弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主          文
1 平成7年9月28日中華人民共和国の方式により婚姻が成立した旨の証明書を同
年10月18日佐賀県神埼郡a村長に対して提出することによりなされた原告と被告
との婚姻は,無効であることを確認する。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
 本件は,原告が被告に対し,原告と被告との婚姻は,被告に婚姻する意思がなく
してなされた無効のものであるとして,その確認を求めた事案である。
第3 当裁判所の判断
1 婚姻に至る経過について
(1) 証拠(甲1ないし3,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認め
られる。
ア 原告は,「日本国際友好・・・会理事長」の肩書を有する訴外Cから 「中国人
との結婚は,金270万円を支払えば確実に実現する。」との説明を受け,同
人に,平成7年8月17日に金200万円を,同月29日に金70万円を斡旋料と
して支払った。
イ 原告は,同年9月22日,Cとともに中華人民共和国に出かけ,同月24日,
被告と見合いしたが,原告もCも中国語は全く理解できず,全ての会話は通訳
のDを介して行われた。同月28日,Dにより中華人民共和国の方式による婚
姻届出が中華人民共和国吉林省長春市に提出されたが,実際に結婚式を挙
げたことはなく,原告と被告が共に暮らしたこともない。
ウ Cの説明では,原告は日本で被告の到着を待てばよい筈であったので,原
告は日本に戻って,同年10月18日,佐賀県神埼郡a村長に対し,中華人民
共和国で婚姻が成立した旨の証明書を提出し,原告の戸籍にその旨記載さ
れた。
エ 原告は,同月20日,福岡入国管理局において被告の在留許可を申請し,そ
の在留資格証明書が同年11月27日に発行されたので,これを所持して被告
を日本に迎え入れるため中華人民共和国に向かい,藩陽市の日本領事館に
おいて被告が日本へ入国するための手続を申請した。
オ しかるに,被告は,原告と被告との婚姻の仲介人が「原告が金130万円を
持参して被告に交付する」と説明していたのに,原告がこれを持参してこなか
ったのは約束違反だ。」などと申し立て,原告が持参していた金40万円を交
付したが,被告は残金100万円を要求して「日本には行かない」と言い出し,
結局,原告は単身で帰国した。
カ 翌平成8年2月末ころ,原告が知人を通じて被告に連絡をとってもらったとこ
ろ,被告の返事は「日本へ来るつもりはない。」とのことだった。また,同年3月
末にも再度連絡をとってもらったところ,被告は両親の家を出てどこかへ行っ
てしまったとのことであった。その後も原告は被告と連絡をとろうとしたが,現
在まで連絡はとれないでいる。また,Cも原告を騙したことを認めて「被告との
件は誠意をもって解決する。」,「金はできるだけ返す」,「離婚の手続きもす
る」などと約束したが,結局,何も実行しないまま原告の前から姿を消してしま
った。
2 以上の事実経過によれば,原告と被告の婚姻は,書類上は中華人民共和国の方
式により婚姻が成立したことになってはいるものの,実際に結婚式を挙げたことも
なく,共に暮らしたこともないものであって,夫婦としての実体は全くないというほか
なく,また,被告が,「金銭を持参しないのは約束違反」などとしてあたかも婚姻を
金銭の交付と引き換えであるかのように述べていることにも照らせば,被告に真に
原告と婚姻する意思があったと認めることはできず,結局,原告・被告間の婚姻は
無効なものというべきである。
3 よって,原告の,被告との間の婚姻の無効確認を求める請求は理由があるので,
主文のとおり判決する。
佐賀地方裁判所民事部
裁 判 官    亀  川  清  長

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