弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士秋山薫一の上告理由第一点について。
 原判決は、控訴人(上告人)の停止条件附代物弁済契約の主張については甲第八
号証中これに副う趣旨の部分は措信しなかつたものであり、甲第一、第四号証、甲
第六号証の一、二ではこれを認め難く他にこれを肯認すべき証拠はないと判示した
ものである。そして、右甲第一、第四号証、甲第六号証の一、二では必ずしも右主
張事実を肯認することができないから、原判決の右証拠説明には違法は存しない。
また、所論甲第二号証又は甲第五号証についてはその成立について争はないけれど
も同号証を以ては右主張事実を認めることはできないから、原判決が他にこれを肯
認すべき証拠はないと判示したのは正当であつて、これを以て所論のごとく甲第五
号証の判断を遺脱した理由不備の違法があるということはできない。その他の所論
は、結局原審の裁量に属する証拠の収捨判断乃至事実認定を非難するか又は事実誤
認を前提として債務不履行により停止条件が成就したことを主張するに帰し、上告
適法の理由として採用することはできない。
 同第二点について。
 上告人の原審における主張並びに論旨引用の各証拠の内容が所論のとおりである
ことは記録に徴し明白であり、従つて、この点に関する原判決の判示が失当である
ことも所論のとおりである。しかし原判決認定の本件代物弁済の予約は、本件(イ)
の債権についてのみなされたものであり、原判決は所論第一の二の(2)の判示に
おいて右(イ)の債権に対する昭和一九年九月分の利息がその制限利息超過の部分
をも含めて合意による弁済充当により消滅したことを判示したに過ぎない趣旨と解
される(なお同(4)の原判決の説明参照)から、右の失当は原判決の結論に影響
を及ぼさないことが明白である。それ故本論旨は採用できない。
 同第三点について。
 しかし、原判決が被上告人Bにおいて、昭和二一年二月二〇日本件(イ)の債権
の残元金及びこれに対する昭和二〇年八月一三日から右同日までの年一割の制限遅
延利息の合計として金八八八八円一七銭をその弁済のために供託するに先立ち現実
の提供を為したが受領を拒絶されたことを判示している以上、弁済のための供託を
した判示として欠くるところがないから、その現実の提供を為した日時を判示しな
くとも理由不備の違法があるとはいえない。また、原判決は、本件代物弁済に関す
る契約が本件(イ)の債務の不履行を停止条件とする代物弁済契約であるとの上告
人の主張を排斥し、それを控訴人において任意に本来の債権の行使をするか又は単
なる代物弁済を受け得る旨の予約をしたものと認めたのであるから、右供託前被上
告人に債務不履行の事実があつたか否かは供託の效力に影響を及ぼすものではなく、
従つて、原判決がその点につき何等判断をしなかつたからといつて弁済理由の判示
として不備であるともいえない。それ故本論旨も採用できない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    入   江   俊   郎

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