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平成27年3月27日判決言渡
平成24年(行ウ)第160号法人税更正処分等取消請求事件(甲事件)
平成24年(行ウ)第224号法人税更正処分等取消請求事件(乙事件)
平成25年(行ウ)第620号法人税更正処分等取消請求事件(丙事件)
主文
1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
1甲事件
日本橋税務署長が,原告P1株式会社に対し,平成22年10月29日付け
でした,平成17年1月1日から同年12月31日までの事業年度の法人税の
更正処分のうち納付すべき税額27億2428万1100円を超える部分及
び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
2乙事件
(1)日本橋税務署長が,原告P2株式会社に対し,平成22年11月24日付
けでした,平成17年1月1日から同年12月31日までの事業年度の法人
税の更正処分のうち納付すべき税額8324万3800円を超える部分及
び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
(2)日本橋税務署長が,原告P2株式会社に対し,平成22年11月24日付
けでした,平成18年1月1日から同年12月31日までの事業年度の法人
税に係る過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
(3)日本橋税務署長が,原告P2株式会社に対し,平成24年3月27日付け
でした,平成18年1月1日から同年12月31日までの事業年度の法人税
の更正処分のうち納付すべき税額2209万9200円を超える部分及び
過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
3丙事件
日本橋税務署長が,原告P2株式会社に対し,平成25年3月29日付けで
した,平成19年1月1日から同年12月31日までの事業年度の法人税の更
正処分のうち納付すべき税額1億6091万3500円を超える部分及び過
少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
第2事案の概要
甲事件は,日本橋税務署長が,原告P1株式会社に対し,平成17年1月1
日から同年12月31日までの事業年度に係る法人税につき,同原告がP3か
ら譲り受けた有限会社P4の出資持分につき受贈益の計上漏れがあるなどと
して,更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしたことについて,同原
告が,上記受贈益を所得金額に加算することは違法である旨主張して,上記更
正処分のうち申告額を超える部分及び上記過少申告加算税の各取消しを求め
る事案である。
乙事件及び丙事件は,日本橋税務署長が,原告P2株式会社に対し,平成1
7年1月1日から同年12月31日まで,平成18年1月1日から同年12月
31日まで,平成19年1月1日から同年12月31日までの各事業年度に係
る法人税につき,同原告がP3などから譲り受けた有限会社P4の出資持分に
つき受贈益の計上漏れがあるなどとして,更正処分(ただし,平成18年1月
1日から同年12月31日までの事業年度については増額更正後のもの。)及
び過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,上記増額更正処分と併せてされた
ものを含む。)をしたことについて,同原告が,上記受贈益や受取配当等の益
金不算入額の過大額を所得金額に加算する点などにおいて違法がある旨主張
して,上記各更正処分のうち申告額を超える部分及び上記各過少申告加算税の
各取消しを求める事案である。
(本判決における略語は,文中記載のもののほか,別紙2略語一覧表の例によ
る。また,別紙3以下で用いた略語は,本文においても同様に用いる。)
1関係法令等の定め
別紙3「関係法令等の定め」記載のとおり。
2前提事実(当事者間に争いがないか,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨によ
り容易に認定することができる事実)
(1)当事者及び関係者等
ア原告P1株式会社(原告P1)
原告P1は,昭和22年11月21日に設立された,酒類食料品の卸売
等を業とする資本金35億円の株式会社であり,平成17年3月31日,
資本金を3億5000万円から上記額に増資し,その発行済株式総数が7
00万株となった。
イ原告P2株式会社(原告P2)
(ア)原告P2は,大正7年1月25日に合名会社として設立された,不
動産賃貸等を業とする資本金3000万円の会社である。
(イ)原告P2は,平成18年7月10日,合名会社から株式会社に組織
変更するとともに,商号をP5合名会社からP6株式会社に変更し,平
成19年8月1日,P4社を吸収合併した。その後,原告P2は,平成
22年12月1日,商号を現在のP2株式会社に変更した。
ウ有限会社P4(P4社)
(ア)P4社は,平成2年6月8日に有限会社として設立された,不動産
賃貸を業とする資本金1億円の会社である。P4社は,上記イ(イ)のと
おり,平成19年8月1日,原告P2に吸収合併されて解散した。
(イ)P4社は,設立と同時に,P7(P8の父。から,①同人が当時保
有していた原告P1の株式200万3640株のうち200万株と,②
東京都中央区α×番▲所在の土地及び同土地上に存する建物のそれぞ
れ持分7分の6の各現物出資を受け,当該土地及び建物に付随するP7
に係るP9銀行本店からの借入金4億円を承継した上,P7から460
0万円の払込みを受けた。そして,P7は,P4社の出資持分9万99
95口(1口につき金額1000円)を取得した。また,P4社は,P
8から,5000円の払込みを受け,同人は,同社の出資持分5口を取
得した。
(ウ)P4社は,上記(イ)の原告P1の株式200万株を,1株当たり2
5円,合計5000万円の帳簿価格による現物出資として受け入れ,ま
た,上記(イ)の土地及び建物の各持分を合計4億399万5000円の
帳簿価格による現物出資として受け入れており,上記(イ)の4600万
円及び5000円の各払込み並びに借入金の承継と併せて,資産の合計
を5億円,負債の合計を4億円,資本金を1億円とし,出資口数を10
万口として設立された。
(エ)以上の設立の経緯により,P4社の設立当時における本件出資持分
は,P7が9万9995口(額面金額9999万5000円),P8・
5口(額面金額5000円)であった。
エP3
P3は,P7の妻であり,P8の母である。
オP8
P8は,P3の子であり,平成17年3月31日から平成18年3月2
0日までの間,原告P1,原告P2及びP4社の代表者を務めていた。
カP10
P10は,P8の子であり,原告P1の取締役及び原告P2の代表者を
務め,平成17年3月31日当時,原告P1の株式を5万株,原告P2の
出資持分を2000口保有していた。
キP11株式会社ほか12社(本件13社)
本件13社は,原告P1の取引会社であり,原告P1に対して長年にわ
たってビール・日本酒等の酒類を卸してきた有力な取引先である。
(2)本件に至るまでの経緯
アP7から本件13社に対する本件出資持分の譲渡
(ア)P7は,平成3年12月5日,本件13社に対し,保有する本件出
資持分9万9995口のうち合計5万2000口を,1社当たり400
0口でそれぞれ売却した。その売買代金は,1口につき額面金額の10
00円,1社当たり400万円,合計5200万円であった。
上記の結果,譲渡後のP7の本件出資持分は,4万7995口となり,
P8の本件出資持分5口と併せて,両名の本件出資持分は4万8000
口,その出資割合は48パーセントとなった。また,本件13社の出資
割合は,1社当たり4パーセント,合計で52パーセントとなった。
(イ)P4社は,同日,定款を改正し,同社の出資持分の譲渡を制限する
旨の規定を設けた(弁論の全趣旨)。
(ウ)本件13社は,後記(5)の出資持分譲渡(本件13社出資持分譲渡)
までの間,P4社から毎期配当金を受領していたが,社員総会等につい
ては,一度も出席することなく,白紙委任状又は決議案に全て賛成する
趣旨の委任状を提出していた。
イP7からのP3の相続
P7は,平成3年▲月▲日,死亡し,同人が保有していた本件出資
持分4万7995口は,P3が相続した。この相続後,P4社の出資者及
びその出資持分は,P3が4万7995口,本件13社が合計5万200
0口(1社当たり4000口),P8が5口の合計10万口となった。
ウP7の相続に係る処分及び裁判等(乙4の1及び2)
(ア)P7の相続人であるP8及びP3ほか2名は,P7の死亡によって
開始した相続に係る相続税の申告をするに当たり,同人の相続財産のう
ち本件出資持分4万7995口の価額の評価について,評価通達188
及び188-2を適用して,P4社の保有する資産である原告P1の株
式200万株の価額を配当還元方式によって評価し,かつ,現物出資さ
れた各資産の時価と帳簿価額との評価差額に対しては51パーセント
の法人税が課せられることになるから,これを差し引いてP4社の資産
の価額を評価すべきであるとして,法人税相当額をP4社の資産額から
控除した上で本件出資持分1口当たりの単価を算出し,同単価に基づい
て相続税額を算定して相続税の申告をした。
これに対し,芝税務署長は,P4社が保有する原告P1の株式の価額
については,類似業種比準方式によって評価すべきであり,また,現物
出資された資産の時価と帳簿価額との評価差額に対して法人税が課せ
られるのは会社を清算する遠い将来のことであって,相続時において差
し引かれるべき法人税額は微少なものにすぎず,法人税相当額をP4社
の資産額から控除する必要はなく,上記相続税の申告額は過少であると
して,これについて更正処分をするとともに,過少申告加算税の賦課決
定処分をした。
(イ)P7の上記相続人らは,芝税務署長に対し,上記(ア)の各処分は,
評価通達に違反し,P7の相続財産の評価を誤った違法があるとして,
上記(ア)の更正処分のうち申告額を超える部分及び上記(ア)の過少申
告加算税の賦課決定処分(いずれも,裁決により取り消された部分を除
く。)の取消しを求める訴えを提起した(以下「P7相続税事件」とい
う。)。
P7相続税事件について,当庁平成12年(行ウ)第90号同16年
3月2日判決(乙4の1)は,上記各処分は適法であるとして,P7の
相続人らの請求をいずれも棄却し,その控訴審判決である東京高等裁判
所平成16年(行コ)第123号同17年1月19日判決(乙4の2)
も,上記各処分は適法であるとして,P7の相続人らの控訴をいずれも
棄却し,同判決は確定した。
(3)その後の本件出資持分の譲渡の状況
アP3は,平成17年3月31日,原告P1に対し,本件出資持分2万4
000口を譲渡し,また,原告P2に対し,本件出資持分2万3995口
を譲渡した(以下,P3から原告P1への出資持分の譲渡を「本件P3出
資持分譲渡1」といい,P3から原告P2への出資持分の譲渡を「本件P
3出資持分譲渡2」といい,併せて「本件P3各出資持分譲渡」という。)。
その内容は後記(4)のとおりである。
イ本件13社は,平成17年10月から同年12月にかけて,原告P2に
対し,それぞれ本件出資持分を譲渡した(以下,総称して「本件13社出
資持分譲渡」といい,本件P3各出資持分譲渡と併せて「本件平成17年
各譲渡」という。)。その内容は後記(5)のとおりである。
ウ原告P1は,平成18年3月20日,P3から譲り受けた上記アの本件
出資持分2万4000口を原告P2に譲渡した(以下「原告P1出資持分
譲渡」という。)。その内容は後記(6)アのとおりである。
エP8は,平成18年3月20日,その保有していた本件出資持分5口を
原告P2に譲渡した(以下,「本件P8出資持分譲渡」といい,原告P1
出資持分譲渡と併せて「本件平成18年各譲渡」という。また,本件平成
17年各譲渡及び本件平成18年各譲渡を併せて「本件各譲渡」という。)。
その内容は後記(6)イのとおりである。
(4)本件P3各出資持分譲渡について
ア本件P3出資持分譲渡1
(ア)P3は,平成17年3月12日付けで,「有限会社P4出資持分買
取依頼のお願い」と題する書面により,原告P1に対し,P3が保有す
る本件出資持分2万4000口の買取りを依頼し,P3及び原告P1は,
同月25日付けで,P3が本件出資持分2万4000口を代金9億41
64万円(1口につき3万9235円)で原告P1に売却し,同社がこ
れを買い受ける旨の売買契約を締結した。
(イ)同月25日,P4社の臨時社員総会が開催され,同総会において,
P3が本件出資持分4万7995口のうち,2万4000口を原告P1
に対し,残る2万3995口を原告P2に対し,それぞれ譲渡すること
が承認され,同月31日,原告P1からP3に対し,本件出資持分2万
4000口の売買代金9億4164万円から貸付金返済金等1億85
10万2812円を相殺した7億5653万7188円が支払われ,P
3から原告P1に対し本件出資持分2万4000口が譲渡された(乙9,
10)。
イ本件P3出資持分譲渡2
(ア)P3及び原告P2は,同月25日付けで,P3が保有する本件出資
持分2万3995口を代金9億4144万3825円(1口につき3万
9235円)で原告P2に売却し,同社がこれを買い受ける旨の売買契
約を締結した。
(イ)上記ア(イ)のとおり,同月25日,P4社の社員総会において,P
3から原告P2への本件出資持分2万3995口の譲渡が承認され,同
月31日,原告P2からP3に対しその売買代金が支払われたことによ
り,P3から原告P2に対し本件出資持分2万3995口が譲渡された。
ウ本件P3各出資持分譲渡により,P4社の平成17年3月31日時点に
おける出資者及び出資持分は,原告P1が2万4000口,原告P2が2
万3995口,本件13社が合計5万2000口(1社当たり4000口),
P8が5口となった。
(5)本件13社出資持分譲渡について
ア本件13社及び原告P2は,平成17年10月4日から同年12月6日
までの間,本件13社が保有する本件出資持分各4000口(合計5万2
000口)を代金各2000万円(1口につき5000円,合計2億60
00万円)で原告P2に売却し,同社がこれを買い受ける旨の売買契約を
それぞれ締結した。
イ上記アの売買契約に係る契約書の第2条において,出資持分の売買は,
平成17年10月4日から同年12月6日のそれぞれ定められた日(①P
12株式会社(以下「P12」という。)は平成17年10月11日,②
P11株式会社(以下「P11」という。)は同月13日,③P13株式
会社(以下「P13」という。)は同月17日,④P14株式会社(以下
「P14」という。)は同年12月6日,⑤P15株式会社(以下「P1
5」という。)は同年10月14日,⑥P16株式会社(以下「P16」
という。)は同月4日,⑦P17株式会社(以下「P17」という。)は
同月5日,⑧P18株式会社(以下「P18」という。)は同年11月9
日,⑨P19株式会社(以下「P19」という。)は同年10月5日,⑩
P20株式会社(以下「P20」という。)は同日,⑪P21株式会社(以
下「P21」という。)は同日,⑫P22株式会社(以下「P22」とい
う。)は同日,⑬P23株式会社(以下「P23」という。)は同月4日。)
に行うものとされ,各同日,原告P2から本件13社に対しそれぞれ20
00万円が支払われ,本件13社から原告P2に対し本件出資持分合計5
万2000口が譲渡された。
ウ本件13社出資持分譲渡により,P4社の平成17年12月31日時点
における出資者及びその出資持分は,原告P1が2万4000口,原告P
2が7万5995口,P8が5口となった。
(6)本件平成18年各譲渡について
ア原告P1出資持分譲渡
(ア)原告P1及び原告P2は,平成18年3月1日付けで,原告P1が
保有する本件出資持分2万4000口を代金9億8500万8000
円(1口につき4万1042円)で原告P2に売却し,同社がこれを買
い受ける旨の売買契約を締結した。
(イ)原告P2は,同月20日,原告P1名義の当座預金口座に代金9億
8500万8000円を振り込み,原告P1から原告P2に対し本件出
資持分2万4000口が譲渡された。
イ本件P8出資持分譲渡
(ア)P8及び原告P2は,同月1日付けで,P8が保有する本件出資持
分5口を代金20万5210円(1口につき4万1042円)で原告P
2に売却し,同社がこれを買い受ける旨の売買契約を締結した。
(イ)原告P2は,同月20日,P8名義の普通預金口座に代金20万5
210円を振り込み,P8から原告P2に対し本件出資持分5口が譲渡
された。
ウ本件平成18年各譲渡により,P4社の平成18年3月31日時点にお
ける出資者及びその出資持分は,原告P2が10万口となった。
(7)P4社の資産状況等
ア平成16年1月1日から同年12月31日までの事業年度(P4社16
年12月期)
P4社は,P4社16年12月期において,評価通達178にいう従業
員数が2人,当該期間における取引金額が4794万6000円(100
0円未満切捨て。以下(7)において同じ。)であり,平成17年3月31
日時点において,その総資産から投資有価証券を除いたものを評価通達に
定めるところにより評価した価額の合計額は,1億3922万4000円
であった(弁論の全趣旨〔被告別表1第5表〕)。
イ平成17年1月1日から同年12月31日までの事業年度(P4社17
年12月期)
P4社は,P4社17年12月期において,評価通達178にいう従業
員数が0人,当該期間における取引金額が3065万2000円であり,
平成18年3月20日時点において,その総資産から投資有価証券を除い
たものを評価通達に定めるところにより評価した価額の合計額は,10億
1501万3000円であった(弁論の全趣旨〔被告別表3第5表〕)。
(8)原告らの株主及びその所有する株式数等
ア原告P1(乙29,30,64,弁論の全趣旨)
原告P1は,平成17年3月31日時点で,700万株の株式を発行済
みであった。そのうち,P8が39万1150株を,P8の長男であるP
10が5万株を,P8の叔父であるP24が31万6150株を,P8の
従弟であるP25が30万株を,原告P2が198万9100株を,P4
社が200万株を,それぞれ保有していた。
また,原告P1は,同年10月4日ないし同年12月6日時点及び平成
18年3月20日時点で,700万株の株式を発行済みであった。そのう
ち,P8が39万1150株を,P10が5万株を,P24が31万61
50株を,P25が30万株を,原告P2が223万9100株を,P4
社が175万株を,それぞれ保有していた。
イ原告P2(乙32,64〔5頁〕,弁論の全趣旨)
原告P2は,平成17年3月31日時点で,総出資口数が60万口であ
った。そのうち,P8が39万8000口を,P10が2000口を,P
26が20万口を,それぞれ保有しており,他に出資持分の保有者はいな
かった。
また,原告P2は,株式会社へ組織変更後の平成18年12月31日時
点で,3000万株の株式を発行済みであった。そのうち,P8が700
万株を,P26が1000万株を,P10が1300万株を,それぞれ保
有しており,他に株主はいなかった。
(9)本件各処分及びこれに対する不服申立ての状況等
ア原告P1は,原告P1・17年12月期の法人税について,処分行政庁
に対し,法定申告期限までに確定申告書(青色申告書。以下同じ。)を提
出した。
イ原告P2は,原告P2・17年12月期及び原告P2・18年12月期
の各法人税について,処分行政庁に対し,法定申告期限までにそれぞれ確
定申告書(青色申告書。以下,修正申告書を含め同じ。)を提出した。そ
の後,原告P2は,原告P2・18年12月期の法人税について,平成1
9年11月6日及び平成20年1月25日,それぞれ修正申告書を提出し
た。
また,原告P2は,原告P2・19年12月期の法人税について,提出
期限(法人税法75条の2第1項の規定により1月間延長されたもの)ま
でに確定申告書を提出した。
ウ処分行政庁は,平成22年10月29日,原告P1に対し,原告P1・
17年12月期の法人税について,本件P3出資持分譲渡1に関し,本件
出資持分の1口当たりの価額は8万1177円が相当であり,同価額との
差額につき受贈益の計上漏れがあることなどを理由として,更正処分(原
告P1更正処分)及び過少申告加算税の賦課決定処分(原告P1賦課決定
処分)をした(甲1)。
エ処分行政庁は,平成22年11月24日,原告P2に対し,原告P2・
17年12月期の法人税及び原告P2・18年12月期の各法人税につい
て,本件P3出資持分譲渡1以外の本件各譲渡に関し,上記同様の受贈益
の計上漏れがあることなどを理由として,各更正処分(原告P2・17年
12月期更正処分,原告P2・18年12月期更正処分)及び過少申告加
算税の各賦課決定処分(原告P2・17年12月期賦課決定処分,原告P
2・18年12月期賦課決定処分)をした(甲2,3)。(なお,本件各
譲渡に係る時価と譲渡額との差額を,以下「本件受贈益」という。)
オ原告P1は,平成22年12月27日,国税不服審判所長に対し,上記
ウの更正処分等に不服があるとして,審査請求をし,国税不服審判所長は,
平成23年10月19日,上記審査請求を棄却する旨の裁決をし,同裁決
に係る裁決書は,同月28日頃,原告P1に送達された(甲5,6)。
カ原告P2は,平成22年12月27日,国税不服審判所長に対し,上記
エの更正処分等に不服があるとして,審査請求をし,国税不服審判所長は,
平成23年10月19日,上記審査請求を棄却する旨の裁決をし,同裁決
に係る裁決書は,同月28日頃,原告P2に送達された(甲8,9)。
キ処分行政庁は,平成24年3月27日,原告P2に対し,原告P2・1
8年12月期の法人税について,受取配当等の益金不算入額の過大額があ
ることなどを理由として,再更正処分(原告P2・18年12月期再更正
処分)及び過少申告加算税の賦課決定処分(原告P2・18年12月期再
賦課決定処分)をした(甲26)。
ク原告P2は,平成24年5月16日,国税不服審判所長に対し,上記キ
の更正処分等に不服があるとして,審査請求をし,国税不服審判所長は,
平成25年5月9日,上記審査請求を棄却する旨の裁決をした(甲57)。
ケ処分行政庁は,同年3月29日,原告P2に対し,原告P2・19年1
2月期の法人税について,受取配当等の益金不算入額の過大額があること
などを理由として,更正処分(原告P2・19年12月期更正処分)及び
過少申告加算税の賦課決定処分(原告P2・19年12月期賦課決定処分)
をした(甲47)。
コ原告P2は,平成25年4月22日,国税不服審判所長に対し,上記ケ
の更正処分等に不服があるとして,審査請求をした。
(10)本件訴えの提起(当裁判所に顕著な事実)
ア原告P1は,平成24年3月22日,甲事件に係る訴えを提起した。
イ原告P2は,同日,乙事件に係る訴えを提起し,同年6月29日,同訴
えの変更の申立てをした。
ウ原告P2は,平成25年9月20日,関連請求である丙事件に係る訴え
を,乙事件に係る上記訴えに併合して提起した。
3被告の主張する本件各処分の根拠及び適法性
本件各処分の根拠及び適法性に関する被告の主張は,別紙4のとおりである。
なお,後記4の争点以外の点や,仮に争点に関する被告の主張が認められた
場合の税額等の算定については,当事者間に争いがない。
4争点及び争点についての当事者の主張
本件の争点は,本件各処分の適法性である。具体的には,本件各更正処分に
関し,以下の(1)から(4)の点が,本件各賦課決定処分に関し,以下の(5)の点
が争われており,各争点に対する当事者の主張の要旨は,別紙5「当事者の主
張の要旨」記載のとおりである。
(1)資産の低額譲受けにつき受贈益相当額が法人税法22条2項の「収益」に
該当するか否か(争点1)
(2)本件出資持分の評価方法(受贈益の計上漏れの有無)
法人税基本通達(平成17年課法2-14による改正前のもの)2-3-
4は,法人が無償又は低い価額で有価証券を譲渡した場合におけるその譲渡
に係る対価の額の算定に当たり,同通達9-1-8,9-1-13及び9-
1-14を準用する旨定めている。本件出資持分は,上場有価証券等(法人
税法施行令68条1項2号イに掲げる有価証券)には該当しないことから,
上場有価証券等以外の株式の価額の評価を定めた同通達9-1-13ない
し9-1-14によって評価することとなる。また,本件出資持分は,同通
達9-1-13(2)及び(3)のいずれにも該当しない(争いがない)。これら
のことを前提として,以下の点が争われている。(なお,その後の法人税基
本通達の改正に伴い,原告P2・18年12月期及び同19年12月期につ
いて適用される同通達の条番号には上記と異なるものがあるが,内容に変更
はないので,改正前の条番号により表示する。)
ア本件出資持分の価額を法人税基本通達9-1-14に従って評価する
ことの適否(争点2)
法人税基本通達9-1-14は,同通達9-1-13(1)及び(2)に該当
する場合を除き,評価通達178から189-7までの取引相場のない株
式の評価の例によって算定した価額は,課税上弊害がない限り,一定の条
件のもとで,これを認めることとしている。
被告は,本件出資持分については,法人税基本通達9-1-14に従い
評価することになると主張するのに対し,原告らは,本件13社出資持分
譲渡が法人税基本通達9-1-13(1)が定める「売買実例のあるもの」
に該当するから,評価通達の関係規定等を適用せず,1口5000円で評
価すべきであると主張する。
イ原告P1が取得した本件出資持分が「同族株主以外の株主等が取得した
株式」に該当し配当還元方式で評価すべきか否か(争点3,甲事件関係)
取引相場のない株式については,評価通達178本文の定める区分に従
って,同通達179の定める類似業種比準価額等によって評価するのが原
則であるが(原則的評価方式),「同族株主以外の株主等が取得した株式」
(同通達178ただし書)については,同通達188及び188-2が定
める配当還元方式によって評価することとされている。なお,有限会社に
対する出資の価額の算定は,株式の評価方法に関する定めに準じて計算さ
れる(同通達194)。
被告は,評価通達188の適用上,原告P1はP8と「特殊の関係のあ
る法人」(法人税法施行令4条2項3号)と同視し得る同族関係者である
ことなどからして,原告P1はP4社の「同族株主」及び「中心的同族株
主」(評価通達188(1)及び(2))に該当するから,本件出資持分は評価
通達188が定める「同族株主以外の株主等が取得した株式」に該当しな
いと主張するのに対し,原告P1はこれを否定する。
ウP4社の「株式保有特定会社」該当性(争点4)
「株式保有特定会社」とは,「特定の評価会社」(評価通達178ただ
し書)の一つであり,課税時期において評価会社の有する各資産の価額の
合計額のうちに占める株式及び出資の価額の合計額の割合が25パーセ
ント以上(同通達178に定める中会社及び小会社については,50パー
セント以上。)である評価会社をいい(評価通達189(2)),株式保有
特定会社の株式の価額は,同通達189-3の定めに従い,純資産価額方
式又は「S1+S2」方式によって評価することとされている。このこと
を前提として,以下の点が争われている。
(ア)本件出資持分の評価に評価通達189(2)を適用すべきか否か
被告は,本件出資持分の評価において評価通達189(2)が適用され
ない理由はなく,P4社は同項にいう株式保有特定会社に該当するから,
本件出資持分の評価は同通達189-3によるべきであると主張する
のに対し,原告らは,評価通達189(2)は行き過ぎた節税を規制する
趣旨で導入されたものであり,それに当たらないP4社への適用は予定
されていないとして,上記該当性を否定する。
(イ)P4社が株式保有特定会社に該当するか否かの判定に当たり,P4
社が保有する原告P1の株式を類似業種比準方式で評価すべきか否か
上記の判定に当たっては,P4社が保有する株式及び出資の価額を算
定する必要があるところ,P4社が保有する原告P1の株式の評価方法
が争われている。
被告は,P27一族グループがP4社を実質的に支配しており,評価
通達188の適用上,P4社はP8と「特殊の関係のある法人」(法人
税法施行令4条2項2号)と同視し得る同族関係者であることなどから
して,P4社は原告P1の「同族株主」(同通達188(1))に該当す
るから,上記株式は同通達178ただし書及び同通達188が定める
「同族株主以外の株主等が取得した株式」に該当せず,同通達178本
文に定める区分に従って,同通達179の定めにより算定することとな
り,類似業種比準方式により評価すべきであると主張するのに対し,原
告らは,P4社は原告P1の「同族株主」に該当しないとして,上記株
式の評価は同通達188-2が定める配当還元方式によるべきである
と主張する。
エP4社の1株当たりの純資産額の算定において法人税額等相当額を控
除しなかったことの適否(争点5)
評価通達185本文は,1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計
算に当たり,同通達186-2により計算した評価差額に対する法人税額
等相当額を控除する旨を規定するが,法人税基本通達9-1-14(3)は,
当該控除をしない旨を規定している。
被告は,本件において,法人税基本通達9-1-14(3)の規定が適用
されると主張するのに対し,原告らは,上記の法人税基本通達の規定は不
合理であり,法人税額等相当額を控除すべきであると主張する。
オ本件出資持分の価額の評価における評価通達185ただし書の適用の
有無(争点6)
評価通達185ただし書は,1株当たりの純資産価額(相続税評価額)
の計算に当たり,株式の取得者とその同族関係者の有する議決権の合計数
が評価会社の議決権総数の50パーセント以下であるとの要件を充足す
るときは,同通達185本文により計算した1株当たりの純資産価額に1
00分の80を乗じて計算した金額とする旨規定している。
被告は,P4社においては形式的には上記要件が充足されているが,本
件出資持分につき同通達185ただし書を適用して80パーセント相当
額とすることは,実態に即さない評価であり,同規定を適用することには
課税上弊害が生じる特段の事情が認められるから,上記の規定に従った評
価はすべきではないと主張するのに対し,原告らは上記の規定に従った評
価をすべきであると主張する。
(3)控除負債利子額の算定(原告P2・18年12月期及び同19年12月期
における受取配当等の益金不算入額の過大額の有無)(争点7,乙及び丙事
件関係)
法人税法23条は,受取配当等の益金不算入を規定し,同条4項は,不算
入とする益金の額から一定の負債利子を控除する旨を規定している。その控
除額については,法人税法施行令22条1項及び2項が原則的な算定方法
(以下「原則法」という。)を定め,同条3項が例外的な算定方法(以下「簡
便法」という。)を定めている。
被告は,①納税者が申告において原則法により算定していた場合は,更正
処分を争う訴訟においては簡便法により算定することを選択できない,②法
人税法施行令22条1項2号の「帳簿価額」は,税務上の帳簿価額と解すべ
きであり,本件受贈益が加算される,③控除負債利子額の合計額が現実支払
利子額を超える場合は特別な計算方法(別紙5の第7の被告の主張の要旨
(3)参照。なお,この計算方法は,原告P2・18年12月期再更正処分に
おける計算方法(甲26)とは異なり,原告P2・19年12月期更正処分
における計算方法(甲47)と同じである。)によるべきであると主張し,
原告P2はこれらを争っている。
(4)処分理由の差替えの可否(原告P2・18年12月期の法人税における課
税留保金額に係る税額の加算の当否)(争点8,乙事件関係)
原告P2・18年12月期再更正処分に係る更正通知書には,特定同族会
社の留保金額に対する税額の増加額に関する記載がされていなかったが,被
告は,本件訴訟において,これを同処分の根拠として主張した。
原告P2は,上記の被告の主張は,青色申告の更正通知書に附記されてお
らず,これをもって上記更正処分の根拠として主張することは許されず,ま
た,更正の除斥期間経過後の新たな理由の追加主張である点からしても許さ
れないと主張し,被告はこれを争っている。
(5)過少申告加算税を賦課すべきでない正当な理由の存否(争点9)
第3当裁判所の判断
1争点1(資産の低額譲受けにつき受贈益相当額が法人税法22条2項の「収
益」に該当するか否か)について
(1)法人税法22条2項は,内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該
事業年度の益金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,資
産の販売,有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供,無償による資産
の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益
の額とする旨規定しており,無償による資産の譲受けが収益の発生原因とな
ることを認めている。
同項は,「無償による資産の譲受け」に係る金額を収益の額とする旨規定
しているところ,これは,無償による資産の譲受けについては,譲受けの時
点で当該資産の適正な価額相当の経済的価値が実現し,税法上,収益がある
と認識すべきであることから,そのことを明らかにする趣旨でおかれた規定
であると解される。
これに対し,同項は,適正な額より低い対価をもってする資産の譲受け(低
額譲受け)の場合について明示的な言及を欠く。しかしながら,「無償によ
る資産の譲受け」は「その他の取引で資本等取引以外のもの」の例示である
と解することができるところ,低額譲受けの場合であっても,譲受けの時点
において,資産の適正な価額相当額の経済的価値の実現が認められることは
無償譲受けの場合と同様であるから,同項の上記の趣旨に照らせば,この価
値を収益として認識すべきであると解することが相当である。また,たまた
まその一部のみを対価として現実に支払ったからといって,無償譲受けの場
合と異なり,時価相当額との差額部分の収益が認識され得ないものとするこ
とは,公平を欠くこととなる。
したがって,適正な額より低い対価をもってする資産の譲受けの場合も,
当該資産の譲受けに係る対価の額と当該資産の譲受時における適正な価額
との差額(受贈益)が,無償による資産の譲受けに類するものとして,収益
の額を構成するものと解するのが相当である。(なお,平成22年法律第6
号により追加された法人税法25条の2第3項は,低額譲受けも益金に算入
すべきことを前提として,100パーセントグループ法人間の受贈益につい
ては例外として益金に算入しないことを規定したものと解される。)
(2)原告らは,租税法規の解釈に当たっては文理解釈が強く要請されること,
最高裁平成6年(行ツ)第75号同7年12月19日第三小法廷判決・民集
49巻10号3121頁が資産の低額譲渡を有償による資産の譲渡に当た
るものとしていること,租税法上「低額」取引と無償取引との区別を前提と
する規定が存在することからすれば,資産の低額譲受けは無償による資産の
譲受けには該当しない旨主張する。
しかし,法人税法22条2項が,「有償又は無償による資産の譲渡」を挙
げる一方,「無償による資産の譲受け」を挙げて有償による資産の譲受けを
挙げなかったのは,通常,資産の譲渡の場合には,適正な価額によって有償
で譲渡された場合であっても,受領した金員と原価等との差額が譲渡益とな
るのに対し,資産の譲受けの場合には,適正な価額によって有償で譲り受け
た場合,収益の発生が認められないという収益の発生構造の差異に由来する
ものと解することができる。このような差異に照らすと,上記最高裁平成7
年12月19日第三小法廷判決が資産の低額譲渡を有償による資産の譲渡
に当たるものとしていることや,租税法上「低額」取引と無償取引との区別
を前提とする規定が存することは,資産の低額譲受けにおいて認識できる受
贈益を,「無償による資産の譲受け」に類するものとして,収益の額を構成
するものと解することの妨げとなるものとまではいえない。
したがって,原告らの上記主張は,採用することができない。
2争点2(本件出資持分の価額を法人税基本通達9-1-14に従って評価す
ることの適否)について
(1)法人税基本通達9-1-13(1)は,上場有価証券等以外の株式の価額に
ついて,売買実例のあるものについては,当該事業年度終了の日前6か月間
において売買の行われたもののうち適正と認められるものの価額を当該株
式の価額とする旨規定している。
しかるところ,上記前提事実(3)イ及び(5)のとおり,本件13社は,平成
17年10月4日から同年12月6日までの間,原告P2に対し,各自その
保有する本件出資持分4000口を,代金2000万円(1口につき500
0円)で譲渡している(本件13社出資持分譲渡)。そして,原告らは,本
件13社出資持分譲渡が,同通達9-1-13(1)が規定する「適正と認め
られる」売買実例に該当する旨主張するので,この点について検討する。
(2)認定事実
前記前提事実,争いのない事実,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨によれ
ば,以下の事実が認められる。
ア原告P1は,酒類食料品の卸売等を業とする会社であり,平成3年度か
ら平成17年度までの間,その売上高が食品卸業界で首位であった(前提
事実(1)ア,乙53)。
イ本件13社は,原告P1の取引会社のうち,原告P1に対して長年にわ
たってビール・日本酒等の酒類を卸してきた有力な取引先であり,本件1
3社にとっても,原告P1は,主要な取引先の1つであった(前提事実(1)
キ,乙54,弁論の全趣旨)。
ウP4社は,平成2年6月8日,現物出資等により設立された有限会社で
あり,総出資口数を10万口とし,上記現物出資の一部として,原告P1
の株式200万株を,1株当たり25円,合計5000万円の帳簿価額に
よって受け入れた。P4社の設立当時における本件出資持分は,P7が9
万9995口,P8が5口であった(前提事実(1)ウ)。
エP7は,死亡する8日前の平成3年▲月▲日,本件13社に対し,そ
の保有する本件出資持分を,1社当たり4000口として,合計5万20
00口売却した。その売買代金は,1口につき額面金額の1000円であ
ったことから,1社当たり400万円,合計5200万円であった。(前
提事実(2)ア(ア))
オ本件13社は,原告P1側から依頼を受けて上記エの本件出資持分の取
得を行ったもので,その取得目的は,主に,将来的に原告P1との間で取
引が増加することや,競合他社だけが依頼に応じて原告P1との取引関係
が悪化するのを避けることにあり,上記取得の際,本件13社がP4社の
議決権を行使して積極的に経営に参画することには,重点が置かれていな
かった(乙16の1ないし3,乙17の1ないし3,乙18の1,乙19
の1及び2,乙20の1及び2,乙21の1ないし4,乙22の1,乙2
3の1,乙24の1,2及び4,乙25の1及び3,乙26の1ないし3,
乙27の1,乙28の1ないし3)。
本件13社は,平成17年10月から同年12月にかけて行われた本件
13社出資持分譲渡までの間,P4社から毎期1口につき50円の配当金
を受領していたが,社員総会等については,一度も出席することがなく,
白紙委任状又は決議案に全て賛成する趣旨の委任状を提出していた(前提
事実(2)ア(ウ),甲23)。
カ原告P1の経理部副部長であったP28は,平成17年3月1日当時,
P4社の出資の時価を1口につき3万9235円と算定していた(乙51
の2)。これは,評価通達179に基づき、評価上の区分を小会社,Lの
割合を0.5とした類似業種比準価額1406円と純資産価額7万706
5円の併用方式により算定されたものであり,純資産価額は,評価通達1
85ただし書による「1株当たりの純資産額」に80パーセントを乗じて
計算されたものであった(甲1)。
キP3は,同月31日,原告P1に対し,その保有する本件出資持分2万
4000口を代金9億4164万円(1口につき3万9235円)で譲渡
するとともに,原告P2に対し,その保有する本件出資持分2万3995
口を代金9億4144万3825円(1口につき3万9235円)で譲渡
した(本件P3各出資持分譲渡。前提事実(3)ア,(4))。
クP4社は,同年8月25日頃,本件13社に対し,同日付け「有限会社
P4の出資金買受の件」と題する書面を送付し,同書面には,「ただ今,
P29グループのガバナンスの見直しを行っており,有限会社P4につき
まして,P5合名会社にその出資を集約する運びとなりました。つきまし
ては,貴社が保有されております有限会社P4の出資を,P5合名会社に
て買い受けたく,お願い申し上げます。貴社におかれましては,安定社員
として当社の経営に何かとご協力下さり,感謝致しております。そこで,
買取価格につきましては,1口当たり額面金額が1,000円のところ5,
000円でお願いします。算定根拠ですが,毎期5%の配当を実施してお
りまして,配当還元方式ですと1口500円となり,その10倍と致しま
した。参考ですが,類似業種の比準価額は1,406円(別紙I),簿価
純資産価額は3,010円(別紙Ⅱ)となっておりますので詳細は,別紙
をご参照下さい。」と記載されていた(甲23)。
そして,上記書面には,「別紙Ⅰ」として,上記「類似業種の比準価額」
に係る「類似業種比準価額等の計算明細書」が添付され,また,「別紙Ⅱ」
として,P4社16年12月期の決算報告書の貸借対照表と損益計算書が
添付されていた(乙16の4)。
ケ本件13社は,平成17年10月4日から同年12月6日までの間,原
告P2に対し,その保有する本件出資持分各4000口を,それぞれ譲渡
した(合計5万2000口)。その代金は,1口につき5000円であっ
たことから,1社当たり2000万円,合計2億6000万円であった。
(本件13社出資持分譲渡。前提事実(5)ア,イ)
コ本件13社出資持分譲渡に関し,本件13社の間で情報交換は行われて
いなかった(甲58)。
サ原告P1は,平成18年3月20日,原告P2に対し,その保有する本
件出資持分2万4000口を代金9億8500万8000円(1口につき
4万1042円)で譲渡した(原告P1出資持分譲渡)。また,P8は,
同日,原告P2に対し,その保有する本件出資持分5口を代金20万52
10円(1口につき4万1042円)で譲渡した(本件P8出資持分譲渡)。
(前提事実(6)ア,イ)
(3)検討
ア上記認定事実によれば,①本件13社がP7から本件出資持分を買い受
けたのは,本件13社が原告P1と相互に密接な取引関係にあり,その関
係を維持ないし発展させるためであり,しかも,その買受価格は,1口に
つき額面金額の1000円とするもので,原告P1の株式を200万株保
有していたP4社の平成3年▲月▲日当時における純資産価額等を適
切に反映していたとは考え難いこと,②その後,本件13社は,本件出資
持分を保有している間,毎期1口につき50円の配当金を受領する一方,
P4社の社員総会等については,一度も出席することなく,白紙委任状又
は決議案に全て賛成する趣旨の委任状を提出しており,本件13社がP4
社の安定社員として,同社の経営に協力する形となっていたこと,③この
ような状況の下で,本件13社出資持分譲渡は,本件13社が,P27一
族グループのガバナンスの見直しの一環としてP4社の出資を原告P2
に集約する旨の,P4社からの説明及び依頼を受けて,平成17年10月
4日から同年12月6日までという近接した時期に,各自の本件出資持分
全部を原告P2に譲渡したものであること,④この際,本件13社は,P
4社から提示された資料,すなわち「有限会社P4の出資金買受の件」と
題する書面に記載された算定根拠(配当還元方式,類似業種比準方式及び
簿価純資産方式)とその添付資料である「類似業種比準価額等の計算明細
書」並びにP4社16年12月期の貸借対照表及び損益計算書(認定事実
ク)を検討し,関係部署等による検討,協議,稟議,決裁又は決議等を経
て,譲渡を行った(甲29ないし41,58,59,乙51の1,乙52)
が,1口につき額面金額の5倍の5000円という価額の適切さを独自に
資料を収集して検証したことはうかがわれず,譲渡前に本件13社間で本
件出資持分の価額に関し情報交換を行ったこともなかったこと(認定事実
コ)が認められる。
以上のとおり,本件13社出資持分譲渡の経緯については,もともと,
本件13社が,原告P1側からの依頼を受けて,原告P1との取引関係を
維持ないし発展させるという目的の下において,本件出資持分を1口につ
き額面金額で4000口ずつ引き受け,これを14年近くにわたり保有し
続けていたところ,その後,P4社から,「P29グループ」のガバナン
スの見直しの一環として買戻しをしたいとの要望を受け,その買戻し金額
の提案が取得価額を明らかに上回るものであったことから,その提案どお
りの金額で,各社が近接した時期に譲渡したという事情が認められ,この
ような事情の下においては,本件13社出資持分譲渡における価額の形成
の要因には,本件出資持分それ自体の価値以外の要素が相当程度含まれて
いるものとみざるを得ないし,その価額をもって純然たる第三者との間で
想定される取引の気配値とみなし得るような一般性のある取引とも評価
し難い。このように,本件13社出資持分譲渡は,発行会社の属するグル
ープ企業と特別な協力関係を有する本件13社が,同グループ企業の要請
を受けて行われたものであり,一般性のない価額の形成要因を相当程度有
する取引であるというべきであるから,当該取引が「適正と認められる」
売買実例に該当するということは困難であるといわざるを得ない。
したがって,本件13社出資持分譲渡は「適正と認められる」売買実例
に当たらないから,本件出資持分に法人税基本通達9-1-13(1)は適
用されず,同通達9-1-14に従って評価することは妨げられないとい
うべきである。
イ原告らは,本件13社と原告P2とは,相互に独立した立場にある純然
たる第三者の関係にあるところ,本件13社は,譲渡価額の妥当性につい
て十分な検討をした上,合理的な経営判断として譲渡に応じたものである
から,1口につき5000円という本件出資持分の譲渡価額は,不特定多
数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立する価額である旨
主張し,これに沿う本件13社等の陳述書(甲29ないし41)及び証人
尋問調書(甲58,59,乙51の1,乙52)の各記載がある。
しかしながら,本件13社と原告P2が相互に独立した立場にあり,そ
れぞれが合理的な経営判断として取引を行ったものであるとしても,その
ことと,本件13社出資持分譲渡が売買実例として適正なものかどうかは
異なる問題であって,上記アで判示したとおり,本件13社出資持分譲渡
における価額の形成の要因には,本件出資持分それ自体の価値以外の要素
が相当程度含まれているものとみざるを得ず,その価額をもって純然たる
第三者との間で想定される取引の気配値とみなし得るような一般性のあ
る取引とも評価し難いことからすると,原告らの主張する上記の事情は,
上記アの判断を左右するものとまではいえない。
したがって,原告らの上記主張は,採用することができない。
ウ原告らは,本件13社出資持分譲渡について,本件13社に寄附金課税
がされていないことから,同譲渡において原告P2は経済的利益を受けて
いない旨主張する。
しかし,本件13社出資持分譲渡に伴う本件13社に対する寄附金の認
定課税と原告P2に対する受贈益の認定課税は,納税義務者やその認定の
主体が異なるから,本件13社に寄附金課税がされていないことをもって,
直ちに原告P2が受贈益を受けていないことにはならない。
原告らの上記主張は,採用することができない。
3争点3(原告P1が取得した本件出資持分が「同族株主以外の株主等が取得
した株式」に該当し配当還元方式で評価すべきか否か)について
(1)評価通達188の趣旨等について
評価通達によれば,取引相場のない株式のうち一般の評価会社の株式の価
額は,同通達178から187までの原則的評価方式により評価されるが,
同通達178ただし書により,「同族株主以外の株主等が取得した株式」に
ついては,原則的評価方式によるのではなく,同通達188の定めに従い,
特例的評価方式である配当還元方式(同通達188-2)により評価される
ことになる。その趣旨は,評価会社を実質的に支配している株主が株式を取
得する場合とは異なり,従業員株主などのような少数株主や,事業経営への
影響の少ない同族株主の一部が株式を取得する場合については,これらの株
主は単に配当の受領を期待するにとどまるものであり,また,評価手続の簡
便性をも考慮して,本来の評価方式に代えて,特例的な評価方式によること
としたものであると解される。
また,同通達188(1)は,「同族株主」につき,課税時期における評価
会社の株主のうち,株主の1人及びその同族関係者のうち一定のものをいう
旨を定め,「同族関係者」については法人税法施行令4条に規定する特殊の
関係のある個人又は法人をいうと定めているところ,これは,株式を取得し
た株主が,上記のような事業経営への影響が少なく,単に配当の受領を期待
するにとどまるような者か否かを判定する際,当該株主が,株主らの中でど
のようなグループに属するのかを決めるに当たり,客観的かつ簡易な方法と
して,法人税法施行令4条における同族会社の判定方法を借用したものと解
される。もっとも,同条2項の規定は,直接的には,法人税法上の同族会社
か否かの判定をするための基準であって,取引の相場のない株式の価額を定
める際に当該株式を取得した株主が同族支配的な経営を行う株主か否かを
判定するための基準ではないことを勘案すると,評価通達188(1)がこれ
を借用しているのは,同族支配的な経営を行う株主か否かの判定のための基
本的な基準となり得るものとする趣旨にすぎず,一切の例外を許さないもの
とまでは解されないところである。
上記の点に加え,法人税基本通達9-1-14が,上場有価証券等以外の
株式について,評価通達178ないし189-7の例によって算定した価額
によっているときは,課税上弊害がない限りにおいてこれを認めるものと規
定しており,上記評価通達の各規定を形式的に適用することにつき課税上弊
害があると認められるときはその形式的な適用を排することがあり得ると
していることをも考慮すれば,法人税の課税に係る上場有価証券等以外の株
式の評価額の算定という場面においては,ある法人が,評価通達188が特
例的な評価方式を定めた上記のような趣旨に照らして「同族関係者」と判定
すべき特別の事情があると認められるときは,当該法人が形式上は法人税法
施行令4条2項各号が規定する会社に当たらない場合でも,評価通達188
の適用上,法人税法施行令4条2項にいう特殊関係法人と同視して取扱う余
地があると解することが相当である。
(2)本件における評価通達188の適用上の問題点
ア評価通達188(1)は,「同族株主以外の株主等が取得した株式」の1
つとして,「同族株主のいる会社の株式のうち,同族株主以外の株主の取
得した株式」を挙げ,この「同族株主」とは,課税時期における評価会社
の株主のうち,「株主の1人」及びその「同族関係者」(法人税法施行令
4条に規定する特殊の関係のある個人又は法人をいう。ただし,当該法人
の判定については,同条2項中「株式の総数」は「議決権の数」と,「発
行済株式の総数」は「議決権総数」と,「数の株式」は「数の議決権」と
読み替える。)の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の30パ
ーセント以上(その評価会社の株主のうち,株主の1人及びその同族関係
者の有する議決権の合計数が最も多いグループの有する議決権の合計数
が,その会社の議決権総数の50パーセント超である会社にあっては,5
0パーセント超)である場合におけるその株主及びその同族関係者をいう
旨規定している。
本件P3出資持分譲渡1の時点で,同時に本件P3出資持分譲渡2も行
われていることにより,P4社の出資持分の保有者及び保有口数は,P8
が5口,原告P1が2万4000口,原告P2が2万3995口,本件1
3社が合計5万2000口であった(前記前提事実(4)ウ)。もっとも,
P4社は,本件P3出資持分譲渡1の時点で,原告P1の発行済株式総数
700万株のうち200万株を保有しており,原告P1の総株主の議決権
の4分の1を超える議決権(28.571パーセント)を有するため,原
告P1は,その保有する本件出資持分については議決権を有しない(有限
会社法41条,商法241条3項)。そのため,P4社の議決権割合につ
いては,原告P1が保有する2万4000口を除く7万6000口を基に
算定することとなり(評価通達188-4),P8が0.006パーセン
ト,原告P2が31.572パーセント,本件13社が68.421パー
セントとなる。
以上を前提として,本件出資持分につき,評価通達188(1)の適用の
可否を検討すると,P8を「株主の1人」とした場合,本件13社がP8
の「同族関係者」に当たらないことは明らかであり,P4社は,「株主の
1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が最も多いグループの
有する議決権の合計数が,その会社の議決権総数の50パーセント超であ
る会社」ではない。そうすると,原告P2及び原告P1がいずれもP8の
「同族関係者」であれば,「議決権の合計数がその会社の議決権総数の3
0パーセント以上」となることから,原告P1は,P4社の「同族株主」
に当たることとなる。
しかるに,原告P2については,本件P3出資持分譲渡1の当時,総出
資口数が60万口で,P8が39万8000口を,P10が2000口を
それぞれ保有していた(前記前提事実(8)イ)ところ,P10はP8の親
族として法人税法施行令4条1項1号に規定する特殊の関係のある個人
であり,P8及びP10の議決権割合が,原告P2の議決権総数の100
分の50を超える(66.666パーセント)ことから,P8と法人税法
施行令4条2項1号に規定する特殊の関係のある法人であると認められ,
原告P2は,P8の「同族関係者」に当たるといえる。
そこで,原告P1が,P8の「同族関係者」に当たるかどうかが問題と
なるので,この点について後記(3)で検討する。
イまた,評価通達188(2)は,「同族株主以外の株主等が取得した株式」
の1つとして,「中心的な同族株主のいる会社の株主のうち,中心的な同
族株主以外の同族株主で,その者の株式取得後の議決権の数がその会社の
議決権総数の5%未満であるものの取得した株式」を挙げるとともに,「中
心的な同族株主」とは,課税時期において同族株主の1人並びにその株主
の配偶者,直系血族,兄弟姉妹及び1親等の姻族(これらの者の同族関係
者である会社のうち,これらの者が有する議決権の合計数がその会社の議
決権総数の25パーセント以上である会社を含む。)の有する議決権の合
計数がその会社の議決権総数の25パーセント以上である場合における
その株主をいう旨規定している。
仮に,原告P1がP4社の「同族株主」に当たると認められるとしても,
上記アのとおり,原告P1は議決権を有せず,また,P8が原告P1の議
決権を25パーセント有する株主ではない(前記前提事実(8)ア)ことか
ら,原告P1が,評価通達188(2)にいう「中心的な同族株主」に当た
るか否かが問題となるので,この点について後記(4)において検討する。
(3)原告P1がP8の「同族関係者」に当たるか
アP8とP4社との関係
原告P1がP8の「同族関係者」に当たるか否かを検討する前提として,
まず,P8とP4社との関係を検討する。
(ア)本件P3出資持分譲渡1の当時,P8及びこれと法人税法施行令4
条2項1号に規定する特殊の関係のある法人である原告P2の,P4社
における議決権割合は,合計31.578パーセントであり,議決権総
数の100分の50を超えない。したがって,法人税法施行令4条2項
2号を形式的に適用する限り,P4社は,P8と同号に規定する特殊の
関係のある法人とはいえないこととなる。
(イ)しかしながら,P8及び原告P2は,以下のとおり,P4社を実質
的に支配していたということができる。
すなわち,前記前提事実(1)ウ,(2)のとおり,P7及びP8は,P4
社の設立時において,本件出資持分の全てを保有しており,P7が本件
13社に本件出資持分を譲渡した後も,P7及びP8の出資割合は48
パーセントを占めていた。そして,P7の死亡に伴い,その保有する本
件出資持分はP3に相続され,本件P3各出資持分譲渡までの間,P4
社の社員及び出資の口数には変更がなかった。また,P8は,P7の死
亡後,原告P1,原告P2及びP4社の代表者に就任し,本件P3各出
資持分譲渡の時点でもその地位にあり,また,原告P2の出資総数の過
半を保有していた(前記前提事実(1)オ,弁論の全趣旨)。これらの点
からすると,本件P3各出資持分譲渡の当時,P8及び原告P2による
P4社の経営への実質的な影響力は大きなものであったと認められる。
他方,本件13社についてみると,前記2(3)アにおいて判示したと
おり,本件13社は,それぞれ,原告P1との取引関係を維持ないし発
展させるため,本件出資持分を1口につき額面金額で4000口ずつ引
き受け,これを,毎期20万円の配当金を受領しながら,議案には一切
反対することなく14年近くにわたり保有し続けた後,P27一族グル
ープのガバナンスの見直しの一環として行われるものであるとの説明
を受けた上,取得価額を明らかに上回る価額による取引であったことか
ら,P4社の提案どおりの金額で,同社の求める相手方に対し,各社近
接した時期に譲渡したものである。また,本件13社は,1社ずつでみ
れば出資割合が4パーセントしかなく,単独でP4社の経営に影響を与
えることは困難であったといえる上,本件13社は,市場で競合関係に
あり,いずれも原告P1との取引関係を維持ないし発展させたいとの動
機を有していたのであるから,複数社あるいは全社が連携して,P4社
の経営に影響を及ぼそうとする可能性も低かったものというべきであ
る。加えて,本件出資持分の譲渡は,P4社の定款上制限されていた(前
記前提事実(2)ア(イ))から,本件13社が第三者に本件出資持分を譲
渡し,上記の状況を変更することも想定し難い。そうすると,形式的に
は,本件13社の出資割合は52パーセントを占める(議決権割合でい
えば68.421パーセントを占める。)ものの,そのP4社の経営へ
の影響力は,極めて乏しいものであったといわざるを得ない。
以上のとおり,本件P3各出資持分譲渡の時点において,P8及びこ
れと法人税法施行令4条2項1号に規定する特殊の関係のある法人で
ある原告P2が,P4社の経営に対する強い影響力を行使していた一方
で,本件13社のP4社の経営への影響力は,極めて乏しいものであっ
たといえるから,P4社は,P8及びその同族関係者である原告P2に
よって実質的に支配されていたと認められる。そうすると,P4社につ
いては,評価通達188(1)が特例的な評価方式を定めた上記(1)の趣旨
に照らして,P8の「同族関係者」と判定すべき特別の事情があるとい
うべきである。したがって,P4社は,評価通達188の適用上,P8
と法人税法施行令4条2項2号の特殊の関係のある法人と同視して取
り扱うことが相当であるというべきである。
イP8と原告P1との関係
原告P1は,本件P3出資持分譲渡1の当時,発行済株式総数が700
万株で,P8が39万1150株を,P10が5万株を,P24が31万
6150株を,P25が30万株を,原告P2が198万9100株を,
P4社が200万株を保有していた(前記前提事実(8)ア)。
そして,P10,P24及びP25は,P8の親族として法人税法施行
令4条1項1号に規定する特殊の関係のある個人であり,原告P2は,上
記のとおり,P8と法人税法施行令4条2項1号に規定する特殊の関係の
ある法人である。
他方,P4社は,上記アで判示したとおり,P8と法人税法施行令4条
2項2号に規定する特殊の関係のある法人ではないが,評価通達188の
適用上,法人税法施行令4条2項2号の特殊の関係のある法人と同視して
取り扱うことが相当である。
そうすると,原告P1は,P8並びにこれと特殊の関係のある個人及び
法人が有する原告P1における議決権割合が議決権総数の100分の5
0を超える(発行済株式総数700万株に対し合計504万6400株で
あることにより72.091パーセント。なお,原告P1は,P4社の総
出資口数の4分の1を超えない2万4000口(24パーセント)を保有
していたのみであるから,P4社は,原告P1の議決権を有していたもの
で,ほかにP8及びその同族関係者が原告P1の議決権を行使することが
できない事情もうかがわれない。)ことから,P8と法人税法施行令4条
2項3号に規定する特殊の関係のある法人となり,評価通達188(1)の
「同族関係者」に当たることになる。
ウ以上によれば,原告P1は,P8の「同族関係者」であるから,P4社
の「同族株主」に当たり,本件P3出資持分譲渡1に関し,原告P1が取
得した本件出資持分は,「同族株主のいる会社の株式のうち,同族株主以
外の株主の取得した株式」には該当しないこととなる。
(4)原告P1が「中心的な同族株主」に当たるか
ア上記(2)イのとおり,評価通達188(2)を形式的に当てはめると,原告
P1はP4社の中心的な同族株主に当たらない。
イもっとも,取引相場のない株式について,評価通達188(2)及び同通
達188-2が,「中心的な同族株主のいる会社の株主のうち,中心的な
同族株主以外の同族株主で,その者の株式取得後の議決権の数がその会社
の議決権総数の5%未満であるものの取得した株式」を特例的評価方式で
ある配当還元方式によって評価するものとした趣旨は,同族株主であって
も,ほかに事業経営への影響力が大きい中心的な同族株主がいて,そのグ
ループに属さない株主については,同通達188(1)の同族株主以外の株
主と同様の状況にあることから,評価手続も同様なものとするのが相当で
あるという点にあるものと解される。
そして,同通達188(2)は,中心的な同族株主か否かの判定を,株式
取得後の議決権割合が5パーセント未満かどうかという単純な数値によ
ることとしているところ,同通達188(2)及び同188-2の上記趣旨
に照らせば,上記の基準は,事業経営への影響力の大きさを計測するため
の客観的かつ簡易な方法を明らかにしたものにすぎず,一切の例外を許さ
ない趣旨とは解されないところである。この点に加え,上記(1)のとおり,
法人税基本通達9-1-14が,課税上弊害がない限りにおいて評価通達
178ないし189-7の例によって算定した時価を認めるものとして
おり,上記評価通達の各規定を形式的に適用することにつき課税上弊害が
あると認められるときはその形式的な適用を排することがあり得るとし
ていることをも考慮すれば,法人税の課税に係る上場有価証券等以外の株
式の評価額の算定という場面においては,評価通達188(2)の中心的な
同族関係者には,これと同視すべき特段の事情のある同族株主を含むと解
する余地があるというべきである。
ウそこで検討するに,P4社の設立の経緯(前記前提事実(1)ウ),原告
P1と原告P2の資本構成(同(8)),P8と原告P2との関係(上記(2)
ア)及びP8と原告P1との関係(上記(3)イ)に鑑みると,P8,原告
P2及び原告P1等から構成されるP27一族グループが,一体となって
P4社を実質的に支配し,同社を経営しているとみることができ,原告P
1が,中心的な同族株主(P8及びその同族関係者である原告P2)のグ
ループには属しないという状況にはないと評価すべきである。したがって,
原告P1には,P4社の中心的な同族株主と同視すべき特段の事情がある
ということができる。
そうすると,原告P1が保有する本件出資持分は,「中心的な同族株主
のいる会社の株主のうち,中心的な同族株主以外の同族株主で,その者の
株式取得後の議決権の数がその会社の議決権総数の5%未満であるもの
の取得した株式」には該当しないこととなる。
(5)小括
以上のとおり,本件出資持分に評価通達188(1)及び(2)は適用されない
と解されるから,原告P1が取得した本件出資持分は,「同族株主以外の株
主等が取得した株式」には該当しない。
(6)原告P1の主張について
原告P1は,評価通達188(1)の「同族関係者」や同(2)の「中心的な同
族株主」の判定に当たり,実質的支配のような不明確かつ予測不能な基準を
用いることは,公正な取引市場における取引がなく,時価の算定が極めて困
難な取引相場のない株式について,画一的な基準で評価方式を定めることと
した評価通達の趣旨に反し,法的安定性を著しく害する旨主張する。
この点,法人税課税における評価においては,法人税基本通達9-1-1
4が,上場有価証券等以外の株式の評価額の算定方法について,課税上弊害
がない限りにおいて評価通達178ないし189-7の例によって算定し
た価額を認めるものとしているところ,これは,評価通達が定める取引相場
のない株式の評価方式が,法人税課税にそのまま適合するかどうか疑問があ
るとはいえ,それが実務的に定着しており,これと著しく異なる評価方式を
導入することが執行上混乱を招き得ることから,一つの割切りとして,評価
通達178ないし189-7の例によって価額を算定したときには,原則と
してこれを認める旨を明らかにしたものと解されるところであり,その限り
においては,画一的な基準の適用による評価の有用性を承認しているとはい
えるものの,むしろ,画一的な基準の適用を行うことが実態と適合しない特
別の事情がある場合は,それに適合した評価をすべき余地があることを前提
とした規定であるということができる。また,評価通達においても,同通達
6は,同通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産
の価額について,同通達の定めによらない評価を行うことを許容しており,
同通達も,画一的な基準を定めて納税者の予測可能性を確保しつつ,課税の
公平にも配慮しているところである(甲28)。
そうすると,法人税基本通達及び評価通達に定められた評価方式を形式的
に適用するとかえって実質的な租税負担の公平を著しく害するなど,当該評
価方式によらないことが正当と是認されるような特別な事情がある場合に
は,他の合理的な方式により評価することが許されるものと解すべきである。
しかるに,本件においては,既に判示したとおり,P4社がP8及びその
同族関係者によって実質的に支配されてきたという例外的な状況にある以
上,本件出資持分の価額を算定するに当たっても,当該例外的な状況を反映
するのでなければ,実質的な租税負担の公平を著しく害すると認められる。
また,原告P1は,本件P3持分譲渡1において,本件出資持分1口を3万
9235円と算定し,この金額で取引が行われているが,この算定において
は,原告P1が配当還元方式による評価を採用していないことが明らかであ
る(上記2(2)カ,キ)。これらの点に照らすと,本件出資持分の評価に当
たり,法人税基本通達9-1-14並びに評価通達188(1)及び(2)を形式
的に適用した評価方式によらないことが正当と是認されるような特別な事
情が認められるというべきである。
したがって,原告P1の上記主張は,採用することができない。
4争点4(P4社の「株式保有特定会社」該当性)について
(1)本件出資持分の評価に評価通達189(2)を適用すべきか否か
ア評価通達178ただし書は,取引相場のない株式のうち,特定の評価会
社の株式の価額は,同通達189の定めによって評価する旨規定している。
同通達189は,柱書において,上記「特定の評価会社の株式」とは,評
価会社の資産の保有状況,営業の状態等に応じて定めた同通達189(1)
ないし(6)の評価会社の株式をいい,その株式の価額は,同(1)ないし(6)
の区分に従い,それぞれに掲げるところによる旨規定するとともに,同(2)
において,課税時期において評価会社の有する各資産を同通達に定めると
ころにより評価した価額の合計額のうちに占める株式及び出資の価額の
合計額の割合(株式保有割合)が25パーセント以上(同通達178に定
める中会社及び小会社については,50パーセント以上。)である評価会
社(株式保有特定会社)の株式の価額は,同通達189-3の定めによる
旨規定している。そして,同通達189-3は,株式保有特定会社の株式
の価額は,納税義務者の選択により,純資産価額方式又は「S1+S2」
方式によって評価する旨規定している。
イ取引相場のない株式の発行会社の中には,会社の総資産のうちに占める
各資産の保有状況が,類似業種比準方式における標本会社である上場会社
に比べて,著しく株式等に偏った会社が見受けられるところ,このような
会社の株式について,一般の評価会社に適用される類似業種比準方式によ
り評価を行った場合,類似業種比準方式が,標本会社である上場会社に匹
敵するような会社の株式について適用される評価方法であって,その資産
内容が著しく株式等に偏っている評価会社の株式については,同方式を適
用すべき前提条件を欠いていることに照らすと,適正な株価の算定を行う
ことは期し難い。そこで,評価通達189(2)は,会社の株式等の保有状
況の実態を踏まえて,上記の株式等の保有割合の基準により「株式保有特
定会社の株式」を定めたものと解される。
ウこれに対し,原告らは,評価通達189(2)は,行き過ぎた節税策,す
なわち,上場企業の大量の株式を所有する創業オーナーらが,株式をオー
ナーから持株会社に移転して,類似業種比準方式を悪用し,相続税の評価
額を1パーセント以下へと圧縮しようとする行為を排除する目的で導入
されたものであるところ,本件各譲渡においてそのような目的はないので
あるから,本件出資持分の評価に当たり,同通達189(2)を適用したこ
とは誤りである旨主張する。
この点,評価通達が,平成2年8月の改正により,一般の評価会社の株
式とは区別される「特定の評価会社の株式」を具体的に定めるに至った経
緯として,類似業種比準方式を悪用して租税負担を回避しようとした例が
少なくなかったという社会状況があったことは否定できない(甲13,1
4,22)。しかしながら,上記イのとおり,評価通達189(2)が前提
とする考え方は,会社の株式等の保有状況の実態からすると類似業種比準
方式を適用して評価することが適正ではない場合一般に通用し得るもの
であり,その文言上も,特に租税回避目的がある場合のみに適用すべきも
のであることがうかがわれないことからすると,同通達189(2)の適用
は,会社の設立等やその後の取引において租税回避の意図がある場合に限
られると解することは当を得ないというべきである。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
(2)P4社が株式保有特定会社に該当するか否かの判定に当たり,P4社が保
有する原告P1の株式を類似業種比準方式で評価すべきか否か
平成17年3月31日に行われた本件P3各出資持分譲渡,同年10月4
日から同年12月6日までの間に行われた本件13社出資持分譲渡,平成1
8年3月20日に行われた本件平成18年各譲渡の各時点に分けて,P4社
の株式保有割合を検討する。
ア本件P3各出資持分譲渡時点の株式保有割合について
(ア)前記前提事実(1)ウ,(7)のとおり,P4社は,不動産賃貸を業とす
る会社であり,課税時期(本件P3各出資持分譲渡時点)の直前に終了
した事業年度であるP4社16年12月期において,評価通達178に
いう従業員数が2人,当該期間における取引金額が4794万6000
円であったから,同通達178の適用上,従業員数が100人未満の会
社で,かつ,卸売業,小売・サービス業以外の業種において,従業員数
が5人以下であり,直前期末以前1年間における取引金額が8000万
円未満という要件を満たし,小会社に該当する。そうすると,P4社の
株式保有割合が50パーセント以上であれば,同社は株式保有特定会社
に該当することになる。
(イ)評価通達189(2)は,株式保有割合の算定に当たり,評価会社の
有する各資産を同通達に定めるところにより評価した価額の合計額を
分母とし,そのうちに占める株式及び出資の価額の合計額を分子として
いる。そして,P4社は,投資有価証券として原告P1の株式200万
株を保有しており,上記分子の対象となるのは,この株式のみであるか
ら,同通達の定めるところにより評価した原告P1の株式200万株の
価額につき検討する。
(ウ)原告P1は,直前期である平成16年1月1日から同年12月31
日までの事業年度において,同通達178にいう従業員数が約1650
人であったと認められる(弁論の全趣旨〔被告別表2第2表〕)から,
同通達178の適用上,従業員数が100人以上の会社という要件を満
たし,大会社に該当する。大会社の株式の価額は,同通達179により,
原則として類似業種比準方式によって評価することになる。
もっとも,P4社が保有する原告P1の株式が,「同族株主以外の株
主等が取得した株式」に該当するか,同株式が「特定の評価会社の株式」
に該当する場合,同通達178ただし書により,同株式は,別の方式に
よって評価されることになるが,原告P1が特定の評価会社に当たらな
いことは,当事者間に争いがない。
そして,前記3(3)において判示したとおり,P4社は,P8及びそ
の同族関係者によって実質的に支配されており,同社は,P8と法人税
法施行令4条2項2号に規定する特殊の関係のある法人と同視すべき
であるところ,原告P1は,P8並びにこれと特殊の関係のある個人及
び法人(P4社を含む。)が保有する原告P1における議決権割合が,
議決権総数の100分の50を超える(72.091パーセント)。そ
うすると,原告P1は,評価通達188(1)の適用上,「株主の1人及
びその同族関係者の有する議決権の合計数が最も多いグループの有す
る議決権の合計数が,その会社の議決権総数の50パーセント超である
会社」であり,P4社は,原告P1において当該グループに属する同族
関係者であるから,「同族株主」に該当し,その保有する原告P1の株
式は,「同族株主以外の株主等が取得した株式」に該当しない。
なお,P4社が保有する原告P1の株式に評価通達188(2)ないし
(4)が適用されないことについては,当事者間に争いがない。
したがって,P4社が保有する原告P1の株式は,原則どおり類似業
種比準方式によって評価することになる。以上で判示したところと異な
る原告らの主張は,いずれも採用することができない。
(エ)本件P3各出資持分譲渡時点において,原告P1の株式1株当たり
の価額は,類似業種比準方式によって評価すれば,被告別表2第3表(こ
の計算過程及び金額については,当事者間に争いがなく,適正なものと
がって,P4社が保有していた原告P1の株式200万株の価額は,こ
れらを掛け合わせた合計額である80億9400万円となる。
(オ)また,前記前提事実(7)アのとおり,平成17年3月31日時点に
おいて,P4社の総資産から投資有価証券を除いたものを評価通達に定
めるところにより評価した価額の合計額は,1億3922万4000円
であった。
(カ)以上によれば,本件P3各出資持分譲渡時点において,P4社の株
式保有割合は,分母が82億3322万4000円(80億9400万
円+1億3922万4000円),分子が80億9400万円となるこ
とにより,98.308パーセントとなり,50パーセント以上である
ことは明らかである。
イ本件13社出資持分譲渡時点の株式保有割合について
(ア)課税時期を本件13社出資持分譲渡時点とした場合も,P4社及び
原告P1の直前期は上記アと同様であるから,P4社は小会社に該当し,
かつ原告P1は大会社に該当する。
そして,上記アのとおり,P4社が保有する原告P1の株式の評価方
法を決定するに当たり,P4社が原告P1の同族株主に該当するか否か
が問題となるところ,前記前提事実(8)アのとおり,本件13社出資持
分譲渡の時点において,原告P1の発行済株式総数(700万株)に変
動はなく,かつ,P8,P10,P24,P25,原告P2及びP4社
の保有する原告P1の株式の総数(504万6400株)にも変動はな
く,単にP4社が保有株式を25万株減少させた一方で,原告P2が保
有株式を25万株増加させたにすぎないことから,議決権割合は変わら
ず,上記アと同様に,P4社は,原告P1の同族株主に該当する。
そうすると,本件13社出資持分譲渡時点においても,P4社が保有
していた原告P1の株式175万株の価額は,類似業種比準方式によっ
て評価すべきものである。この評価において,原告P1の株式1株当た
りの価額は,上記ア(エ)の4047円から著しく変動したとは認められ
ず,同株式175万株の価額も,これらを掛け合わせた合計額である7
0億8225万円又はこれとさほど差のない額と認められる。
(イ)また,平成17年10月4日から同年12月6日までの間において,
P4社の総資産から投資有価証券を除いたものを評価通達に定めると
ころにより評価した価額の合計額が,1億3922万4000円から著
しく変動したなどの事情はうかがわれない。
(ウ)以上によれば,本件13社出資持分譲渡時点において,P4社の株
式保有割合は,分母が72億2147万4000円(70億8225万
円+1億3922万4000円),分子が70億8225万円とした場
合の98.072パーセントに近似したものとなり,50パーセント以
上であることは明らかである。
ウ本件平成18年各譲渡時点の株式保有割合について
(ア)課税時期を本件平成18年各譲渡とした場合,前記前提事実(7)イ
のとおり,直前期であるP4社17年12月期において,評価通達17
8にいう従業員数が0人,当該期間における取引金額が3065万20
00円であったから,P4社は,同通達178の適用上,従業員数が1
00人未満の会社で,かつ,卸売業,小売・サービス業以外の業種にお
いて,従業員数が5人以下であり,直前期末以前1年間における取引金
額が8000万円未満という要件を満たし,小会社に該当する。
(イ)原告P1は,直前期である原告P1・17年12月期において,評
価通達178にいう従業員数が約1600人であったと認められる(弁
論の全趣旨〔被告別表4第2表〕)から,同通達178の適用上,従業
員数が100人以上の会社という要件を満たし,大会社に該当する。
そして,上記アのとおり,P4社が保有する原告P1の株式の評価方
法を決定するに当たり,P4社が原告P1の同族株主に該当するか否か
が問題となるところ,前記前提事実(8)アのとおり,本件平成18年各
譲渡の時点において,原告P1の株主らの状況につき上記イから変動は
なかったから,上記イと同様に,P4社は,原告P1の同族株主に該当
する。
(ウ)本件平成18年各譲渡の時点において,原告P1の株式1株当たり
の価額は,類似業種比準方式によって評価すれば,被告別表4第3表(こ
の計算過程及び金額については,当事者間に争いがなく,適正なものと
がって,P4社が保有していた原告P1の株式175万株の価額は,こ
れらを掛け合わせた合計額である105億9800万円となる。
(エ)また,前記前提事実(7)イのとおり,平成18年3月20日時点に
おいて,P4社の総資産から投資有価証券を除いたものを評価通達に定
めるところにより評価した価額の合計額は,10億1501万3000
円であった。
(オ)以上によれば,本件平成18年各譲渡の時点において,P4社の株
式保有割合は,分母が116億1301万3000円(105億980
0万円+10億1501万3000円),分子が105億9800万円
となることにより,91.259パーセントとなり,50パーセント以
上であることは明らかである。
エ小括
これまでに判示したとおり,P4社は,本件各譲渡のいずれの時点にお
いても,株式保有割合が50パーセント以上となり,株式保有特定会社に
該当する。
5争点5(P4社の1株当たりの純資産額の算定において法人税額等相当額を
控除しなかったことの適否)について
(1)法人税基本通達9-1-14(3)の趣旨等
ア法人税基本通達9-1-13は,上場有価証券等以外の株式の価額につ
いて,同(4)((1)ないし(3)に該当しないもの)については,当該事業年
度終了の時における1株当たりの純資産額等を参酌して通常取引される
と認められる価額とする旨規定している。
そして,同通達9-1-14本文は,同通達9-1-13(4)の場合,
評価通達178から189-7までの例により評価することができる旨
規定しているが,同通達9-1-14(3)は,評価通達185の本文に定
める1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算に当たり,評価通達
186-2により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額
(法人税額等相当額)は控除しない旨規定している。
イ評価通達185本文は,1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計
算において,評価差額に対する法人税等相当額を控除する旨を規定してい
る。その趣旨は,相続税や贈与税の分野における株式の評価においては,
個人が直接資産を保有する場合と,会社の株式又は出資持分を通じて間接
的に資産を保有する場合とでは,その所有形態が異なり,評価の均衡を図
る必要があることから,後者の場合は,当該会社が解散して当該資産が直
接個人に帰属することを念頭におき,当該会社が実際に解散したかどうか
を問わず,当該会社が清算した際の評価差額に対する法人税額等相当額を
算定し,それを資産価値から控除することにしたものと解される。
ウこれに対し,法人税課税における非上場株式の評価においては,会社が
継続的に事業活動を行うことを前提として,「純資産額等を参酌して通常
取引されると認められる価額」(法人税基本通達9-1-13)を算定し
ようとするものであるから,当該会社が清算した際の評価差額に対する法
人税額等相当額を控除しなければならない理由はない。このような考え方
に基づいて,平成12年課法2-7による改正により,法人税基本通達9
-1-14においては,法人税課税における1株当たりの純資産価額の評
価に当たり,法人税額等相当額を控除しないこととされるに至ったものと
解され,そのことには合理性があると認められる。そして,上記改正の後,
上記改正の結果とは異なる取引慣行が存在することはうかがわれない。
エこれに対し,原告らは,法人税課税における株式の評価について,法人
税額等相当額の控除をしないという法人税基本通達9-1-14(3)は合
理的なものとはいえず,本件出資持分についても,直接所有と間接所有と
の評価バランスを図るという論理に基づいて,法人税額等相当額の控除を
して,価額の評価を行うべきである旨主張する。
しかしながら,直接所有と間接所有との評価の均衡を図るという要請は,
相続税や贈与税の分野における株式の評価においては一定の合理性を有
するものの,法人税の課税における株式の評価においては,必ずしも妥当
しないものであることは上記イ及びウで判示したとおりである。
なお,最高裁平成14年(行ヒ)第112号同17年11月8日第三小
法廷判決・集民218号211頁及び最高裁平成16年(行ヒ)第128
号同18年1月24日第三小法廷判決・集民219号285頁は,法人税
基本通達9-1-14(3)において法人税額等相当額を控除しない旨が規
定された平成12年よりも前の時期における取引通念を前提としてなさ
れた判断であり,上記で判示したところを左右するものとはいえない。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
(2)以上を前提とすれば,前記4(2)のとおり,P4社は,株式保有特定会社
に該当し,評価通達189-3本文は,株式保有特定会社の株式の価額につ
いて,同通達185本文の定めにより計算した1株当たりの純資産価額(相
続税評価額)によって評価する旨規定していることから,本件出資持分の価
額を評価するに当たり,P4社の1株当たりの純資産価額(相続税評価額)
を計算し,その際,法人税額等相当額は控除しないこととなる。
6争点6(本件出資持分の価額の評価における評価通達185ただし書の適用
の有無)について
(1)評価通達185ただし書の趣旨等
ア前記5(2)のとおり,本件出資持分の価額の評価は,評価通達189-
3に定める方式によってなされるものであるところ,同通達189-3本
文は,1株当たりの純資産価額(相続税評価額)について,当該株式の取
得者とその同族関係者(同通達188(1)に定める同族関係者をいう。)
の有する当該株式に係る議決権の合計数が,評価会社の議決権総数の50
パーセント以下である場合においては,同通達185ただし書を適用して,
上記純資産価額に100分の80を乗じて計算した金額とする旨規定し
ている。
イ評価通達185ただし書が定められた趣旨は,小会社における同族株主
による会社経営の実態は,個人事業者の場合と実質的にはほとんど変わる
ところがないものが多いが,小会社の中には複数の同族株主グループによ
り会社経営を行っているものがあり,このような小会社では,一同族株主
グループの議決権の合計数だけでは会社を完全支配できないという実態
が認められるため,このような実態に即したものとする必要があることか
ら,単独の同族株主グループの議決権の合計数によって会社支配を行って
いる場合の支配力との較差を考慮して,議決権割合の合計が50パーセン
ト以下である同族株主グループに属する株主の取得株式を,純資産価額方
式により評価する場合には,20パーセントの評価減を行うというもので
あると解される(甲13)。
そうすると,議決権割合の合計が50パーセント以下である同族株主グ
ループに属する株主の取得株式であっても,当該同族株主グループによっ
て会社が支配されていると認められる事情がある場合にまで,同通達18
5ただし書を適用することは,上記趣旨に反することになる。この点に加
え,前記3(1)のとおり,法人税基本通達9-1-14が,課税上弊害が
ない限りにおいて評価通達178ないし189-7の例によって算定し
た時価を認めるものとしており,上記評価通達の各規定を形式的に適用す
ることにつき課税上弊害があると認められるときはその形式的な適用を
排することがあり得るとしていることをも考慮すれば,法人税の課税に係
る上場有価証券等以外の株式の評価額の算定という場面においては,評価
会社が議決権割合50パーセント以下の同族株主グループによって支配
されているという特段の事情があるときは,同通達185ただし書を適用
しないとする余地があるというべきである。
(2)検討
ア本件P3各出資持分譲渡に関し,P4社の各出資者の議決権割合は,既
に判示したとおり,P8が0.006パーセント,原告P1が0パーセン
ト,原告P2が31.572パーセントである。仮にこれらを合計すると
しても,P4社の議決権総数の50パーセントには達しない。
しかしながら,前記3(3)及び(4)で判示したとおり,本件13社のP4
社への出資の経緯や経営への関与の状況等に照らせば,本件13社による
P4社の経営に対する影響力は極めて乏しいものであったのに対し,P4
社の設立の経緯,原告P1と原告P2の資本構成,P8と原告P2との関
係及びP8と原告P1との関係等に照らせば,P8,原告P2及び原告P
1等から構成されるP27一族グループは,一体となってP4社を実質的
に支配し,同社を経営しているとみることができることを総合勘案すると,
P8,原告P2及び原告P1は,P4社において,同一の同族株主グルー
プに属し,当該グループによって同社は支配されていたものというべきで
ある。
そうすると,本件P3各出資持分譲渡に関して,P8,原告P2及び原
告P1が有するP4社の議決権の総数は実質的にみて50パーセント以
上あると評価すべきであるから,評価通達185ただし書が適用されない
ことにつき特段の事情が認められるというべきである。
イ他方,前記前提事実(5)ウ,(6)ウのとおり,原告P2は,本件13社出
資持分譲渡によって,P4社の総出資口数10万口のうち,7万5995
口を,本件平成18年各譲渡によって,同社の総出資口数10万口のすべ
てを,それぞれ保有するに至っており,原告P1の本件出資持分を考慮す
るか否かにかかわらず,P4社の議決権総数の50パーセント以上を有し
ていたことになる。
そうすると,本件13社出資持分譲渡及び本件平成18年各譲渡に関し,
本件出資持分の価額を評価するに当たり,評価通達185ただし書が適用
される余地はない。
(3)以上のとおり,本件各譲渡のいずれの場面においても,本件出資持分の価
額の評価において,評価通達185ただし書は適用されない。
7争点7(控除負債利子額の算定〔原告P2・18年12月期及び同19年1
2月期における受取配当等の益金不算入額の過大額の有無〕)について
(1)負債利子額の控除の趣旨等について
ア負債利子の控除は,法人税法23条において,株式等から生ずる受取配
当等の額を益金不算入とするに当たり,当該株式等の購入に充てられた借
入金等があれば,当該利子分を控除する制度である。すなわち,受取配当
等の額が収益に加算されないにもかかわらず,その元本である株式等の保
有に要した負債の利子の額を費用に加算するとすれば,不必要な免税を認
めるに等しいことから,益金不算入額において調整することとしたもので
ある。
受取配当等の益金不算入及び負債利子の控除に関する規定の概要は,以
下のとおりである。
イ法人税法23条1項は,法人が受ける配当等の額のうち,①連結法人株
式等及び関係法人株式等のいずれにも該当しない株式等(以下「その他株
式等」という。)に係る配当等の額については,その100分の50に相
当する金額を,②関係法人株式等に係る配当等の額については,その全額
を,それぞれ当該法人の各事業年度の所得の金額の計算上,益金の額に算
入しない旨規定している。
ウ同条4項は,同条1項に関し,当該法人が当該事業年度において支払う
負債の利子があるときは,以下の(ア)及び(イ)の合計額を益金不算入額と
する旨規定している。
(ア)保有するその他株式等につき当該事業年度において受ける配当等
の額の合計額から当該負債の利子の額のうち当該株式等に係る部分の
金額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額の
100分の50に相当する金額(同条4項1号)
(イ)保有する関係法人株式等につき当該事業年度において受ける配当
等の額の合計額から当該負債の利子の額のうち当該関係法人株式等に
係る部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額を控除
した金額(同項2号)
エ法人税法施行令22条は,1項において上記ウ(ア)に係る計算方法を,
2項において同(イ)に係る計算方法を規定しており,これらにより当該事
業年度の控除負債利子額の合計額を算出する方法を,原則法という。原則
法によると,控除負債利子額は,当該事業年度の負債利子額の合計額に,
当該法人の当該事業年度及びその前事業年度の確定した決算に基づく貸
借対照表に計上されている総資産の帳簿価額の合計額(分母)のうちに,
当該法人の当該事業年度及びその前事業年度の終了時におけるその他株
式等又は関係法人株式等の帳簿価額の合計額(分子)の占める割合(負債
利子控除割合)を乗じて計算される(資産按分方式)。
オこれに対し,同条3項は,同条1項及び2項の規定にかかわらず,①当
該事業年度の負債利子額の合計額に,基準年度の負債利子額の合計額のう
ちに同条1項に定める原則法によって計算した基準年度の負債利子額の
合計額の占める割合を乗じて計算した金額をもって,上記ウ(ア)の「政令
で定めるところにより計算した金額」とし,②当該事業年度の負債利子額
の合計額に,基準年度の負債利子額の合計額のうちに同条2項に定める原
則法によって計算した基準年度の負債利子額の合計額の占める割合を乗
じて計算した金額の合計額をもって,上記ウ(イ)の「政令で定めるところ
により計算した金額」とすることができる旨規定しており,これらにより
当該事業年度の控除負債利子額の合計額を算出する方法を,簡便法という。
簡便法は,控除負債利子額の合計額を算出するに当たり,事業年度ごと
に原則法で計算することは,実務上相当の手数を要することから,基準年
度において原則法により算出された額に基づき定められた割合を用いる
ことができるようにし,簡易な計算によって当該事業年度の控除負債利子
額の合計額を算出することを認めたものと解される。
(2)簡便法によるべきことを主張できるか否かについて
ア上記(1)のとおり,原則法が当該法人の当該事業年度及びその前事業年
度に係る帳簿価額に基づく負債利子控除割合を用いて控除負債利子額の
合計額を算定するのに対し,簡便法は,基準年度で固定された負債利子控
除割合を用いて控除負債利子額の合計額を算定することから,原則法と簡
便法のいずれを採用すれば受取配当等の益金不算入額が多額になるかは,
法人及びその財務状況によって異なることとなる。法人税法施行令22条
は,これを踏まえ,原則法と簡便法のいずれを採用するかについては,法
人税の申告時における当該法人の選択に委ねたものと解される。
イまた,法人税法23条6項は,同条1項の規定は確定申告書に益金の額
に算入されない配当等の額及びその計算に関する明細の記載がある場合
に限り適用する旨規定しているところ,同条6項は,納税者である法人が
確定申告において原則法により控除負債利子額を計算することを選択し
た上で受取配当等の益金不算入額を計算した場合には,後になってこれを
覆して簡便法による計算に変更することを原則として許さないこととし
た趣旨であると解される。
ウしかるに,原告P2が,原告P2・18年12月期の法人税の申告にお
いて,受取配当等の益金不算入額の計算に当たり,原則法により控除負債
利子額の合計額を算定し,その計算に関する明細の記載をしていたことは,
当事者間に争いがない。この場合,課税庁が,上記法人税に係る更正処分
において,控除負債利子額を算定するに当たり,納税者の申告時における
選択に従い,原則法による計算を行えば適法であると解するのが相当であ
り,簡便法による計算に変更すればより納税者にとって有利となるか否か
を検証しなければ当該更正処分が違法となるとは解されない。そうである
とすれば,原告P2は,原告P2・18年12月期再更正処分を争う本件
訴訟において,従前の選択を覆して簡便法により計算することを求めるこ
とは原則として許されないことになると考えられる。なお,法人税法23
条7項は,同条6項の記載がない確定申告書の提出があった場合でも,そ
の記載がなかったことにつきやむを得ない事情があると認めるときは,そ
の記載がなかった金額につき同条1項及び2項の規定を適用することが
できる旨規定し,同項は,控除負債利子額の算定方法の変更についても適
用されると解する余地があるが,仮にそうであるとしても,原告P2が受
贈益の計上漏れについての認識を有していなかったことが,上記のやむを
得ない事情には該当しないことが明らかであるから,原告P2について,
同条7項を適用することはできない。
エこれに対し,原告P2は,原告P2・18年12月期の法人税の申告時
に原則法を選択したことについては,申告の錯誤が客観的に明白かつ重大
であって,法の定めた方法以外にその是正を許さないならば納税義務者の
利益を著しく害すると認められるなどの特段の事情が存することから,錯
誤による是正が認められるべきものであり(最高裁昭和38年(オ)第49
9号同39年10月22日第一小法廷判決・民集18巻8号1762頁参
照),本件訴えにおいて,改めて簡便法を選択して,控除負債利子額を算
定できる旨主張する。
この点,原告P2は,原告P2・18年12月期再修正申告書において,
本件受贈益がないことを前提として,原則法によって控除負債利子額を算
定し,受取配当等の益金不算入額を7666万98円として申告していた
が(乙50),仮に簡便法によって控除負債利子額を算定したとすれば,
受取配当等の益金不算入額は9743万1662円となることは当事者
間に争いがなく,原告P2は,簡便法によるよりも益金の額が約2000
万円も多くなるような申告をしていたこととなる。他方,被告が本件訴訟
において主張する原則法によって控除負債利子額を算定すると,本件受贈
益がある場合における受取配当等の益金不算入額は6551万227円
である。
これらの点を勘案すると,原告P2が本件受贈益があると認識していた
とすれば原則法ではなく簡便法を確実に採用していたとまではいえない
から,原告P2において,原則法か簡便法かの選択に関連する錯誤がある
としても,その錯誤が客観的に明白で,かつ重大であるとまではいい難い
し,選択の是正を許さないならば納税義務者の利益を著しく害するという
状況にあるとまではいえない。したがって,原告P2の上記主張は,採用
することができない。
オ以上のとおり,原告P2が,本件訴えにおいて,控除負債利子額の算定
方法を再選択することはできず,処分行政庁が,原告P2・18年12月
期再更正処分において,これを原則法によって算定したことに違法はない。
(3)法人税法施行令22条1項2号の「帳簿価額」の意義
ア上記(1)エのとおり,法人税法施行令22条1項及び2項は,控除負債
利子額の算定に係る原則法を規定しているところ,原則法によれば,控除
負債利子額は,資産按分方式によって算定される。
この資産按分方式は,企業においては,その事業経営に必要な資金を自
己資本である資本と他人資本である負債によって調達し,これらの資金は
事業経営に必要な資産に化体されて,資本と負債とは混然一体となって運
用されており,ある資産の取得に要した資金について,その出所を源泉に
遡って探求し,その資金の入手とその当該資産の取得との関係を厳密に関
連付けて分類することは事実上不可能に近いことから,総資産に対する当
該株式等の割合を求めることによって,負債額及び負債の利子のうちの当
該株式等の対応額を求めるという考え方に基づいて定められたものと解
される(乙62,弁論の全趣旨)。
イもっとも,昭和40年度税制改正前においては,負債利子の計算は,上
記と異なり,株式の取得時におけるその取得のために要した負債の行き先
を常時追いかけてその利子を計算するといういわゆる紐付計算方式が原
則とされ,これができない場合に資産按分方式によることができるものと
されいてたが,実際上,紐付計算方式によっている法人はほどんどなかっ
た。そこで,同年度の改正により,資産按分方式のみが認められることと
なった。また,同改正においては,簡素化の見地から,総資産の帳簿価額
は,法人の確定した決算に基づく貸借対照表に計上されている総資産の帳
簿価額とされ,総資産については税務否認金につき調整を要しない(ただ
し一定の範囲内で調整は行う)こととされたが,按分を行う際の分子につ
いては,従前と同様,その株式の正常な帳簿価額とみなされる金額である
とされた。(乙62)
以上の改正経緯に照らせば,上記の改正においては,資産のうち株式等
については,その税務上の帳簿価額を計算してもさほど複雑にはならない
ことから,控除負債利子額の算式における分子の株式等の「帳簿価額」に
ついては,税務否認金の調整を行うこととし,従前どおり税務計算上の「帳
簿価額」のままとしたものと解され,この改正による規定が基本的にはそ
の後も引き継がれているものと解することが相当である。
ウ原告P2は,①本件出資持分は,法人税法施行令119条1項1号の「購
入した有価証券」に該当し,「その購入の代価」に本件受贈益の額を加算
する余地がない,②同令22条1項及び2項の各1号が,控除負債利子額
の算式における分母の帳簿価額について,「その他有価証券」につき評価
損益を加減する規定を置いているにもかかわらず,分子の帳簿価額には同
旨の規定がないことからすると,分子の帳簿価額には,本件受贈益の額を
加算することはできない旨主張する。
しかしながら,法人税法施行令119条1項8号は,同項1号ないし7
号に掲げる有価証券以外の取得価額について,「その取得の時におけるそ
の有価証券の取得のために通常要する価額」と規定しているところ,法人
が時価に比して著しく低い価額で有価証券を取得した場合は,売買と贈与
とが混合した取引によって有価証券を取得したものと評価することが可
能であるから(乙59),同項1号ではなく,8号により取得価額を定め,
受贈益相当額を含めた金額とすることが相当である。したがって,原告の
上記①の主張は採用することができない。
また,法人税施行令22条1項及び2項の各1号において,「その他有
価証券」につき評価損益を加減する規定を置いているのは,「その他有価
証券」については,企業会計では時価評価されるのに対し,税務上は基本
的に原価評価されることから,その評価差額を調整するためのものであり
(甲56),この調整規定があるからといって,分子の株式等の帳簿価額
について,税法上の適正な価額とするために本件受贈益を加算することが
できないと解さなければならないわけではない。したがって,原告P2の
上記②の主張は採用することができない。
エ以上のとおりであるから,本件受贈益の額を加算して,控除負債利子額
を算定することが違法であるということはできない。
(4)計算上の控除負債利子額の合計額が現実支払利子額を超える場合の取扱

ア法人税法施行令22条1項及び2項を形式的に適用し,本件出資持分に
関し,その税務上の帳簿価額として本件受贈益の額を加算して計算すると,
関係法人株式等については,その帳簿価額(分子)が総資産価額(分母)
を上回り(被告別表5及び6参照),負債利子控除割合が1を超え,また,
計算上の控除負債利子額の合計額が,現実の支払利子額を超えることとな
る。
しかしながら,上記(1)アで判示したとおり,負債利子額の控除は,受
取配当等の元本である株式等の保有に要した負債の利子の額を,益金不算
入の額から控除するという制度であり,法人税法施行令22条1項及び2
項に従って計算した負債利子控除割合が1を超える場合や,控除負債利子
額の合計額が現実支払利子額を超える場合において,計算上の控除負債利
子額の合計額を,そのまま益金不算入額の額から控除することは予定され
ていないというべきである。
イそこで,負債利子控除割合が1を超える場合につき,法人税法施行令2
2条1項及び2項をどのように適用すべきかにつき検討する。
(ア)まず,上記のような場合に限り,分母である総資産の帳簿価額を,
分子に合わせて,税務上の帳簿価額とすることが考えられる。しかしな
がら,この解釈は,法人税法施行令22条が,「確定した決算に基づく
貸借対照表に計上されている帳簿価額」と,単なる「帳簿価額」を区別
して規定し,また,同条1項1号(同条2項1号による準用を含む。)
が,イないしヘにおいて,帳簿価額の減算及び加算の規定を設けている
ことと整合しない上,上記(3)イで判示した計算の簡素化という立法経
緯にも沿わないものであることからすると,採用することができない。
(イ)次に,上記のような場合に限り,分子であるその他株式等又は関係
法人株式等の帳簿価額を会計上の帳簿価額とすることが考えられる(原
告P2は,本件受贈益の控除のみを主張するが,趣旨としては同様であ
るので,ここで併せて検討する。)。しかしながら,この解釈は,上記
のとおり法人税法施行令22条が「帳簿価額」を区別して規定している
ことと整合しておらず,また,株式等の税務簿価が増加するに従って負
債利子控除割合が1に近づくが,同割合が1を超えた時点で,突如とし
て1よりも小さな数値となるという不合理な結果を生ずるものである
ことからすると,採用することができない。さらに,分子の「帳簿価額」
から常に受贈益を排除し,分子の帳簿価額の算定上,受贈益がある株式
等については現実の取得価額を採用するという取扱いをすることは,も
ともと,分子の「帳簿価額」が税務上のものとされており,控除負債利
子額の計算については紐付計算方式が廃止されて資産按分方式のみと
されたという沿革(上記(3)イ)に照らし,必ずしも合理性があるとい
うことができない。
(ウ)以上のとおり,負債利子控除割合が1を超える場合に限り,分子又
は分母となる「帳簿価額」の本来の意味を読み替えて負債利子控除割合
を計算することは,法人税法施行令22条1項及び2項の解釈として,
その限界を超えるものであるといわざるを得ない。そうすると,結局,
現行法の下においては,負債利子控除割合が1を超えるという例外的な
場合においては,同条においてはそのような結論が予定されていないこ
と(前記ア)に照らし,負債利子控除割合を1として計算するほかはな
いと解され,この点は法令上の不備といわざるを得ない。
また,負債利子控除割合が1を超えると,計算上の控除負債利子額の
合計額が,現実支払利子額を超えるという場合が生じ得ることになる。
このような場合においては,上記アで判示したとおり,法人税法施行令
22条1項及び2項が,控除負債利子額の合計額を算定するに当たり,
現実支払利子額を超える額になることを予定していないことに照らし,
益金不算入額から控除する金額を,計算上の控除負債利子額の合計額と
することは適法とはいえず,現実支払利子額をもってその上限とすると
解するほかはないというべきである。
以上の判示に反する原告P2の主張は,いずれも採用することができ
ない。
ウ被告は,控除負債利子額の合計額が現実支払利子額を超える場合は,現
実支払利子額について,その他の株式等の税務簿価と関係法人株式等の税
務上の帳簿価額との割合で按分した金額をそれぞれの控除負債利子額と
して,受取配当等の益金不算入額を算定するのが相当である旨主張する。
被告の上記主張は,条文上の手掛かりに乏しいといわざるを得ないが,
負債利子控除割合が1を超えないようにし,現実支払利子額を上限とする
という点において,法人税法施行令22条が予定するところと整合的であ
ることからすると,被告の主張する計算方法によって控除負債利子額を算
定することも違法とまではいえないと解される。
8争点8(処分理由の差替えの可否〔原告P2・18年12月期の法人税にお
ける課税留保金額に係る税額の加算の当否〕)について
(1)認定事実
ア原告P2・18年12月期更正処分に係る更正通知書(甲3)及び原告
P2・18年12月期再更正処分に係る更正通知書(甲26。以下,これ
らの更正通知書を併せて「原告P2・18年12月期各更正通知書」とい
う。)の各「更正の理由」欄に留保金課税についての記載はなかった。
イ原告P2・18年12月期に係る法人税の法定申告期限が平成19年3
月31日であり,同日を基準とした場合,法人税の更正処分に係る除斥期
間の終了日が平成24年3月31日となるところ,被告は,平成25年2
月22日の本件第4回口頭弁論期日において,初めて,特定同族会社の留
保金額に対する税額の増加額があることを原告P2・18年12月期更正
処分の根拠として主張(本件留保金主張)するに至った(争いがない)。
(2)検討
ア一般に,法が行政処分に理由を附記すべきものとしているのは,処分庁
の判断の慎重さ及び合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分
の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与える趣旨であると解さ
れるが,法人税法130条2項が,白色申告と区別して青色申告の場合に
ついてのみ,詳細な理由の附記を求めているのは,上記趣旨に加えて,同
条1項の青色申告書による提出の承認を受けた内国法人に対し,帳簿書類
を備え付けてこれに所得金額に係る取引を記録し,かつ,その帳簿書類を
保存し,さらに,青色申告書に貸借対照表,損益計算書その他所得金額又
は純損失の金額の計算に関する明細書を添付させるという義務を課して
いる代償としての趣旨を含むものというべきであり,青色申告者に対し,
特に処分の具体的根拠を明らかにすることによって不服申立ての便宜を
図り,その手続的な権利を保障するという租税優遇措置の1つであるとい
うことができる。仮に,訴訟の段階で無条件に処分理由の差し替えを許せ
ば,法人税法が,青色申告者に対して特に不服申立ての便宜を図り,その
手続的な権利を保障しようとした趣旨を没却するものといわざるを得な
い。
そうすると,青色申告の場合における更正処分の取消訴訟においては,
原則として,更正通知書に附記されていない理由を主張することは許され
ないが,例外的に,更正通知書の附記理由と訴訟において被告が主張する
理由との間に,基本的な課税要件事実の同一性があり,更正通知書に附記
されていない理由を被告に新たに主張させても,原告の手続的権利に格別
の支障がないと認められる場合には,理由の差し替えを許容することがで
きるというべきである。
また,処分理由の差し替えは,攻撃防御方法の提出であって,別個に課
税処分を行うものではなく,既に除斥期間内に課税処分がなされている以
上,納税義務者の法的地位を早期に安定させるという除斥期間の趣旨も一
応達成されていることからすれば,上記のように,更正理由書の附記理由
と訴訟において被告が主張する理由との間に,基本的な課税要件事実の同
一性があり,更正通知書に附記されていない理由を被告に新たに主張させ
ても,原告の手続的権利に格別の支障がないと認められる場合においては,
除斥期間経過後に理由の差し替えをすることも許されるというべきであ
る。
イこれを本件についてみるに,同族会社の留保金課税は,同族会社と非同
族会社及び個人企業における課税の公平を保つため,配当をしなくても会
社と株主との間の利害が反しない会社(特定同族会社)について,当期の
所得等の金額のうち留保した額から法人税額及び住民税額を控除して当
期留保金額を求め,これが留保控除額を超える部分の留保金額に対して,
10ないし20パーセントの累進税率で課税するという制度である(法人
税法67条)。
前記前提事実(8)イのとおり,原告P2は,原告P2・18年12月期
の末日である平成18年12月31日時点において,発行済株式総数30
00万株のうち,P8が700万株を,P8と特殊の関係のある個人であ
るP10が1300万株を,それぞれ保有しており,その株式保有割合が
100分の50を超えていた(66.666パーセント)上,同族会社で
あることについての判定の基礎となる株主のうちに同族会社でない法人
はないから,原告P2は,法人税法67条(ただし,平成18年法律第1
0号による改正前のもの。)1項の同族会社に該当する。
同族会社である原告P2に対する留保金課税の額は,原告P2・18年
12月期の所得等の金額が定まれば,法令の規定に基づいて自動的に算出
される関係にあるところ,本件において原告P2の所得等の金額につき当
事者間に争いがあるのは,本件受贈益であり,その加算の有無や額につい
ては,原告P2が審査請求の段階から争っていたものである(甲5,57)。
そうすると,本件留保金主張が追加されたからといって,本件受贈益の
加算の有無や額に関する事実関係とは別に,新たな事実の認定を要するも
のではなく,原告P2には,実質的にみて不服申立ての段階から本件留保
金主張を争う機会が与えられていたということができるのであって,原告
P2・18年12月期各更正通知書の附記理由と本件留保金主張に係る理
由との間に,基本的な課税要件事実の同一性があり,上記各更正通知書に
附記されていない理由を被告に新たに主張させても,原告P2の手続的権
利に格別の支障がないと認められる。
以上のとおりであるから,被告が本件留保金主張を行い,本件訴えにお
いて処分理由を追加することは,許容されるというべきである。これと異
なる原告P2の主張は,採用することができない。
9争点9(過少申告加算税を賦課すべきでない正当な理由の存否)について
(1)通則法65条4項にいう「正当な理由」の意義
通則法65条4項は,修正申告書の提出又は更正に基づき納付すべき税額
に対して課される過少申告加算税につき,その納付すべき税額の計算の基礎
となった事実のうちにその修正申告又は更正前の税額の計算の基礎とされ
ていなかったことについて正当な理由があると認められるものがある場合
には,その事実に対応する部分についてはこれを課さないこととしている。
過少申告加算税は,過少申告による納税義務違反の事実があれば,原則と
してその違反者に課されるものであり,これにより,当初から適法に申告し
納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに,過少
申告による納税義務違反の発生を防止し,適正な申告納税の実現を図り,も
って納税の実を挙げようとする行政上の措置である。
そうすると,同項にいう「正当な理由があると認められる」場合とは,真
に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,上記のような
過少申告加算税の趣旨に照らしても,なお,納税者に過少申告加算税を賦課
することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である(最高
裁平成17年(行ヒ)第9号同18年4月20日第一小法廷判決・民集60
巻4号1611頁,最高裁平成16年(行ヒ)第86号,第87号同18年
4月25日第三小法廷判決民集60巻4号1728頁)。
(2)検討
ア前記前提事実(9)のとおり,本件各更正処分は,主として,本件各譲渡
に関し本件受贈益の計上漏れがあると判断されたことに伴うものであり,
当該判断過程においては,P4社における本件13社の地位やP27一族
グループの地位を実質的に勘案して,評価通達185ただし書や同188
の形式的な適用が排除されている。
イしかしながら,既に判示したとおり,本件においては,P4社における
本件13社の地位が特殊なものであり,P4社がP27一族グループによ
り実質的に支配されているという状況が認められ,このことは原告らにお
いても認識可能であったことからすると,上記の評価通達の形式的な適用
が排除される可能性があることは当然に検討すべきであったということ
ができる。そして,前記前提事実(2)ウのとおり,本件各譲渡当時,P8
は,P7相続税事件において敗訴判決を受けてこれが確定していたところ,
当該判決において,P4社がP8及びその同族関係者によって実質的に支
配されていた旨判示されていた(乙4の1及び2)ことをも勘案すれば,
原告らは,本件各譲渡に関し,上記の評価通達の規定の形式的な適用が排
除され,本件受贈益が加算されるという取扱いが正当であるとされる可能
性があることを予想し得たというべきである。
以上のとおりであるから,原告らが,原告P1・17年12月期確定申
告書,原告P2・17年12月期確定申告書,原告P2・18年12月期
再修正申告書及び原告P2・19年12月期確定申告書のとおり,上記各
法人税の申告をしたことについて,真に納税者の責めに帰することのでき
ない客観的な事情があり,過少申告加算税の趣旨に照らしても,なお,納
税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合に当たる
とまではいうことはできない。
ウしたがって,本件各賦課決定処分について,過少申告加算税を賦課すべ
きでない正当な理由は認められない。
10本件各処分の適法性等について
(1)本件各譲渡における本件出資持分の1口当たりの価額
以上で判示したところ及び弁論の全趣旨によれば,本件出資持分の1口当
たりの適正価額は,以下のとおりと認められる。
ア本件平成17年各譲渡
被告別表1のとおり,8万1287円(同第6表⑤欄。なお,これらの
表の計算過程につき当事者に争いはなく,適正なものと認められる。)
イ本件平成18年各譲渡
被告別表3のとおり,10万9786円(同第6表⑤欄。なお,これら
の表の計算過程につき当事者に争いはなく,適正なものと認められる。)
(2)本件各処分の適法性について
以上を前提とすると,本件各処分は,以下のとおり,いずれも適法である。
ア原告P1の原告P1・17年12月期における法人税の所得金額及び納
付すべき法人税額は,別紙4「本件各処分の根拠及び適法性」の第1の1
に記載のとおりであり,同2に記載のとおり,原告P1・17年12月期
更正処分は適法である。
原告P1賦課決定処分の根拠については,別紙4「本件各処分の根拠及
び適法性」の第1の3(1)に記載のとおりであり,同(2)に記載のとおり,
原告P1賦課決定処分は適法である。
イ原告P2の原告P2・17年12月期における法人税の所得金額及び納
付すべき法人税額は,別紙4「本件各処分の根拠及び適法性」の第2の1
に記載のとおりであり,同2に記載のとおり,原告P2・17年12月期
更正処分は適法である。
原告P2・17年12月期賦課決定処分の根拠については,別紙4「本
件各処分の根拠及び適法性」の第2の3(1)記載のとおりであり,同(2)に
記載のとおり,原告P2・17年12月期賦課決定処分は適法である。
ウ原告P2の原告P2・18年12月期における法人税の所得金額及び納
付すべき法人税額は,別紙4「本件各処分の根拠及び適法性」の第3の1
に記載のとおりであり,同2に記載のとおり,原告P2・18年12月期
再更正処分は適法である。
原告P2・18年12月期各賦課決定処分の根拠については,別紙4「本
件各処分の根拠及び適法性」の第3の3(1)及び(2)に記載のとおりであり,
同(3)に記載のとおり,原告P2・18年12月期各賦課決定処分は適法
である。
エ原告P2の原告P2・19年12月期における法人税の所得金額及び納
付すべき法人税額は,別紙4「本件各処分の根拠及び適法性」の第4の1
に記載のとおりであり,同2に記載のとおり,原告P2・19年12月期
更正処分は適法である。
原告P2・19年12月期賦課決定処分の適法性については,別紙4「本
件各処分の根拠及び適法性」の第4の3(1)に記載のとおりであり,同(2)
に記載のとおり,原告P2・19年12月期賦課決定処分は適法である。
11結論
よって,原告らの各請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟
費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文を
適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第38部
裁判長裁判官谷口豊
裁判官横田典子
裁判官下和弘
(別紙3)
関係法令等の定め
第1商法241条3項(平成17年法律第87号による改正前のもの。以下同じ。)
及び有限会社法41条(平成17年法律第87号による廃止前のもの。以下同じ。)
1商法241条3項は,会社,親会社及び子会社又は子会社が他の株式会社の
総株主の議決権の4分の1を超える議決権又は他の有限会社の総社員の議決
権の4分の1を超える議決権を有する場合においては,その株式会社又は有限
会社はその有する会社又は親会社の株式については議決権を有しない旨規定
している。
2有限会社法41条は,商法241条3項の規定は有限会社の社員総会にこれ
を準用する旨規定している。
第2法人税法(本法の改正経過は,本件の判断に影響を与えないので,本件各処
分の内容や時期を踏まえ,適切と思われる条文を摘示することとし,各条文の冒
頭にどの時点のものかを示す。)
122条(ただし,平成18年法律第10号による改正前のもの。)
(1)1項は,内国法人の各事業年度の所得の金額は,当該事業年度の益金の額
から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする旨規定している。
(2)2項は,内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金
の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,資産の販売,有償
又は無償による資産の譲渡又は役務の提供,無償による資産の譲受けその他
の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする旨規
定している。
(3)4項は,2項に規定する当該事業年度の収益の額は,一般に公正妥当と認
められる会計処理の基準に従って計算されるものとする旨規定している。
223条(ただし,平成18年法律第10号による改正前のもの。)
(1)1項は,内国法人が受ける同項第1号に掲げる利益の配当又は剰余金の分
配の額(外国法人若しくは公益法人等又は人格のない社団等から受けるもの
を除く。以下,この条において「配当等の額」という。)のうち,連結法人
株式等及び関係法人株式等のいずれにも該当しない株式等(株式,出資又は
受益権をいう。以下同じ。)に係る配当等の額の100分の50に相当する
金額並びに関係法人株式等に係る配当等の額は,その内国法人の各事業年度
の所得の金額の計算上,益金の額に算入しない旨規定している。
(2)2項は,配当等の額のうち,連結法人株式等に係る配当等の額は,当該内
国法人の各事業年度の所得の金額の計算上,益金の額に算入しない旨規定し
ている。
(3)4項は,1項の場合において,同項の内国法人が当該事業年度において支
払う負債の利子があるときは,同項の規定により当該事業年度の所得の金額
の計算上益金の額に算入しない金額は,①その保有する連結法人株式等及び
関係法人株式等のいずれにも該当しない株式等につき当該事業年度におい
て受ける配当等の額の合計額から当該負債の利子の額のうち当該株式等に
係る部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した
金額の100分の50に相当する金額(同条4項1号),②その保有する関
係法人株式等につき当該事業年度において受ける配当等の額の合計額から
当該負債の利子の額のうち当該関係法人株式等に係る部分の金額として政
令で定めるところにより計算した金額を控除した金額(同項2号)の合計額
とする旨規定している。
(4)5項は,1項及び4項に規定する関係法人株式等とは,内国法人が他の内
国法人の発行済株式の総数又は出資金額の100分の25以上に相当する
数又は金額の株式又は出資を有する場合として政令で定める場合における
当該他の内国法人の株式又は出資をいう旨規定している。
(5)6項は,1項及び2項の規定は,確定申告書の益金の額に算入されない配
当等の額及びその計算に関する明細の記載がある場合に限り,適用し,この
場合において,これらの規定により益金の額に算入されない金額は,当該金
額として記載された金額を限度とする旨規定している。
(6)7項は,税務署長は,1項及び2項の規定により益金の額に算入されない
こととなる金額の全部又は一部につき6項の記載がない確定申告書の提出
があった場合においても,その記載がなかったことについてやむを得ない事
情があると認めるときは,その記載がなかった金額につき1項及び2項の規
定を適用することができる旨規定している。
361条の2(ただし,平成18年法律第10号による改正前のもの。)
1項は,内国法人が有価証券の譲渡をした場合には,その譲渡に係る譲渡利
益額(1号に掲げる金額が2号に掲げる金額を超える場合におけるその超える
部分の金額をいう。)又は譲渡損失額(同号に掲げる金額が第1号に掲げる金
額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。)は,その譲渡に係る
契約をした日の属する事業年度の所得の金額の計算上,益金の額又は損金の額
に算入する旨規定している。
そして,同項1号は,その有価証券の譲渡に係る対価の額を,同項2号は,
その有価証券の譲渡に係る原価の額を,それぞれ規定している。
467条(ただし,平成18年法律第10号による改正前のもの。)
(1)1項は,内国法人である同族会社(同族会社であることについての判定の
基礎となった株主又は社員のうちに同族会社でない法人がある場合には,当
該法人をその判定の基礎となる株主又は社員から除外して判定するものと
した場合においても同族会社となるものに限る。以下本条において同じ。)
の各事業年度の留保金額が留保控除額を超える場合には,その同族会社に対
して課する各事業年度の所得に対する法人税の額は,66条1項又は2項の
規定にかかわらず,これらの規定により計算した法人税の額に,その超える
部分の留保金額を次の各号に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に当該
各号に定める割合を乗じて計算した金額の合計額を加算した金額とする。
一年3000万円以下の金額100分の10
二年3000万円を超え,年1億円以下の金額100分の15
三年1億円を超える金額100分の20
(2)2項は,1項に規定する留保金額とは,本項各号に掲げる金額の合計額(3
項において「所得等の金額」という。)のうち留保した金額から,当該事業
年度の所得の金額につき66条1項又は2項の規定により計算した法人税
の額並びに当該法人税の額に係る地方税法の規定による道府県民税及び市
町村民税(都民税を含む。)の額として政令で定めるところにより計算した
金額の合計額を控除した金額をいう旨規定している。
(3)3項は,1項に規定する留保控除額とは,次に掲げる金額のうち最も多い
金額をいう旨規定している。
一当該事業年度の所得等の金額の100分の35に相当する金額
二年1500万円
三当該事業年度終了の時における利益積立金額(当該事業年度の所得等
の金額に係る部分の金額を除く。)がその時における資本の金額又は出資
金額の100分の25に相当する金額に満たない場合におけるその満た
ない部分の金額に相当する金額
(4)7項は,2項に規定する留保した金額から除く金額その他1項から3項ま
での規定の適用に関し必要な事項は,政令で定める旨規定している。
第3法人税法施行令(本法の改正経過は,本件の判断に影響を与えないので,本
件各処分の内容や時期を踏まえ,適切と思われる条文を摘示することとし,各
条文の冒頭にどの時点のものかを示す。)
14条(ただし,平成18年政令第125号による改正前のもの。)
(1)1項は,その柱書において,法人税法2条10号(同族会社の意義)に規
定する政令で定める特殊の関係のある個人は,同令4条1項各号に掲げる者
とする旨規定し,同項1号は,株主等の親族を掲げている。
(2)2項は,その柱書きにおいて,法人税法2条10号に規定する政令で定め
る特殊の関係のある法人は,同令4条2項各号に掲げる会社とする旨規定し,
同項1号から3号までは,次のアからウまでのとおり掲げている。
ア1号
同族会社であるかどうかを判定しようとする会社の株主等(当該会社が
自己の株式又は出資を有する場合の当該会社を除く。以下,法人税法施行
令4条2項及び3項において「判定会社株主等」という。なお,同令にお
いて,「株主等」とは,株主又は合名会社,合資会社若しくは有限会社の
社員その他法人の出資者をいう(同令1条,法人税法2条14号)。)の
1人(個人である判定会社株主等については,その1人及びこれと同令4
条1項に規定する特殊の関係のある個人。以下同条2項において同じ。)
が有する他の会社の株式の総数又は出資の金額の合計額が当該他の会社
の発行済株式の総数又は出資金額(その有する自己の株式又は出資を除く。
同項2号及び3号において同じ。)の100分の50を超える数の株式又
は出資の金額に相当する場合における当該他の会社
イ2号
判定会社株主等の1人及びこれと法人税法施行令4条2項1号に規定
する特殊の関係のある会社が有する他の会社の株式の総数又は出資の金
額の合計額が当該他の会社の発行済株式の総数又は出資金額の100分
の50を超える数の株式又は出資の金額に相当する場合における当該他
の会社
ウ3号
判定会社株主等の1人及びこれと法人税法施行令4条2項1号及び2
号に規定する特殊の関係のある会社が有する他の会社の株式の総数又は
出資の金額の合計額が当該他の会社の発行済株式の総数又は出資金額の
100分の50を超える数の株式又は出資の金額に相当する場合におけ
る当該他の会社
(3)3項は,同一の個人又は法人(人格のない社団等を含む。以下同じ。)と
同条2項に規定する特殊の関係のある2以上の会社が,判定会社株主等であ
る場合には,その2以上の会社は,相互に同項に規定する特殊の関係のある
会社であるものとみなす旨規定している。
222条(ただし,平成18年政令第125号による改正前のもの。)
(1)1項は,法人税法23条4項1号(受取配当等の益金不算入)に規定する
政令で定めるところにより計算した金額は,当該事業年度において支払う同
項に規定する負債の利子の額の合計額に,法人税法施行令22条1項1号に
掲げる金額のうちに同項2号に掲げる金額の占める割合を乗じて計算した
金額とする旨規定し,①同項1号は,法人税法23条4項の内国法人の当該
事業年度及び当該事業年度の前事業年度の確定した決算に基づく貸借対照
表に計上されている総資産の帳簿価額(法人税法施行令22条1項1号イか
らニまでに掲げる金額がある場合にはこれを減算し,同号ヘに掲げる金額が
ある場合にはこれを加算した金額)の合計額を掲げ,②同項2号は,1号の
内国法人の当該事業年度及び当該事業年度の前事業年度終了の時における
法人税法23条4項に規定する連結法人株式等及び関係法人株式等のいず
れにも該当しない株式及び出資並びに租税特別措置法3条の2に規定する
特定株式投資信託及び同法68条の3の4第1項に規定する特定投資信託
の受益証券の帳簿価額の合計額(ただし,証券投資信託の受益証券のないと
き。法人税法施行令22条1項2号)を掲げている。
(2)2項は,法人税法23条4項2号に規定する政令で定めるところにより計
算した金額は,同項の内国法人が同項の事業年度において支払う負債の利子
の額の合計額に,法人税法施行令22条2項1号に掲げる金額のうちに同項
2号に掲げる金額の占める割合を乗じて計算した金額とする旨規定し,①同
項1号は,同条1項1号に掲げる金額を掲げ,②同条2項2号は,同条1項
1号の内国法人の当該事業年度及び当該事業年度の前事業年度終了の時に
おける法人税法23条4項に規定する関係法人株式等の帳簿価額の合計額
を掲げている。
(3)3項は,平成10年4月1日に存する内国法人は,同令22条1項及び2
項の規定にかかわらず,①当該事業年度において支払う負債の利子の額の合
計額(以下「当該事業年度の負債利子額の合計額」という。)に,同日から
平成12年3月31日までの間に開始した各事業年度(以下,この条におい
て「基準年度」という。)において支払った負債の利子の額の合計額(以下
「基準年度の負債利子額の合計額」という。)のうちに基準年度の法人税法
23条4項1号に規定する連結法人株式等及び関係法人株式等のいずれに
も該当しない株式等に係る負債の利子の額として法人税法施行令22条1
項の規定により計算した金額の合計額の占める割合を乗じて計算した金額
をもって法人税法23条4項1号に規定する政令で定めるところにより計
算した金額とし,②当該事業年度の負債利子額の合計額に,基準年度の負債
利子額の合計額のうちに基準年度の法人税法23条4項2号に規定する関
係法人株式等に係る負債の利子の額として法人税法施行令22条2項の規
定により計算した金額の合計額の占める割合を乗じて計算した金額をもっ
て法人税法23条4項2号に規定する政令で定めるところにより計算した
金額とすることができる旨規定している。
3119条(ただし,平成18年政令第125号による改正前のもの。)
1項柱書は,内国法人が有価証券の取得をした場合には,その取得価額は,
同項各号に掲げる有価証券の区分に応じ当該各号に定める金額とする旨規定
している。そして,上記有価証券の区分及び金額に関し,同項1号は,購入し
た有価証券については,その購入の代価とし,同項8号は,同項1号ないし7
号に規定する方法以外の方法により取得をした有価証券については,その取得
の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額とする旨,それぞれ
規定している。
第4法人税基本通達(昭和44年5月1日付け直審(法)25(例規)による国
税庁長官通達。なお,本通達の改正経過は本件の判断に影響を与えないので,
本件各処分の内容や時期を踏まえ,適切と思われるものを摘示することとす
る。)
12-3-4
法人税基本通達2-3-4は,法人が無償又は低い価額で有価証券を譲渡し
た場合における法人税法61条の2第1項1号に規定する譲渡に係る対価の
額の算定に当たっては,同通達9-1-8,9-1-13及び9-1-14の
取扱いを準用する旨規定している。
29-1-13(上場有価証券等以外の株式の価額)
法人税基本通達9-1-13は,上場有価証券等以外の株式につき法人税法
33条2項の資産の評価損の損金算入規定を適用する場合の当該株式の価額
について,①売買実例のあるもの(同(1)),②公開途上にある株式及(同(2))
及び③売買実例のないものでその株式を発行する法人と事業の種類,規模,収
益の状況等が類似する他の法人の株式の価額があるもの(同(3))のいずれに
も該当しないもの(同(4))については,当該事業年度終了の日又は同日に最
も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当た
りの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額とする旨規定
し,①売買実例のあるものについては,当該事業年度終了の日前6か月間にお
いて売買の行われたもののうち適正と認められるものの価額を当該株式の価
額とする旨規定している。
39-1-14(上場有価証券等以外の株式の価額の特例)
法人税基本通達9-1-14は,上場有価証券等以外の株式について評価損
の計上を行う場合の具体的な期末時価の算定方法について,上記2の①及び②
に該当せず,評価通達(後記第5参照)178ないし189-7の例によって
算定した価額によってその時価を算定しているときは,課税上弊害がない限り,
次によることを条件としてこれを認める旨規定している。
(1)当該株式の価額につき評価通達179の例により算定する場合(同通達1
89-3(1)において同通達179に準じて算定する場合を含む。)におい
て,当該法人が当該株式の発行会社にとって同通達188(2)に定める「中
心的な同族株主」に該当するときは,当該発行会社は常に同通達178に定
める「小会社」に該当するものとしてその例によること。
(2)当該株式の発行会社が土地(土地の上に存する権利を含む。)又は金融商
品取引所に上場されている有価証券を有しているときは,評価通達185の
本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金
額)」の計算に当たり,これらの資産については当該事業年度終了の時にお
ける価額によること。
(3)評価通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額
によって計算した金額)」の計算に当たり,同通達186-2により計算し
た評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除しないこと。
第5財産評価基本通達(昭和39年4月25日付け直資56,直審(資)17(例
規)による国税庁長官通達。以下「評価通達」という。なお,本通達の改正経
過は本件の判断に影響を与えないので,本件各処分の内容や時期を踏まえ,適
切と思われるものを摘示することとする。)
1評価通達1(2)は,財産の価額は,時価によるものとし,時価とは,課税時
期(相続,遺贈若しくは贈与により財産を取得した日若しくは相続税法の規定
により相続,遺贈若しくは贈与により取得したものとみなされた財産のその取
得の日又は地価税法2条4号に規定する課税時期をいう。以下同じ。)におい
て,それぞれの財産の現況に応じ,不特定多数の当事者間で自由な取引が行わ
れる場合に通常成立すると認められる価額をいい,その価額は,同通達の定め
によって評価した価額による旨を定めている。もっとも,同通達6は,同通達
の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は,国税
庁長官の指示を受けて評価する旨規定している。。
また,同通達は,取引相場のない株式(上場株式及び気配相場等のある株式
以外の株式をいう(同通達168(3))。以下同じ。)の評価方法について,
同通達178から193-2までの定めを置いており,同通達194は,合名
会社,合資会社又は有限会社に対する出資の価額は,上記各定めに準じて計算
した価額によって評価する旨規定している。。
2178(取引相場のない株式の評価上の区分)
評価通達178本文は,取引相場のない株式の価額は,評価しようとするそ
の株式の発行会社(以下「評価会社」という。)が,大会社,中会社又は小会
社のいずれに該当するかに応じて,同通達179の定めによって評価する旨規
定している。そして,評価通達178ただし書は,同族株主(同通達188(1)
に定める同族株主をいう。)以外の株主等が取得した株式又は特定の評価会社
の株式の価額は,それぞれ同通達188又は189の定めによって評価する旨
規定している。
また,評価通達178の表において,従業員数が100人以上の会社は大会
社に該当し,同表において,小会社は,従業員数が100人未満の会社で,か
つ,卸売業,小売・サービス業以外の業種の場合,総資産価額(帳簿価額によ
って計算した金額)が5000万円未満又は従業員数が5人以下で,直前期末
以前1年間における取引金額が8000万円未満のいずれにも該当する会社
をいう。ここで,各用語の意味は以下の(1)ないし(4)のとおりである。
(1)「総資産価額(帳簿価額によって計算した金額)」は,課税時期の直前に
終了した事業年度の末日(以下「直前期末」という。)における評価会社の
各資産の帳簿価額の合計額とする。
(2)「従業員数」は,直前期末以前1年間においてその期間継続して評価会社
に勤務していた従業員(就業規則等で定められた1週間当たりの労働時間が
30時間未満である従業員を除く。以下,評価通達178において「継続勤
務従業員」という。)の数に,直前期末以前1年間において評価会社に勤務
していた従業員(継続勤務従業員を除く。)のその1年間における労働時間
の合計時間数を従業員1人当たり年間平均労働時間数で除して求めた数を
加算した数とする。この場合における従業員1人当たり年間平均労働時間数
は,1800時間とする。
(3)「直前期末以前1年間における取引金額」は,その期間における評価会社
の目的とする事業に係る収入金額(金融業・証券業については収入利息及び
収入手数料)とする。
(4)評価会社が「卸売業」,「小売・サービス業」又は「卸売業,小売・サー
ビス業以外」のいずれの業種に該当するかは,前記ウの直前期末以前1年間
における取引金額(以下,評価通達178及び同通達181-2において「取
引金額」という。)に基づいて判定し,当該取引金額のうちに2以上の業種
に係る取引金額が含まれている場合には,それらの取引金額のうち最も多い
取引金額に係る業種によって判定する。
3179(取引相場のない株式の評価の原則)
評価通達179(1)は,同通達178により区分された大会社の株式の価額
は,類似業種比準価額によって評価する(以下「類似業種比準方式」という。)
が,納税義務者の選択により,1株当たりの純資産価額(相続税評価額によっ
て計算した金額。以下「純資産価額(相続税評価額)」という。)によって評
価する(以下「純資産価額方式」という。)ことができる旨規定している。
また,同(2)は,同通達178により区分された中会社の株式の価額は,「類
似業種比準価額×L+1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算し
た金額)×(1-L)」(Lは,評価会社の同通達178に定める課税時期の
直前期末における総資産価額(帳簿価額によって計算した金額)及び従業員数
又は直前期末以前1年間における取引金額に応じて,それぞれ同通達179
(2)イ及びロに掲げる割合のうちいずれか大きい方の割合とする。)の算式に
より計算した金額によって評価するが,納税義務者の選択により,算式中の類
似業種比準価額を1株当たりの純資産価額(相続税評価額)によって計算する
ことができる旨規定している。
さらに,同(3)は,同通達178により区分された小会社の株式の価額は,
純資産価額方式によって評価するが,Lを0.50として同(2)の算式により
計算した金額によって評価することができる旨規定している。
4180(類似業種比準価額)
評価通達180は,同通達179の類似業種比準価額は,類似業種の株価並
びに1株当たりの配当金額,年利益金額及び純資産価額(帳簿価額によって計
算した金額。以下「純資産価額(帳簿価額)」という。)を基とし,次の算式
によって計算した金額とすることとし,この場合において,評価会社の直前期
末における資本金額を直前期末における発行済株式数で除した金額(以下「1
株当たりの資本金の額」という。)が50円以外の金額であるときは,その計
算した金額に,1株当たりの資本金の額の50円に対する倍数を乗じて計算し
た金額とする旨規定している。
(1)上記算式中の「A」,「○B」,「○C」,「○D」,「B」,「C」及び
「D」は,それぞれ次による。
「A」=類似業種の株価
「○B」=評価会社の直前期末における1株当たりの配当金額
「○C」=評価会社の直前期末以前1年間における1株当たりの利益金額
「○D」=評価会社の直前期末における1株当たりの純資産価額(帳簿価額)
「B」=課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの配当金額
「C」=課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの年利益金額
「D」=課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの純資産価額(帳簿価
額)
(2)上記算式中の「0.7」は,同通達178に定める中会社の株式を評価す
る場合には「0.6」,同項に定める小会社の株式を評価する場合には「0.
5」とする。
(3)上記計算中の○Cの金額が0の場合は,分母の「5」は「3」とする。
5185(純資産価額)
評価通達185は,その本文において,同通達179にいう1株当たりの純
資産価額(相続税評価額)は,課税時期における各資産を同通達に定めるとこ
ろにより評価した価額の合計額から課税時期における各負債の金額の合計額
及び同通達186-2により計算した評価差額に対する法人税額等に相当す
る金額(以下「法人税額等相当額」という。)を控除した金額を課税時期にお
ける発行済株式数で除して計算した金額とする旨規定している。
同通達185ただし書は,小会社の株式の価額の評価(同通達179(3))
でも用いる1株当たりの純資産価額(相続税評価額)については,株式の取得
者とその同族関係者(同通達188(1)に定める同族関係者をいう。)の有す
る議決権の合計数が評価会社の議決権総数の50パーセント以下である場合
においては,同通達185本文により計算した1株当たりの純資産価額(相続
税評価額)に100分の80を乗じて計算した金額とする旨規定している。
6186-2(評価差額に対する法人税額等に相当する金額)
評価通達186-2は,同通達185の「評価差額に対する法人税額等に相
当する金額」は,同(1)の金額から同(2)の金額を控除した残額がある場合にお
けるその残額に45パーセント(法人税,事業税,道府県民税及び市町村民税
の税率の合計に相当する割合)を乗じて計算した金額とする旨規定している。
7188(同族株主以外の株主等が取得した株式)
(1)評価通達188柱書は,同通達178の「同族株主以外の株主等が取得し
た株式」は,同通達188(1)から(4)までのいずれかに該当する株式をいい,
その株式の価額は,同通達188-2の定め,すなわち配当還元方式による
旨規定している。
(2)同通達188(1)は,「同族株主のいる会社の株式のうち,同族株主以外
の株主の取得した株式」を掲げ,この場合における「同族株主」とは,課税
時期における評価会社の株主のうち,株主の1人及びその同族関係者(法人
税法施行令4条に規定する特殊の関係のある個人又は法人をいう。ただし,
当該法人の判定については,同条2項中「株式の総数」は「議決権の数」と,
「発行済株式の総数」は「議決権総数」と,「数の株式」は「数の議決権」
と読み替えるものとする。以下同じ。)の有する議決権の合計数がその会社
の議決権総数の30パーセント以上(その評価会社の株主のうち,株主の1
人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が最も多いグループの有す
る議決権の合計数が,その会社の議決権総数の50パーセント超である会社
にあっては,50パーセント超)である場合におけるその株主及びその同族
関係者をいう旨規定している。
(3)評価通達188(2)は,「中心的な同族株主のいる会社の株主のうち,中
心的な同族株主以外の同族株主で,その者の株式取得後の議決権の数がその
会社の議決権総数の5%未満であるもの(課税時期において評価会社の役員
(社長,理事長並びに法人税法施行令第71条第1項第1号及び第3号に掲
げる者をいう。以下同通達188において同じ。)である者及び課税時期の
翌日から法定申告期限までの間に役員となる者を除く。)の取得した株式」
を掲げ,この場合における「中心的な同族株主」とは,課税時期において同
族株主の1人並びにその株主の配偶者,直系血族,兄弟姉妹及び1親等の姻
族(これらの者の同族関係者である会社のうち,これらの者が有する議決権
の合計数がその会社の議決権総数の25パーセント以上である会社を含む。)
の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の25パーセント以上で
ある場合におけるその株主をいう旨規定している。
8評価通達188-4(議決権を有しないこととされる株式がある場合の議決
権総数等)
評価通達188-4は,同通達188(1)から(4)までにおいて,評価会社の
株主のうちに商法241条3項の規定により評価会社の株式につき議決権を
有しないこととされる会社があるときは,当該会社の有する評価会社の議決権
の数は0として計算した議決権の数をもって評価会社の議決権総数となるこ
とに留意し,評価会社の株主の同族関係者に該当するかどうかを判定するとき
においても,また同様となる旨規定している。
9評価通達189(特定の評価会社の株式)
(1)評価通達189柱書は,同通達178の「特定の評価会社の株式」とは,
評価会社の資産の保有状況,営業の状態等に応じて定めた同通達189(1)
ないし(6)の評価会社の株式をいい,その株式の価額は,同(1)ないし(6)の
区分に従い,それぞれに掲げるところによる旨規定している。
(2)同通達189(2)は,課税時期において評価会社の有する各資産を同通達
に定めるところにより評価した価額の合計額のうちに占める株式及び出資
の価額の合計額の割合(以下「株式保有割合」という。)が25パーセント
以上(同通達178に定める中会社及び小会社については,50パーセント
以上)である評価会社(以下「株式保有特定会社」という。)の株式の価額
は,同通達189-3の定めによる旨規定している。
10評価通達189-3(株式保有特定会社の株式の評価)
評価通達189-3本文は,株式保有特定会社の株式の価額について,同通
達185本文の定めにより計算した1株当たりの純資産価額(相続税評価額)
によって評価し,この場合における当該1株当たりの純資産価額(相続税評価
額)は,当該株式の取得者とその同族関係者の有する当該株式に係る議決権の
合計数が株式保有特定会社の同通達185ただし書に定める議決権総数の5
0パーセント以下であるときには,上記により計算した1株当たりの純資産価
額(相続税評価額)を基に同通達185ただし書の定めにより計算した金額と
する旨規定している。
また,同通達189-3ただし書は,株式保有特定会社の株式の価額は,納
税義務者の選択により,同(1)の「S1の金額」と同(2)の「S2の金額」との
合計額によって評価する(以下,この方式を「S1+S2」方式」という。)
ことができる旨規定している。
(別紙4)
本件各処分の根拠及び適法性
第1原告P1に対する更正処分等の根拠及び適法性
1原告P1更正処分の根拠
原告P1更正処分について,原告P1・17年12月期に係る法人税の所得
金額及び納付すべき税額は,後記2のとおり訂正する(被告準備書面(1)31
頁)ほか,それぞれ別表5のとおりであり,各項目の金額は,次に述べるとお
りである。
(1)所得金額(別表5③欄)98億3097万6444円
上記金額は,次のアの金額にイの金額を加算した金額である。
ア申告所得金額(別表5①欄)88億2436万8444円
上記金額は,原告P1・17年12月期確定申告書に記載された所得金
額と同額である。
イ受贈益計上漏れ(別表5②欄)10億660万8000円
上記金額は,原告P1が,平成17年3月31日にP3から譲り受けた
本件出資持分の1口当たりの譲受価格3万9235円と当該本件出資持
分の1口当たりの適正価額8万1177円との差額4万1942円に譲
受口数である2万4000口を乗じて得られた金額であり,原告P1にお
いて生ずる受贈益に当たり,原告P1・17年12月期の法人税の所得の
金額の計算上,益金の額に算入される金額である。
(2)所得金額に対する法人税額(別表5④欄)29億4929万2800円
上記金額は,上記(1)の所得金額(通則法118条1項の規定に基
づき1000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額。以下同じ。)
に法人税法66条に定める税率(ただし,平成18年法律第10号に
よる廃止前の経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及
び法人税の負担軽減措置に関する法律16条1項を適用した後のも
の。)を乗じて算出した金額である。
(3)法人税額の特別控除額(別表5⑤欄)2億7666万7444円
上記金額は,原告P1・17年12月期確定申告書に記載された法人税額
の特別控除額と同額である。
(4)課税留保金額に対する法人税額(別表5⑦欄)4億3847万9400円
上記金額は,原告P1・17年12月期確定申告書に記載された留保所得
金額78億9817万3524円に上記(1)イの金額を加算して算出した原
告P1の留保所得金額89億478万1524円につき,法人税法67条及
び通則法118条1項の各規定に基づき算出した課税留保金額22億24
89万7000円(別表5⑥欄)に対し,法人税法67条1項に規定する税
率を乗じて計算した金額である。
(5)法人税額から控除される所得税額等(別表5⑨欄)2688万626円
上記金額は,原告P1・17年12月期確定申告書に記載された控除所得
税額等の金額と同額である。
(6)納付すべき法人税額(別表5⑩欄)30億8422万4100円
上記金額は,上記(2)及び(4)の合計金額から上記(3)及び(5)の合計金額を
差し引いた金額(通則法119条1項の規定に基づき100円未満の端数金
額を切り捨てた後の金額。以下同じ。)である。
(7)既に納付の確定した本税額(別表5⑪欄)27億2428万1100円
上記金額は,原告P1・17年12月期確定申告書に記載された差引所得
に対する法人税額と同額である。
(8)差引納付すべき法人税額(別表5⑫欄)3億5994万3000円
上記金額は,上記(6)の金額から上記(7)の金額を差し引いた金額であり,
原告P1更正処分により原告P1が新たに納付すべき法人税額である。
2原告P1更正処分の適法性
被告が本件訴訟において主張する原告P1・17年12月期の法人税に係る
所得金額は,上記1(1)イについて,本件P3出資持分譲渡1の時点における
本件出資持分譲渡の適正価額を8万1287円に訂正したものであり,原告P
1に生じた受贈益として益金の額に算入すべき金額が10億924万800
0円となることから,98億3361万6444円である。
そうすると,原告P1更正処分における所得金額は,適正な所得金額を下回
っており,これに伴い同処分における納付すべき法人税額も,適正な納付すべ
き法人税額を下回ることになるから,原告P1更正処分は適法である。
3原告P1賦課決定処分の根拠と適法性
(1)原告P1更正処分に伴って賦課される過少申告加算税の金額は,原告P
1更正処分により原告P1が新たに納付すべきこととなった税額3億599
4万円(通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後
のもの。以下同じ。)に100分の10の割合(通則法65条1項)を乗じて
算出した3599万4000円となる。
(2)上記2で述べたところに照らせば,原告P1賦課決定処分における過少申
告加算税の額は,原告P1・17年12月期の法人税に係る適正な過少申告
加算税の額を下回ることになるから,原告P1賦課決定処分は適法である。
第2原告P2・17年12月期更正処分等の根拠及び適法性
1原告P2・17年12月期更正処分の根拠
原告P2・17年12月期更正処分について,原告P2・17年12月期に
係る法人税の所得金額及び納付すべき税額は,後記2のとおり訂正する(被告
準備書面(1)32,33頁)ほか,それぞれ別表6のとおりであり,各項目の
金額は,次に述べるとおりである。
(1)所得金額(別表6③欄)53億1685万6066円
上記金額は,次のアの金額にイの金額を加算した金額である。
ア申告所得金額(別表6①欄)3億4925万3776円
上記金額は,原告P2・17年12月期確定申告書に記載された所得金
額と同額である。
イ受贈益計上漏れ(別表6②欄)49億6760万2290円
上記金額は,次の(ア)及び(イ)の金額の合計金額である。
(ア)P3から本件出資持分を譲り受けた際に生ずる受贈益
10億639万8290円
原告P2が,平成17年3月31日にP3から譲り受けた本件出資持
分の1口当たりの譲受価格3万9235円と当該本件出資持分の1口
当たりの適正価額8万1177円との差額4万1942円に譲受口数
である2万3995口を乗じて得られた金額であり,原告P2において
生ずる受贈益に当たり,原告P2・17年12月期の法人税の所得の金
額の計算上,益金の額に算入される金額である。
(イ)本件13社から本件出資持分を譲り受けた際に生ずる受贈益
39億6120万4000円
原告P2が,平成17年10月ないし同年12月に本件13社から譲
り受けた本件出資持分の1口当たりの譲受価格5000円と当該本件
出資持分の1口当たりの適正価額8万1177円との差額7万617
7円に譲受口数である5万2000口を乗じて得られた金額であり,原
告P2において生ずる受贈益に当たり,原告P2・17年12月期の法
人税の所得の金額の計算上,益金の額に算入される金額である。
(2)所得金額に対する法人税額(別表6④欄)15億9441万6800円
上記金額は,上記(1)の所得金額に法人税法66条に定める税率(た
だし,平成18年法律第10号による廃止前の経済社会の変化等に対
応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法
律16条1項を適用した後のもの。)を乗じて算出した金額である。
(3)法人税額から控除される所得税額等(別表6⑨欄)2089万2069円
上記金額は,原告P2・17年12月期確定申告書に記載された控除所得
税額等の金額と同額である。
(4)納付すべき法人税額(別表6⑩欄)15億7352万4700円
上記金額は,上記(2)の金額から上記(3)の金額を差し引いた金額である。
(5)既に納付の確定した本税額(別表6⑪欄)8324万3800円
上記金額は,原告P2・17年12月期確定申告書に記載された差引所得
に対する法人税額と同額である。
(6)差引納付すべき法人税額(別表6⑫欄)14億9028万900円
上記金額は,上記(4)の金額から上記(5)の金額を差し引いた金額であり,
原告P2・17年12月期更正処分により原告P2が新たに納付すべき法人
税額である。
2原告P2・17年12月期更正処分の適法性
原告P2・17年12月期の法人税に係る適正な所得金額は,上記1(1)イ
について,各譲渡の時点における本件出資持分譲渡の適正価額を8万1287
円に訂正したものであり,原告P2に生じた受贈益として益金の額に算入すべ
き金額が10億903万7740円と39億6692万4000円との合計
49億7596万1740円となることから,53億2521万5516円で
ある。
そうすると,原告P2・17年12月期更正処分における所得金額は,適正
な所得金額を下回っており,これに伴い同処分における納付すべき法人税額も,
適正な納付すべき法人税額を下回ることになるから,上記更正処分は適法であ
る。
3原告P2・17年12月期賦課決定処分の根拠と適法性
(1)原告P2・17年12月期賦課決定処分に伴って賦課される過少申告加算
税の金額は,次のア及びイの金額の合計2億1833万5000円である。
ア原告P2・17年12月期更正処分により原告P2が新たに納付すべき
こととなった上記1(6)の税額14億9028万円に100分の10の割
合(通則法65条1項)を乗じて算出した金額1億4902万8000円
イ原告P2・17年12月期更正処分により原告P2が新たに納付すべき
こととなった税額14億9028万900円のうち通則法65条3項に
規定する期限内申告税額に相当する金額1億413万5869円と50
万円とのいずれか多い金額である1億413万5869円を超える部分
の額13億8614万円に対して100分の5の割合(通則法65条2項)
を乗じて算出した金額6930万7000円
(2)上記2で述べたところに照らせば,原告P2・17年12月期賦課決定処
分における過少申告加算税の額は,原告P2・17年12月の法人税に係る
適正な過少申告加算税の額を下回ることになるから,上記賦課決定処分は適
法である。
第3原告P2・18年12月期再更正処分等の根拠と適法性
1原告P2・18年12月期再更正処分の根拠
原告P2・18年12月期に係る法人税の適正な所得金額及び納付すべき税
額は,それぞれ別表7のとおりであり,各項目の金額は次に述べるとおりであ
る。
(1)所得金額(別表7⑤欄)13億1797万8872円
上記金額は,次のアの金額にイ及びウの金額を加算し,エの金額を減算し
た金額である。
ア申告所得金額(別表7①欄)1億5736万3581円
上記金額は,原告P2・18年12月期再修正申告書に記載された所得
金額と同額である。
イ受贈益計上漏れ(別表7②欄)16億5019万9720円
上記金額は,次の(ア)及び(イ)の金額の合計金額である。
(ア)原告P1から本件出資持分を譲り受けた際に生ずる受贈益
16億4985万6000円
原告P2が,平成18年3月20日に原告P1から譲り受けた本件出
資持分の1口当たりの譲受価格4万1042円と当該本件出資持分の
1口当たりの適正価額10万9786円との差額6万8744円に譲
受口数である2万4000口を乗じて得られた金額であり,原告P2に
おいて生ずる受贈益に当たり,原告P2・18年12月期の法人税の所
得の金額の計算上,益金の額に算入される金額である。
(イ)P8から本件出資持分を譲り受けた際に生ずる受贈益
34万3720円
原告P2が,平成18年3月20日にP8から譲り受けた本件出資持
分の1口当たりの譲受価格4万1042円と当該本件出資持分の1口
当たりの適正価額10万9786円との差額6万8744円に譲受口
数である5口を乗じて得られた金額であり,原告P2において生ずる受
贈益に当たり,原告P2・18年12月期の法人税の所得の金額の計算
上,益金の額に算入される金額である。
ウ受取配当等の益金不算入の過大額(別表7③欄)1114万9871円
上記金額は,法人税法23条に基づき算出される原告P2・18年12
月期の受取配当等の益金不算入額6551万227円と原告P2・18年
12月期法人税再修正申告書に記載された受取配当等の益金不算入額7
666万98円との差額に相当する金額であり,原告P2・18年12月
期において所得の金額の計算上,益金不算入の額と認められない金額であ
る。
エ事業税の損金算入(別表7④欄)5億73万4300円
上記金額は,原告P2・17年12月期更正処分に伴い増加する事業税
相当額であり,原告P2・18年12月期の損金の額に算入される金額で
ある。
(2)所得金額に対する法人税額(別表7⑥欄)3億9475万3400円
上記金額は,上記(1)の所得金額に法人税法66条に定める税率を乗じて
算出した金額である。
(3)課税留保金額に対する法人税額(別表7⑨欄)6605万3800円
上記金額は,原告P2・18年12月期再修正申告書に記載された留保所
得金額2億952万2698円に上記(1)イの金額を加算し,上記(1)エの金
額を減算して算出した原告P2の留保所得金額13億5898万8118
円から,法人税法67条及び通則法118条1項の各規定に基づき算出した
課税留保金額3億6276万9000円に対し,法人税法67条1項に規定
する税率を乗じて計算した金額である。
(4)法人税額から控除される所得税額等(別表7⑪欄)2446万9688円
上記金額は,原告P2・18年12月期法人税再修正申告書に記載された
控除所得税額等の金額と同額である。
(5)納付すべき法人税額(別表7⑫欄)4億3633万7500円
上記金額は,上記(2)及び(3)の合計金額から上記(4)の金額を差し引いた
金額である。
(6)既に納付の確定した本税額(別表7⑬欄)2209万9200円
上記金額は,原告P2・18年12月期再修正申告書に記載された差引所
得に対する法人税額と同額である。
(7)差引納付すべき法人税額(別表7⑭欄)4億1423万8300円
上記金額は,上記(5)の金額から上記(6)の金額を差し引いた金額である。
なお,上記納付すべき法人税額のうち,原告P2・18年12月期各更正
処分に係る税額は,次のとおりである。
ア原告P2・18年12月期更正処分3億4600万1400円
イ原告P2・18年12月期再更正処分778万4700円
2原告P2・18年12月期再更正処分の適法性
原告P2・18年12月期再更正処分における所得金額及び納付すべき法人
税額は,それぞれ13億3665万817円及び3億7588万5300円で
ある。そして,原告P2・18年12月期の法人税に係る適正な所得金額及び
納付すべき法人税額は,上記2のとおり,それぞれ13億1797万8872
円及び4億3633万7500円である。そうすると,原告P2・18年12
月期再更正処分における納付すべき法人税額は,適正な納付すべき法人税額を
下回ることになるから,上記再更正処分は適法である。
3原告P2・18年12月期各賦課決定処分の根拠と適法性
(1)原告P2・18年12月期賦課決定処分に伴って賦課される過少申告加算
税の金額は,次のア及びイの金額の合計5051万9500円である。
ア原告P2・18年12月期更正処分により原告P2が新たに納付すべき
こととなった上記1(7)アの税額3億4600万円に100分の10の割
合(通則法65条1項)を乗じて算出した金額3460万円
イ原告P2・18年12月期更正処分により原告P2が新たに納付すべき
こととなった税額3億4600万1400円のうち通則法65条3項に
規定する期限内申告税額に相当する金額2760万4088円と50万
円とのいずれか多い金額である2760万4088円を超える部分の額
3億1839万円に対して100分の5の割合(通則法65条2項)を乗
じて算出した金額1591万9500円
(2)原告P2・18年12月期再賦課決定処分に伴って賦課されるべき適正な
過少申告加算税の金額は,次のア及びイの金額の合計116万7000円で
ある。
ア原告P2・18年12月期再更正処分により原告P2が新たに納付すべ
きこととなった上記1(7)イの税額778万円に100分の10の割合
(通則法65条1項)を乗じて算出した金額77万8000円
イ原告P2・18年12月期再更正処分により原告P2が新たに納付すべ
きこととなった税額778万4700円が,原告P2・18年12月期各
更正処分により新たに納付すべきこととなった税額の合計金額3億53
78万6100円から,通則法65条3項に規定する期限内申告税額に相
当する金額2760万4088円と50万円とのいずれか多い金額であ
る2760万4088円を差し引いた額3億2618万2012円に満
たないため,新たに納付すべきこととなった778万円に対して100分
の5の割合(通則法65条2項)を乗じて算出した金額38万9000円
(3)原告P2・18年12月期各賦課決定処分における過少申告加算税の合計
額は,原告P2・18年12月の法人税に係る適正な過少申告加算税の額を
下回ることになるから,上記各賦課決定処分は適法である。
第4原告P2・19年12月期更正処分等の根拠と適法性
1原告P2・19年12月期更正処分の根拠
原告P2・19年12月期に係る適正な法人税の所得金額及び納付すべき税
額は,それぞれ別表8のとおりであり,各項目の金額は次に述べるとおりであ
る。
(1)所得金額(別表8③欄)10億1434万6403円
上記金額は,次のアの金額にイの金額を加算した金額である。
ア申告所得金額(別表8①欄)9億7860万339円
上記金額は,原告P2・19年12月期確定申告書に記載された所得金
額と同額である。
イ受取配当等の益金不算入額の過大額(別表8②欄)
3574万6064円
上記金額は,法人税法23条に基づき算出される原告P2・19年12
月期の受取配当等の益金不算入額2381万8235円と原告P2・19
年12月期確定申告書に記載された受取配当金等の益金不算入額595
6万4299円との差額に相当する金額であり,原告P2・19年12月
期において所得の金額の計算上,益金不算入の額と認められない金額であ
る。
(2)所得金額に対する法人税額(別表8④欄)3億366万3800円
上記金額は,上記(1)の所得金額に法人税法66条に定める税率を乗じて
算出した金額である。
(3)課税留保金額に対する法人税額(別表8⑦欄)1646万4400円
上記金額は,原告P2・19年12月期確定申告書に記載された留保所得
金額8億8264万6247円に,平成19年3月8日に開催の定時株主総
会において決議され,同日付けで配当された前事業年度末日を基準日とする
配当金の額6000万円を加算し,当期末配当等の額,法人税額及び住民税
額を減算して算出した当期留保金額6億5681万5393円を基礎とし
て,法人税法67条及び通則法118条1項の各規定に基づき算出した課税
留保金額1億1482万2000円に法人税法67条1項に規定する税率
を乗じて計算した金額である。
(4)法人税額から控除される所得税額等(別表8⑨欄)
1億4069万1352円
上記金額は,原告P2・19年12月期確定申告書に記載された控除所得
税額等の金額と同額である。
(5)納付すべき法人税額(別表8⑩欄)1億7943万6800円
上記金額は,上記(2)及び(3)の合計金額から上記(4)の金額を差し引いた
金額である。
(6)既に納付の確定した本税額(別表8⑪欄)1億6091万3500円
上記金額は,原告P2・19年12月期確定申告書に記載された差引所得
に対する法人税額と同額である。
(7)差引納付すべき法人税額(別表8⑫欄)1852万3300円
上記金額は,上記(5)の金額から上記(6)の金額を差し引いた金額であり,
原告P2・19年12月期更正処分により原告P2が新たに納付すべき法人
税額である。
2原告P2・19年12月期更正処分の適法性
原告P2・19年12月期の法人税に係る適正な所得金額及び納付すべき法
人税額は,上記1のとおり,それぞれ10億1434万6403円及び1億7
943万6800円であり,原告P2・19年12月期更正処分における所得
金額及び納付すべき法人税額は,上記金額と同額であるから,上記更正処分は
適法である。
3原告P2・19年12月期賦課決定処分の根拠と適法性
(1)原告P2・19年12月期賦課決定処分に伴って賦課される過少申告加算
税の金額は,原告P2・19年12月期更正処分により原告P2が新たに納
付すべきこととなった上記1(7)の税額1852万円に100分の10の割
合(通則法65条1項)を乗じて算出した185万2000円である。
(2)原告P2・19年12月期賦課決定処分における過少申告加算税の額は,
上記のとおりであり,原告P2・19年12月期の法人税に係る適正な過少
申告加算税の額は,上記金額と同額であるから,上記賦課決定処分は適法で
ある。
(別紙5)
当事者の主張の要旨
第1資産の低額譲受けにつき受贈益相当額が法人税法22条2項の「収益」に該
当するか否か(争点1)について
1被告の主張の要旨
(1)法人税法22条2項は,「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上
当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,
資産の販売,有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供,無償による資産
の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の
額とする。」と規定し,無償による資産の譲受けその他の取引からも収益が生
ずる旨を定めている。
(2)法人税法の他の条文との整合性からしても資産の低額譲受けの場合にも
法人税法22条2項の適用が及ぶこと
ア法人税法上の用語の解釈に当たっては,まず,同法の他の規定との整合
性を重視すべきことはいうまでもない。
イ寄附金の損金不算入を定める法人税法37条は,同条8項において,「そ
の譲渡又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は
当該経済的な利益のその供与の時における価額に比して低いときは,当該
対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をした
と認められる金額」は寄附金の額に含まれる旨規定している。この規定ぶ
りからすれば,同項は,寄附を受けた者側の観点からみた資産の低額譲受
け等においては,実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる部分が
含まれるとの前提に立っていることは明らかである。
ウまた,平成22年の税制改正により創設された法人税法25条の2(平
成22年法律第6号により追加)は,その1項において,同法22条2項
の別段の定めとして,「内国法人が各事業年度において当該内国法人との
間に完全支配関係(引用者注:法人税法2条12の7の6号に定める関係
のこと)(中略)がある他の内国法人から受けた受贈益の額(中略)は,
当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上,益金の額に算入しない」
旨を定めている。そして,同法25条の2第3項においては,「その譲渡
又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は当該経
済的な利益のその供与の時における価額に比して低いときは,当該対価の
額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与を受けたと認
められる金額」も同条の受贈益に含まれる旨規定している。これは,低額
による資産の譲受けにより生ずる,当該資産の譲受けに係る対価の額と譲
受時における適正な価額との差額である受贈益も,当然に収益として同法
22条2項の益金の額に算入されることを前提とした上で,別段の定めと
して,そのうちの同法25条の2第1項の要件に該当するものを益金の額
に算入しない旨を定めたものである(なお,同年の税制改正において,同
法22条2項は,何ら改正されていない。)。
エよって,資産を譲り受けた者側の観点からみて,資産の譲受けの時にお
ける適正な価額より低額の対価で資産の譲受けを受けた場合に,適正な対
価との差額について,実質的には無償による贈与を受けたものとして,法
人税法22条2項の無償による資産の譲受けに係る収益に含まれると解
することは,合理的な解釈である。
(3)資産の低額譲受けの場合の収益の額も益金の額に算入するのが法人税法
22条2項の趣旨と解されること
ア法人税法22条2項は,代表的な取引を列挙したのちに,「その他の取
引で資本等取引以外のもの」(引用者注:「資本等取引」については,同
条5項で定義されている。)から生じる収益を含めて包括的に益金の額に
算入すべきと規定しているのであって,あえて資産の低額譲受けの場合の
収益を益金の額から除外していると解するのは,その文理に従った解釈と
して不自然である。
イ法人税法22条2項が「有償による資産の譲受け」を列挙しなかったの
は,一般に,資産の有償取引は,適正な価額によって行われるのが常であ
って,適正な価額によって資産を取得しただけでは収益の発生が認められ
ないことによるものと考えられる。すなわち,「資産の譲渡」の場合には,
適正な価額によって譲渡された場合であっても,受領した金員が収益とし
て認識され,原価等との差額が譲渡益となるのに対し,「資産の譲受け」
の場合には,適正な価額によって資産を取得した場合であっても,その資
産を取得する者は,その資産の価額に見合う金員を支出するとともに,そ
の反対給付として資産を取得しているにすぎないため,「資産の譲渡」の
場合のように収益の発生が認識されないのであって,「資産の譲受け」は,
「資産の譲渡」とは収益の認識が異なるのである。
ウ加えて,課税の公平の観点から法人税法22条2項の趣旨を鑑みれば,
資産の低額譲受けの場合に,収益の額を認識し,益金の額に算入すべきこ
とはおのずと明らかである。すなわち,同項は,「無償による資産の譲受
け」の場合において,当該資産の適正な価額に相当する経済価値について,
贈与又は無償の供与を受けたものとして益金の額に算入すべき旨を定め
ているところ,低額による資産の譲受けの場合にあっても,当該資産には
譲受時における適正な価額に相当する経済的価値が認められることはい
うまでもない。よって,そのうちの一部さえ対価として収受していれば,
適正な価額との差額部分の収益が認識されないものとして扱うことは,無
償による資産の譲受けの場合と著しく公平を欠く不合理な結果が導かれ
ることになる。
(4)小括
以上によれば,資産の低額譲受けが行われた場合には,譲受時におけ
る当該資産の適正な価額と支払金額との差額(受贈益相当額)をもって法
人税法22条2項にいう「無償による資産の譲受け」に係る収益の額に当
たるというべきである。
2原告らの主張の要旨
(1)資産の低額譲受けは「無償による資産の譲受け」には該当しないこと
ア租税法においては文理解釈の原則が要請されること
租税法は侵害規範であり,法的安定性の要請が強く働くから,その解釈
は原則として文理解釈によるべきであり,みだりに拡張解釈や類推解釈を
行うことは許されない。また,法令の文理解釈に当たっては,法令中にそ
の意義が定義された特別の用語等は別として,その文言は一般的な社会通
念に従って解すべきである。
イ「無償」等の意義
一般用語としても法律用語としても,「無償」及び「有償」という概念
は,対価(代償)の有無により区別される。
ウ法人税法22条2項の「有償(中略)による資産の譲渡」の意義
最高裁平成6年(行ツ)第75号同7年12月19日第三小法廷判決・
民集49巻10号3121頁は,「譲渡時における適正な価額よりも低い
対価をもってする資産の低額譲渡は,法人税法22条2項にいう有償によ
る資産の譲渡に当たることはいうまでもない」と判示し,資産の低額譲渡
が「有償」譲渡に当たることを明らかにしている。
同判決で問題となった「有償又は無償による資産の譲渡」と本件で問題
となっている「無償による資産の譲受け」は,いずれも法人税法22条2
項に規定されており,同一条項中の文言を異なった意味に解することは不
合理であり,また,納税者の予測可能性・法的安定性を害する。したがっ
て,両者の「無償」の意義も同義に解すべきである。
エ租税法上も「低額」取引と無償取引との区別を前提とする規定が存する
こと
租税法には,以下のとおり,「低額」での譲渡又は譲受けを無償の取引
と明確に区別する条項が存する。
(ア)相続税法9条
みなし相続財産に関する規定である相続税法9条は,「対価を支払わ
ないで」利益を受けた場合と,「著しく低い価額の対価で」利益を受け
た場合を明確に区別し,それぞれの場合に贈与により取得したものとみ
なされる金額を「当該利益の価額に相当する金額」,「(当該利益の価
額から対価)の額を控除した金額」と明確に区別して規定している。
(イ)所得税法59条1項
贈与等の場合の譲渡所得等の特例について定めた所得税法59条1
項は,1号で,法人に対する「贈与」又は「遺贈」,個人に対する限定
承認に係る「相続」又は「包括遺贈」を規定し,2号で,法人に対する
「著しく低い対価として政令で定める額による譲渡」を規定する。
(ウ)法人税法37条8項
法人税法37条は,7項において,「対価」の支払いを伴わない「贈
与又は無償の供与」をした場合における当該資産等の価額を寄附金の額
とした上で,8項において,「対価」の支払いを伴う低額譲渡の場合に,
当該対価の額と当該価額との差額も(実質的に贈与又は無償の供与をし
たと認められる金額は)寄附金の額に含まれ得る旨規定し,「対価」の
支払いを伴わない取引(無償取引)(同条7項)と「対価」の支払いを
伴う取引(低額取引)(同条8項)を明確に区別して規定している。
また,寄附金の損金不算入に関し,寄附金の意義が法律に明記された
のは,昭和40年3月の法人税法の全文改正においてであり,同改正に
おいて,低廉譲渡等のいわゆる「みなし寄附金」が含まれること及びそ
の意義が法人税法に明記された(当時は37条6項)。
このように,法人税法37条7項及び8項は,その文言上も立法の沿
革からも,「対価」の支払いを伴うか否かにより,適用対象となる取引
を明確に区別している。
(エ)法人税法25条の2
法人税法25条の2も,2項において「対価」の支払いを伴わない「贈
与又は無償の供与」を受けた場合を,3項において「対価」の支払いを
伴う低額譲受けの場合をそれぞれ規定しており,両者を明確に区別して
いる。
(オ)小括
上記のとおり,租税法においては,条文の文言において,対価を支払
う「有償」取引と対価を支払わない「無償」取引を区別して規定してい
ることが明らかである。
オ小括
以上のとおり,法人税法22条2項の「無償による資産の譲受け」は,
対価あるいは代償を支払わずに資産を譲り受けることを意味するから,正
常な対価(通常の取引価額)より低い対価をもってする資産の低額譲受け
は,「無償による資産の譲受け」には当たらない。
(2)資産の低額譲受けは「その他の取引」にも該当しないこと
念のため主張すると,資産の低額譲受けは,法人税法22条2項の「その
他の取引」にも該当しない。
すなわち,確かに,同項の「資産の販売(中略)無償による資産の譲受け」
はいずれも例示であるが,これらの取引があえて明文で列挙されていること
からすれば,同項が明らかに排除していると認められる取引については,「そ
の他の取引」にも該当しないと解すべきである。
そして,同項が,「有償又は無償による資産の譲渡」と規定し,資産の譲
渡については,有償によるものも無償によるものも同項の取引に含まれるこ
とを明示しているのに対して,「資産の譲受け」については,「無償による」
という限定を付し,あえて,「『有償による』資産の譲受け」を規定してい
ないことを鑑みれば,同項はかかる取引を排除していることは明らかである
から,「その他の取引」には,有償による資産の譲受け(「低額による」資
産の譲受けも含む。)は含まれないと解すべきである。このように解するこ
とが,納税者の予測可能性及び法的安定性に資する。
(3)小括
以上で詳述したとおり,そもそも資産の低額譲受けは,法人税法22条2
項の「無償による資産の譲受け」に該当しないことはもちろん,同項の「そ
の他の取引」に該当する余地もないというべきである。
第2本件出資持分の価額を法人税基本通達9-1-14に従って評価することの
適否(争点2)について
1被告の主張の要旨
(1)本件出資持分の価額を法人税基本通達9-1-14に従って評価するこ
とが合理的であること
ア本件出資持分につき,法人税基本通達9-1-13の適用を検討すると,
同通達(1)に定める売買実例のあるものについては,当該事業年度終了の
日前6月間において売買の行われたもののうち適正と認められるものの
価額とされている。ここにいう「適正と認められるものの価額」とは,正
常な取引において形成された価額,すなわち,客観的な交換価値(不特定
多数の当事者間で自由な取引が行われた場合に通常成立する価額である
時価)をいうものと解される。しかし,後記(2)以下で詳述するとおり,
本件13社出資持分譲渡における取引価額は適正な価額とは認められな
いため,同通達(1)の適用は除かれる。
また,本件出資持分は,公開途上にある株式に該当しないことから,同
通達(2)の適用もなく,P4社と事業の種類,規模,収益の状況が類似し,
適正な価額が算定できる他の法人は見当たらないので,同通達(3)の適用
もない。
イしたがって,本件出資持分は,法人税基本通達9-1-14により評価
通達の例によって評価することが合理的と認められる。
(2)本件13社は原告P2との関係において独立した当事者の立場にはない
こと
ア本件13社が原告P2との関係において独立した当事者の立場にある
か否かについては,本件出資持分の取得及び譲渡の経緯並びに譲渡に応じ
た背景事情等を総合勘案して判断すべきであるところ,本件13社が本件
出資持分を取得した理由は,本件13社がいずれも原告P1と長年密接な
取引関係にある企業である上,双方の関係が,業界トップの食品・酒類卸
企業と同社に酒類を卸している酒類製造業者という関係にあることなど
から,将来にわたってP27一族グループによる原告P1の支配を望むP
7の意向に添うことにより,原告P1との良好な取引関係を継続するため
であった(乙4の2・9頁参照)。
イ次に,本件13社が本件出資持分を取得してから譲渡するまでの間にお
ける原告P1と本件13社の関係についてみても,卸売業界トップの企業
と,そのトップ企業に対し酒類を卸している主要な酒類製造業者という密
接な関係が継続していた。
ウ加えて,本件13社による本件出資持分の譲渡も,P4社から譲渡の依
頼を受け,これに協力して,同社から依頼された価額で,原告P1のグル
ープ会社であるP4社が買取先に指定した原告P2に対して譲渡された
ものにすぎない。
エ以上のような,本件出資持分の取得及び譲渡の経緯並びに譲渡に応じた
背景事情等を総合勘案すれば,本件13社が原告P2との関係において独
立した当事者の立場にあるとは,到底認められない。
(3)本件13社は,本件譲渡価額が適正な時価であるか否かの判断に当たり,
独自の検討を行ったとは認められないこと
本件13社は,本件出資持分を譲渡するに当たり,いずれも独自にP4社
の各資産・負債を時価評価するなどして当該出資の適正な時価について検討
していないばかりか,P4社が本件13社各社に宛てた平成17年8月25
日付けの「有限会社P4の出資金買受の件」(乙16の4)と題する書面に
より要請した,1口当たりの買受価格5000円の算定根拠のみならず,同
書面に参考として記載されている類似業種比準価額(1406円)及び簿価
純資産価額(3010円)について具体的に検討した事実も認められない。
したがって,本件13社は,P4社から提示された価額(1口当たり50
00円)につき,独自に特段の検討をすることなく受け入れたものと認めら
れる。
(4)原告らの主張に対する反論
ア原告らは,本件13社出資持分譲渡につき,税務調査によって,本件1
3社いずれにおいても,寄附金の認定がされていないことをもって,原告
P2は本件13社から経済的利益を受けていない旨主張する。
イしかしながら,寄附金の発生と受贈益の発生が表裏の関係にあることと,
寄附金及び受贈益に係るいわゆる認定課税がどの時期に行われるかとい
うこととは次元が異なる問題であり,本件13社出資持分譲渡に件う本件
13社に対する寄附金の認定課税と原告P2に対する受贈益の認定課税
は,当然のことながら,納税義務者やその認定の主体が異なる以上,税務
調査において,経済的利益を供与した側に寄附金が認定課税されていない
ことをもって,直ちに,他方の者が経済的利益を受けていないことにはな
らないし,その経済的利益について認定課税されないことにもならない。
原告らの上記主張には理由がない。
(5)本件13社出資持分譲渡における取引価額は適正な価額とは認められな
いこと
ア取引相場のない株式については,そもそも上場株式のように,大量かつ
反復継続的な取引は予定されておらず,また,取引事例が存在するとして
も,その数がわずかにとどまるにすぎない場合には,当事者間の主観的事
情に影響されたものでないことをうかがわせる特段の事情がない限り,当
該実例価額は,売買当事者間の主観的事情を離れた当該株式の客観的交換
価値を反映したものとは評価できないというべきである。
イ上記(2)及び(3)で述べたとおり,本件13社による本件出資持分の譲渡
価額(1口当たり5000円)は,特定の取引関係者間における極めて閉
鎖的な取引に係る価額であり,また,同価額は,平成17年8月25日付
けで,P4社の代表取締役であるP8から本件13社に宛てた本件出資持
分の買受けに係る依頼文書において,一括して一方的に提示された価額で
あるから,本件出資持分の買受けは,実質的な取引事例としては1事例に
すぎない。
したがって,本件13社による本件出資持分の譲渡価額(1口当たり5
000円)は,適正な価額,すなわち不特定多数の当事者間で自由な取引
が行われた場合に通常成立する価額(客観的な交換価値)とは到底認めら
れない。
2原告らの主張の要旨
(1)後記(2)以下で詳述するとおり,原告P2と本件13社とは,純然たる第
三者の関係にあるし,また,本件13社は,譲渡価額の妥当性について十分
な検討をした上,合理的な経営判断として譲渡に応じたものである。これら
13件もの相互に独立した当事者間において行われた各売買取引が,適切な
売買実例に該当することは明らかであり,本件13社出資持分譲渡における
取引価額は,適正な価額と認められる。
したがって,本件出資持分は,法人税基本通達9-1-13(1)に該当す
るものとして,同通達の例により評価されるべきであり,その価額は,適切
な売買実例に基づいて算定された1口当たり5000円である。
(2)本件13社と原告P2は純然たる第三者の関係にあること
ア本件13社と原告P2との間には,資本関係は全くなく,同族関係もな
く,役員の兼任といった事実もない。そして,本件13社は,相互に市場
において競合・競争する関係にある。
イまた,原告P1は,古くから全国規模で酒類卸売販売免許を保有してい
たことから本件13社を含む多数の酒造メーカー及び小売業者と取引を
していたものの,平成17年当時,全国規模で酒類を取り扱っていたのは
原告P1だけでなく,株式会社P30やP31株式会社といった業者もそ
うであったほか,地域ごとに大手の酒類卸売業者も存在していた。本件1
3社は,いずれもわが国を代表する大企業であり,原告P1との取引を望
まなければ他の卸ルートで商品を流通させることは容易であったから,本
件13社出資持分譲渡に当たり,たとえ国分が1口当たり5000円とい
う価格を提示したとしても,これに従わなければならないような関係には
なかった。
ウ以上によれば,本件13社と原告P2とは,相互に独立した立場にある
純然たる第三者の関係にあるというべきである。
(3)本件13社は譲渡価額の妥当性について十分な検討をした上,合理的な経
営判断として譲渡に応じたものであること
ア本件13社は,平成17年8月25日付けで,P4からの「有限会社P
4出資金買受の件」(乙16の4)と題する書面の送付を受け,各社で必
要な検討及び稟議等を経て,1口当たり5000円で譲渡することをそれ
ぞれ意思決定した。
イ本件13社は,それぞれ,過去の配当実績や,書面に添付された類似業
種比準価額及び簿価純資産価額の算定根拠を検討し,譲渡損益を試算した
た上で,1口当たり5000円が適正な時価であると考えたからこそ,本
件13社出資持分譲渡に応じたものである(甲29ないし41,58,5
9)。そして,このような検討や試算は,経済合理性の検討としては十分
かつ一般的な方法であり,本件13社にとって売却価額に見合わない多大
なコストと時間を負担することを余儀なくされることに鑑みれば,本件1
3社の各本件出資持分の評価に当たり,P4の各資産・債務を時価評価す
ることが必須の手続であるということはできない。
(4)本件13社に寄附金課税がされていないこと
同じ出資持分の譲渡に関する課税関係を検討する際,売主と買主とで時価
を異にするということはないはずであるから,本件13社出資持分譲渡が適
正な価額によらないというのであれば,本件13社に対しても,寄附金課税
がされるはずであるところ,実際にはそのような課税はされていない。
この点からみても,本件13社出資持分譲渡において,原告P2が経済的
利益を受けたと認めることはできない。
第3原告P1が取得した本件出資持分が「同族株主以外の株主等が取得した株式」
に該当し配当還元方式で評価すべきか否か(争点3)について
1被告の主張の要旨
(1)原告P1が取得した本件出資持分の価額の算定方式の決定について
原告P1・17年12月期における原告P1の受贈益の額の計算において
は,本件P3出資持分譲渡1によって同社がP3から譲り受けた本件出資持
分の価額について,法人税基本通達9-1-14に基づき,課税上弊害がな
い限り,評価通達178から189-7までの例によって評価をすることに
なる。
その場合,評価通達178ただし書が,「同族株主以外の株主等が取得し
た株式」については,同通達188の定めによって評価すると規定している
ことから,本件出資持分がこれに該当するかが問題となる。すなわち,仮に,
本件出資持分が「同族株主以外の株主等が取得した株式」に該当する場合に
は,同通達188-2に定める方式(配当還元方式)によりこれを評価する
ことになるが,他方,P4社の株主である原告P1が同通達188(1)の「同
族株主」に該当し,本件出資持分が上記株式に該当しない場合には,同通達
178の定めに従い,同通達189に定める特定の評価会社の株式に該当し
ない限り,同通達179の方式(いわゆる「原則的評価方式」)に従ってこ
れを評価することとなる。
よって,原告P1が取得した本件出資持分の価額の算定方式の決定に当た
っては,P4社の株主である原告P1が「同族株主」(同通達188(1))
に該当するか否かが,重要な検討事項となる。
(2)原告P1がP4社の「同族株主」に該当するか否かの判定について
評価通達188(1)は,「同族株主」とは,「株主の1人及びその同族関
係者(中略)の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の30パーセ
ント以上(中略)である場合におけるその株主及びその同族関係者をいう。」
と規定し,「同族関係者」とは,「法人税法施行令4条(同族関係者の範囲)
に規定する特殊の関係のある個人又は法人をいう。」と規定している。
本件P3出資持分譲渡1の時点におけるP4社の株主は,P8(議決権割
合0.006パーセント),原告P2(同31.572パーセント)及び原
告P1(同0パーセント)のほかは,他に同族関係者である個人又は法人を
有しない本件13社のみである。そうすると,同通達188(1)の適用にお
いて,P8を「株主の1人」とした場合,原告P2及び原告P1が共にP8
の「同族関係者」に該当するのであれば,「株主の1人及びその同族関係者」
の議決権割合の合計が30パーセント以上(31.578パーセント)とな
るから,そのグループに属する原告P1は,P4社の「同族株主」に該当し,
原告P1が取得した本件出資持分の価額は,同通達179の方式(原則的評
価方式)により評価することになる。
そこで,以下,P4社の株主である原告P2及び原告P1がP8の「同族
関係者」(同通達188(1))に該当するのか,それぞれ検討する。
(3)原告P2はP8の「同族関係者」に該当すること
原告P2の株主のうち,P8及びその子であるP10(同人は,P8との
関係につき法人税法施行令4条1項1号に規定する「親族」であるから,「特
殊の関係のある個人」に該当する。)の原告P2における議決権割合は,本
件P3出資持分譲渡1の時点において,それぞれ66.33パーセント及び
0.33パーセントであり,その合計は50パーセントを超えるから,原告
P2は,P8との関係において,同法施行令4条2項(評価通達188(1)
により,同条2項中「株式の総数」は「議決権の数」と,「発行済株式の総
数」は「議決権総数」と読み替えたもの。以下同じ。)1号に規定する「特
殊の関係のある法人」に該当する。
よって,原告P2は,P8の「同族関係者」(同通達188(1))に該当
する。
(4)原告P1はP8の「同族関係者」と取り扱うべきこと
ア法人税法施行令4条2項を形式的に当てはめた場合に,原告P1がP8
と「特殊の関係のある法人」に該当するか否かについて
原告P1の株主のうち,P8,その親族であるP10,P24及びP2
5(この3名は,P8との関係につき法人税法施行令4条1項1号に規定
する「親族」であるから,「特殊の関係のある個人」に該当する。)並び
に原告P2(同社は,上記(3)のとおり,P8との関係において,同条2
項1号に規定する「特殊の関係のある法人」に該当する。)の原告P1に
おける議決権割合は,本件P3出資持分譲渡1の時点において,それぞれ
5.58パーセント(P8),0.71パーセント(P10),4.51
パーセント(P24),4.28パーセント(P25)及び28.41パ
ーセント(原告P2)であり,これらの者を併せて計算しても議決権割合
は100分の50を超えない(43.52パーセント)から,同項を形式
的に当てはめれば,原告P1は,P8との関係において,同項各号に規定
する「特殊の関係のある法人」に該当しないことになる。
イ評価通達188(1)の適用に当たり,原告P1はP8との関係において,
法人税法施行令4条2項3号の「特殊の関係のある法人」と同視できる特
別な事情があり,実質的な「同族関係者」と取り扱うべきであること
しかし,原告P1をP8の「同族関係者」と取り扱うべきか否かを判定
するに当たり,①評価通達188(1)の「同族関係者」を定めた趣旨を勘
案すれば,「特殊の関係のある法人」の該当性の判断において,同項を形
式的に当てはめることが,適正な評価の観点から相当でない場合があるこ
と,②P4社は,P8,原告P1及び原告P2によって実質的に支配され
ており,P4社は,同通達188(1)の適用上,P8の「特殊の関係のあ
る法人」(同項2号)と同視し得ること,③P4社について,②の事情を
前提として,同社をP8の「特殊の関係のある法人」に含めて同項を適用
してみると,原告P1の株主において,P8及びこれと特殊の関係のある
個人及び法人の議決権の合計は72.09パーセントとなり,100分の
50を超え,原告P1をP8の「特殊の関係のある法人」(同項3号)と
同視し得る特別の事情を有することに鑑みれば,本件出資持分の評価にお
いて,原告P1は,P8の「同族関係者」(同通達188(1))に該当す
るものと取り扱われるべきである。
以下,詳述する。
ウ形式的には法人税法施行令4条2項の規定に該当しなくても,評価通達
188(1)の適用上,「特殊の関係のある法人」と扱うべき場合があるこ

評価通達188の株式の評価についての定めである同通達188-2
は,「同族株主以外の株主等」が取得した株式を配当還元方式により評価
する旨を定めている。すなわち,一般的に,非上場のいわゆる同族会社に
おいては,会社経営等について同族株主以外の株主の意向が反映されるこ
とはなく,同族株主以外の株主が当該会社の株式を保有するのは,会社経
営に関わりを持つことや,株価の上昇によるキャピタルゲインを得ること
等の投機的あるいは投資的動機によるものではなく,当該会社との安定的
な取引関係の維持,継続を図ることなど,数値的に表すことのできない無
形の利益を期待して,いわば取引上のつきあいによる場合が多く,その株
式を保有する株主にとっては,当面,配当を受領するということ以外に直
接の経済的利益を享受することがないという実態がある。評価通達188
-2は,そのような実態を考慮し,当該会社に対する直接の支配力を有し
ているか否かという点において,同族株主とそれ以外の株主とでは,その
保有する当該株式の実質的な価値に大きな差異があるといえることから,
同族株主以外の株主の保有する株式の評価については,特別の例外的措置
として,類似業種比準方式よりも安価に算定される配当還元方式による株
式の評価方法を採用することにしたものである。
このような趣旨に鑑みれば,同通達188(1)が定める「同族株主」と
は,保有株式の評価に当たり,上記「特別の例外的措置」を適用する必要
のない株主,すなわち,密接な関係を有する者同士がグループを形成して
会社の経営を支配することが一般的である同族会社において,評価会社の
経営に関して実効的支配力を有する株主がこれに該当するものと扱うべ
きである。このように解することは,同通達188(1)が,会社の経営に
関する実効的支配力を測定する要素として,議決権割合に着目し,同族株
主に該当するか否かを同族関係者の有する議決権割合の合計が30パー
セント以上(一定の場合は50パーセント超)であるか否かによって判断
していることとも整合する。
もっとも,同通達188(1)は,上記で述べた当該株主と密接な関係を
有する者(同族関係者)に該当するか否かが必ずしも明確に判定できない
場合も想定されるため,客観的かつ簡易に判定する方法として,法人税法
施行令4条に規定する特殊の関係のある個人又は法人に該当するか否か
によって判断することとしたものである。したがって,形式的には,同条
2項各号に該当しない法人であっても,実質的にみて,株主の1人及びそ
の同族関係者のグループによって支配されている法人は,単に同項各号に
形式的に該当しないという理由から,同通達188(1)の「同族株主」の
判定において,一律に「特殊の関係のある法人」に該当しないものと取り
扱うことは,同通達が定める適正な時価の算定という趣旨からは相当でな
く,同通達の適用上,「特殊の関係のある法人」と同視して扱うべきであ
る。
エP4社はP8らによって実質的に支配されており,評価通達188(1)
の適用に当たり,P8の「特殊の関係のある法人」と同視すべき特別の事
情があること
P4社の株主のうち,P8,原告P1及び原告P2のP4社における議
決権割合は,本件P3出資持分譲渡1の時点において,それぞれ0.00
6パーセント,0パーセント及び31.572パーセントであって,これ
らの者を併せて計算しても議決権割合は100分の50を超えない(合計
31.578パーセント)から,法人税法施行令4条2項を形式的に当て
はめると,P4社がP8との関係において同項2号の「特殊の関係のある
法人」に該当しないことになる。
しかしながら,以下の(ア)ないし(ウ)において述べるとおり,本件13
社が本件出資持分を保有していたのは,原告P1との関係強化のためであ
り,P4社の経営に参画することを目的とした取得ではなかったものと認
められ,P4社は,P8,原告P1及び原告P2によって構成されるP2
7一族グループによって実質的に支配されており,株主の1人及び同族関
係者のグループによって支配されている法人であったことからすれば,P
4社は,P8の「特殊の関係のある法人」(同号)と同視すべきである。
(ア)本件13社が本件出資持分をP7から譲り受け,原告P2に譲渡し
た経緯
aP7は,平成3年▲月▲日,原告P1の取引会社のうちの有力な
取引先である本件13社に対し,本件出資持分のうち各4000口ず
つ(合計5万2000口,同社の総出資口数の52パーセント)を,
1口当たり額面額で一斉に売却した結果,P7名義の本件出資持分口
数は4万7995口となり,P8の有する5口と併せて,P27一族
グループの同社に対する出資割合は48パーセントとなった。
そして,P4社は,同日,本件出資持分の譲渡を制限する旨の定款
改正を行い,P7及びP8の意思に反した本件出資持分の譲渡はなし
得なくなり,P27一族グループによりP4社を支配できる態勢が将
来にわたって安定したものとなった。
なお,P7は,同月▲日,死亡した。
bP3は,平成17年3月31日,原告P1及び原告P2に対し,そ
の保有する本件出資持分の全部(4万7995口)を譲渡した。
また,本件13社は,同年8月25日付けで,P4社からガバナン
スの見直しのため本件出資持分を原告P2に集約する旨の要請を受
け,同年10月から同年12月にかけて,その保有する本件出資持分
の全部(各4000口)を原告P2に譲渡した。
上記要請は,P27一族グループがP4社の企業支配を強化するた
めに行われたものであるところ,そのような目的達成のために,本件
13社がごく短期間にほぼ一斉に買取要請に応諾し,P27一族グル
ープが本件出資持分を容易に買戻しすることができたこと自体,P2
7一族グループがP4社を実質的に支配していたことの証左である。
(イ)本件13社による本件出資持分の保有は,P4社の経営に参画する
目的ではなかったこと
a本件13社は,P4社の平成17年3月25日開催の臨時社員総会
で委任状(乙38の1ないし13)を提出しているところ,当該委任
状は,いずれもその表題及び本件13社各社の保有出資口数の記載の
直下の第1文において,「私は()を代理人と定め,下記の権
限を委任します。」(注:「()」は空白である。)との同一
の文言が記載され,委任状中の受任者の氏名欄が白紙(空白)になっ
ていることから,本件13社が提出した上記委任状は,白紙委任状に
該当する。
bそして,本件13社の上記委任状の内容を見ると,いずれも提示さ
れた議案に賛成する旨に「○」が付けられており,議案に対して賛否
を明示していない場合や原案に対して修正案が提出された場合には
白紙委任する旨記載されている。かかる文言からは,本件13社が独
自の意思に基づいて議決権を行使する意図は全くうかがえない。結局
のところ,本件13社が提出した上記委任状の実質的な内容は,P4
社を実質的に支配するP27一族グループによる経営に対し,本件1
3社が何ら異議を差し挟まない旨の意思表示をしたものにすぎない。
その上,本件13社が本件出資持分を保有していた間,社員総会等へ
の出席は一度もなく,白紙委任状又は議決案に全て賛成する趣旨の委
任状を提出していたことなども併せ考慮すれば,本件13社が本件出
資持分を保有していたのは,食品・酒類卸業の首位に立ち,有力な取
引先である原告P1との関係強化のためであり,P4社の経営に参画
することが目的ではなかったものと認められる。
cまた,本件13社が,P4社の経営に介入するような行動をとるこ
とによって,原告P1との取引関係を悪化させ,自身の経営に悪影響
を生じさせるような行動をとること自体がおよそ想定し難い上,本件
13社は互いに競業関係に立つ企業であるから,これらが結託して,
P4社の経営権をP27一族グループから奪い取るような事態も想
定できない。
そうすると,本件13社が本件出資持分を取得した後,譲渡するま
での間,P4社に対するP27一族グループの支配状況は,P4社と
原告P1の株式持合いによる原告P1の有する本件出資持分の議決
権に関する点を除き,P7の相続開始日以降,一貫して何ら変化がな
かったというべきである。
(ウ)小括
以上に述べたP27一族グループと本件13社との関係からすれば,
P4社の経営は,P7の相続開始日以後,本件13社が本件出資持分を
譲渡するまでの間,P27一族グループが実質的に支配していたことが
優に認められる。
オP4社がP8の「特殊の関係のある法人」に当たるとして評価通達18
8(1)を適用すれば,原告P1はP8の「同族関係者」に該当することに
なること
原告P1がP8の「同族関係者」(評価通達188(1))に該当するか
を判定する場合,上記アのとおり,原告P1の株主のうち,P8及びその
特殊の関係のある個人及び法人の議決権割合の合計が43.52パーセン
トであるから,原告P1は,形式的にはP8にとって法人税法施行令4条
2項各号の「特殊の関係にある法人」に該当しない。
しかし,上記ウで述べた「同族株主以外の株主等」が取得した株式の評
価方法についての評価通達の規定の趣旨,及び上記エで述べたとおり,P
4社がP8の「特殊の関係のある法人」(同項2号)と同視し得る特別の
事情があることからすると,同通達188(1)の適用上,P4社は,P8
と「特殊の関係のある法人」(同号)に当たるとして,原告P1がP8の
「同族関係者」(同通達188(1))に該当するかを判定すべきである。
そうすると,本件P3出資持分譲渡1の時点における原告P1の株主の
うち,P8及びこれと特殊の関係のある個人及び法人(P10,P24,
P25及び原告P2)の議決権割合(合計43.52パーセント)に,リ
アルエルテート社の議決権割合(28.57パーセント)を加えれば,1
00分の50を超える(72.09パーセント)ことになるから,同通達
188(1)の適用上,原告P1はP8と「特殊の関係のある法人」(同項
3号)と同視すべきである。
よって,P4社の株主のうち,原告P1は,P8の「同族関係者」(同
通達188(1))と取り扱われるべきである。
(5)原告P1はリアルステート社の「同族株主」かつ「中心的な同族株主」と
取り扱うべきことを前提とすれば,本件出資持分の価額は原則的評価方式に
より算定すべきこと
ア上記(3)及び(4)で述べたとおり,原告P2及び原告P1は,共にP8の
「同族関係者」に該当するから,上記(2)で述べたところに照らし,原告
P1は,P4社の「同族株主」に該当する。
イもっとも,評価通達188(2)は,「中心的な同族株主のいる会社の株
主のうち,中心的な同族株主以外の同族株主で,その者の株式取得後の議
決権の数がその会社の議決権総数の5パーセント未満であるもの」の取得
した株式については,「同族株主以外の株主等が取得した株式」に当たる
とし,同通達188-2に定める方式(配当還元方式)により算定するも
のとしている。本件出資持分が上記株式に該当する場合,これを同通達1
79の方式(原則的評価方式)に従って評価することはできないことにな
る。
ここで,評価通達188(2)において,「中心的な同族株主」とは「課
税時期において同族株主の1人並びにその株主の配偶者,直系血族,兄弟
姉妹及び1親等の姻族(これらの者の同族関係者である会社のうち,これ
らの者が有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の25パーセン
ト以上である会社を含む。)の有する議決権の合計数がその会社の議決権
総数の25パーセント以上である場合におけるその株主」をいうところ,
原告P2は,P4社の議決権の25パーセント以上(31.572パーセ
ント)の議決権を有する「中心的な同族株主」に該当することから,P4
社は,「中心的な同族株主のいる会社」である。
そうすると,評価通達188(2)の適用に当たっては,原告P1が「中
心的な同族株主」に該当するか否かが問題となる。
ウこの点,原告P1は,P4社に議決権の4分の1超(28.57パーセ
ント)を保有されていることから,商法241条3項によれば,P4社の
議決権を有しないこととなる。そして,原告P1は,原告P2の議決権も
有しないから,原告P2は,その有するP4社の議決権を原告P1の議決
権に合計すべき会社に含まれない。そうすると,原告P1は,形式的には,
P4社の「中心的な同族株主」に該当せず,かつ,原告P1がP4社に対し
て有する議決権割合は,5パーセント未満(0パーセント)であるから,
本件出資持分は評価通達188(2)の適用を受ける株式に該当することに
なりそうである。
しかしながら,上記(4)エで述べたとおり,P4社は,P8,原告P1
及び原告P2によって構成されるP27一族グループが実質的に支配し
ていた会社であり,原告P1も,P4社の総出資口数の24パーセントを
有していた会社である。このように,P27一族グループが一体となって
P4社を支配していた状況に鑑みれば,原告P1は,P4社の「中心的な
同族株主」と同視すべきである。
したがって,本件出資持分は,評価通達188(2)の適用を受ける株式
には該当しない。
(6)小括
以上のとおり,原告P1が取得した本件出資持分は,評価通達188の適
用を受けないものとして,同通達179の方式(原則的評価方式)に従って
評価すべきである。
2原告P1の主張の要旨
(1)争点2において主張したとおり,本件出資持分の時価は,1口当たり50
00円であるが,仮に,当該主張が認められないとしても,本件出資持分の
評価については,以下のとおり,配当還元方式によって算定すべきである。
すなわち,評価通達188(1)は,法人税法施行令4条の規定を読み替え
て,ある法人が株主の1人の同族関係者に該当するか否かは,当該法人の議
決権総数に占める割合が50パーセント超であるか否かによって判定する
こととしている。そして,本件P3出資持分譲渡1当時,P4社は,P8及
びその同族関係者である原告P2によって,議決権総数の31.57パーセ
ントを保有されていたにすぎず,上記50パーセントを超えないことから,
P8の同族関係者に該当しない。そうすると,P4社において,その議決権
総数の30パーセントを超える同族株主グループは,P8とその同族関係者
である原告P2のみであり,原告P1は,P4社の同族株主に該当しない。
よって,本件出資持分は,評価通達178ただし書の「同族株主以外の株
主等が取得した株式」に該当し,同通達188の定めに従い,同通達188
-2に定める方式(配当還元方式)によって評価することとなる。
(2)被告の主張に対する反論
ア被告は,原告P1がP4社の「同族株主」に該当するか否かについて,
「原告P2及び原告P1がP8の『同族関係者』に該当するか否かが問題
となる」と主張する。
しかし,原告P1がP4社の「同族株主」に該当するか否かの判定は,
まずP4社がP8の「同族関係者」に該当することが前提となるのであり,
その前提が満たされることにより原告P1もP8の「同族関係者」と判定
されることとなる関係にあるから,被告の上記主張の検討過程には誤りが
ある。
イ被告は,P4社がP8の「同族関係者」に該当する旨主張する。
しかし,評価通達188(1)が「同族関係者」を法人税法施行令4条2
項各号の「特殊の関係のある法人」を準用して定めた趣旨は,ある法人が
客観的かつ簡易に一のグループによって支配されている法人であるかを
判定することができないことから,形式的に議決権保有割合によって判定
するところにあると解される。また,「実質的支配」のような不明確,か
つ,予測不能な基準をもって「同族関係者」ひいては「同族株主」の判定
を行い,当該判定に基づき株式の評価方法を決定することは,公正な取引
市場における取引がなく,時価の算定が極めて困難である取引相場のない
株式について,画一的な基準で評価方式を定めることとした評価通達の趣
旨にも反し,法的安定性を著しく害することになる。したがって,法人税
法施行令4条2項2号の「特殊の関係のある法人」に該当しないP4社に
ついて,P8の「特殊の関係のある法人」すなわち「同族関係者」に該当
する余地はないというべきである。
また,原告P1は,P4社の議決権を保有していないから,同社の「実
質的支配」はできず,P8及び原告P2の株主グループも,P4社の議決
権割合のわずか31.57パーセントしか保有していなかった上,後記
(ア)ないし(ウ)のとおり,本件13社にP4社の経営に参画する目的がな
かったとはいえないから,やはり同社の「実質的支配」はできない。
したがって,被告の上記主張には理由がない。
(ア)我が国の企業が他社に対して出資を行う場合,社員総会(株主総会)
に出席して議決権を行使することは一般的に行われていないが,だから
といって,当該出資者が出資先の会社の経営に参画する意図を放棄して
いると評価することはできない。なぜなら,配当の議案等については,
わざわざ社員総会(株主総会)に出席などせずに,特に問題がないため
白紙委任状を提出している出資企業といえども,当該議案について何ら
検討をしていないとはいえないし,ましてや会社の財産や経営に影響を
及ぼすような重要議案がある場合にまで,何らの検討を加えずに白紙委
任状を提出するとはいい難いからである。
本件13社について,P4社に出資するに当たり,同社の経営に関し
て議決権を実質的に行使(反対の態度をとるなど)することは一切しな
いといった「議決権行使に関する特約」を予め書面で明確に交わしてい
るなどの事情はなく,結果としてこれまで議案に対して反対をすること
はなかったという事実は,経営の根幹に影響を与えるような重要な議案
が提出された際にも白紙委任状等の提出で済まして反対の意思表示は
行わないことを示す事情には全くならない。
(イ)本件13社は,日本を代表する酒造メーカーであるばかりか,日本
を代表する上場企業(大企業)も多数含まれている。こうした多数の株
主を擁しコンプライアンスの要請が高度な企業の担当者が,出資先の議
決権行使にあたり,何もチェックせずに白紙委任をすることなど通常考
えることができないし,仮に重要な議案が提出されることがあったとす
れば,それに対して無条件に賛成をしたと断ずることなど,およそでき
ないことである(甲29~41)。
また,酒類における卸売業者と酒造メーカーとの関係をみても,本件
13社以外に大手卸売業者が複数存在しており,かつ,地方ごとに有力
な卸売業者も存在している。したがって,酒造メーカーとしては,売上
が業界トップである卸売業者との関係に拘泥しなければならない理由
はなく,他の卸売業者に切り替えることは酒造メーカーの自由な判断で
いつでも行うことができる状況にあった。そのようにして取引関係を切
られる可能性があるのは,むしろ卸売業者である原告P1の側であった。
現に,今回対象になっている期間の後に業界再編(大手の合併など)も
あり,原告P1は現在においては業界トップではない。このような関係
のもとで,取引先に出資持分を取得してもらったことによって,殊更密
接な関係があると考えることは,およそ困難である(甲61)。
(ウ)本件13社が,P4社の出資持分を保有していた期間においては,
安定した配当(毎期5パーセント)がなされており,その社員総会にお
ける議案も,大半が配当に関する議案であった。そのため,当該議案に
ついて,本件13社が反対する理由は存在しなかった。すなわち,P4
社の経営を改革するなどの出資者にとり利害関係が生じ,慎重な判断が
求められるような重大な議案はなかった(甲58,59)。したがって,
社員総会に出席しなかったことや,白紙委任状ないし議案に全て賛成す
る趣旨の委任状が提出されていたことは,かえって自然かつ一般的なこ
とであったというべきである。
ウ被告は,原告P1がP4社の「中心的な同族株主」である旨主張する。
しかし,被告は,「P27一族グループが一体となってP4社を支配し
ていた状況に鑑み」て,原告P1をP4社の「中心的な同族株主」と同視
しているところ,P4社の議決権を有しない原告P1を「P27一族グル
ープ」に加えること自体失当であるし,議決権を有しない原告P1がP4
社を「実質的に支配」できる理由もなく,実際に同社を「実質的に支配」
している事実もないから,原告P1をP4社の「中心的な同族株主」と同
視することはできない。
したがって,被告の上記主張には理由がない。
第4P4社の「株式保有特定会社」該当性(争点4)について
1被告の主張の要旨
(1)本件出資持分の評価に当たり評価通達189(2)が適用されること
ア原告らは,評価通達189(2)について,日本のバブル経済期における
一部企業のオーナーらによる行き過ぎた節税策(株式をオーナーから持株
会社に移転させて,相続税の評価額を圧縮する方法)に対処する趣旨・目
的のために定められたものであり,P27一族グループのガバナンスの見
直しの一環としてなされた本件各譲渡における本件出資持分の価額の評
価に同通達を適用することは,上記趣旨・目的から逸脱する旨主張する。
イしかし,平成2年8月3日付けで評価通達が改正され,同通達189(2)
が定められた目的は,土地や株式などの財産については,その財産につい
ての評価額と実際の取引価額(時価)との間に開差を生じさせることによ
り,同開差を利用した租税回避行為の原因にもなっていることに鑑み,課
税の公平の観点から,そのような開差の是正とともに,より株式取引の実
態に適合するように評価の一層の適正化を図ることにあった。
上記評価通達の改正において,会社の総資産のうちに占める各資産の保
有状況が,類似業種比準方式における標本会社である上場会社に比して著
しく株式等に偏った会社(株式保有特定会社)の株式については,一般の
評価会社に適用される類似業種比準方式により株価の算定を行うことは,
同方式を適用すべき前提条件を欠くものと認められるため,適正な評価を
期し難いことから,会社の株式等の保有状況の実態を踏まえて,株式等の
保有割合の基準により「株式保有特定会社の株式」に係る評価方法が定め
られたのである。
このように,株式保有特定会社の株式の評価方法については,租税負担
の回避を防止するために定められたものではないから,株式保有特定会社
に該当するか否かの判断に当たり,いかなる場合においても,租税回避行
為の弊害の有無を含む,その企業としての規模や事業の実態等を総合考慮
すべきであるとはいえず,原告らの上記主張には理由がない。
(2)P4社が評価通達189(2)の「株式保有特定会社」に該当すること
ア評価通達178ただし書は,取引相場のない株式のうち,特定の評価会
社の株式の価額は,同通達189の定めによって評価するとしている。
P4社について,平成16年12月31日時点における従業員は0人,
同日以前1年間の取引金額は4794万6720円であるから,同社は,
評価通達178に定める小会社に該当する。そうすると,同日におけるP
4社が所有する各資産を評価通達に定めるところにより評価した価額の
合計額のうちに占める株式及び出資の合計額の割合(株式保有割合)が5
0パーセント以上であれば,同社は,同通達189(2)に定める株式保有
特定会社に該当することになる。
イP4社の株式保有割合について
(ア)P4社が所有する各資産の価額を評価通達に定めるところにより
評価するに当たっては,P4社が保有する原告P1の株式の評価方式が
問題となる。すなわち,原告P1の株主であるP4社が,同通達188
に定める「同族株主以外の株主等」に該当する場合には,同通達188
-2の方式(配当還元方式)により原告P1の株式を評価することにな
るが,他方,P4社が同通達188(1)の「同族株主」に該当する場合
には,同通達178の定めに従い,同通達179の方式(原則的評価方
式)により原告P1の株式を評価することになる。そして,原告P1の
本件平成17年度各譲渡の直前期末以前1年間における従業員数は約
1650人であるから,原告P1は,同通達178に定める「大会社」
に該当し,原告P1の株式の評価額は,原則的評価方式のうち類似業種
比準方式によって算定することとなる。
(イ)原告P1の株主のうちP8の「同族関係者」に該当する者について
a原告P1の株主のうち,P8を「株主の1人」とした場合,P10,
P24,P25は,いずれも,P8との関係において法人税法施行令
4条1項1号に掲げる者に該当するから,評価通達188(1)の適用
上,P8の「同族関係者」(特殊の関係のある個人)に該当する。
b原告P2の株主のうち,P8及びP10(P8との関係において,
法人税法施行令4条1項1号に規定する「親族」であるから,「特殊
の関係のある個人」に該当する。)の原告P2における議決権割合は,
本件平成17年各譲渡の時点において,それぞれ66.33パーセン
ト及び0.33パーセント(合計66.66パーセント),本件平成
18年各譲渡の時点において,それぞれ23.33パーセント及び4
3.33パーセント(合計66.66パーセント)であり,その合計
はいずれも50パーセントを超える。そのため,原告P2は,P8と
の関係において,法人税法施行令4条2項1号に掲げる法人に該当し,
同通達188(1)の適用上,P8の「同族関係者」(特殊の関係のあ
る法人)に該当する。
c争点3で述べたところに照らせば,P4社は,P8,原告P1及び
原告P2によって構成されるP27一族グループによって実質的に
支配されているから,本件各譲渡において,評価通達188(1)の適
用上,P8の「同族関係者」と取り扱われるべきである。
(ウ)P4社は原告P1の「同族株主」と取り扱うべきこと
a評価通達188(1)は,「同族株主」について,「課税時期におけ
る評価会社の株主のうち,株主の1人及びその同族関係者(中略)の
有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の30パーセント以
上である場合におけるその株主及びその同族関係者をいう。」と定め
ている。
b原告P1の株主のうち,P8並びにその同族関係者であるP10,
P24,P25,原告P2及びP4社の原告P1における議決権割合
は,本件P3各出資持分譲渡の時点(平成17年3月31日)におい
て,それぞれ5.58パーセント(P8),0.71パーセント(P
10),4.51パーセント(P24),4.28パーセント(P2
5),28.41パーセント(原告P2)及び28.57パーセント
(P4社)であり,その合計は,72.09パーセントとなる。
また,上記議決権割合は,本件13社出資持分譲渡の時点(平成1
7年10月4日ないし同年12月6日)及び本件平成18年各譲渡の
時点(平成18年3月20日)において,それぞれ5.58パーセン
ト(P8),0.71パーセント(P10),4.51パーセント(P
24),4.28パーセント(P25),31.98パーセント(原
告P2)及び25.00パーセント(P4社)であり,その合計は,
72.09パーセントとなる。
なお,原告P1は,P4社の総出資口数の4分の1を超えない2万
4000口(24パーセント)しか保有していなかったのであるから,
P4社は,同社が有する原告P1の株式200万株に係る議決権を有
していることとなる。
cしたがって,本件各譲渡のいずれの時点においても,原告P1の株
主であるP4社は,評価通達188(1)に定める「同族株主」に該当
する。
(エ)小括
P4社が,原告P1の「同族株主」に該当することから,その保有す
る原告P1の株式の評価額は,類似業種比準方式によって算定すること
となる。
これを基にP4社の株式保有割合を算定すると,本件平成17年各譲
渡当時においては,被告別表1・第3表「2.株式保有特定会社」欄に
記載のとおり,総資産価額が82億2495万8000円,株式及び出
資の価額の合計額が80億9400万円となることから,株式保有割合
は98パーセントとなり,また,本件平成18年各譲渡当時においては,
被告別表3・第3表「2.株式保有特定会社」欄に記載のとおり,総資
産価額が116億1301万3000円,株式及び出資の価額の合計額
が105億9800万円となることから,株式保有割合は91パーセン
トとなり,いずれも50パーセント以上である。
ウ以上のとおり,P4社は,評価通達189(2)に定める株式保有特定会
社に該当する。したがって,本件出資持分の評価については,同通達18
9の3に従い,同通達185本文の定めにより計算した1株当たりの純資
産価額(相続税評価額によって計算した金額)によって評価することとな
る。
なお,P4社の純資産価額を算定するに当たっても,同社が保有する原
告P1の株式の評価方式が問題になるところ,これを類似業種比準方式に
よって算定すべきことは,上記イと同様である。
2原告らの主張の要旨
(1)本件出資持分の評価に評価通達189(2)が適用されないこと
ア評価通達189(2)が導入された当時の社会背景並びに導入の趣旨
1980年代終盤(昭和60年代初頭)から1990年代初頭(平成時
代初頭)の間に起こったいわゆるバブル景気によって,日本では投機熱が
加速し,特に株と土地への投機が盛んになった。昭和53年頃から一貫し
て右肩上がりを続けてきた株価は,昭和58年終盤に平均株価1万円近く
を付けると,その後は毎年2桁の伸びを続けるという異常事態に陥った。
これに伴い,相続税収も増加の一途を辿り,昭和58年当時には7800
億円強であった相続税収は,昭和62年には1兆8千億円弱,そして日経
平均株価が史上最高値を付けた平成元年には2兆円を超すまでになった。
一方,我が国の相続税法は昭和63年法律第109号による改正(昭和
63年1月1日以後に相続等により取得した財産に係る相続税について
適用)において,基礎控除が従来の「2000万円+400万円×法定相
続人数」から「4000万円+800万円×法定相続人数」へと引き上げ
られ,最高税率が75パーセントから70パーセントへと引き下げられた
ものの,相続税の重税感はその程度の改正で吸収できるようなものではな
く,上場企業の大量の株式を所有する創業オーナーらが,極端な節税策を
考案し,実行した。その節税策とは,株式をオーナーから持株会社へ移転
して,類似業種比準方式を悪用し,相続税の評価額を1パーセント以下へ
と極端に圧縮しようとするものであった。
この上場企業のオーナーらによる行き過ぎた節税策を排除するために
導入されたのが,評価通達189(2)である。
イ評価通達は解釈通達ではなく,「適用通達」ないし「認定通達」の性質
を有しており,事実の認定は,事案ごとに個別に行われるべきであるし,
また,評価通達を形式的,画一的に適用することが同通達の趣旨に反する
場合には,評価通達を適用することは許されないというべきであるから,
売買時における出資持分の評価をするに際しても,取引の趣旨及び目的,
加えて個々の事情を総合考慮してなされるべきであって,それらを捨象し
て,当時の社会背景を奇貨として行き過ぎた節税を規制する目的で導入さ
れた評価通達189(2)を,本件各譲渡に機械的に適用すべきではない。
ウこれを本件13社出資持分譲渡についてみると,平成17年初頭から開
始された原告P2による本件出資持分の買取りは,創業300年を目前に
控えた「P29グループ」のガバナンスの見直しの一環としてなされたも
のであって(甲23),その取引方法及び買取価格などについても,本件
13社は,飽くまでも原告P2とは別個の独立した法人として,その合理
的な経営判断の下に決定しているのであるし,また,購入側である原告P
2,売却側である本件13社のいずれにおいても,本件13社出資持分譲
渡を奇貨として,税負担を軽減する目的などは認められない。
処分行政庁が,上記の点を考慮することなく,本件出資持分の評価につ
いて,機械的・形式的に,行き過ぎた節税を規制する趣旨目的で導入され
た同通達189(2)を適用したことは,明らかに誤りである。
(2)P4社が評価通達189(2)の「株式保有特定会社」に該当しないこと
ア仮に本件出資持分の評価に評価通達189(2)が適用されるとしても,
後記イ以下で詳述するとおり,P4社の総資産の価額に占める株式等の価
額の合計額の割合は,41.80パーセントにすぎず,同社は株式保有特
定会社に該当しない。
イP4社が保有する原告P1株式の評価は配当還元方式によるべきこと
評価通達に従えば,原告P1は,P4社によって議決権総数の4分の1
以上である28.57パーセントを保有されているから,P4社の議決権
を有しておらず(有限会社法41条,商法241条3項),P4社におけ
る同族関係者グループは,P8とその同族関係者である原告P2のみであ
る。そして,本件平成17年各譲渡の時点で,上記グループが有するP4
社の議決権割合は,31.57パーセントにすぎない。
そうすると,評価通達188(1)の定め及び同通達が引用する法人税法
施行令4条によれば,P4社は,P8及び原告P2の同族株主グループに
よって50パーセント超の議決権を保有されていないから,P8の同族関
係者に該当しない。その結果,P4社は,原告P1におけるP8らの同族
株主グループ(P8,P24,P25,P10及び原告P2の5者によっ
て構成され,その議決権割合は43.5パーセントである。)に属さず,
単独で28.57パーセント(30パーセント未満)を保有するのみであ
るから,原告P1の同族株主に該当しない。
したがって,原告P2が譲り受けた本件出資持分の評価に当たり,P4
社が保有する原告P1の株式200万株については,同族株主以外の株主
が保有する株式であるから,同通達188(1)に従い,「同族株主がいる
会社の株式のうち,同族株主以外の株主の取得した株式」として,同通達
188-2の方式(配当還元方式)によって評価すべきであり,その評価
額は,1株当たり50円である。
この点に関し,P4社は,被告の主張するような,「原告らとその同族
関係者であるP8らにより実質的に支配されて」いる状況にはなく,評価
通達に定める評価方法によらない特別の事情は存在しない。
ウP4社の株式保有割合
上記イを踏まえると,P4社が保有する原告P1の株式200万株の時
価は,1株当たりの時価50円×200万株=1億円となり,P4社の総
資産の額に占める株式等の価額の合計額も同額である。そして,当該株式
等の価額を含むP4社の総資産の時価総額(総資産の相続税評価額の合計
額)は,2億3922万4000円となることから,同社の株式保有割合
は,41.80パーセントとなる。
そうすると,P4社は,その株式保有割合が50パーセント未満である
ことから,評価通達189(2)に定める株式保有特定会社に該当しない。
第5P4社の1株当たりの純資産額の算定において法人税額等相当額を控除しな
かったことの適否(争点5)について
1被告の主張の要旨
(1)法人税基本通達9-1-14(3)において,株式の評価に当たっては,評
価通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によ
って計算した金額)」の計算に当たり,同通達186-2により計算した評
価差額に対する法人税額等相当額の控除をしないこととされている。
(2)以下のとおり,法人税法上,取引相場のない株式の評価に際し,法人税基
本通達9-1-14(3)において,上記(1)のような留保条件が付されている
ことには,合理的な理由があり,同通達は適法である。
ア法人税基本通達9-1-14は,上場有価証券等以外の株式の評価とし
て,評価通達の178から189-7まで(取引相場のない株式)の評価
の例によって算定された価額によっているときは,課税上弊害がない限り,
これを認めるものである。この点,評価通達に定められている評価方法は,
相続又は贈与という極めて特殊な環境におけるいわば静的な財産評価に
関する取扱いであるから,法人税のように経済取引を前提としたいわば動
的な財産評価にそのまま適合するかどうかについては疑問なしとはしな
い。しかしながら,評価通達に定める取引相場のない株式の評価方法は,
一つの事実として実務界に定着していると認められることから,これと著
しく異なる評価方式を導入するとすれば,混乱を招くこととなるため,一
つの割り切りとして,留保条件を付した上で,法人税法上も,原則として
これを認めたものである。
イ確かに,評価通達185が1株当たりの純資産価額の算定に当たり法人
税額等相当額を控除するものとしているのは,個人が財産を直接所有し,
支配している場合と,個人が当該財産を会社を通じて間接的に所有し,支
配している場合との評価の均衡を図るためである。しかしながら,このよ
うな評価上の均衡を図る要請は,相続又は贈与という極めて特殊な環境に
おけるいわば静的な財産評価において主に勘案すべきものである。一方,
株式の譲渡における「通常取引されると認められる価額」を算定する場面
においては,個人であれ法人であれ株主が事業用資産を直接所有している
か,あるいは会社を通じて間接所有しているかといった点は,通常は,客
観的交換価値である「通常取引されると認められる価額」の減額要因とし
て問題になるとは考えられない。
したがって,法人税基本通達9-1-14(3)において,法人税額等相
当額を控除しない旨定めることには,合理的な理由があり,平成12年課
法2-7による改正後の法人税基本通達の取扱いが定着した後に行われ
た本件出資持分の各譲渡時点においては,「通常取引されると認められる
価額」の算定において,法人税額等相当額を控除すべき理由は存しない。
(3)以上により,本件においても,法人税基本通達9-1-14(3)の規定に
従い,P4社の資産の評価額を算出しており,評価差額に対する法人税額等
相当額を控除していない。
2原告らの主張の要旨
評価通達の純資産価額方式において法人税額等相当額の控除を認めたのは,
昭和47年の通達改正においてである。その趣旨は,財産の所有形態における
直接所有と間接所有の評価バランスを図ること,すなわち,個人が事業用資産
を直接所有している場合と個人株主が会社所有の資産を間接所有している場
合との評価上のバランスを図ることにあった。
また,最高裁平成14年(行ヒ)第112号同17年11月8日第三小法廷
判決・集民218号211頁及び最高裁平成16年(行ヒ)第128号同18
年1月24日第三小法廷判決・集民219号285頁が判示するとおり,「財
産の直接所有支配の場合と間接所有支配の場合との評価の均衡(バランス)を
図る」という要請は,相続税の分野における株式の評価と法人税課税における
それとの間で差異を見出し難く,当該要請は,評価対象会社が継続的に事業活
動を行うか否かとは関係がない。
したがって,法人税課税における株式の評価について,法人税額等相当額控
除をしないという法人税基本通達9-1-14(3)は合理的なものとはいえず,
本件出資持分についても,直接所有と間接所有との評価バランスを図るという
論理に基づいて,法人税額等相当額控除をして,価額の評価を行うべきである。
第6本件出資持分の価額の評価における評価通達185ただし書の適用の有無
(争点6)について
1被告の主張の要旨
(1)評価通達189-3は,「当該株式の取得者とその同族関係者の有する当
該株式に係る議決権の合計数が株式保有特定会社の185(純資産価額)の
ただし書に定める議決権総数の50パーセント以下であるときには,上記に
より計算した1株当たりの純資産額(相続税評価額によって計算した金額)
を基に同項のただし書の定めにより計算した金額とする。」と定め,また,
同通達185ただし書は,株式の取得者とその同族関係者の有する議決権の
合計数が評価会社の議決権総数の50パーセント以下である場合において
は,同項本文の定めにより計算した1株当たりの純資産価額の80パーセン
ト相当額で評価する旨定めている。
(2)この点,本件平成17年各譲渡により本件出資持分を取得した原告P1と
その同族関係者の有する議決権数は,原告P2が2万3995口,P8が5
口となり,議決権割合は,31.57パーセントとなるから,上記の定めを
形式的・画一的に適用すれば,本件出資持分の評価に当たっても,評価通達
185ただし書を適用すべきとも思われる。
しかしながら,同通達185ただし書の趣旨は,小会社における同族株主
による会社経営の実態は,個人事業者の場合と実質的にはほとんど変わるこ
とがないものが多いが,小会社の中には,複数の同族株主グループにより会
社経営を行っているものがあり,このような小会社では,一同族株主グルー
プの所有株式数だけでは会社を完全支配できないという実態が認められる
ため,このような実態に即したものとする必要があるところから,単独の同
族株主グループの所有株式数によって会社支配を行っている場合の支配力
との較差を考慮して,議決権の合計数が評価会社の議決権総数の50パーセ
ント以下である同族株主グループに属する株主の取得株式を純資産価額方
式により評価する場合には,20パーセントの評価減を行うというものであ
る。このように,同通達185ただし書は,会社の支配力を考慮する観点か
ら設けられたものであることから,同族株主以外の株主が存在していたとし
ても,それが名目的存在にすぎず,特定の一族が実質的に会社を支配してい
るような場合にまで適用すべきではない。
本件においては,争点3で述べたとおり,原告P1及び原告P2とその同
族関係者が,P4社を実質的に支配していたものと認められる。そうすると,
本件出資持分を評価するに当たり,具体的な事情をしんしゃくせず,同通達
185ただし書を形式的・画一的に適用することは,上記で述べた同通達た
だし書が定められた趣旨を逸脱することとなる。そして,法人税基本通達9
-1-14は,上場有価証券等以外の株式の価額につき評価通達の例によっ
て算定した価額によることを認める前提として,「課税上弊害がない限り」
という条件を付しているところ,本件出資持分につき評価通達185ただし
書を適用して評価することは,当該出資持分の実体に即していない評価にな
るのであって,そのことに課税上の弊害があることはいうまでもない。この
ように,本件においては,同通達185ただし書によらないことが正当と是
認されるような特別の事情があるというべきであるから,本件出資持分の評
価額の計算上,純資産価額について80パーセント相当額で評価すべきでは
ない。
(3)以上のとおり,本件においては,評価通達185ただし書を適用すべきで
ない特段の事情が認められることから,本件平成17年各譲渡における本件
出資持分については,同通達185条ただし書を適用せずに評価するのが合
理的である。
2原告らの主張の要旨
(1)評価通達は「法律」ではない以上,一般論としてその規定を一律に適用す
べきでない場合があるとしても,評価通達185ただし書は,株式を純資産
価額で評価する際,当該株式の取得者及びその同族関係者の議決権割合が5
0パーセント以下の場合には評価減をする旨明確な基準を定めているので
あるから,納税者に対する課税の予測可能性を担保するために定められた租
税法律主義(憲法84条)の趣旨に照らしても,その文言に規定された適用
要件を満たす限り,これを適用すべき要請が高いといえる。
本件において,本件出資持分を取得した原告P1及びその同族関係者の議
決権割合は,31.57パーセントしかなく,会社法上,P4社は,P8ら
のみで特別決議のみならず通常決議についても議決を通すことはできず,常
に他の出資者である本件13社の賛同を得なければならない経営状態にな
っていた。したがって,本件出資持分の評価に当たり当然に同通達185た
だし書を適用して評価減を行うべきであり,当該株主及び同族関係者による
「実質的支配」や,他の株主らの「経営に参画する目的」などといった主観
的で曖昧な要素を持ち出し,これを適用しない特段の事情があるとすること
は,納税者の予測可能性を著しく害し,許されない。
(2)また,上記の点を措くとしても,争点3において述べたとおり,P4社に
つきP8及びその同族関係者による「実質的な支配」があったとの事実は認
められない上,本件13社にP4社の「経営に参画する目的」がなかったと
断ずることもできないのであるから,被告が主張するような同通達185た
だし書を適用すべきでない特段の事情は,本件において存在しない。
第7控除負債利子額の算定(争点7)について
1被告の主張の要旨
(1)控除負債利子額を原則法によって計算したことに違法はないこと(控除負
債利子額の算定方法を再選択することの可否)
ア原則法と簡便法の関係
法人税法23条4項は,当該事業年度において支払う負債の利子がある
ときは,政令で定めるところにより計算した額を控除した額をもって同条
1項を適用する旨を定めており,同条4項を受けた同法施行令22条が,
控除負債利子額の計算方法について具体的に規定している。すなわち,同
条1項及び2項は,法人税法23条4項1号及び2号に規定する「政令で
定めるところにより計算した金額」について,同法施行令22条1項及び
2項に定める方法(原則法)により「計算した金額とする」旨規定してい
る。一方,同法施行令22条3項においては,平成10年4月1日に存す
る内国法人について,同項に定める方法(簡便法)により「計算した金額
とすることができる」と規定している。このような同令22条各項の規定
ぶりからすると,控除負債利子額の計算については,同条1項及び2項に
定める方法(原則法)によるのが原則であるが,法人が同条3項に定める
方法(簡便法)により計算した場合には,その選択を認めるという制度に
なっているものと解される。
イ法人税法23条6項及び7項の規定に照らし,原則法により控除負債利
子額を算定したことに違法はないこと
(ア)上記アの法人税法施行令22条等により計算された受取配当等の
益金不算入額について,法人税法23条6項は,「第1項及び第2項の
規定は,確定申告書に益金の額に算入されない配当等の額及びその計算
に関する明細の記載がある場合に限り,適用する。」とし,受取配当等
の益金不算入制度の適用を受けるためには,「益金の額に算入されない
配当等の額及びその計算に関する明細の記載」が必要である旨規定して
いる。
同法23条6項の趣旨は,納税者である法人において自ら正確に益金
不算入額を計算した上で,それを確定申告書に記載することにより,受
取配当等の益金不算入制度の適用を受ける意思を示すことを要求する
もの解される。また,同項が「益金の額に算入されない配当等の額」の
みならず「その計算に関する明細」の記載も求めていることからすれば,
同項の要件は,単に受取配当等の益金不算入制度の適用を受ける意思を
示せば足りるというものではなく,法人の選択した計算が所定の要件を
満たした適法なものであるかを確定申告書によって税務署長が確認で
きることをも求める趣旨と解される。
それゆえ,確定申告書において,原則法による控除負債利子額の計算
を選択し,その計算の明細を記載して受取配当等の額を益金の額に算入
しなかった場合には,受取配当等の益金不算入制度の適用を受ける意思
は確定申告書に示されているが,簡便法による計算の明細の記載がされ
ていないことになる。
(イ)また,同法23条7項は,受取配当等の益金不算入額の計算に関す
る明細が確定申告書に記載されてない場合であっても,記載がないこと
につきやむを得ない事情があると認めるときは,益金不算入とすること
ができる旨規定しているところ,同項は,同条6項所定の要件を欠いた
ことについてやむを得ない事情があると税務署長が認めた場合に納税
者を救済するための例外的な規定である。そして,同条7項にいう「や
むを得ない事情」とは,納税者である法人が同記載をすることを妨げる
外部的事実があり,同法人自身の力では同記載をすることができないよ
うな場合をいうものと解される。
そうすると,確定申告書において,受取配当等の益金不算入額の計算
に関する明細が記載されていない場合に,税務署長が,更正処分におい
て,上記「やむを得ない事情」があると認められないにもかかわらず益
金不算入とすることは,同項の規定に反するものである。
(ウ)これを本件についてみると,原告P2は,確定申告時において,益
金不算入額の計算結果の多寡にかかわらず,原則法によって控除負債利
子額の計算を行う意思であった。すなわち,原告P2は,簡便法を選択
することも可能であったにもかかわらず,これを選択しないで,原則法
によることとしたのである。このようにして,簡便法による控除負債利
子額の計算に係る明細の記載を欠く確定申告書を提出した原告P2に
つき,税務署長が簡便法によって控除負債利子額を計算して同法23条
1項を適用するためには,上記(イ)のとおり,簡便法による控除負債利
子額の計算に係る明細の記載を欠いたことについて「やむを得ない事
情」,すなわち,納税者である法人が同記載をすることを妨げる外部的
事実があって同法人自身の力では同記載をすることができないような
事情があると認められることが必要であるところ,本件においては,か
かる事情は何ら認められない。
(エ)したがって,原告P2・18年12月期の確定申告書において,簡
便法による額及びその計算の明細の記載がなかったことにつき同法2
3条7項の「やむを得ない事情」が認められない以上,処分行政庁が,
原告P2・18年12月期再更正処分を行うに当たって,控除負債利子
額の算定上,原告P2が確定申告時に選択した原則法によって計算した
ことに,何ら違法は存しない。
また,原告P2・19年12月期更正処分についても,上記と同様で
あり,処分行政庁が,控除負債利子額の算定上,原告P2が確定申告時
に選択した原則法によって計算したことに,何ら違法は存しない。
ウ通則法24条の規定の適用上も,原則法により控除負債利子額を算定し
たことに違法はないこと
そもそも,税務署長による更正は,納税者が提出した「納税申告書に記
載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つ
ていなかつたとき,その他当該課税標準等又は税額等がその調査したとこ
ろと異なるとき」において行われるものである(通則法24条)。
これに対し,本件では,原告P2が提出した確定申告書において,原告
P2が控除負債利子額を算定するに当たり簡便法ではなく原則法を選択
してこれを算定したことは,何ら「課税標準等又は税額等の計算が国税に
関する法律の規定に従つていなかつた」ものではないし,「その他当該課
税標準等又は税額等がその調査したところと異なるとき」に当たるもので
もない。
したがって,原告P2が控除負債利子額を算定するに当たり簡便法では
なく原則法を選択してこれを算定したことについて,原告P2が提出した
確定申告書に係る課税標準等又は税額等を税務署長が更正する要件を欠
くというほかないから,原告P2・18年12月期再更正処分及び同19
年12月期更正処分において,原告P2が選択した原則法を維持し,これ
によって控除負債利子額を算定したことに何ら違法はない。
エ原告P2の主張に対する反論
(ア)原告P2は,本件受贈益を益金の額に算入すべきことを確定申告時
に知っていれば,簡便法による申告をしていたことが明らかであって,
確定申告時における選択の錯誤があったから,錯誤による是正(簡便法
による計算)が認められるべき旨主張する。
(イ)しかしながら,原告P2は,原告P2・18年12月期確定申告に
おいて,原則法により控除負債利子額を計算することを選択し,受取配
当等の益金不算入額を7685万7133円と算出しているところ(乙
50),簡便法により控除負債利子額を算出した場合には,益金不算入
額は9743万1662円となり,原則法による場合に比べ益金不算入
額が約2000万円も上回ることになる。
すなわち,原告P2は,本件受贈益を考慮しなくても,簡便法により
計算した方が,約2000万円も益金の額が少なくなるにもかかわらず,
確定申告時において,納税が有利になる簡便法を選択せず,益金の額が
多くなる原則法を選択したのである。
そうすると,原告P2は,原告P2が確定申告時に本件受贈益を益金
の額に算入すべきことを知っていたか否かとは無関係に,原則法を選択
し適用したというべきである。
(ウ)以上のとおり,原告P2は,確定申告時において,益金不算入額の
計算結果の多寡にかかわらず,原則法によって控除負債利子額の計算を
行う意思があったものである。そして,原告P2は,そのような意思に
基づいて原則法により控除負債利子額及び受取配当等の益金不算入額
を計算し,その額及び計算の明細を確定申告書に記載したのであって,
そこに何ら意思と表示の不一致は認められず,錯誤による選択の意思表
示の存在を認める余地はないというべきである。
原告P2の上記主張には理由がない。
オ小括
以上のとおり,原告P2・18年12月期再更正処分及び同19年12
月期更正処分において,控除負債利子額に係る正当な額を算定するに当た
り,原告P2が確定申告時に選択した原則法によって計算したことに何ら
違法は存しない。
(2)控除負債利子額の算定に当たり立法趣旨及び経過を踏まえるべきこと(資
産按分方式における株式等の帳簿価額の意義)
ア受取配当等の益金不算入及び控除負債利子額の制度趣旨
(ア)受取配当等の益金不算入の制度趣旨
受取配当の益金不算入制度(法人税法23条1項)は,シャウプ勧告
に基づく昭和25年度の税制改正で創設されたものであり,法人の受取
配当について配当を支払う法人段階とそれを受け取る株主段階とを通
じる税負担を調整し(いわゆる二重課税の排除),配当控除制度が適用
される個人株主における法人税と所得税との負担調整の一環として位
置づけられている(乙60)。
上記制度は,創設当初は,法人の受取配当の全額を益金不算入とする
制度であったが,その後の法人企業における株式保有の増大や,法人の
資産選択行動の態様といった経済的実態を踏まえ,益金不算入割合が引
き下げられることとなった。すなわち,企業支配的な株式に係る配当等
に課税することは弊害があるものの,法人が投資対象として保有する株
式に係る配当についてまで益金不算入とする必要はないとの考えによ
り,企業支配的な株式に係る受取配当以外の配当については,益金不算
入割合が80パーセントまで引き下げられた(乙61)。その後の法人
税法の改正により,原告P2・18年12月期及び同19年12月期に
おける益金不算入割合は,50パーセントになっている。
(イ)控除負債利子額の制度趣旨
法人税法23条1項は,上記のとおり,法人が受け取る配当等につい
て,所定の金額を益金に算入しない旨を定める一方,関係法人株式等及
びその他の株式等については,法人の受取配当等の金額から所定の負債
の利子の額を控除して益金不算入額を計算する旨を定めている。
受取配当等の額から負債の利子の額を控除する趣旨は,負債によって
元本たる株式等を取得している場合に,その株式等から生ずる配当等に
ついては益金不算入とし,負債の利子については損金に算入することと
すると,非課税部門の収益に対応する非課税部門の費用が,課税部門の
収益から控除されることとなり適当ではないという考え方によるもの
である(甲56)。
控除負債利子額の具体的な計算については,法人税法施行令22条1
項及び2項において定められている。すなわち,同条1項及び2項は,
それぞれ,同条1項1号所定の当該事業年度及び当該事業年度の前事業
年度の確定した決算に基づく貸借対照表に計上されている総資産の帳
簿価額の合計額のうちに,①同条1項2号所定の当該事業年度及び当該
事業年度の前事業年度の連結法人株式等及び関係法人株式等のいずれ
にも該当しない株式及び出資並びに租税特別措置法3条の2に規定す
る特定株式投資信託の受益権の帳簿価額の合計額の占める割合と,②同
条2項2号所定の当該事業年度及び当該事業年度の前事業年度の関係
法人株式等の帳簿価額の合計額の占める割合とを,当該事業年度におい
て支払う負債の利子の額に乗じて計算する旨規定している。
イ控除負債利子額の具体的な計算方法の変遷とその改正趣旨
(ア)紐付計算方式の廃止と按分計算方式の原則化
配当の元本を取得するために要した負債の支払利子については,受取
配当を益金不算入とすることに対応して損金の額に算入しないという,
上記で述べたような控除負債利子額の制度趣旨からすれば,株式等の取
得時におけるその取得のために要した負債の行先を常時追いかけて,そ
の支払利子額を受取配当等の益金不算入額から控除する方法(いわゆる
紐付計算方式)が,理論的に最も整合していると考えられる。
こうしたことから,昭和40年政令第97号による法人税法施行令の
改正が行われる前は,紐付計算方式が原則とされていたところであるが,
法人が借り入れた金銭については,一般にその使途に関して色分けがさ
れていないため,紐付計算方式は,株式の取得後に法人が借入等で得た
資金の使途を全て明らかにした場合等に限って認められる取扱いとな
っていた。しかし,このような処理は通常不可能であって紐付計算方式
によっている法人はほとんどなく,支払った負債の利子に総資産の帳簿
価額のうちに占める株式の帳簿価額を乗じて計算する方式(いわゆる資
産按分方式)を選択する法人がほとんどを占めていた。
昭和40年の税制改正においては,このような状況が考慮され,また,
負債利子という考え方としては,むしろ株式等をその事業年度間保有す
るために要した利子,すなわちその事業年度中に支払った利子をその株
式又は配当に配賦するという考え方の方がより一般的ではないかとの
見地から,昭和40年政令第97号による法人税法施行令22条1項の
改正において紐付計算方式が廃止され,資産按分方式のみが認められる
こととなった(乙62)。
(イ)資産按分方式における計算方法の簡素化
このように,控除負債利子額の計算は資産按分方式のみによることと
なったが,同方式の計算方法についても,規定及び計算が複雑であった
ことから,執行面あるいは実務面からの簡素化の要望を踏まえ,以下の
とおり,昭和40年政令第97号による法人税法施行令において簡素化
が図られることとなった。
すなわち,控除負債利子額の算出過程において,総資産の帳簿価額に
占めるこれらの株式等の帳簿価額の割合(以下「総資産株式割合」とい
う。)を計算するに当たり,総資産及び株式の「帳簿価額」について,
従来は,いずれも税務計算上の帳簿簿価(以下「税務簿価」という。)
によるものとされていたものが,分母の総資産に関しては,確定した決
算に基づく帳簿価額(以下「決算簿価」という。)によることに改正さ
れた。これにより,例えば,更正等によって法人の有する資産の税務簿
価に変動が生じた場合であっても,総資産株式割合の分母の額を計算し
直す必要はなくなり,簡素化が図られることになった。
もっとも,上記改正においても,分子の「株式の帳簿価額」について
は,従前どおり,「税務上その株式の正常な帳簿価額とみなされる金額」
によることとされた(乙62)。これは,事業年度中に支払った利子を
その株式に配賦するという資産按分方式において,配当等の元本たる
「株式の帳簿簿価」は計算の根幹を成す要素であるから,更正等により
その税務簿価が変動しているにもかかわらず,控除負債利子額の計算に
反映させないような処理は相当でないと判断されたものと考えられる。
ウ控除負債利子額の算定方法が法の委任の範囲を超えないこと
(ア)上記イのとおり,受取配当等の益金不算入の制度における控除負債
利子額について,元本たる株式等を取得するために借り入れた金銭に係
る利子の額を厳密に計算することは,実務上極めて困難であったため,
各事業年度中に支払った利子の額に総資産株式割合を乗じた金額をも
って控除負債利子額とすることとされている。
そして,総資産株式割合の分子における株式の帳簿価額は,税務簿価
によるが,計算の簡素化の観点から,その分母における,総資産の帳簿
価額に関しては,税務簿価ではなく決算簿価による旨定められたもので
ある。
(イ)このような計算方法を採用したことにより,受取配当等の益金不算
入額から控除される金額について,受取配当の元本たる株式を取得する
ために借り入れた負債に係る利子の額とは必ずしも連動しないことに
なる。しかし,規定及び計算が極めて複雑であったことに対する納税者
や課税庁の負担の軽減のための簡素化の見地から,法人税法施行令22
条において,合理性のある取扱いが定められたのであり,そのこと自体
では法人税法23条4項の委任の範囲を逸脱するものではない。
エ原告P2の主張に対する反論
(ア)原告P2は,有価証券の帳簿価額について定めた法人税法61条の
2第23項及びその委任を受けた同法施行令119条1項1号は,購入
した有価証券の取得価額について「購入の代価」と規定するのみで,当
該取得価額に受贈益の額を含めるなどの規定は存在しないから,仮に,
本件各受贈益が認定されるとした場合であっても,原則法による控除負
債利子額の計算においては,その分子及び分母のいずれについても本件
各受贈益の額を加算する前の額で算定すべきである旨主張する。
(イ)しかしながら,以下に述べるとおり,法人税法22条2項及び同法
施行令119条1項の規定によれば,本件各譲渡における本件出資持分
の譲受価額(以下「本件出資持分譲受価額」という。)に本件各受贈益
の額を加算した金額が,有価証券の「税務上の帳簿価額」となるから,
原告P2の上記主張は理由がない。
a低額譲受けに係る法人税法22条2項の規定の適用について
争点1で述べたとおり,譲受時における「適正な価額」より低い対
価をもってする資産の譲受けの場合も,法人税法22条2項が適用さ
れ,当該資産の譲受けに係る対価の額と当該資産の譲受時における
「適正な価額」との差額が,無償による資産の譲受けに係るものとし
て,収益の額を構成するものと解される。
そして,この場合の「適正な価額」とは,正常な取引において形成
された価額,すなわち,客観的な交換価値(不特定多数の当事者間で
自由な取引が行われた場合に通常成立する価額である時価)をいうも
のと解される。
b低額譲受けに係る有価証券の取得価額
原告P2・17年12月期及び同18年12月期に行われた本件各
譲渡によって原告P2が取得した本件出資持分の取得価額の計算に
関し,同法61条の2第23項の委任を受けて有価証券の取得価額の
算出の方法を定めた同法施行令119条1項1号は,購入した有価証
券の取得価額について,「その購入の代価(〔中略〕購入手数料その
他その有価証券の購入のために要した費用がある場合にはその費用
の額を加算した金額とする。)」と規定している。一方,同項8号は,
同項1号ないし7号に掲げる有価証券以外の有価証券の取得価額に
ついて,「その取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要
する価額」と規定している。
そして,同項1号ないし7号に掲げる有価証券以外の有価証券とは,
現物出資,贈与,交換,債権の弁済として取得したもの等をいうもの
と解されるところ,法人が時価に比して著しく低い価額で有価証券を
取得した場合には,売買と贈与との混合した取引によって有価証券を
取得したものと認められることから,当該取引によって取得された有
価証券は,同項8号に規定する有価証券に該当することになり,「そ
の取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額」,
すなわち時価によって取得価額を算定することになる。
したがって,有価証券の譲受けに係る対価の額と当該有価証券の譲
受時における「適正な価額」との差額相当額については,法人税法2
2条2項に規定する「無償による資産の譲受け」があったものとして,
当該事業年度の益金の額に算入するとともに,当該有価証券の取得価
額の一部を構成すると解するのが相当である。
この点,原告P2の上記主張は,本件各譲渡により原告P2が譲り
受けた本件出資持分につき,同法施行令119条1項1号に規定する
「購入した有価証券」に該当することを前提とするもののようである
が,上記で述べたとおり,本件出資持分は同項8号に掲げる有価証券
に該当するものと解されるから,原告P2の上記主張は,前提におい
て失当である。
なお,仮に,本件出資持分が同項1号に規定する「購入した有価証
券」に該当する余地があるとしても,「適正な価額」よりも低い対価
により有価証券を取得した場合の同号の「購入の代価」は,同項8号
との均衡上,「適正な価額」によるべきと考えられることから,いず
れにしても原告P2の上記主張は失当である。
c低額譲受けに係る有価証券の「税務上の帳簿価額」
以上のとおり,法人が譲受時における「適正な価額」よりも低い対
価により有価証券を取得した場合には,当該有価証券の譲受けに係る
対価の額と当該有価証券の譲受け時における「適正な価額」との差額
相当額,すなわち,受贈益相当額を当該有価証券の取得価額に含めな
ければならない。そして,同令119条の2第1項各号に規定する,
移動平均法又は総平均法を通じて,当該有価証券の1単位当たりの帳
簿価額が算定され,これに保有株数を乗じた金額が,有価証券の「税
務上の帳簿価額」となる。
したがって,本件出資持分の「税務上の帳簿価額」の算定に当たり,
本件出資持分譲受価額に本件各受贈益の額を加算する根拠がないと
する原告P2の上記主張は理由がない。
(3)控除負債利子額計算における簡素化の趣旨を踏まえつつ,本件において法
人税法23条4項の委任の範囲を逸脱しないようにするためには,被告の主
張する方法によることが相当であること(控除負債利子額の合計額が現実支
払利子額を超える場合の取扱い)
ア控除負債利子額の合計額が現実支払利子額を超えて計算されてしまう
場合には,法人税法23条4項の委任の範囲を超えるおそれがあること
上記(2)で述べたとおり,法人税法施行令22条1項及び2項の規定は,
法人税法23条4項の委任の範囲内において,計算の簡素化を加味しつつ,
合理的な控除負債利子額について具体的な計算方法を定めたものである。
もっとも,本件のように,法人が有する株式について,税務簿価とすべ
き金額が決算簿価に比して著しく高い場合,例外的に,株式の税務簿価が
総資産の決算簿価を超えてしまうこともあり得る。このような場合に同法
施行令22条に定める計算方法を形式的に当てはめれば,現実支払利子額
を超えて控除負債利子額が計算される結果になる。
しかし,現実支払利子額を超える金額を控除負債利子額として受取配当
等の益金不算入額を計算することは,同法23条4項の委任の範囲を超え
るというべきである。すなわち,同項柱書は「内国法人が当該事業年度に
おいて支払う負債の利子(中略)があるときは」と規定し,同項1号にお
いては「当該負債の利子の額のうち当該株式等に係る部分の金額として政
令で定めるところにより計算した金額」を控除負債利子額とする旨を定め
ていることからすれば(同項2号も同様),文理上,同項は現実支払利子
額を超える金額を控除負債利子額とすることは想定していないと考える
のが自然である。また,益金不算入となる配当の元本たる株式を負債によ
って取得している場合に,その負債に係る利子を損金に算入しないという
控除負債利子額の制度趣旨に鑑みても,現実支払利子額を超える金額を益
金不算入額から控除することは,計算の簡素化の観点からも,その理論的
説明は困難である。
以上のとおり,同法施行令22条1項又は2項に定める計算方法によれ
ば現実支払利子額を超える控除負債利子額が計算される場合,当該計算方
法によるべきでない特段の事情が認められるというべきである。
イ法人税法施行令22条1項又は2項を適用した場合に,総資産株式割合
が1を超えるときは,同割合を1として控除負債利子額を計算するのが相
当であること
(ア)上記アのような特段の事情が認められる場合において,法人税法施
行令22条1項又は2項に定める計算方法によらないで控除負債利子
額を計算するためには,法人税法23条4項の立法趣旨を逸脱しない計
算方法,すなわち,控除負債利子額の合計額が現実支払利子額を超えな
いように,総資産株式割合を①又は②として計算する方法が考えられる。
①総資産株式割合の計算において,株式の帳簿価額(分子)について
も決算簿価とすること
②総資産株式割合が1を超える場合には,同割合を1とすること
また,総資産株式割合の計算において,総資産の帳簿価格(分母)を
決算簿価ではなく税務簿価とすることも一応は考え得るが,このような
方法は,上記(2)で述べた計算の簡素化の趣旨に反するもので,現実に
は採り得ないと考えられる。
(イ)上記(ア)で掲げた①及び②のいずれの方法についても,同法23条
4項の立法趣旨を逸脱せず,計算の簡素化の趣旨にも反しないものであ
るが,②の方法によることが相当である。その理由を以下に述べる。
まず,①の方法は,同法施行令22条1項2号及び同条2項2号に「帳
簿価額」と規定されている文言について,総資産株式割合が1を超える
場合に限って「確定した決算に基づく貸借対照表に計上されている帳簿
価額」と読み替えるものである。しかし,法人税に関する法令において
は,同法119条など他の条項も含め,「帳簿価額」とは税務簿価であ
ることを前提に規定が設けられているものである。よって,同法施行令
22条1項及び2項を適用するに当たり,特定の場合に限って「帳簿価
額」を決算簿価と解釈することは,他の条項の解釈にも影響を与えかね
ず,無用の混乱を招くおそれがある。
他方,②の方法は,同法施行令22条1項及び2項の文言から離れる
嫌いはあるものの,株式の税務簿価が増加するに従って総資産株式割合
が1に近づき,それが1を超えた場合には1が限度となるものであって,
計算結果の連続性という観点からは合理的である(この点,①の方法に
よれば,総資産株式割合が1を超えた段階で,不連続的に1より小さい
数値になるという意味で不合理である。)。
(ウ)上記(ア)及び(イ)によれば,法人税法施行令22条1項又は2項を
適用した場合に,総資産株式割合が1を超えるときは,同割合を1とし
て控除負債利子額を計算するのが相当である。
ウ法人税法施行令22条1項及び2項による控除負債利子額の合計額が,
現実支払利子額を超える場合には,現実支払利子額をその他の株式等及び
関係法人株式等の税務簿価の割合に応じて按分した金額をそれぞれの控
除負債利子額とするのが相当であること
(ア)上記イの計算方法により,その他の株式等に係る控除負債利子額
(法人税法施行令22条1項)及び関係法人株式等に係るもの(同条2
項)のそれぞれについて,その金額が現実支払利子額を超えないように
調整した場合であっても,両者の控除負債利子額を合計すれば現実支払
利子額を超えるようなことも考えられる。
このような場合も,全体として見れば,現実支払利子額を超える金額
が,受取配当等の益金不算入額から控除されることとなり,上記アで述
べたことと同様の理由から,同法23条4項の委任の範囲を逸脱する結
果となるというべきである。そして,上記イで述べたことからすれば,
この場合,その他の株式等及び関係法人株式等に係るそれぞれの控除負
債利子額の合計額が現実支払利子額と同額になるように調整するのが
相当であると考えられる。
(イ)もっとも,この場合,その他の株式等に係る控除負債利子額と関係
法人株式等の額とをどのように配分するのかという問題が残る。
同法23条4項によれば,法人が受ける配当等のうち益金不算入とな
るのは,その他の株式等について受ける配当等については,当該配当等
の額からその他の株式等に配賦される控除負債利子額を控除した金額
の100分の50であり(同項1号),関係法人株式等について受ける
配当等については,当該配当等の額から関係法人株式等に配賦される控
除負債利子額を控除した額の全額である(同項2号)。
この点,その他の株式等について受ける配当等に係る益金不算入割合
が50パーセントとされている趣旨は,上記(2)ア(ア)で述べたとおり
であり,関係法人株式等については,企業支配的な株式に係る配当等に
課税した場合の弊害に鑑みて,控除負債利子額を控除した全額を益金不
算入としている。
(ウ)上記(ア)及び(イ)のとおり,その他の株式等と関係法人株式等の性
格の違いに着目して,控除負債利子額を控除した後の益金不算入割合に
差を設けた同法23条4項の趣旨からすれば,同法施行令に定める方法
により,それぞれ控除負債利子額を計算した金額の合計額が現実支払利
子額を超える場合は,現実支払利子額について,その他の株式等の税務
簿価と関係法人株式の税務簿価との割合で按分した金額をそれぞれの
控除負債利子額として,受取配当等の益金不算入額を計算するのが相当
である。
(4)小括
以上のとおり,法人税法23条4項の立法趣旨を逸脱しない範囲で控除負
債利子額の計算を行うためには,現実支払利子額について,その他株式等の
税務簿価と関係法人株式の税務簿価との割合で按分した金額を,それぞれの
控除負債利子額として,受取配当等の益金不算入額を計算することが相当で
ある。
これを基に原告P2の配当等の益金不算入額を算定すると,原告P2・1
51万227円となり,原告P2・19年12月期更正処分については,被
2原告P2の主張の要旨
(1)原告P2・18年12月期再更正処分について,原告P2に本件出資持分
に係る受贈益はないが,仮にこれが加算される場合における負債利子の控除
について,以下主張する。
(2)原則法から簡便法への選択の是正が認められるべきこと(控除負債利子額
の算定方法を再選択することの可否)
ア選択の是正が法によって許容されていること
受取配当等の額から控除する負債利子等の額の計算に用いる負債利子
控除割合の算定には,原則法と簡便法があるところ,法人税法は,両者の
間に優劣を定めておらず,いずれの方法を選択するかは全面的に納税者に
任されている。そして,納税者が確定申告時においていずれかの方式を採
用した場合に,これを変更することができない旨の規定は置かれていない。
また,受取配当等の益金不算入規定は,課税済の利益に二重に課税しな
いことを目的とするものであり,その制度趣旨や課税の公平の観点からす
れば,そもそも事後的な適用を認めても全く問題がなく,租税法律関係を
不安定にし,申告納税制度の趣旨が没却されることもない。
したがって,多額の受贈益が課されることを想定し得なかったような本
件において,簡便法を適用できる内国法人である原告P2が,当初申告時
に原則法を選択したことについて,修正申告や更正の請求によらずに改め
て簡便法を選択することも許容されるというべきである。
イ納税者の確定申告に錯誤がある場合には是正できること
(ア)納税者が確定申告時に原則法又は簡便法を選択した場合,①当該選
択に客観的に明白かつ重大な錯誤があり,②法所定の方法がなく,③そ
の是正を許さないならば納税者の利益を著しく害すると認められる特
段の事情があるときは,修正申告や更正の請求によらずに選択を是正で
きるものと解するのが相当である(最高裁昭和60年(行ツ)第81号
同62年11月10日第三小法廷判決・裁判集民事152号155頁,
最高裁昭和63年(行ツ)第152号平成2年6月5日第三小法廷判
決・民集44巻4号612頁参照)。
(イ)これを本件についてみるに,原告P2は,原告P2・18年12月
期の法人税の確定申告時において,本件受贈益が生じないと信じていた
のであり,受取配当に係る負債利子の額の計算方法についても,それを
前提に原則法を選択したのであって,その選択に錯誤があったことは客
観的に明白である。
そして,原告P2・18年12月期について,原告P2の控除負債利
子額を簡便法によって算定すると,合計9743万1662円となると
ころ,原則法によれば,その額は,本件受贈益がある場合には4683
万8282円(原告P2・18年12月期再更正処分)と算定され,同
受贈益がない場合には7666万98円(原告P2・18年12月期再
修正申告)と算定されるのであるから,上記錯誤は,その差額に照らし
重大なものである(上記(ア)①)。
また,本件において,原告P2は「受贈益はない」と主張していると
ころであり,負債利子の額の算定方法の是正を法の定める方法によって
行うことはできない(上記(ア)②)。
さらに,確定申告後に処分行政庁が本件受贈益を認定したことから,
負債利子の額の算定にあたり,簡便法の選択への是正を許さないならば,
控除負債利子額が高額となり,受取配当等の益金不算入額が減少し,法
人税額が増加する結果を招来するという原告P2の利益を著しく害す
る特段の事情がある(上記(ア)③)。
(ウ)以上によれば,原告P2が確定申告時に原則法を選択したことにに
ついては,錯誤に基づく是正が認められるべきものであるから,原告P
2は,簡便法により負債利子控除の額を算定することができる。
(3)原則法による場合の控除負債利子額割合につき分子の帳簿価額に本件受
贈益の額を加算すべきでないこと(資産按分方式における株式等の帳簿価額)
ア仮に,簡便法による負債利子控除の額の算定が認められず,原則法によ
るべきであるとしても,負債利子控除割合の分子に当たる法人税法施行令
22条1項2号の「帳簿価額」は,税務上の帳簿価額をいうと解されると
ころ,本件出資持分に関し,その税務上の帳簿価額として加算されるのは,
購入代価そのものであって,本件受贈益の額を加算することは誤りである
から,受取配当等の益金不算入額の過大額は,516万2834円となる。
以下,本件受贈益の額を加算すべきでないことにつき詳述する。
イ資産の低額譲受けの場合に法人税法22条2項が適用されることと同
法施行令22条1項及び2項の「帳簿価額」とは無関係であること
仮に,資産の低額譲受けの場合に,当該資産の対価の額と「適正な価額」
と差額が,法人税法22条2項の無償による資産の譲受けに係るものとし
て,収益の額を構成するとしても,同法施行令22条1項2号及び2項2
号に規定する「帳簿価額」は,同令119条1項により算出されるべきで
あり,内国法人の益金の額に関する通則的な規定である法人税法22条2
項の解釈によって定まるものではない。
ウ法人税法施行令119条1項1号の「購入の代価」に本件受贈益の額は
加算されないこと
(ア)租税法においては,厳格な文理解釈の原則が要請される。そのため,
特段の限定を付さないで用いられている法人税法施行令22条1項2
号の「帳簿価額」は,税務上の帳簿価額であると解するのが相当である。
また,上記の文理解釈の原則に照らせば,本件出資持分は,原告P2が
購入により取得したものであるから,同令119条1項1号の「購入し
た有価証券」に該当し,同項8号の有価証券に該当する余地はない。
(イ)同令119条1項1号は,「購入した有価証券」の帳簿価額の算出
の基礎となる取得価額について,「その購入の代価(購入手数料その他
その有価証券の購入のために要した費用がある場合には,その費用の額
を加算した金額)」と明確に規定しており,時価よりも低額な価額で購
入した場合について何ら特段の規定を置いていないから,厳格な文理解
釈によれば,一律にその購入代価を取得価額としていると解するほかな
い。上記規定について,同項8号との均衡などという意味不明な根拠に
より,「適正な価額」と読み替えることはできない。
エ税務上の帳簿価額につき有価証券の評価益等相当額が加算されないこ

受取配当等の益金不算入額の負債利子控除割合の算定に係る法人税法
施行令22条1項1号ニ及びヘ並びに同条2項1号(分母に係るもの)は,
「確定した決算に基づく貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額」
を算出するに当たり,「その他有価証券」の評価益等相当額を加減すると
規定する一方で,同条1項2号及び2項2号(分子に係るもの)は,単に
「帳簿価額」とのみ規定し,これらの評価益等相当額を考慮していない。
これは,企業会計においては「その他有価証券」について時価評価するこ
ととしているのに対し,税法上は「その他有価証券」について基本的に原
価評価することとしていることによる。
このように,同令22条1項及び2項による控除負債利子額の算定に当
たり,分子の帳簿価額は評価損益を考慮しないのであるから,有価証券の
低額譲受けの場合に,当該資産の対価の額と「適正な価額」との間に差額
があるとしても,これを加算することはできない。そうすると,本件にお
いても,控除負債利子額の算定に当たり,分子の帳簿価額について,本件
出資持分の価額に本件受贈益の額を加算することはできない。
(4)負債利子控除割合が1を超えるときは「各株式等の帳簿価額」から受贈益
相当額を減算すべきこと(控除負債利子額の合計額が現実支払利子額を超え
る場合の取扱い)
ア仮に,本件出資持分に関し,その税務上の帳簿価額として本件受贈益の
額を加算すべきであるとしても,計算の結果,負債利子控除割合が1を超
えるときは,分子となる「各株式等の帳簿価額」を,税法上の帳簿価額か
ら,負債利子の支払に全く関係しない本件受贈益の額を減算した額に変更
して,控除すべき負債利子の額を算定すべきである。以下詳述する。
イ受取配当等の益金不算入額の負債利子控除割合の算定に関し,分母とな
る総資産の帳簿価額は会計上の帳簿価額とし,資産の評価損益が計上され
ることとする一方で,分子となる株式等の帳簿価額は税法上の帳簿価額と
し,上記評価損益は計上されないこととすれば,両帳簿価額が乖離するこ
とも見込まれる。
そこで,法人税法施行令22条1項1号は,負債利子控除割合の分母と
なる「総資産の貸借対照表上の帳簿価額」について,同帳簿価額をそのま
ま分母とするのではなく,同号イないしヘにより次に掲げる金額を加減算
する旨規定している。
①減算する金額
イ固定資産の帳簿価額を損金経理により減額することに代えて積立
金として積み立てている金額
ロ租税特別措置法52条の3(準備金方式による特別償却)の規定に
より特別償却準備金として積み立てている金額
ハ土地の再評価に関する法律の規定により再評価が行われた土地に
係る再評価差額に相当する金額
ニ法人税法施行令119条の2第2項に規定するその他有価証券に
係る評価益等相当額
ホ連結法人に支払う負債利子の元本である負債の額に相当する金額
②加算する金額
ヘその他有価証券に係る評価損等相当額
ウこのうち,法人税法施行令22条1項1号イ及びロは,固定資産等につ
いて,圧縮記帳や特別償却という損金経理により帳簿価額を減額する方法
とその方法に代えて積立金として積み立てる方法,引当金に繰り入れる方
法などその経理方法が複数あり,経理方法によって貸借対照表上の総資産
の帳簿価額が異なるため,これを調整するための規定である。
また,同号ハは,会計上,再評価を行い,帳簿価額を増額した土地につ
いて,再評価後の土地の帳簿価額で総資産の帳簿価額を算定したのでは,
控除する負債利子の額を,総資産の帳簿価額に占める株式等の帳簿価額の
割合で算定することしていることからすれば,再評価差額相当額だけ総資
産の帳簿価額が増加し,控除すべき負債利子の額が適正に計算されないこ
とになるため,当該再評価相当額を除いて調整するための規定である。
そして,同号ホは,連結法人間における負債利子は,受取配当等の額か
ら控除すべき負債利子の額に含まれないことから(法人税法23条4項括
弧書き),当該負債利子の元本たる負債を総資産の帳簿価額から控除して
調整するものである。
以上と同様に,同法施行令22条1項1号ニ及びヘは,税法上の「その
他有価証券」について企業会計上は時価評価することとし,その評価差額
を純資産の部に計上することを原則としているのに対し,税法上「その他
有価証券」は原価評価することとされているため,評価益の場合は評価差
額相当額を総資産の帳簿価額から減算し,評価損の場合は評価差額相当額
を総資産の帳簿価額に加算して調整するものである。すなわち,同号ニ及
びヘは,負債利子控除割合における分子の株式等の額と分母の総資産に含
まれる株式等の額を同額にするための調整規定である。
エこのように,「その他有価証券」に係る評価損益について,法令は,こ
れを負債利子控除割合算定のための帳簿価額から加減算して,控除する負
債利子の額の算定が整合するように調整しているのであり,このような分
母の貸借対照表上の帳簿価額と分子の税法上の帳簿価額との調整規定が
設けられていることや,評価差額を得るために資金を借り入れ,利子を支
払うことが想定され得ないことからすれば,控除負債利子の額の算定にあ
たり,評価差額を加味しない調整方法(帳簿価額に加算しない方法)が最
も合理的である。
したがって,負債利子控除割合が1を超える本件において,控除負債利
子額の算定に係る負債利子控除割合における有価証券の帳簿価額に,本件
受贈益の額を加算すべきではない。
第8処分理由の差し替えの可否(争点8)について
1原告P2の主張の要旨
(1)除斥期間経過後の新たな理由による追加主張は認められないこと
ア被告は,原告P2・18年12月期再更正処分について,平成25年2
月22日の本件第4回口頭弁論期日において,同処分の更正通知書(甲2
6)に記載されていない特定同族会社に係る留保金課税(法人税法67条
1項)を同処分の根拠として主張した(同日付け準備書面(2)。以下「本
件留保金主張」という。)。
イところで,法人税の更正処分は,法定申告期限から5年を経過した日以
後においてはすることができない(平成19年3月30日法律第6号によ
る改正前の通則法70条)。
原告P2・18年12月期の法人税の法定申告期限は,平成19年3月
31日(確定申告書の提出期限の延長の特例に係る法人税法75条の2第
1項の規定により1月間延長されたもの)であったから,同日から5年を
経過した平成24年4月1日以後は,更正をすることができない。通則法
がこのような除斥期間を設けている趣旨は,租税法上の法律関係を不確定
の状態にしておくことは好ましくないためである。
このような租税法律関係の早期安定という通則法の趣旨に鑑みれば,除
斥期間経過後は,増額更正処分をすることもできないというべきである。
ウ被告は,上記アのとおり,除斥期間の終了日から10か月以上も経過し
た平成25年2月22日に本件留保金主張をしているところ,このような
主張の追加は,通則法が定める除斥期間経過後に当初更正処分と異なる理
由で増額再更正をすることと同じ結果を招来することになるから,上記イ
で述べたところに照らし,原則として許されない。
(2)青色申告の更正通知書に附記された更正理由とは異なる理由によって当
該更正処分の適法性を主張することは許されないこと
ア青色申告に対する更正処分の理由附記制度は,処分庁の判断の慎重さ,
合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を相手方に知
らせて,不服申立ての便宜を与える趣旨で設けられたものであり,この理
由附記に不備があるときは,それだけで当該更正処分が違法となるという
べきであるから,青色申告の更正については新たな処分理由の追加は原則
として許されないと解される。
イ原告P2・18年12月期の法人税に係る確定申告が,青色申告である
ことは,当事者間に争いがないところ,本件留保金主張は,更正通知書に
附記された更正理由とは異なる理由によって当該更正処分の適法性を主
張するものであるから,原則として許されない。
(3)本件留保金主張には例外事由も認められないこと
ア上記(1)及び(2)を踏まえ,本件留保金主張が例外的に許されるのは,①
原告P2・18年12月期各更正処分の更正通知書に附記された理由と本
件留保金主張との間に基本的課税要件事実の同一性があり,かつ,②本件
留保金主張を認めても原告P2の手続的権利に格別の支障がない場合に
限られるというべきである。
イ上記①についてみるに,原告P2・18年12月期再更正処分の理由の
一部が受贈益ではなく,法人税法67条1項の同族会社に係る留保金課税
であるとすれば,本件留保金主張の基本的課税要件事実は,原告P2が原
告P2・18年12月期において同項に規定する同族会社に該当し,かつ,
租税特別措置法62条の2第1項各号のいずれにも該当しないこと,法人
税法67条1項の規定により,同期の留保控除金額を超える部分の課税留
保金額が算定されること,及び同留保金額について同項各号に定める割合
を乗じて計算した金額の法人税額が加算されることが摘示されなければ
ならない。しかし,原告P2・18年12月期更正処分及び同再更正処分
の各更正通知書の理由欄には,その旨が一切記載されてない。また,受贈
益の認定と課税留保金に対する課税とは,その根拠法令(法律要件)も異
なる。さらに,本件留保金主張の判断のためには,同法67条1項の要件
(同族会社該当性など)の事実認定や法的評価を要する。
したがって,原告P2・18年12月期各更正処分の更正通知書に附記
された理由と本件留保金主張とでは,課税要件事実は明らかに異なってい
るから,その間に基本的課税要件事実の同一性は認められない。
ウ次に,上記②についてみるに,結果論として,原告P2・18年12月
期において,原告P2が,法人税法67条1項のその他の要件(同族会社
該当性など)を満たしていたからといって,原告P2が不服申立手続にお
いてこれらの論点を争う手続的権利を奪われてもやむを得ないなどとは
到底いえない。なお,被告が本件留保金主張をしたのは,上記(1)のとお
り,更正処分の除斥期間経過後である平成25年2月22日であり,原告
P2の手続的権利は,現に奪われている。
また,処分行政庁は,後続事業年度の原告P2・19年12月期更正処
分の更正通知書には,本件留保金主張に係る理由を附記している。
したがって,本件留保金主張を認めても原告P2の手続的権利に格別の
支障がないとはいえない。
エ以上のとおり,本件留保金主張にはこれが許される例外的事由も認めら
れず,被告が本件留保金主張をすることは許されない。
2被告の主張の要旨
(1)更正の除斥期間経過後の新たな主張が許されること
ア原告P2は,本件留保金主張は,通則法が定める除斥期間経過後に当初
更正処分と異なる理由で増額更正をすることと同じ結果を招来すること
となり,許されない旨主張する。
イしかしながら,①処分理由の差し替えは単なる攻撃防御方法の提出であ
って別個に課税処分をするものではないから,除斥期間の制限を受けない
のは当然であること,②既に除斥期間内に課税処分がなされている以上,
納税義務者の法的地位を早期に安定させようという除斥期間の趣旨は達
成されているというべきであって,課税処分の適法性をめぐって現に訴訟
で争っている場合にまで除斥期間の趣旨を拡大すべき必要性はないこと,
③処分理由の差し替えを許しても,一定額の納税義務が課されている状態
自体には何ら変動がなく,納税義務者にそれ以上の義務を新たに課すもの
ではないこと,④除斥期間経過後の原告による新たな主張及び立証を認め
ながら,税務署長に対してのみ主張及び立証を制限する根拠は,除斥期間
を法定している趣旨からは説明できないこと,⑤税務署長の主張が時機に
後れてされた場合は,民事訴訟法157条の規定(時機に遅れた攻撃防御
方法の却下等)を活用して適宜対処することができることに鑑みれば,課
税処分の取消訴訟において,更正の除斥期間経過後における新たな主張は
許されると解すべきである。
原告P2の上記主張には,理由がない。
(2)本件留保金主張は理由の差し替えの枠外のものであるから,総額主義の観
点により許容されるべきであること
ア原告P2は,青色申告者に対する更正処分の理由附記制度(法人税法1
30条2項)の趣旨により本件留保金主張が制限される旨主張する。
イしかしながら,課税処分の取消訴訟における訴訟物は,処分の違法性一
般であり,その処分の同一性の捉え方について,判例はいわゆる総額主義
を採用している(最高裁平成2年(行ツ)第155号同4年2月18日第
三小法廷判決・民集46巻2号77頁ほか)。総額主義によれば,審理の
対象は,課税処分によって確定された税額が処分時に客観的に存在した税
額を上回るか否かを判断するために必要な事項の全てに及ぶことになる
から,課税処分における税務署長の認定等に誤りがあっても,これにより
確定された税額が総額において租税法規によって客観的に定まっている
税額を上回らなければ,当該課税処分は適法とされることになる。
以上の観点から,更正通知書に記載されていない理由をもって課税処分
の適法性を主張することは許容されるというべきである。
ウもっとも,青色申告者に対する更正については,更正の理由を附記する
ことが求められていること(所得税法155条2項,法人税法130条2
項)から,更正処分取消訴訟において,課税庁が更正通知書に附記した以
外の理由を主張し得るかどうかが問題とされることがあり,これがいわゆ
る理由の差し替えの可否の問題である。
この点に関し,最高裁昭和52年(行ツ)第62号同56年7月14日
第三小法廷判決・民集35巻5号901頁は,被処分者に争訟上格別の不
利益を与えることがない場合はいわゆる理由の差し替えの枠外の問題と
し,理由の差し替え固有の問題はそれが被処分者の争訟上の利益にかかわ
るような場合に限定した上,この理由の差し替えの可否の問題をいずれに
解しようとも,同判決の事案のような場合には,新たな主張が許されると
判示したものと解される。
エ本件において,原告P2・18年12月期再更正処分に係る主な争点は,
原告P2が原告P1及びP8から本件出資持分を譲り受けた際に受贈益
が生じていたか否か,そして受贈益が生じていた場合において,その受贈
益を原告P2・18年12月期の益金の額に算入するべきか否かであると
ころ,仮に同受贈益を益金の額に算入すべきとした場合には,法人税法6
7条1項所定の留保金額が増加し,同項及び租税特別措置法62条の2第
1項の適用によって,原告P2・18年12月期の課税留保金額に対する
税額は自動的に算出される関係にあるが,原告P2・18年12月期再更
正処分において,当該税額が同事業年度の所得の金額に対する法人税額に
加算されていなかったものである。
上記課税留保金額に対する税額の算出に当たっては,平成18年法律第
10号による改正前において,法人税法67条1項が適用される「同族会
社」の該当性が問題となるが,原告P2・18年12月期末時点で,原告
P2の株主は,P8(700万株),P26(1000万株)及びP8と
特殊の関係のある個人であるP10(1300万株)であり,これらの者
(いずれも個人であって,同族会社でない法人ではない。)によって発行
済株式総数である3000万株の100パーセントが保有されていたか
ら,原告P2について,同項が適用される同族会社であることは客観的に
明らかである。
また,上記税額の計算について,所得金額及び受取配当の益金不算入額
の金額に争いはあるものの,これらはいずれも受贈益に係る争点の判断と
連動し,その他の計算については,客観的金額として争いがない。
このように,原告P2・18年12月期の課税留保金額に対する税額の
加算は,理由附記されている本件出資持分の受贈益に係る上記争点に対す
る判断によって決せられるものであるから,法人税法67条1項の主張が
追加されたとしても,原告P2に特段の不利益を生じさせるものとはいえ
ない。
オしたがって,本件留保金主張は,理由の差し替えの枠外の問題として許
されるというべきであるから,原告P2の上記主張には理由がない。
(3)原告P2の主張を前提としても本件留保金主張は許容されるべきである
こと
ア原告P2は,①原告P2・18年12月期各更正処分の更正通知書に附
記された理由と本件留保金主張との間に基本的課税要件事実の同一性が
あり,かつ,②本件留保金主張を認めても原告P2の手続的権利に格別の
支障がない場合には,本件留保金主張が例外的に許される旨主張する。
イそこで検討するに,上記(2)で述べたところに照らすと,本件において
は,本件留保金主張との関係で,本件出資持分について受贈益が生じてい
たか否かの判断の前提となる事実関係のほかに,当該事実関係とは別個の
新たな事実の認定や法的評価を要するものではなく,それゆえ,留保金課
税が行われたか否かにかかわらず,原告P2が不服申立てや本件訴訟で主
張する基本的な事実関係は異なるものではない。
そうすると,仮に原告P2の主張を前提にしたとしても,①本件出資持
分について受贈益が生じていたか否かという点と,本件留保金主張との間
には,直接的な関係が認められるから,争点における基本的な課税要件事
実の同一性があるといえるし,また,②不服申立てや本件訴訟において原
告P2の手続的権利に格別の支障を生じるものでもなく,実際に,原告P
2は,不服申立手続から本件訴訟に至るまで,受贈益が生じるか否かにつ
いて争っているのであるから,本件留保金主張を認めたとしても,原告P
2の手続的権利に格別の支障を生じさせることにならないことは明らか
である。
ウしたがって,原告P2の主張を前提としても,本件留保金主張は許容さ
れるべきである。
(4)小括
以上によれば,被告が本件留保金主張をすることは許容されるべきである。
第9過少申告加算税を賦課すべきでない正当な理由の存否(争点9)について
1原告らの主張の要旨
(1)仮に,本件各譲渡に係る受贈益相当額が原告らの所得金額に加算されるべ
きものであり,かつ本件出資持分の評価が被告の主張するとおりであるとし
ても,原告らが法人税の申告時に所得金額を加算しなかったことについて,
通則法65条4項に定める過少申告加算税を賦課すべきでない「正当な理由
があると認められる場合」には,原告らが加算税を賦課されることはない。
ここで,「正当な理由があると認められる場合」とは,真に納税者の責め
に帰することのできない客観的な事情があり,過少申告加算税の趣旨に照ら
しても,なお,納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる
場合をいうと解される。
(2)これを本件についてみると,株式等の評価方法は,法人税基本通達9-1
-13及び同通達9-1-14により定められているところ,被告は,売買
実例による評価を否認した上,同通達が準用する評価通達の定めのうち,議
決権割合に基づく評価方式(配当還元方式)及びそれが認められる場合等の
純資産価額の20パーセント減について,通達によるべきでない特段の事情
があるとして,評価に係る国税庁の公的見解である評価通達と異なる方法に
より本件出資持分を評価する。しかし,そのような評価方法を採用すべきこ
とを納税者である原告らが予測して,法人税の申告をすることはできず,本
件において原告らの責めに帰することのできない客観的な事情がある。
また,P7相続税事件の評価時点における評価通達の定め(株式数による
判定)と本件各譲渡時における評価通達の定め(議決権数による判定)は異
なっており,上記事件を根拠に「不適用となる可能性を認識できなかった」
と判断することはできない。加算税制度の趣旨からしても,原告らに対し,
評価通達と異なる評価をして法人税を課したうえで,加算税をも賦課するこ
とは,不当又は酷な処分であることは明らかである。
(3)以上によれば,原告らに過少申告加算税を賦課すべきでない正当な理由が
あるというべきである。
2被告の主張の要旨
(1)過少申告加算税は,過少申告による納税義務違反の事実があれば,原則と
してその違反者に対し課されるものであり,これによって,当初から適法に
申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るととも
に,過少申告による納税義務違反の発生を防止し,適正な申告納税の実現を
図り,もって納税の実を挙げようとする行政上の措置である。そして,過少
申告加算税の上記趣旨に照らせば,通則法65条4項にいう「正当な理由が
あると認められる」場合とは,真に納税者の責めに帰することのできない客
観的な事情があり,上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしても,なお,
納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうも
のと解するのが相当である。
したがって,単に納税者の法の不知や誤解に基づく場合は,上記「正当な
理由があると認められる」場合に該当しない。
(2)これを本件についてみると,原告らは,本件13社による本件出資持分に
係る出資の経緯及び保有状況を熟知していたばかりか,P4社の出資者には,
原告P1らの同族関係者以外の同族関係者グループは存在せず,原告らとそ
の同族関係者が,P4社を実質的に支配していたというべきであることは,
P7相続税事件の控訴審判決(東京高等裁判所平成17年1月19日判決。
乙4の2)においても同様に認定されていたのであるから,本件出資持分の
評価につき,評価通達185ただし書及び同通達188(1)の定めが不適用
となる可能性を十分に検討することができた。本件において,過少申告とな
った要因は,原告らが,単に,法令・通達の解釈につき,独自の解釈に基づ
いて本件出資持分を評価したことによるものにすぎない。
(3)以上のとおり,本件において,原告らの法人税の申告が過少になったこと
についての要因は,原告らの法の不知や誤解に基づくものと評価できるもの
であるから,原告らに通則法65条4項所定の正当な理由があるとはいえず,
原告P1賦課決定処分及び原告P2各賦課決定処分に違法はない。

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