてや
れ。』と言ってくれたので,ヤクザに20万円を払った。警察がヤクザに『これ
以上手出しはしない。』という誓約書を書かせた。こうなったのも,おまえがヤ
クザに車をぶつけたからじゃないのか。おまえにも責任があるから,払った20
万の半分の10万円払ってくれ。」などと申し向けて現金を要求するなどし,そ
の要求に応じなければKの身体等にいかなる危害が加えられるかも知れないとK
を畏怖させ,よって,同年9月29日ころから同年10月21日ころまでの間,
前後5回にわたり,上記q南側路上ほか4か所において,Kから現金合計150
万円の交付を受けてこれを喝取した。
(証拠の標目)
(法令の適用)
被告人の判示第1の所為は刑法60条,240条後段に,判示第2の所為は覚せ
い剤取締法41条の3第1項1号,19条に,判示第3の所為は包括して刑法60
条,249条1項にそれぞれ該当するところ,判示第1の罪について所定刑中無期
懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるが,判示第1の罪につき無
期懲役刑を選択したので,同法46条2項本文により他の刑を科さないで,被告人
を無期懲役に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中180日をその刑に算入
することとし,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に
負担させないこととする。
(量刑の理由)
1本件は,被告人が,仲間らと共謀の上,薬物密売人の被害者を刃物で突き刺す
などし,違法薬物及び現金を強奪し,被害者を殺害した強盗殺人(判示第1),
覚せい剤の自己使用(判示第2),恐喝(判示第3)からなる事案である。
2判示第1の強盗殺人は,多人数による組織的かつ計画的な強盗である。すなわ
ち,共犯者の多くは,ブラジル人の覚せい剤仲間であり,Aを中心として密売人
から違法薬物や現金を強取することを繰り返していた。そして,本件においては,
襲撃しやすそうな密売人を捜し,数名で下見をした上,首謀者であるAが綿密な
計画を立て,密売人への連絡役,客を装って密売人の自動車に乗り込んで攻撃す
る役,車外から運転席の窓ガラスを叩き割る役,密売人を車外に引きずり出して
捕まえる役等の役割分担を決め,模造刀,刃物,手製ハンマー,催涙スプレー及
びスタンガン等の凶器を用意し,共犯者8名が静岡県浜松市から自動車2台に分
乗して名古屋方面に出向き,覚せい剤の購入を持ちかけて被害者をおびき寄せ,
密売取引の現場で待機していた。
また,犯行の手口・方法は,残虐かつ無慈悲であるといわなければならない。
すなわち,車内でBが被害者にスタンガンを突き出し,抵抗する被害者に対し被
告人が殺意をもって刃物(刃体の長さ約13センチメートルの片刃で鋭利なナイ
フ)で強く突き刺し,車外に逃げ出した被害者を数人で追いかけ,被告人が背中
や首等を何度も刃物で力一杯突き刺すなどの強烈かつ過激な攻撃を加えた上,血
まみれになって倒れた被害者から被告人が覚せい剤等の入ったウエストバッグを
奪い取り,Gも財布を抜き取り,瀕死の被害者を路上に放置したまま現場から逃
走した。
これにより被害者の生命を奪ったという結果は,取り返しがつかず,甚だ重大
というほかない。被害者は,日系ブラジル人の青年で,来日後は工員として働き,
母国での宿泊施設の建設・経営を夢見ていたが,人生の半ばで無惨な死を遂げて
その夢を絶たれた無念さは察するに余りある。母国にいる遺族は,突然の悲報に
より深刻な精神的衝撃を受けたのに,何ら慰謝の措置が取られていないこともあ
り,特に被害者の実父は,犯人に対する極刑を求めるほど,処罰感情が峻厳であ
る。なお,密売用の覚せい剤約50袋のほか,薬物犯罪収益による現金も含むと
はいえ,財産的被害の結果も,見過ごすことができない。
加えて,被告人は,共犯者中最年少とはいえ,分け前欲しさという身勝手な動
機から極めて安易に強盗計画に参加し,密売人の車に乗り込む実行役を引き受け,
仲間には侮られたくないとの思いもあって,用意した催涙スプレーより強力かつ
危険な刃物をDから借り,これを使用して被害者を殺害し,金品も強奪するとい
う中心的な役割を果たしたものである。
このように凶悪な強盗殺人の実行犯である被告人の刑事責任は,極めて重大で
あり,共犯者の中でも最も重いというべきである。
3判示第2の覚せい剤使用については,判示第1の犯行後,不安感から使用の量
及び回数を増やすうち,最終使用に及んだものであり,被告人の覚せい剤に対す
る依存性や親和性は強い。
また,判示第3の恐喝については,被告人が当たり屋であるJに誘われ,同級
生に酒を飲ませて交通事故を起こしたと因縁を付け,暴力団員の関与も装い,そ
の示談金の名目で多額の現金を脅し取るという狡猾な犯行である。しかも,被告
人は,平成16年11月,恐喝罪により懲役2年,4年間執行猶予に処されたの
に,その猶予期間中に同種の恐喝を繰り返しており,常習性も認められる。
4他方,被告人のために酌むべき事情としては,強盗殺人について,被告人は,
覚せい剤の影響下で,被害者の抵抗に遭って興奮したため,その殺害を決意した
こと,その分け前が小分けされた覚せい剤6袋(約1.2グラム)と現金3万円
に過ぎないこと,恐喝について,首謀者はJであること,被告人は,本件各犯行
を素直に認め,自己の刑責の重大さを深く認識して,被害者に対する謝罪の気持
ちを述べるなど真しに反省していること,5歳で来日し,高校中退後はまじめに
稼働していた時期もあったこと,比較的若く,可塑性や更生可能性は残されてい
ること,被告人には養うべき妻子がいること,被告人の妹が,被告人を案ずる母
親及び弟らとともに被告人を支えていく旨述べていることなどが認められる。
しかし,上記2のとおり,被告人の刑事責任は極めて重大であることに鑑みれ
ば,上記の酌むべき事情を十分に考慮し,強盗殺人の被害者が覚せい剤の密売に
携わっていたことを加えても,本件が酌量減軽を相当とする事案とは到底いえず,
被告人を無期懲役刑に処するのは誠にやむを得ないところである。
(求刑無期懲役)
平成21年8月7日
名古屋地方裁判所刑事第5部
裁判長裁判官手﨑政人
裁判官小林謙介
裁判官今井祐子

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