弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人酉井善一、同河村武信、同大江洋一、同石川元也、同宇賀神直、同大川真
郎の上告趣意のうち、違憲をいう点は、公職選挙法(昭和五〇年法律第六三号によ
る改正前のもの。以下、同じ。)一四二条一項が憲法二一条に違反しないことは、
当裁判所の判例とするところであり(昭和二八年(あ)第三一四七号同三〇年四月
六日大法廷判決・刑集九巻四号八一九頁、昭和三七年(あ)第八九九号同三九年一
一月一八日大法廷判決・刑集一八巻九号五六一頁、昭和四三年(あ)第二二六五号
同四四年四月二三日大法廷判決・刑集二三巻四号二三五頁)、公職選挙法一四二条
二項が憲法一五条に違反しないことも、右判例の趣旨に照らして明らかであるから、
所論は理由がなく、その余は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、適法な
上告理由にあたらない。
 被告人本人の上告趣意のうち、違憲をいうがごとき点は、原判決のどの部分がい
かなる理由で憲法のどの条項に違反するかの具体的指摘を欠き、その余は、事実誤
認、単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。
 なお、所論にかんがみ、職権をもつて判断すると、原判決の認定するところによ
れば、被告人は、原判示の大阪府知事選挙に際し、自己が評議員を勤めるA協会が
支持を決定したB候補の選挙運動者として、泉大津市の同協会員有志の集まりにお
いて世話人会の代表者に推され、同市協会員の選挙運動の中心的役割を果たすこと
になつた者であるところ、右協会員が集まつて選挙運動を推進するための方策等を
協議した際に、あらかじめ同協会から被告人の許に届けられていた本件「ミニ経歴
書」(その外形内容自体に徴し、B候補への投票を依頼する趣旨の選挙運動のため
に使用する文書と推知されうるもの)多数を会場に用意し、同協会からの伝達に基
づきその配布方法を説明したうえ、選挙人であるC他七名に対し、適宜必要枚数を
持ち帰らせる方法により右文書合計約三一一枚を配付したものであつて、被告人は、
本件文書を不特定又は多数の者に配布する目的で右川口らに配付したものであり、
また、同人らを通じて当然又は成行上不特定多数の者に配布されるような情況のも
とで同人らに右文書を配付したことが明らかであるというのである。右事実に徴す
れば、本件被告人の所為は、選挙運動組織の内部的な準備行為にとどまるものとは
認め難く、これを公職選挙法一四二条一項にいう「頒布」にあたると認めた原判断
は相当である。なお、原認定事実自体によつても、被告人と前記Cらとの間に、C
らが不特定又は多数の者に対して行う頒布行為につき共犯関係が成立したものと推
認すべき余地がないではないが、被告人の本件所為が選挙運動組織の内部的な準備
行為にとどまるものでない以上、単に右のような共犯関係が成立するというだけで
は、右所為が「頒布」にあたることを否定するに足りないものというべきである。
 よつて、刑訴法四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決す
る。
  昭和五七年四月二二日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    藤   崎   萬   里
            裁判官    本   山       亨
            裁判官    中   村   治   朗
            裁判官    谷   口   正   孝

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