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平成16年(ワ)第13248号 特許権侵害差止請求権不存在確認等請求事件
口頭弁論終結日 平成17年10月25日 
           判        決
     原       告   イー・エイチ・シー・ジャパン株式会社
同訴訟代理人弁護士 永島孝明
同            明石幸二郎
同            安國忠彦
     同補佐人弁理士    中尾俊輔 
     同            伊藤高英
     同            畑中芳実
     同            大倉奈緒子 
     同            玉利房枝
     同            鈴木健之 
     同            磯田志郎
     被       告    株式会社綾
    同訴訟代理人弁護士    江口公一
     同            中村嘉宏 
            主     文
1 原告による別紙物件目録記載の製品の輸入,製造,販売又は使用につき,
被告が特許第2813608号の特許権の専用実施権及び通常実施権に基づく差止
請求権,損害賠償請求権及び不当利得返還請求権をいずれも有しないことを確認す
る。
2 被告は,原告が輸入,製造,販売又は使用する別紙物件目録記載の製品が
特許第2813608号の特許権を侵害するとの事実を告知し,又は流布してはな
らない。
3 被告は,原告に対し,金3000万円及びこれに対する平成16年8月7
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告は,朝日新聞,読売新聞,毎日新聞,日本経済新聞及び産経新聞の各
朝刊全国版の社会面広告欄に,別紙謝罪広告目録1記載の広告文を同目録記載の条
件で,各1回ずつ掲載せよ。 
5 原告のその余の請求を棄却する。
6 訴訟費用は,これを5分し,その1を被告の負担とし,その余は原告の負
担とする。
7 この判決は,第2,第3項に限り,仮に執行することができる。
    事実及び理由
第1 請求
 1 主文第1項及び第2項同旨
 2 被告は,原告に対し,金2億2000万円及びこれに対する平成16年8月
7日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告は,朝日新聞,読売新聞,毎日新聞,日本経済新聞及び産経新聞の各朝
刊全国版の社会面広告欄に,別紙謝罪広告目録2記載の広告文を同目録記載の条件
で,各1回ずつ掲載せよ。   
第2 事案の概要
 1 争いのない事実等(証拠を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)
(1) 当事者
 原告は,エスカレーター及び動く歩道用のハンドレール並びにハンドレー
ル用広告フィルムの輸入,製造,販売及び保守管理サービス等を業とする株式会社
である。
 被告は,エスカレーター用広告製品を製造販売する中華人民共和国香港の
法人であるボイジャー・グローバル・メディア・リミテッド(分離前相被告。以下
「ボイジャー」という。)の日本における総代理店である。
(2) ボイジャーの保有する特許権
 ボイジャーは,次の特許権(以下「本件特許権」といい,本件特許権の明
細書を「本件明細書」という。)を有している。
 特許番号  第2813608号
 発明の名称  動く手すり
 出 願 日  昭和63年(1988年)5月18日
 優先権主張国 オーストラリア連邦
 優 先 日  1987年5月21日
 登 録 日  平成10年(1998年)8月14日
 特許請求の範囲
 請求項1(以下,この発明を「本件特許発明1」という。)
  「手すり上に取外し自在に載置された広告物または印刷物がカバー
を通して見られる様に,実質的にそれを覆う透明なカバーを有する,動く歩道,エ
スカレータ等のための動く手すりであって,前記透明なカバーは,該手すりの上の
部分として且つ手すりの上に突出することなく構成され,また,長手方向軸線のま
わりに延びる少なくとも1つのカットアウト部分が前記手すりに設けられ,そし
て,該少なくとも1つのカットアウト部分は,前記広告物または印刷物が表示され
たカード等が置ける様になっており,更に,前記カバーが前記カード上に設けら
れ,該カバーが前記カットアウト部分内にしっかりと,但し取外し自在に保持され
ることを特徴とする動く手すり」
 請求項2(以下,この発明を「本件特許発明2」という。)
  「手すり上に取外し自在に載置された広告物または印刷物がカバー
を通して見られる様に,実質的にそれを覆う透明なカバーを有する,動く歩道,エ
スカレータ等のための動く手すりであって,前記透明なカバーは,該手すりの上の
部分として且つ手すりの上に突出することなく構成され,そして,ポケットが手す
りの一側に且つ前記上の部分と下の部分との間に設けられ,前記広告物または印刷
物がその中へ挿入される様になっていることを特徴とする動く手すり」
 請求項3(以下,この発明を「本件特許発明3」という。)
  「ポケット内へ前記広告物または印刷物を挿入した後にプラグ等が
ポケット内へ挿入されるようになっていることを特徴とする,請求項2記載の動く
手すり」
 請求項4(以下,この発明を「本件特許発明4」という。)
  「手すり上に取外し自在に載置された広告物または印刷物がカバー
を通して見られる様に,実質的にそれを覆う透明なカバーを有する,動く歩道,エ
スカレータ等のための動く手すりであって,前記透明なカバーは,該手すりの上の
部分として且つ手すりの上に突出することなく構成され,そして,前記カバーは,
その縁に沿って手すりに固定的にまたは取り外し自在に取り付けられた窓部分と,
手すりの他側に保持されるのに適したばねまたはバイアス部分とを有することを特
徴とする動く手すり」
 請求項5(以下,この発明を「本件特許発明5」という。)
  「手すり上に取外し自在に載置された広告物または印刷物がカバー
を通して見られる様に,実質的にそれを覆う透明なカバーを有する,動く歩道,エ
スカレータ等のための動く手すりであって,前記透明なカバーは,該手すりの上の
部分として且つ手すりの上に突出することなく構成され,そして,前記カバーは,
一側にばねまたはバイアスされた縁部分を有する窓部分を有し,前記広告物または
印刷物を手すり上に載置した後には,該カバーは,縁部と係合している該ばねまた
はバイアス部分によって手すり上に保持されるのに適合していることを特徴とする
動く手すり」
 請求項6(以下,この発明を「本件特許発明6」という。)
  「動く歩道,エスカレータ等のための動く手すりであって,手すり
の上の部分が,手すりの上面から手すりの長手方向の軸線のまわりに延びる少なく
とも1つのカットアウト部分を有し,カットアウト部分の上部の長手方向の対向し
た縁が,カットアウト部分の開口部に沿って,手すりの中心に向かって下方に傾い
た内側の面を有する1対のリップを形成すること,広告物または印刷物が書き込ま
れたカード等がカットアウト部分の下面の上に置かれること,及び,透明な材料で
つくられたカバーが,カード等の上に置かれ,該カバーは,対応した形状であり,
且つ前記リップによってカットアウト部分の中にしっかりと且つ取り外し自在に保
持されるのに適したものであることを特徴とする動く手すり」
 請求項7(以下,この発明を「本件特許発明7」という。)
  「動く歩道,エスカレータ等のための動く手すりであって,手すり
が,上の部分に,手すりの第1の側から長手方向に実質的に同じ平面で手すりの上
面に延びる少なくとも1つのポケットが設けられており,該少なくとも1つのポケ
ットは,広告物または印刷物が書き込まれたカード等を該少なくとも1つのポケッ
トの中に受けるのに適していること,及び,プラグ等が,手すりの前記第1の側と
当接関係で,該少なくとも1つのポケットの中にしっかりと但し随意に取り外し自
在に挿入されており,手すりの該カード等の上の少なくとも上の部分が透明な材料
でつくれていることを特徴とする動く手すり」
 請求項8(以下,この発明を「本件特許発明8」という。)
  「動く歩道,エスカレータ等のための動く手すりであって,手すり
の上の部分に,第1の縁に沿って手すりの第1の長手方向の側にヒンジ結合され,
第2の縁に沿って,手すりの第2の長手方向の側に保持されるのに適したばね等の
バイアス部分により第2の縁に沿って取り外し自在に保持された,少なくとも1つ
の窓部材が設けられており,広告物または印刷物が書き込まれたカード等を該窓部
材と手すりの残りの部分の間に置くことができることを特徴とする動く手すり」
 請求項9(以下,この発明を「本件特許発明9」という。)
  「動く歩道,エスカレータ等のための動く手すりであって,手すり
の上の部分が,窓部材をその上で長手方向に受けるのに適しており,該窓部材が,
それに沿って手すりのそれぞれの側で取り外し自在に受けられるのに適した長手方
向のばねまたはバイアスされた縁を有し,広告物または印刷物を該窓部材と手すり
の残りの部分との間へ置くことができることを特徴とする動く手すり」
 請求項10(以下,この発明を「本件特許発明10」という。)
  「手すり上に置かれた広告物または印刷物がカバーを通して見るこ
とができるように透明な材料のカバーを実質的にその上に有する非直線形の移動路
を有する動く歩道,エスカレータ等のための動く手すりであって,カバー及び広告
物または印刷物が,手すりの該非直線形移動路に一致することを十分に可能にする
ように手すりの長手方向軸線に沿って曲げ自在であり,且つ,手すりの上面とカバ
ーの上面との間に,該動く歩道,エスカレータ等の使用の間カバーの上面のかき傷
を最小にするのに十分な凹部が設けられていることを特徴とする動く手すり」
(3) 被告製品の製造販売
  ボイジャーは,「エスカレーターハンドレールアドバタイジング」と称す
る本件特許発明の実施品であるエスカレーター用広告製品(以下「被告製品」とい
う。)を製造し,被告は,被告製品の我が国における独占的販売権を有し,我が国
内において被告製品の販売を行っており,原告と競争関係にある。
(4) 原告によるハンドレール用広告フィルムの輸入販売
 原告は,業として,別紙物件目録記載のハンドレール用広告フィルム(以
下「原告製品」という。)を輸入販売し,エスカレーター等のハンドレールに設置
する業務を行っている。
 原告製品の構成及び使用態様並びに原告製品を設置したハンドレール(以
下「原告ハンドレール」という。)の構成は,別紙原告製品目録記載のとおりであ
る(甲4)。
(5) 被告及びボイジャーの行為
ア ボイジャーは,原告の取引先である株式会社ビデオプロモーション(以
下「ビデオプロモーション」という。)に対し,原告製品及びその適用の仕方が,
本件特許権に包含されるさまざまな請求項と一致する可能性があり,その違反にな
るというのが弊社の意見である旨の平成15年1月9日付けの文書(以下「ボイジ
ャー文書1」という。甲5)を送付した。
イ 原告は,これを受けて,ボイジャーに対し,同月15日付け回答書(以
下「原告回答書1」という。甲6)において,原告製品は本件特許権を侵害するも
のではない旨を詳細に説明した上で,以後同様の書面を原告の顧客らに対して送付
しないよう,送付した場合は,事前の通知なく法的措置を講ずる旨警告した。
ウ その後,ボイジャーは,ビデオプロモーションに対し,原告製品及びそ
の使用方法は,本件特許に含まれるさまざまなクレームに一致する可能性があり,
それらを侵害するものであること,ボイジャーはビデオプロモーションに対し,原
告からの協力を取り付けることを要求したが未だ回答がないこと,そこで,改め
て,原告製品及び使用方法が,本件特許のクレームに抵触しないことを確認する書
面を提供するよう協力を要求する旨の同年9月9日付けの文書(以下「ボイジャー
文書2」という。甲7)を送付し,さらに,原告に対しても,同月8日付けで同様
の内容の文書(甲8)を送付した。
エ 被告も,ビデオプロモーションに対して,原告製品は,本件特許権を侵
害するおそれがある旨の同月17日付けの文書(以下「被告文書」という。甲9)
を送付し,原告に対しても,同様の内容の同日付けの文書(甲10)を送付した。
オ 原告は,同年9月18日付けで,ボイジャーに対して回答書(以下「原
告回答書2」という。甲11)を送付し,同月22日付けで,被告に対しても同様
の回答書(以下「原告回答書3」という。甲12)を送付した。原告は,これらの
回答書の中で,原告製品は本件特許権を侵害しないこと及び今後ボイジャー及び被
告が原告の顧客らに対して,同様の文書を送付した場合,原告は法的手段を講じる
旨警告した。
カ しかし,ボイジャーは,原告の上記警告を無視して,平成16年2月9
日,原告の顧客であり,当時原告製品を使用するウェブサイト上の広告活動をして
いたディー・エイチ・エル・ジャパン株式会社(以下「DHL」という。)に対
し,「貴殿が貴社のウェブサイト上で示しておられた広告方法によって,貴社は無
意識のうちに,弊社の特許を侵害したことになるものと考えられます。貴社の広告
は,日本において弊社が認定したライセンシー……を通しておりません」という内
容を記載した文書(以下「ボイジャー文書3」という。甲13)を送付した。
(6) 原告製品は,本件特許発明1ないし10のうち,本件特許発明1ないし
3,6ないし8及び10の技術的範囲に属しない。
(7) 本件特許発明4,5及び9を構成要件に分説すると次のとおりである。
ア 本件特許発明4について
4-A 手すり上に取外し自在に載置された広告物または印刷物がカバー
を通して見られる様に,実質的にそれを覆う透明なカバーを有する,動く歩道,エ
スカレータ等のための動く手すりであって,
4-B 前記透明なカバーは,該手すりの上の部分として且つ手すりの上
に突出することなく構成され,
4-C そして,前記カバーは,その縁に沿って手すりに固定的にまたは
取り外し自在に取り付けられた窓部分と,
4-D 手すりの他側に保持されるのに適したばねまたはバイアス部分と
を有することを特徴とする
4-E 動く手すり 
イ 本件特許発明5について
5-A 手すり上に取外し自在に載置された広告物または印刷物がカバー
を通して見られる様に,実質的にそれを覆う透明なカバーを有する,動く歩道,エ
スカレータ等のための動く手すりであって,
5-B 前記透明なカバーは,該手すりの上の部分として且つ手すりの上
に突出することなく構成され,
5-C そして,前記カバーは,一側にばねまたはバイアスされた縁部分
を有する窓部分を有し,
5-D 前記広告物または印刷物を手すり上に載置した後には,該カバー
は,縁部と係合している該ばねまたはバイアス部分によって手すり上に保持される
のに適合していることを特徴とする
5-E 動く手すり
ウ 本件特許発明9について
9-A 動く歩道,エスカレータ等のための動く手すりであって,
9-B 手すりの上の部分が,窓部材をその上で長手方向に受けるのに適
しており,
9-C 該窓部材が,それに沿って手すりのそれぞれの側で取り外し自在
に受けられるのに適した長手方向のばねまたはバイアスされた縁を有し,
9-D 広告物または印刷物を該窓部材と手すりの残りの部分との間へ置
くことができることを特徴とする
9-E 動く手すり
(8) 原告ハンドレールは,本件特許発明4の構成要件4-A及び4-E,本件
特許発明5の構成要件5-A及び5-E並びに本件特許発明9の構成要件9-A及
び9-Eをそれぞれ充足する。
2 本件は,原告が,原告の行為は本件特許権を侵害しないと主張して,被告に
対し,被告が本件特許権の専用実施権又は通常実施権に基づく差止請求権,損害賠
償請求権及び不当利得返還請求権のいずれも有しないことの確認を求めるととも
に,被告及びボイジャーが原告の得意先に対し上記各文書を送付した行為が不正競
争防止法2条1項14号所定の虚偽の事実の告知又は流布する行為であり,両者の
共同不法行為に当たると主張して,同法3条に基づく告知又は流布行為の差止め,
同法4条に基づく損害賠償及び同法7条に基づく謝罪広告を求める事案である。
3 争点
(1) 本件特許発明4の構成要件の充足性
 原告ハンドレールは本件特許発明4の構成要件4-B,4-C及び4-D
を充足するか
(2) 本件特許発明5の構成要件充足性
 原告ハンドレールは本件特許発明5の構成要件5-B,5-C及び5-D
を充足するか
(3) 本件特許発明9の構成要件充足性
 原告ハンドレールは本件特許発明9の構成要件9-B,9-C及び9-D
を充足するか
(4) ボイジャー及び被告による上記各文書の送付は,不正競争防止法2条1項
14号所定の不正競争行為に当たるか。また,ボイジャーによる文書の送付につい
て被告が共同不法行為責任を負うか。
(5) 被告の故意又は過失の有無
(6) 損害の発生及びその額
(7) 謝罪広告の要否
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(本件特許発明4の構成要件の充足性)について
〔被告の主張〕
(1) 構成要件4-Bの充足性
ア 構成要件の解釈
 構成要件4-Bの「手すりの上に突出することなく」は,手すりの上に
凹凸を生じないというものであり,本件特許発明4の本質的特徴である。
 この点,原告は,本件明細書の第1図を根拠に,それを原告ハンドレー
ルと比較すると異なることは明らかであると主張するが,同第1図は,本件特許発
明4に属する発明の一例にすぎず,これとの単純な比較によって,構成要件の非充
足を主張することは誤りである。
イ 原告ハンドレールとの対比
 原告製品もまたハンドレールの手すりの上に凹凸なく貼り付けられたも
のであるから,原告ハンドレールは構成要件4-Bを充足する。
(2) 構成要件4-Cの充足性
ア 構成要件の解釈
(ア) 構成要件4-Cのうち,「前記カバーは,その縁に沿って手すりに
固定的にまたは取り外し自在に取り付けられた窓部分」という構成は,カバーの窓
部分の縁部分が,手すりに固定的に又は取り外し自在に取り付けられているという
ものであり,この「固定的にまたは取り外し自在に取り付け」という取付方法に
は,窓部分の縁部分を手すりに貼付する方法も含むというべきである。なぜなら
ば,この取付方法には,本件明細書に「図示されていない他の実施例は,如何なる
形での印刷物などでも手すり1へ戴置することから成り,この上に,乾燥した時に
不透明でない硬化性液体の形のコーティングを施される。可塑性のPVC等の様な
このコーティングは,印刷物を掻き傷,野蛮な取り外しや,手すり機構の走査によ
る損傷または取り外しから保護することができる。好ましい可塑性PVCコーティ
ング等は,手すりがその通路を通る様に可撓性であるべきであり,火災を防止する
ために耐熱性であるべきであり,そして好適には,手すりの正しい操作を確保する
ため,光沢があり滑らかで且つ適当なつるつるした表面になるべきである」(7欄
下から6行から8欄5行)と記載されているように,可塑性PVC等のコーティン
グも含まれており,このコーティングは,一旦硬化すると剥離は可能であるが,再
利用不可能であり,貼付と同様の作用効果を発揮するものだからである。
(イ) また,「窓部分」は,ハンドレールの手すり上部に置かれた広告物
を視認可能に被覆するものである。
イ 原告ハンドレールとの対比
(ア) 原告ハンドレールに設けられた原告製品と対比すると,原告製品は
手すりの上面部と側面部の一部に貼付されているから,窓部分の縁部分(側面部の
一部)をも貼付するものであり,上記ア(ア)で説明した「固定的にまたは取り外し
自在に取り付け」を充足する。
(イ) 原告製品は,各種の広告が表面から視認可能に印刷されているもの
であるが,印刷された広告の上にさらにカバーがあるか否かは明確ではない。しか
しながら,宣伝広告パンフレット(甲3)に「3か月の耐久性」があると説明され
ているのであるから,当然印刷された広告の上に何らかのカバーがあるはずであ
る。そうであれば,そのカバーは,上記ア(イ)の「窓部分」に該当する。
(ウ) 以上により,原告ハンドレールは,構成要件4-Cを充足する。 
(3) 構成要件4-Dの充足性
ア 構成要件の解釈
 構成要件4-Dの「バイアス部分」は,カバーを手すりに保持するのに
適した機能を発揮する部分であり,具体的には,手すりの上面部を除いて,両側の
曲面部分である側面部の一部を包み込む部分である。なぜならば,カバーを貼付し
たとしても,この「バイアス部分」がないと,手すりが長時間繰り返し屈曲された
場合に,その貼付状態を維持することが困難で,カバーを手すりに保持することが
できなくなるからである。
イ 原告ハンドレールとの対比
 原告製品は,手すりの上面部だけでなく,側面部の一部までも包み込む
ものとなっているから,この「バイアス部分」を有している。
 したがって,原告ハンドレールは,構成要件4-Dを充足する。
(4) 以上のとおり,原告製品を設置した原告ハンドレールは,本件特許発明4
の技術的範囲に属するものである。したがって,この特許発明の生産にのみ用いる
物である原告製品は,特許法101条に基づく間接侵害を構成する。
〔原告の主張〕
(1) 構成要件4-Bの充足性
ア 構成要件の解釈 
 構成要件4-Bは,「前記透明なカバーは,該手すりの上の部分として
且つ手すりの上に突出することなく構成され」と記載されている。そして,本件明
細書の第1図からも明らかなように,カバー6は手すりの一部として構成されてお
り,カバー6の表面が手すりの上表面(図赤線)よりも突出していない。このよう
に,「突出することなく構成され」とは,カバーの表面が手すりの上表面よりも出
ていないものを指すというべきである。
イ 原告ハンドレールとの対比
 原告ハンドレールにおいて,原告製品は,ハンドレールとは別の部材で
あり,ハンドレール(手すり)の上表面よりも突出している。したがって,原告ハ
ンドレールは,構成要件4-Bを具備するものではなく,本件特許発明4の技術的
範囲に属するものではない。
(2) 構成要件4-Cの充足性
ア 構成要件の解釈
 構成要件4-Cでは,「取り外し自在に取り付けられた窓部分」と明記
されている。したがって,本件特許発明4は,手すりに「窓部分」が存在すること
が必須の要件としている。
 なお,被告は,本件明細書の実施例において,印刷物の上に可塑性PV
C等をコーティングすることが記載されているから,「固定的にまたは取り外し自
在に取り付け」という取付方法には,窓部分の縁部分を手すりに貼付する方法も含
むと主張する。しかし,可塑性PVC等のコーティングは,本件明細書の記載によ
れば,手すりに載置された印刷物の上に施されて印刷物を保護するものであって,
窓部分の縁部分を手すりに貼着するためのものではない。しかも,構成要件4-D
において,カバーが「ばねまたはバイアス部分」を有することを規定しているが,
可塑性PVC等をコーティングしてカバーを形成した場合,カバーに「ばねまたは
バイアス部分」を設けることは不可能である。よって,被告が引用する本件明細書
の記載は,本件特許発明4とは別の発明に関するものであり,当該記載に基づいて
本件特許発明4の用語を解釈することは誤りである。さらに,液体の可塑性PVC
等をコーティングしてカバーを形成することと,カバーを貼付することは全く別の
構成であり,仮に可塑性PVC等をコーティングする構成が含まれたとしても,貼
付という別の構成が含まれることにはならない。
イ 原告ハンドレールとの対比 
 原告ハンドレールは,原告製品目録記載のとおり,普通に使用されてい
るハンドレールを使用し,何の加工もしていないハンドレールの滑らかな上面部と
側面部の一部を覆って原告製品が貼付されたものであるから,構成要件4-Cにお
ける「窓部分」が設けられていない。
 被告は,広告の上に何らかのカバーが存在しているはずであると推量
し,このカバーが「窓部分」に相当すると主張するが,単なる被告の推測に過ぎな
い。原告ハンドレールは,原告製品を表面に貼付させるだけであり,その上に別途
カバーの窓部分を設ける構成ではない。なお,被告は,別途カバーの窓部分を設け
ず,原告製品の一部がカバーの窓部分として機能すると主張するかもしれないが,
原告製品は,全面に広告が印刷される印刷層を有するので,仮に広告の上に何らか
のカバーが存在したとしても,それは印刷層に取り付けられており,「手すりに取
り付けられた窓部材」に相当するものではない。
(3) 構成要件4-Dの充足性
ア 構成要件の解釈
 構成要件4-Dでは,「手すりの他側に保持されるのに適したばねまた
はバイアス部分」と明記されている。したがって,本件特許発明4は,カバーに
「ばねまたはバイアス部分」が存在することが必須の要件としている。
 被告は,「バイアス部分」は,カバーを手すりに保持するのに適した機
能を発揮する部分であり,具体的には,手すりの上面を除いて,両側の曲面部分で
ある側面部の一部を包み込む部分である旨独自の主張を行うが,本件明細書には,
「バイアス部分」について,「カバー16の他の側には,手すり1の底部19とカ
チンと係合するばねまたはバイアスされる部分18が設けられている。」(7欄2
5行ないし27行)と記載されており,同明細書の第5図には,「ばねまたはバイ
アスされる部分18」として手すりに対応した形状に曲げ加工されている部分が示
されている。これらの記載によれば,本件特許の「バイアス部分」とは,ばねと同
様の機能を持つ部分であって,手すりの底部と物理的に係合する部分である。
イ 原告ハンドレールとの対比
 原告ハンドレールは,原告製品目録記載のとおり,普通に使用されてい
るハンドレールを使用し,何の加工もしていないハンドレールの滑らかな上面部と
側面部の一部を覆って原告製品が貼付されたものであるから,構成要件4-Dにお
ける「ばねまたはバイアス部分」が設けられていない。 すなわち,原告製品は,
曲げ加工されておらず,全て同じ構造の一枚の軟質フィルムであり,裏面全面が接
着層としてハンドレールに接着されるものであるから,構成要件4-Dの「バイア
ス部分」は存在しない。
(4) 以上のとおり,原告ハンドレールは,本件特許発明4の技術的範囲にも属
しないから本件特許権を侵害しないし,原告製品は,特許法101条に基づくいわ
ゆる間接侵害を構成するものでもない。
2 争点(2)(本件特許発明5の構成要件の充足性)について
〔被告の主張〕
(1) 構成要件5-Bの充足性
ア 構成要件の解釈
 上記1〔被告の主張〕(1)アと同様である。
イ 原告ハンドレールとの対比 
 上記1〔被告の主張〕(1)イと同様である
(2) 構成要件5-Cの充足性
ア 構成要件の解釈
  構成要件5-Cの「バイアスされた縁部分」及び「窓部分」の解釈は,
上記1〔被告の主張〕(2)ア及び(3)アに記載されたとおりである。
イ 原告ハンドレールとの対比
 上記1〔被告の主張〕(2)イ及び(3)イにおいて論じたのと同様の理由に
より,原告製品の手すりの側面部の一部を取り込む部分は「バイアスされた縁部分
を有する窓部分」に相当する。以上によれば,原告ハンドレールは,構成要件5-
Cを充足する。
(3) 構成要件5-Dの充足性
ア 構成要件の解釈
 「バイアス部分」の解釈については,上記1〔被告の主張〕(3)アと同様
である。
イ 原告ハンドレールとの対比
 上記1〔被告の主張〕(3)イと同様である。よって,原告ハンドレール
は,構成要件5-Dを充足する。
〔原告の主張〕
(1) 構成要件5-Bの充足性
ア 構成要件の解釈
 構成要件5-Bの解釈は,上記1〔原告の主張〕(1)アと同様である。
イ 原告ハンドレールとの対比
 原告ハンドレールにおいて,原告製品は,ハンドレールとは別の部材で
あり,しかも,ハンドレールの上表面よりも突出している。したがって,原告ハン
ドレールは,構成要件5-Bを充足しない。
(2) 構成要件5-C及び5-Dの充足性
ア 構成要件の解釈
 構成要件5-C及び5-Dのうち,「窓部分」及び「バイアス部分」に
関する解釈については,上記1〔原告の主張〕(2)アと同様である。
イ 原告ハンドレールとの対比
 原告ハンドレールは,原告製品目録記載のとおり,普通に使用されてい
るハンドレールを使用し,何の加工もしていないハンドレールの滑らかな上面部と
側面部の一部を覆って原告製品が貼付されたものであり,原告製品は曲げ加工され
ておらず,縁部分も含めて全て同じ構造の一枚の軟質フィルムであり,裏面全面が
接着層としてハンドレールに接着されるものであるから,構成要件5-Cの「一側
にばねまたはバイアスされた縁部分を有する窓部分」及び構成要件5-Dの「縁部
と係合している該ばねまたはバイアス部分によって手すり上に保持されるのに適合
していること」を充足するものではない。
(3) 以上のとおり,原告ハンドレールは,本件特許発明5の技術的範囲にも属
しないから本件特許権を侵害しないし,原告製品は,特許法101条に基づくいわ
ゆる間接侵害を構成するものでもない。
3 争点(3)(本件特許発明9の構成要件の充足性)について
〔被告の主張〕
(1) 構成要件9-Bの充足性
ア 構成要件の解釈
 上記1〔被告の主張〕(2)アと同様である。 
イ 原告ハンドレールとの対比
 原告ハンドレールには,ハンドレール自体に段差等の加工がされていな
いことは認めるが,原告ハンドレールに原告製品を貼付したからといって,原告製
品がハンドレールと比較して突出するものではない。したがって,原告ハンドレー
ルは,「窓部材をその上で長手方向に受けるのに適して」いるのであって,構成要
件9-Bを充足する。
(2) 構成要件9-Cの充足性
ア 構成要件の解釈
 構成要件9-Cの「該窓部材」及び「バイアスされた縁」の解釈は,上
記1〔被告の主張〕(2)ア及び(3)アと同様である。
イ 原告ハンドレールとの対比
 原告製品の手すり曲面部(側面部の一部)を包み込む部分は,「バイア
スされた縁」に相当し,また,被告製品は,印刷部分を覆うカバーがあるものと思
われるので,「該窓部材」に相当する。
ウ 以上により,原告ハンドレールは構成要件9-Cを充足する。
(3) 構成要件9-Dの充足性
ア 構成要件の解釈
 構成要件9-Dの「該窓部材」の解釈は,上記1〔被告の主張〕(2)アと
同様である。
イ 原告ハンドレールとの対比
 上記3〔被告の主張〕(2)イと同様の理由により,原告ハンドレールは構
成要件9-Dを充足する。
ウ 以上により,原告ハンドレールは構成要件9-Dを充足する。
〔原告の主張〕
(1) 構成要件9-Bの充足性
ア 構成要件の解釈
 構成要件9-Bは,「手すりの上の部分が,窓部材をその上で長手方向
に受けるのに適しており」と記載されている。本件特許発明9では,本件明細書の
第1図からも明らかなように,手すりの上の部分には,長手方向に凹部3が形成さ
れており,カバー6を設けても手すり1の上に突出しないように構成されている。
また,第5図においても,手すり1には長手方向に段差(図中赤丸で囲った部分)
が形成されており,カバー16を設けても手すり1の上に突出しないように構成さ
れている。
イ 原告ハンドレールとの対比
 原告ハンドレールのハンドレールは,何も加工されておらず,原告製品
を貼付するとハンドレールの上に原告製品が突出するものであり,原告製品を長手
方向に受けるのに適した構成ではない。
 したがって,原告ハンドレールは,構成要件9-Bを充足しない。
(2) 構成要件9-C及び9-Dの充足性
ア 構成要件の解釈
 構成要件9-C及び9-Dの「窓部材」の解釈は,上記1〔原告の主
張〕(2)アのとおりである。
イ 原告ハンドレールとの対比
 原告ハンドレールは,原告製品目録記載のとおり,普通に使用されてい
るハンドレールを使用し,何の加工もしていないハンドレールの滑らかな上面部と
側面部の一部を覆って原告製品が貼付されたものであって,原告製品は,曲げ加工
されておらず,縁部分も含めて全て同じ構造の一枚の軟質フィルムであり,全面に
広告が印刷される印刷層を有し,裏面の接着層によってハンドレールに接着される
ものであるから,構成要件9-Cの「手すりのそれぞれの側で取り外し自在に受け
られるのに適した長手方向のばねまたはバイアスされた縁」を有する「窓部材」及
び構成要件9-Dの「広告物または印刷物を該窓部材と手すりの残りの部分との間
へ置くこと」を充足するものではない。
ウ 以上のとおり,原告ハンドレールは,本件特許発明9の技術的範囲に属
しないから本件特許権を侵害しないし,原告製品は,特許法101条に基づくいわ
ゆる間接侵害を構成するものでもない。 
4 争点(4)(不正競争行為の成否)について
〔原告の主張〕
(1) 被告自らの不正競争行為
 上記第2の1(5)エのとおり,被告は,ビデオプロモーションに対して被告
文書を送付した。しかし,上記第3の1ないし3の各〔原告の主張〕のとおり,原
告製品が本件特許権を侵害する余地はなく,本件特許権に基づく差止め等の請求が
認められる余地はないのであるから,被告がビデオプロモーションに対して被告文
書を送付した行為は,この送付行為だけとらえても,不正競争防止法2条1項14
号の虚偽の事実の告知又は流布に該当する。
(2) ボイジャーの不正競争行為
 上記第2の1(5)ア,ウ及びカのとおり,ボイジャーは,ビデオプロモーシ
ョンやDHLに対して,ボイジャー文書1ないし3を送付した。これらの送付行為
も,上記(1)と同様,虚偽の事実の告知又は流布に該当する。 
 このようなボイジャーによる文書送付行為に関しても,被告は共同不法行
為責任を負うべきである。すなわち,① 被告は,ボイジャーの日本における総代
理店であり,かつ,本件特許権の専用実施権者であったこと,② ボイジャーは,
日本国内にて流通していた原告製品に関する文書を送付したものであり,このよう
な情報は,日本における総代理店である被告から入手したことは明白であること,
③ 被告は,前記のとおり,平成15年9月17日付で文書送付行為を行ったとこ
ろ,ほぼ同時期である同月8,9日にボイジャーも同様の内容の文書送付行為を行
っていること等の事情からして,被告がボイジャーの上記不正競争行為についても
積極的に関与をしていたのは明らかである。ボイジャーの日本総代理店として,被
告製品を販売開始するに当たって,原告製品が本件特許権を侵害するおそれがある
旨ボイジャーから説明を受けたと自ら主張する被告が,ボイジャーの活動に関心を
有していないはずはないから,被告の主張は信用することができない。 
(3) その他の警告書の送付行為
  被告の同内容の警告書は,ビデオプロモーションやDHLにとどまらず,
株式会社東急エージェンシー,株式会社ジェイアール東日本企画,株式会社ジェイ
アール西日本テクノス等の広告会社にも送付されている。
〔被告の主張〕
(1) 被告自らの不正競争行為について
 被告は,ボイジャーの日本における総代理店であるが,ボイジャーから,
原告及びビデオプロモーションが日本国内で原告製品の販売の準備をしており,本
件特許権を侵害するおそれがある旨説明を受けた。また,本件特許の登録手続をし
た弁理士の意見も同様であった。そこで,被告は,ビデオプロモーションに対し
て,被告文書を送付して,原告製品が本件特許を侵害しないことを明らかにするよ
うに求めたに過ぎない。これに対し,原告は,原告回答書3(甲12)をもって,
本件特許権の登録原簿上の権利者がボイジャーではないこと,被告が本件特許権に
ついて訴権を有しているかどうかは明らかではないこと,及びボイジャーに対して
既に特許権を侵害していない旨回答していることを理由として,原告製品が本件特
許権を侵害しないことについて具体的な回答を拒否した。
  原告からの回答を受けて,被告は,ボイジャーに対し,本件特許権の侵害
問題につき,ボイジャーと原告との間で主張の対立がある状況においては被告製品
の販売活動を円滑に進めることはできないと述べ,原告との間で特許侵害問題を円
満に解決するように求めた。
 以上の経過からすれば,被告文書作成当時,原告製品が本件特許を侵害し
ているか,少なくとも,侵害のおそれがあると信じるに足る理由は十分に存在して
いたのであるから,「侵害のおそれがある」ということは虚偽の事実ではない。ま
た,原告及びビデオプロモーションに対して被告文書を送付し,特許権侵害のおそ
れを指摘し,侵害しないことを明らかにするよう求めることは正当な範囲の行為で
あり,不正競争行為に該当しない。
(2) ボイジャーの不正競争行為について
 ボイジャーがビデオプロモーション及びDHLにボイジャー文書1ないし
3を送付したことは認めるが,当時,被告は,ボイジャーと原告ないしビデオプロ
モーションとの具体的なやりとりの内容は知らなかった。これを知っていれば,被
告自ら,原告製品が本件特許権を侵害しないことを明らかにするように文書で求め
ることなどするはずがない。
 ボイジャーによる文書送付行為は,被告の関知するところではないので,
仮に,ボイジャーによる文書送付行為が不正競争行為に該当するとしても,被告
は,それについて共同不法行為責任を負わない。
(3) その他の警告書の送付行為について
  被告は,その他の原告の顧客等に対して,原告製品が本件特許権を侵害す
るおそれがあるとする文書を送付したことはない。
5 争点(5)(被告の故意又は過失)について
〔原告の主張〕
(1) 原告は,ボイジャー文書2及び被告文書がビデオプロモーションに送付さ
れる以前に,ボイジャーに対し,原告回答書1によって原告製品は本件特許権を侵
害しない旨回答し,ボイジャー文書3がDHLに送付される以前にも,ボイジャー
及び被告に対し,原告回答書2及び3によって,原告製品は本件特許権を侵害しな
いこと,今後被告らが原告の顧客らに対して同様の文書を送付した場合,原告は法
的手段を講じる旨警告している。したがって,原告の営業上の信用を害する虚偽の
事実を告知又は流布することについて,被告に故意又は過失が認められることは明
らかである。
(2) 上記第3の1ないし3〔原告の主張〕のとおり,本件特許発明の技術的範
囲に原告製品が含まれず,客観的に特許権侵害の事実が存在しないことは,容易に
判別しうるものであるから,被告において「原告製品が本件特許権を侵害している
か,少なくとも,侵害のおそれがあると信じるに足る理由は十分に存在して」いた
などとは到底いえない。また,弁理士等専門家の意見に従って行動したとしても,
それにより直ちに過失が否定されるわけではないのは当然であって,そもそも本件
に関して弁理士がいかなる根拠に基づき,いかなる意見を示したのかすら全く明ら
かではない。仮に,弁理士が十分な調査もなく被告に意見を具申していたとすれ
ば,同弁理士が共同不法行為責任を負うにすぎない。
  以上のとおり,本件の不正競争行為に関し,被告の故意又は過失は否定の
しようがない。
〔被告の主張〕
 争う。被告は,日本国内で原告製品の販売準備をしているところ,原告製品
が本件特許権を侵害するおそれがある旨ボイジャーから説明を受け,ボイジャーの
日本国における本件特許登録手続を行った弁理士の意見も同様,原告製品は本件特
許権を侵害するおそれがあるというものであった。よって,原告製品が本件特許権
を侵害しているか,少なくとも,侵害のおそれがあると信じるに足る理由は十分に
存在しており,したがって,「侵害のおそれがある」ということは虚偽の事実では
ないから,原告及びその販売協働者であるビデオプロモーションに対して,特許権
侵害のおそれを指摘し,侵害しないことを明らかにするよう求めることは,正当な
範囲の行為であり,何ら不正競争行為には当たらない。
6 争点(6)(損害の発生及びその額)について
〔原告の主張〕
 原告は,上記被告の不正競争行為により,次のとおりの損害を被った。
(1) 逸失利益
ア 被告が行なったビデオプロモーション及びDHLに対する虚偽の事実の
告知又は流布により,原告は,ビデオプロモーション,DHL及びその他の顧客ら
との新たな取引機会を逸した。
 すなわち,原告は,平成15年8月27日,ビデオプロモーションとの
間で,原告製品の販売に関する覚書を締結し(甲15),協働による原告製品の販
売促進を準備していた。しかし,その矢先の同年9月17日,被告による被告文書
の送付行為により,ビデオプロモーションは萎縮し,原告製品の販売促進を中断せ
ざるを得なくなった。さらに,平成16年2月9日,ボイジャーが原告の重要な顧
客であるDHLに対し,ボイジャー文書3を送り付けたことにより,原告は,DH
Lとのその後の原告製品に関する取引の機会を喪失した。
 その他にも,当時,サントリー株式会社,西日本旅客鉄道株式会社,株
式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ,タワーレコード株式会社及びTDK株式会社等
が原告製品を採用していたが(甲16ないし19),被告又はボイジャーによる上
記文書の送付を聞き及び,これが原因でその後の継続的な取引にまでは至らなかっ
た(甲14)。また,原告は,ボイジャー文書1ないし3及び被告文書の送付行為
が行われる以前から,原告製品の販売促進活動を強力に推し進めていたので,原告
製品の採用に関心を有していた企業は上記大手企業の他にも多数存在し,例えば,
原告のプレゼンテーションを受けて正式に原告との取引開始を企図していた企業に
は,ソニー株式会社,東日本旅客鉄道株式会社,デックス東京ビーチ及び株式会社
コジマ等の企業が名を連ねていた(甲20ないし23)。しかしながら,これら企
業も,被告又はボイジャーによる上記文書の送付を聞き及び,結局は原告製品の発
注を行うには至らなかった(甲14)。なお,上記第3の4〔原告の主張〕(3)のと
おり,原告製品が本件特許を侵害するおそれがある旨の被告又はボイジャー作成の
文書は,ビデオプロモーションやDHLに留まらず,株式会社東急エージェンシー
や株式会社ジェイアール東日本企画,株式会社ジェイアール西日本テクノス等伝播
性の高い広告会社にも送付されていた(甲14)。
 このように,被告及びボイジャーは,執拗かつ広汎に,虚偽の事実を告
知又は流布したものであって,あたかも原告製品が特許侵害品であるかのような事
実無根の噂が伝播し,上記のとおり,原告製品の採用を検討していた企業ですら全
て取引から手を引く結果となり,現在に至ってもほとんど新たな発注を得られてい
ない状況である。
イ 原告製品の利益率について(甲14)
 原告製品の利益は,1メートル当たり以下のとおりである。
  卸売価格    1500円
  最低販売価格  4500円
  諸経費      500円
  利益      2500円
 エスカレーター1機当たりのハンドレール用広告フィルムの平均的な長
さは左右合わせて約80メートルであるから,エスカレーター1機分の受注により
得られる原告製品の利益は,単純に算出しても2500円に80メートルを乗じた
20万円である。また,原告製品を設置する場合は専用の貼付装置を利用するとこ
ろ,貼付費用はエスカレーター1機当たり約14万円というのが標準であって,そ
のうち約6万円は原告の利益となる。
 したがって,原告製品の販売利益は,貼付作業を含め,エスカレーター
1機当たり約26万円である。
ウ 逸失利益の算出
 原告製品は,平成15年12月,エスカレーター34機分に採用された
が,上記イの利益率に従い単純に計算すれば,当該月だけでも約884万円(26
万円×34機)の利益があったものである。この平成15年12月時点での採用件
数は販売初期段階の数字であり,最低販売数量というべきものであるが,仮にこの
最低販売数量を基準に算出したとしても,同月から平成17年9月までの利益は,
1億9448万円となる。
エ 以上によれば,被告及びボイジャーが行った原告製品が特許を侵害する
おそれがある旨の虚偽事実の告知又は流布により顧客との新たな取引機会を逸した
ことによる逸失利益は,少なくとも1億8000万円は下らない。
(2) 信用毀損による無形損害
ア 原告は,エスカレーター用ハンドレールの販売につき業界で高い信頼を
得てきており,革新的な広告媒体として原告製品を開発し,今後さらなる業績拡大
が見込まれていた矢先,被告の不正競争行為により,その営業上の信用を毀損され
た。
イ 原告が被った信用毀損による無形損害は,2000万円を下らない。
(3) 弁護士及び弁理士費用
ア 原告は,本訴の提起及びその他関連手続の追行等を原告訴訟代理人らに
委任した。
イ 原告の負担する弁護士及び弁理士費用のうち,少なくとも2000万円
については,被告の不正競争行為と相当因果関係が認められる。
〔被告の主張〕
(1) 逸失利益について
 原告は,被告の文書送付行為によって,ビデオプロモーションが萎縮し,
原告製品の販売促進を中断せざるを得なくなったと主張する。しかし,その具体的
な経緯,中断の時期,期間,及び中断が原告製品の販売促進にどの程度影響を及ぼ
したのかについてなんら具体的な主張立証はない。ボイジャーによる文書送付行為
についても同様である。
 原告は,顧客会社ないし顧客見込みの会社が,被告又はボイジャーの文書
送付行為を聞き及び,継続的な契約に至らなかった,あるいは,新規発注に至らな
かった旨主張するが,この点を裏付ける証拠はなく,陳述書(甲14)の内容によ
っても,被告のいかなる文書を指しているのか,どのような経緯で,どのような情
報に基づいて継続的な取引に至らなかったのか,具体的な主張はない。したがっ
て,逸失利益に関する原告の主張は失当である。
(2) 信用毀損による無形損害並びに弁護士及び弁理士費用について
 否認ないし争う。
7 争点(7)(謝罪広告の要否)について
〔原告の主張〕
 被告による不正競争行為により,原告の顧客らに対する営業上の信用は失墜
し,現在も回復していない。かかる状況にかんがみれば,原告の救済に金銭賠償に
よる損害回復のみでは不十分であり,別紙謝罪広告目録2記載の謝罪広告を行なう
ことにより,原告の営業上の信用を回復する必要がある。
〔被告の主張〕
 争う。
第4 当裁判所の判断
1 争点(1)(本件特許発明4の構成要件の充足性)について
(1) 本件特許発明の内容
 本件特許発明4,5及び9の特許請求の範囲の記載は,前記第2の1(2)の
とおりであり,また,本件明細書には発明の詳細な説明として,以下のような記載
がある(甲2)。
ア 「本発明は,広告そして更に詳しくは,把持用の手すりまたはバンドを
利用する動く歩道,エスカレータなど上での広告に関するものである。」(4欄3
1行ないし33行)
イ 「広告は,これまで階段及びエレベーターや階段室のような装置の構造
物上に見られた。然しながら,エスカレータや動く歩道上の把持部または手すり
は,広告の目的で利用されなかった。」(4欄34行ないし37行)
ウ 「広告物をその中に挿入して透視できるような,動く歩道,エスカレー
タなど用の手すりを提供することが,本発明の1つの目的である。」
エ 「1つの大まかな形では,本発明は,手すり上に置いた広告物または印
刷物がカバーを通して見えるような実質的に透明なカバーを有する,動く歩道,エ
スカレータなどのための手すりから成っている。本発明の他の面によれば,手すり
及び手すりカバーが開示され,該手すりカバーは,該手すり上の印刷及びまたは印
刷された物を保護し且つ該印刷物を可視的にするのに適している。」(4欄41行
ないし48行)
(2) 構成要件の4-Bの充足性
ア 構成要件4-Bの「透明なカバーは,……手すりの上に突出することな
く構成され」の意義
(ア) 本件明細書には「カバー」の定義はないが,構成要件4-Bの「透
明なカバーは,該手すりの上の部分として……構成され」との文言並びに上記(1)ウ
認定の「広告物をその中に挿入して透視できるような……手すり」(発明の目的)
及び同エ認定の「実質的に透明なカバーを有する……手すり」(課題を解決する手
段)との記載からすれば,カバーは手すりの一部を構成するものであると認められ
る。
 そして,本件明細書には「その手すりカバーは,手すりと一体に形成
することができ,そして,枢着手段を設けてもよい。或いは,手すりカバーは,手
すりの上にカチッと係合する1片の部材であり得る。」(4欄49行ないし5欄2
行),「2片から成るカバーで,その下半分が手すりにカチッと係合し,一方その
上半分が該下半分の露出面におかれた広告または印刷物を覆うように枢動自在であ
るカバー」(5欄3行ないし5行),「印刷物の挿入のための凹部(カットアウ
ト)が設けられた手すりが開示され,それによって,一旦該印刷物が該凹部へ挿入
されると,該印刷物を見える様にするカバーが該凹部へ戴置される」(5欄17行
ないし20行)などと記載されており,本件明細書の実施例として記載された第1
図及び第2図では,手すりの上部に凹形にカットアウトされた凹部が形成され,透
明部材であるカバー6がその凹部に戴置される実施態様が記載されているが,カバ
ーは,手すりの上面と同じ高さか若しくは上面より低く戴置されている。また,第
5図では,手すりの上表面の一側が一部削られるような態様で手すりに段差が設け
られ,その削り取られた上表面部分を埋めるような態様で他側が手すりと結合し,
一側が手すりの底部19と係合しているカバー16が記載されている。
 本件明細書の以上のような記載によれば,本件特許発明4の「手す
り」は,カバーを外した状態若しくはカバーが存在しない状態では,上表面と両側
面が連続した滑らかな表面を構成せず,手すりとしては不完全なものであって,カ
バーがその一部として戴置されてはじめて,手すりとしての連続した滑らかな表面
を形成するような構成であり,かつ,カバーの表面が手すりの上表面より突出して
いないことを特徴とすると認められる。
(イ) この点,被告は,「手すりの上に突出することなく」というのは手
すりの上に凹凸を生じないものをいうと主張する。しかしながら,「手すりの上に
突出」してはならないのは「カバー」そのものであるから,単に手すりの上に凹凸
がないことだけを意味するものでないことは文言上明らかである。 
イ 原告ハンドレールとの対比について
  原告ハンドレールは,原告製品目録のとおり,単に普通に使用されてい
る手すりに原告製品を貼付するだけのものであるから,そもそも手すり自体には何
らの加工も施されていない。したがって,原告ハンドレールにおいて,手すり自体
は普通に使用される完全なものであって,手すりにはその一部を構成すべき「カバ
ー」が存在しない。
  また,原告製品は,原告製品目録のとおり,裏面に接着層が形成された
軟質のフィルムであり,証拠(甲3)によれば,原告製品の素材は,特殊なウレタ
ンフィルムであって,そのフィルムに直接フルカラーグラフィック印刷ができ,か
つ3か月の耐久性を持つものと認められる。よって,原告製品の表面にさらにカバ
ーがあるとは認められないが,仮に,原告製品の表面に何らかの加工が施されて,
それがカバーと解釈されるようなものであったとしても,それはそもそも印刷物で
あるフィルムのカバーにすぎず,手すりの一部を構成すべき「カバー」とはいえな
い。
  さらに,原告製品は,手すりの表面に貼付されるものであるから,その
原告製品のさらに上表面を覆う「カバー」は「手すりの上に突出する」形状になる
ことは明らかである。
 したがって,原告ハンドレールは,構成要件4-Bを充足しない。
(3) 構成要件4-Dの充足性
ア 構成要件4-Dの「ばねまたはバイアス部分とを有する」の意義
(ア) 本件明細書には,「バイアス部分」についての定義がない。しか
し,本件明細書の第5図の説明に関して,「カバー16の他の側には,手すり1の
底部19とカチンと係合するばねまたはバイアスされる部分18が設けられてい
る。」(7欄25行ないし27行)と記載されており,第5図には,「ばねまたは
バイアスされる部分18」として手すりの1側端の湾曲形状に対応した形状に曲げ
加工されている部分が示され,それが,「矢印20の方向の偏向進路に向かって動
かされる」(7欄27行ないし28行)状態が記載されている。また,「バイア
ス」とは,一般に「斜め。偏り。偏向」という意味であるところ(広辞苑第5版2
107頁),本件特許発明4では,「ばね」と同等のものとして規定されていると
ころからすると,「バイアス部分」とは,ばねと同様の機能を持つ部分であって,
弾性力によって手すりに保持される部分を意味するものと認められる。
(イ) この点,被告は,「バイアス部分」は,カバーを手すりに保持する
のに適した機能を発揮する部分であり,具体的には,手すりの上面を除いて,両側
の曲面部分である側面部の一部を包み込む部分である旨主張するが,「バイアス部
分」は「カバー」が「手すりの他側に保持されるのに適した」ものでなければなら
ず,そのためには,ある程度の強度があり,かつばねと同様の弾性力をもって手す
りに保持される必要があるのであって,単に曲面部分の側面部の一部を包み込むだ
けでは「カバーを手すりに保持する」ことは困難であるから,この点に関する被告
の主張は失当である。
イ 原告ハンドレールとの対比について
 前記(2)イのとおり,原告製品は,裏面に接着層が形成された軟質のフィ
ルムであり,かつごく一般に使用されるハンドレールの上表面に貼付するものであ
って,ばねと同等の機能を有するものではなく,フィルムの弾性力によってハンド
レールに保持されるものでもないから,原告ハンドレールは「ばねまたはバイアス
部分」を有しないことは明らかである。
 したがって,原告ハンドレールは,構成要件4-Dを充足しない。
(4) 以上によれば,原告製品を設置した原告ハンドレールは,構成要件4-B
及び4-Dを充足せず,その余の点について判断するまでもなく,本件特許発明4
の技術的範囲に属しない。
2 争点(2)(本件特許発明5の構成要件の充足性)について
(1) 構成要件5-Bの充足性
ア 構成要件5-Bの「透明なカバーは,……手すりの上に突出することな
く構成され」の意義
 「カバー」及び「手すりの上に突出する」の意義は,上記1(2)ア記載と
同一である。
イ 原告ハンドレールとの対比について
 原告ハンドレールの手すりにはその一部を構成すべき「カバー」が存在
しないこと,原告製品は,手すりの表面に貼付されるものであるから,その原告製
品のさらに上表面を覆う「カバー」は「手すりの上に突出する」形状になること
は,上記1(2)イ記載のとおりである。
 したがって,原告ハンドレールは,構成要件5-Bを充足しない。
(2) 構成要件5-Cの充足性
ア 構成要件5-Cの「ばねまたはバイアスされた縁部分を有する」の意義
 「バイアスされた縁部分」の意義は,上記1(3)アの「バイアス部分」の
記載と同様である。
イ 原告ハンドレールとの対比について
 原告ハンドレールが「ばねまたはバイアス部分」を有しないことは,上
記1(3)イのとおりである。
 したがって,原告ハンドレールは,構成要件5-Cを充足しない。
(3) 構成要件5-Dの充足性
ア 構成要件5-Dの「ばねまたはバイアス部分によって手すり上に保持さ
れる」の意義
 「バイアス部分」の意義は,上記1(3)ア記載と同一である。
イ 原告ハンドレールとの対比について
 原告ハンドレールが「ばねまたはバイアス部分」を有しないことは,上
記1(3)イのとおりである。
 したがって,原告ハンドレールは,構成要件5-Dを充足しない。
(4) 以上によれば,原告製品を設置した原告ハンドレールは,構成要件5-
B,5-C及び5-Dを充足せず,本件特許発明5の技術的範囲に属しない。 
3 争点(3)(本件特許発明9の構成要件の充足性)について
(1) 構成要件9-Bの充足性
ア 構成要件9-Bの「手すりの上の部分が,窓部材をその上で長手方向に
受けるのに適しており」の意義
 どのような場合が「手すりの上の部分が,窓部材をその上で……受ける
のに適して」いる状態であるのか,本件明細書には明示されておらず,その構成は
必ずしも明確ではない。しかし,特許請求の範囲に「手すりの上の部分が,……受
けるのに適しており」と記載され,わざわざ「適しており」という文言を使用して
いること,本件明細書の実施例として記載されている第1図ないし第5図すべてに
おいて,「窓部分」と解釈されるべき透明なカバー6(第1,2図),カバー16
(第5図),上部部材8(第3図)及びフラップ部分12(第4図)が手すりに何
らかの加工を施して手すりの一部として明示されていることからすれば,「手すり
の上の部分が,……受けるのに適しており」とは,少なくとも,手すり自体になん
らかの加工を施して,「窓部材」をその上で受けるものであると解釈するのが相当
である。
イ 原告ハンドレールとの対比について
 上記1(2)イのとおり,原告ハンドレールは,単に普通に使用されている
手すりに原告製品を貼付するだけのものであるから,そもそも手すり自体には何ら
の加工も施されていない。したがって,原告ハンドレールは,「窓部材を……受け
るのに適しており」に当たらない。
 したがって,原告ハンドレールは,構成要件9-Bを充足しない。
(2) 構成要件9-Cの充足性
ア 構成要件9-Cの「該窓部材が,……ばねまたはバイアスされた縁を有
し」の意義
 「バイアスされた縁部分」の意義は,上記1(3)アの「バイアス部分」の
記載と同様である。
 イ 原告ハンドレールとの対比について
 原告ハンドレールが「ばねまたはバイアスされた縁」を有しないこと
は,上記1(3)イのとおりである。
 したがって,原告ハンドレールは,構成要件9-Cを充足しない。
(3) 以上によれば,原告製品を設置した原告ハンドレールは,構成要件9-B
及び9-Cを充足せず,その余の点について判断するまでもなく,本件特許発明9
の技術的範囲に属しない。
4 差止請求権等不存在確認請求について
 以上のとおり,結局,原告製品を設置した原告ハンドレールは,本件特許発
明1ないし10のいずれの技術的範囲にも属しないから,原告製品の輸入,製造,
販売及び使用について,被告は,本件特許権の専用実施権及び通常実施権に基づく
差止請求権等を有しないものといわざるを得ない。
5 争点(4)(不正競争行為の成否)について
(1) 上記4のとおり,原告ハンドレールは本件特許発明1ないし10のいずれ
の技術的範囲にも属しないから,原告製品又は原告ハンドレールが本件特許権を侵
害するものである若しくは侵害するおそれがある旨の被告文書の告知内容は,虚偽
といわざるを得ない。
  なお,原告は,被告の警告書は,ビデオプロモーションやDHLにとどま
らず,株式会社東急エージェンシー,株式会社ジェイアール東日本企画,株式会社
ジェイアール西日本テクノス等の広告会社にも送付されている旨主張するが,本件
全証拠を精査しても,それらの事実を認めるに足りない。よって,この点に関する
原告の主張は理由がない。
(2) 被告文書の送付行為について
  もっとも,このような場合であっても,特許権者等による告知行為が,告
知した相手方自身に対する特許権の正当な権利行使の一環としてなされたものであ
ると認められる場合には,違法性が阻却されると解するのが相当である。他方,そ
の告知行為が特許権者の権利行使の一環としての外形をとりながらも,競業者の信
用を毀損して特許権者が市場において優位に立つことを目的とし,内容ないし態様
において社会通念上著しく不相当であるなど,権利行使の範囲を逸脱するものと認
められる場合には違法性は阻却されず,不正競争防止法2条1項14号所定の不正
競争行為に該当すると解すべきである。
  本件においては,① 前記のとおり,原告ハンドレールは本件特許発明1
ないし10のいずれの技術的範囲にも属さず,被告自身,原告製品を設置した原告
ハンドレールが,本件特許発明1ないし10のうち,その大部分の請求項である本
件特許発明1ないし3,6ないし8及び10の技術的範囲に属しないことを自認し
ているにもかかわらず,被告文書では,その点について一切触れずに,漠然と原告
製品が本件特許権を侵害するおそれがある旨告知していること,② 被告は,本件
特許権の特許権者であってエスカレーター用広告製品の販売において原告と競争関
係にあるボイジャーの日本における総代理店であり,かつ本件特許権の専用実施権
者であるところ,ボイジャーは,上記第2の1(5)ア,ウ及びカのとおり,原告の取
引先であるビデオプロモーションに対し,原告製品が本件特許を侵害する旨のボイ
ジャー文書1を送付した直後,原告が,原告回答書1において,原告製品が本件特
許権を侵害するものでない旨を詳細に説明した上で以後同様の書面を原告の顧客ら
に対して送付しないように警告したにもかかわらず,ビデオプロモーションに対し
再度,原告製品が本件特許を侵害する旨のボイジャー文書2を送付したこと,被告
文書は,ボイジャーによるこのような一連の文書送付行為の最中,平成15年9月
9日付けのボイジャー文書2とほぼ時期を同じくする同月17日に送付されている
こと,③ 被告が被告文書をビデオプロモーションに送付する際,被告は,ボイジ
ャーから,原告及びビデオプロモーションが日本国内で原告製品の販売の準備をし
ており,本件特許権を侵害するおそれがある旨説明を受け,また,本件特許の登録
手続をした弁理士の意見も同様であったと自ら主張していること,上記弁理士は,
分離前相被告であったボイジャーの訴訟代理人を務めた上で辞任したA弁理士である
こと,④ 被告は,原告に対しても,ビデオプロモーションに対しても,訴訟等の
法的手続をとらなかったこと,⑤ ボイジャーのボイジャー文書1ないし3の送付
行為については,当裁判所が既に不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争行
為に該当するとの判決を言い渡していること,以上の事実が認められる。これらの
事実に本件に現れた諸般の事情を総合考慮すると,被告が,原告の取引先であるビ
デオプロモーションに被告文書を送付した行為は,ボイジャーがビデオプロモーシ
ョンやDHLに対しボイジャー文書1ないし3を送付した行為と相俟って,その告
知行為が特許権者の権利行使の一環としての外形をとりながらも,競業者の信用を
毀損して特許権者が市場において優位に立つことを目的とし,その態様も社会通念
上不相当であって,権利行使の範囲を逸脱するものというべきであるから,違法性
は阻却されず,競争関係にある原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知又は
流布する行為に当たるというべきである。
  よって,被告文書の送付行為は,不正競争防止法2条1項14号所定の不
正競争行為に該当する。
(3) ボイジャー文書の送付行為についての共同不法行為の成否
  上記4のとおり,原告ハンドレールは本件特許発明1ないし10のいずれ
の技術的範囲にも属しないから,原告製品又は原告ハンドレールが本件特許権を侵
害するものである若しくは侵害するおそれがある旨のボイジャー文書1ないし3の
告知内容は,虚偽といわざるを得ない。ボイジャーのボイジャー文書1ないし3の
送付行為については,当裁判所が既に不正競争防止法2条1項14号所定の不正競
争行為に該当する旨の判決を言い渡したところであるが,被告がボイジャーによる
ボイジャー文書の送付行為に加担したことを認めるに足りない。
  原告は,被告がボイジャーの日本における総代理店であり,かつ,本件特
許の専用実施権者であった旨主張するが,上記事実をもってボイジャー文書の送付
行為についての共同不法行為責任を認めるに足りない。また,原告は,原告製品に
関する情報は,日本における総代理店である被告から入手した旨主張するが,上記
事実を認めるに足りる証拠はなく,かえってボイジャー文書1(甲5)によれば,
原告製品に関する情報は,ビデオプロモーションから入手したことがうかがわれ
る。さらに,原告は,被告文書の送付とほぼ同時期にボイジャー文書2が送付され
たことを根拠として主張するが,弁論の全趣旨によれば,被告が被告文書をビデオ
プロモーションに送付したのは,ボイジャーから原告及びビデオプロモーションが
日本国内で原告製品の販売の準備をしており,本件特許権を侵害するおそれがある
旨説明を受けたことがきっかけになったものと推認され,被告文書の送付にボイジ
ャーが加担したということはできても,ボイジャー文書の送付に被告が加担したと
いうことは困難である。
  したがって,被告がボイジャーの行為についてまで共同不法行為責任を負
うということはできない。
6 争点(5)(被告の故意又は過失)について 
(1) 上記4のとおり,原告ハンドレールは本件特許発明1ないし10のいずれ
の技術的範囲にも属しないが,上記第2の1(6)のとおり,被告は,原告製品を設置
した原告ハンドレールが,本件特許発明1ないし10のうち,その大部分の請求項
である本件特許発明1ないし3,6ないし8及び10の技術的範囲に属しないこと
を自ら認めている。また,被告は,被告が被告文書をビデオプロモーションに送付
する際には,ボイジャーから原告及びビデオプロモーションが日本国内で原告製品
の販売の準備をしており,本件特許権を侵害するおそれがある旨説明を受け,ま
た,ボイジャーの日本における本件特許出願手続を行なった弁理士の意見も同様で
あったと主張しているものの,仮にそうであったとしても,その際,ボイジャーか
らどのような説明を受けたのか,また,上記弁理士が具体的にどのような意見を述
べ,あるいは報告書を提出したのかなどの具体的な内容は全く明らかでない。その
他,被告が被告文書を送付する際に,本件特許発明の内容と原告製品を設置した原
告ハンドレールとを詳しく対比検討したことを窺わせる主張も証拠もなく,原告ハ
ンドレールが本件特許発明1ないし10のいずれにも該当しないと認められること
を考慮すると,被告によるビデオプロモーションに対する被告文書の送付行為につ
いて,少なくとも過失があったとの評価を免れることはできない。
(2) よって,被告は,不正競争行為に当たる自らの被告文書の送付行為によっ
て原告が被った損害を賠償すべきである。 
7 争点(6)(損害の発生及びその額)について
(1) 逸失利益について
ア 証拠(甲14ないし23)によれば,以下の事実が認められる。
(ア) 原告は,ハンドレール業界における世界的企業であるイー・エイ
チ・シー・グループの日本法人であり,平成14年10月ころから,日本におい
て,原告製品の販売活動を始め,国内で高い信頼を得たため,売上げの増加,事業
の拡大が期待されていた(甲14)。
(イ) 原告は,平成15年8月27日,ビデオプロモーションとの間で,
原告製品の販売事業に関する覚書を締結し(甲15),同社を原告製品の販売事業
に関する販売代理店に任命し,原告製品の販売促進のために将来合弁事業を立ち上
げるなどの準備をしていたが,ボイジャーによる同年9月9日付けボイジャー文書
2及び被告による同月17日付け被告文書の各送付行為により,ビデオプロモーシ
ョンは,原告製品の販売促進を中断した(甲14)。
(ウ) ボイジャーが原告の重要な顧客であるDHLに対し,平成16年2
月9日付けボイジャー文書3を送付したことにより,原告は,DHLとのその後の
原告製品に関する取引の機会を喪失した(甲14)。
(エ) サントリー株式会社,西日本旅客鉄道株式会社及び株式会社エヌ・
ティ・ティ・ドコモ等が原告製品を試験的に採用していたが(甲14,甲17ない
し19),被告及びボイジャーによる上記各文書の送付の事実を聞き及び,原告と
のその後の継続的な取引を断念した(甲14)。
(オ) 原告製品の採用に関心を有していた企業は上記大手企業の他にも複
数存在し,例えば,ソニー株式会社,東日本旅客鉄道株式会社,デックス東京ビー
チ及び株式会社コジマ等の企業が,原告のプレゼンテーションを受けて正式に原告
との取引開始を企図していたが(甲20ないし23),これらの企業も,被告又は
ボイジャーによる上記文書の送付を聞き及び,原告製品の発注を行うには至らなか
った(甲14)。
(カ) 原告製品は,平成15年12月に,DHL,ジェイアール西日本株
式会社及び横浜駅ビルの3社において採用され,エスカレータ34機分の利用があ
ったが,その後,平成17年9月まで,新規の受注がない状態が続いている(甲1
4)。
イ 以上認定の事実によれば,原告製品が複数の企業で一旦は採用され,若
しくは採用に関心を示していた企業があったにもかかわらず,その後新たな取引機
会を逸した原因の一つが,販売促進をする立場のビデオプロモーションに対する被
告の被告文書送付行為であったものと推認される。もっとも,原告の売上げの減少
が被告の上記不正競争行為のみに起因すると認めることはできず,また,被告文書
送付行為の後である平成15年12月に,原告製品がDHL等3社において採用さ
れたことにも照らすと,被告の行為と相当因果関係のある取引機会を逸した原告製
品の販売数を算定することは極めて困難である。よって,不正競争防止法6条の3
により,口頭弁論の全趣旨に基づき,平成17年9月までに取引機会を逸した原告
の販売数を100機分と認める。
ウ 原告製品のエスカレータ1機分当たりの利益額について
(ア) 証拠(甲14,22)によれば,エスカレーター1機当たりのハン
ドレール用広告フィルムの平均的な長さは左右合わせて約80メートルであるこ
と,同フィルムの1メートル当たりの最低販売価格は約4500円であり,卸売価
格は約1500円であり,その他の諸経費は約500円であるから,被告が得られ
る利益は1メートル当たり約2500円であることが認められる。
 したがって,原告製品の販売により得られる利益は,エスカレーター
1機当たり20万円(2500円×80)と認められる。
(イ) また,証拠(甲14)によれば,原告製品をエスカレーターのハン
ドレールに設置する場合は専用の貼付装置を利用しなければならないところ,エレ
ベーター1機当たりの貼付工事料は約14万円であるが,その貼付作業により原告
が得る利益は,1機当たり約6万円と認められる。
(ウ) 以上により,貼付作業を含む原告製品の販売利益は,上記(ア)及び
(イ)の合計であるエスカレーター1機当たり約26万円と認められる。
エ 被告の不正競争行為と相当因果関係のある逸失利益額について
  上記イ及びウによれば,被告の不正競争行為と相当因果関係のある平成
17年9月までの逸失利益の額は,2600万円をもって相当と認める。
(2) 信用毀損による無形損害について
 上記(1)ア(ア)によれば,原告は,エスカレーター用ハンドレールの販売に
つき業界で高い信頼を得てきており,今後さらなる業績拡大が見込まれていたこ
と,その矢先,被告が行なったビデオプロモーションに対する虚偽の事実の告知又
は流布により,原告は,新たな取引機会を逸したこと,ビデオプロモーションは原
告の顧客ないし取引先であることが認められる。
 そうすると,被告の不正競争行為によって,原告の営業上の信用が毀損さ
れ,その損害額は,本件訴訟に現れた一切の事情に照らし,200万円と認めるの
が相当である。
(3) 弁護士及び弁理士費用について
 本件訴訟に現れた一切の事情を総合考慮すると,被告の不正競争行為と相
当因果関係のある弁護士費用は,200万円と認めるのが相当である。
(4) 合計
 以上によれば,損害額の合計は,3000万円となる。
8 争点(7)(謝罪広告の要否)について
 上記4ないし6の認定のとおり,被告が過失により原告に対する不正競争行
為を行ったこと,被告の不正競争行為により,原告の顧客らに対する営業上の信用
が失墜し,現在も回復していないことが認められるから,その結果,原告の営業上
の信用を害したことは明らかである。
 したがって,不正競争防止法7条に基づき,原告の営業上の信用を回復する
措置を必要とするところ,原告は別紙謝罪広告目録2記載の広告文を求めるが,前
記第2の1(5)の事実関係及び前記第4の5の認定判断に照らし,被告に別紙謝罪広
告目録1記載の広告文を各新聞紙に掲載させるのが相当である。
9 結論
 したがって,原告の請求は,以上の限度で理由があるからこれを認容し,そ
の余は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 
    東京地方裁判所民事第47部
       裁判長裁判官     高  部  眞  規  子
    
            裁判官   東  海  林     保
            裁判官   田  邉        実
物  件  目  録
 ハンドレール用広告フィルム(製品名:アドレール)
謝 罪 広 告 目 録 1
1 広告文
 (1) 見出し
謝罪広告
(2) 本文(ただし,日付は広告掲載の日とする。)
  当社は,平成15年9月,貴社の取引先に対し,貴社の輸入販売するハンド
レール用広告フィルム(製品名:アドレール)について,特許第2813608号を
侵害するおそれがあるなどと記載した文書を送付しましたが,これは当社の誤った
認識によるものでした。
 当社は,ここに前記文書の記載を撤回するとともに,貴社の信用を害したこ
  とを謝罪いたします。
平成  年  月  日
  
                    株式会社 綾
                  
            イー・エイチ・シー・ジャパン株式会社 御中
2 掲載条件
 (1) 掲載条件
  ア 縦 2段
  イ 横 10センチメートル
 (2) 活字の大きさ
   前記紙面に見出し及び本文を掲載し得る範囲で最大限の活字
謝 罪 広 告 目 録 2
1 広告文
 (1) 見出し
謝罪広告
(2) 本文(ただし,日付は広告掲載の日とする。)
  当社は,平成15年1月から平成16年2月までの間,貴社の取引先に対
し,貴社の輸入販売するハンドレール用広告フィルム(製品名:アドレール)につい
て,特許第2813608号を侵害するなどと記載した文書を送付しましたが,こ
れは当社の誤った認識によるものでした。
 当社は,ここに前記文書の記載を撤回するとともに,貴社の信用を害したこ
  とを謝罪いたします。
平成  年  月  日
  
                    株式会社 綾
                  
 
    イー・エイチ・シー・ジャパン株式会社 御中
2 掲載条件
 (1) 掲載条件
  ア 縦 2段
  イ 横 10センチメートル
 (2) 活字の大きさ
   前記紙面に見出し及び本文を掲載し得る範囲で最大限の活字
原 告 製 品 目 録
1 原告製品について
 原告製品は,各種の広告が表面から視認可能に印刷され,裏面に接着層が形成
された軟質のフィルムであり,使用前の状態では,接着層を保護する剥離シートが
貼付されている。
 後掲写真1は,原告製品を示す写真である。写真1から,原告製品に「Esc
alator Handrail Advertising」,「www.ehc
-global.com」という記載とひまわりの花の画像が印刷されていること
が視認できる。
 後掲写真2は,原告製品の左下隅を剥離シートから剥がして折り返した状態を
示す写真である。写真2から,原告製品を折り返して現れた裏面に形成された白色
の接着層と,原告製品の折り返した後に残る剥離シートが確認できる。
2 原告製品の使用態様
 原告製品は,剥離シートを剥がして接着層を露出させ,露出した接着層によっ
てエスカレータ用ハンドレールの表面に貼付させる。単に原告製品を貼付するだけ
であるから,ハンドレールに加工をする必要はなく,普通に使用されているハンド
レールを使用することができる。原告製品が貼付されたハンドレールは,原告製品
を貼付した状態でエスカレータに取り付けられて稼働し,原告製品に印刷された広
告の媒体として利用されるのである。
 後掲写真3は,エスカレータ用ハンドレールである。写真3から,ハンドレー
ルは,略平面状の上面部と,上面部の両端から下方に延びた略円弧状の側面部とか
らなる滑らかな略C字形の断面形状を有していることが確認できる。
 後掲写真4は,原告製品をハンドレールに貼付した状態を示す写真である。
 写真4から,原告製品は,何の加工もしていないハンドレールの滑らかな上面
部と側面部の一部を覆って貼付されていることが確認できる。

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採用情報


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激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
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答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
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興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
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学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
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◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
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◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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修習生の事務所訪問歓迎しております。

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職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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経験不問です。

応募方法
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履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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