弁護士法人ITJ法律事務所

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主         文
1 原判決中,控訴人に関する部分を取り消す。
2 被控訴人の控訴人に対する請求を棄却する。
3 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
(以下,略語は原判決に準ずる。当審分も含めて別紙略語表のとおりである。 /略語
表は添付省略)
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
 主文同旨
2 被控訴人
(1) 本件控訴を棄却する。
(2) 控訴費用は控訴人の負担とする。
第2 事案の概要
1 本件は,美術商で古物商をも営む被控訴人が,商品として買い入れた水指及び
香炉(本件骨董品,以下この購入を「本件取引」という。)並びに骨董品の見本写真
など(本件写真等)につき,Aを被疑者,その元夫Bを被害者とする本件(窃盗)被
疑事件の捜査資料として,岐阜南(警察)署のC司法巡査に対して任意提出したと
ころ,同事件の送致を受けた岐阜地検(地方検察庁)の担当検事である本件検察
官が,刑事訴訟法(以下「刑訴法」という。)222条1項(124条1項)を根拠に,本
件骨董品をBに還付したので(本件被害者還付),被控訴人が控訴人(国)に対し,
本件被害者還付が違法であるとして,民法709条又は国家賠償法(以下「国賠
法」という。)1条1項に基づき,本件骨董品の時価相当額350万円の損害賠償及
び被害者還付日以後の遅延損害金(年5分)を請求した事案である。
原審は,本件被害者還付は刑訴法124条1項に反する違法な職務執行であ
り,本件検察官に過失があると認定し,被控訴人がDから本件骨董品を購入した
本件取引については即時取得が成立し,本件被害者還付により被控訴人の所有
権が侵害されたとし,本件骨董品の時価を350万円として,被控訴人の控訴人に
対する国賠法1条1項に基づく請求を全部認容したので,控訴人が事実誤認等を
主張して控訴した〔なお,被控訴人は,岐阜県(原審相被告)に対しても,C巡査が
本件写真等の一部を紛失したことによる損害賠償等を求め,原審で請求の一部が
認容されたが,これについては双方から控訴がない。〕。
当審において,被控訴人は,本件請求は,国賠法1条1項に基づくもので,民法
709条に基づく請求をしないとして,同請求にかかる訴えを取り下げ,本件請求
を,本件検察官の違法な職務執行によって,本件骨董品に対する被控訴人の所
有権が侵害されたことによる損害賠償を求めるものであるとし,本件検察官の違法
行為と独立して検察事務官E係長の職務執行の違法を問うものではないこと等を
明確にした。
2 争いのない事実等は,次のとおり改めるほか,原判決「事実及び理由」第2の1の
とおりであるからこれを引用する(ただし,原審相被告岐阜県に対する請求のみに
関する部分を除く。)。
原判決3頁10行目の「木箱入りの水指1個(以下」を「木箱入りの水指1個(木
箱に桃山時代の古信楽である旨の記載があるもの。以下」と,11行目の「木箱入
りの香炉1個(以下」を「木箱入りの香炉1個(木箱にLの作である旨の記載がある
もの。以下」と,4頁2行目の「F(」を「Fことf(当時52才。」と,3行目の「D(」を「D
(当時29才。」とそれぞれ改める。
3 本件の争点
(1) 本件被害者還付による被控訴人の所有権侵害の有無
この争点は,被控訴人主張の所有権取得原因である即時取得が成立したか
否かであり,具体的には,民法192条,193条の要件該当性に関して次の点が
問題となる。
ア 被控訴人が本件骨董品を民法192条により即時取得したか。すなわち,本
件取引に,民法192条が適用され,被控訴人が取引の相手方,いわゆる「前
主」につき権利者であると信じたことに過失があるか。
イ 本件骨董品が「盗品」であり,盗難のときより2年以内に占有者に対して回復
請求がなされたか(民法193条)。
(2) 本件被害者還付の違法性と過失の有無
この争点は,本件被害者還付に刑訴法124条1項の要件があるか,要件あ
りと信じたことに注意義務違反があったかというものであり,双方の主張によれ
ば以下の点が問題となる。
ア 本件骨董品は,刑訴法124条1項にいう「贓物」であるか。
イ 民法193条に定める,盗難のときより2年以内に占有者に対して回復請求
がなされ,かつ,これがなされたことが明らかであったか。
ウ 本件取引につき民法192条(即時取得)の適用があるか,あるとしても被控
訴人が「前主」に所有権があると信じたことに過失があることが明らかであっ
たか。
エ 被害者還付すべき理由が明らかとはいえないとしても,なお,本件被害者還
付につき,国賠法1条1項の違法性及び過失が認められるか。
(3) 損害の発生の有無及びその数額
本件骨董品の所有権侵害の有無及びその時価
4 争点に関する当事者の主張
(1) 争点(1)のア(民法192条の要件該当性)について
(控訴人の主張)
ア 民法192条の即時取得成立の要件である権限ありと信じた取引行為の相
手方である「前主」とは,所有者であるかのような外観を有する者をいうとこ
ろ,被控訴人がD及びその夫と称するG(以下この両名を「Dら」という。)から
本件骨董品を買い受ける(本件取引)に際し,Dらは本件骨董品を所有者か
ら依頼されて売却することを明示していたから,本件骨董品を占有していたD
らは民法192条の「前主」に該当せず,被控訴人においてDらの処分権限を
信頼したとしても,被控訴人の本件取引には民法192条が適用されない。
イ 仮に,被控訴人の本件取引に民法192条の適用があるとしても,上記のと
おり,Dらは所有者から依頼されて売却することを明示していたのであるか
ら,所有者とされたFの交際相手の所有権があること及びDらの処分権限が
あることを信じ,かつ,信じたことに過失がないことが必要であるところ,次の
とおり,被控訴人がDらから受けた説明を含めて,本件骨董品の購入の際の
事情からは,本件骨董品がFの交際相手の所有であると信ずべき具体的事
情が全くなく,被控訴人が上記所有権の存在を信じていたものではないし,信
じたとしても信じたことに過失がある。
(ア) 被控訴人は,解体業者Hから,古物を処分したがっている知り合いとし
てDらの紹介を受けたに過ぎず,「前主」と説明されたFの交際相手につい
て事前に紹介されたことはない。
(イ) 本件取引に際しては,その由来はおろか,「前主」の氏名さえ知らされ
ず,会わせて欲しいとの申出も断られたものである。そして,Dについても,
免許証の写真を見たものの,住所氏名等の確認もしていない。
(ウ) 本件取引を持ち込んだDは,水商売人風であり,通常金満家が居住す
るとは考えにくい県営住宅に居住するとして,同所で取引され,多数の高
価な骨董品を段ボール箱に詰めた状態で見せられたものである。
(エ) 本件水指は,著名な鑑定家による記載があり,1000万円でも売却しう
る骨董品であると考えたにもかかわらず,35万円として買い受けを申し出
たところ,Dらは難色を示さず,売却したもので,骨董品の取引をし慣れな
い素人であることが明らかである。
(オ) 被控訴人は,多数の骨董品を見せられ,取引もしているものであって,
Dらが,処分を焦っていたと理解できたはずであり,その出所に疑問を抱い
て,所有者と称されていた者の調査等をすべきであった。現に,本件骨董
品の取引を持ちかけられ,不審を抱き,取引を断った同業者もいた。
(カ) その後,Dらとの連絡が途絶えても,被控訴人は何らの措置に出ていな
いことからすれば,Dらの処分権限等について何ら関心を持っていなかっ
たことを推測させるものである。
(被控訴人の主張)
ア 民法192条適用の前提である取引行為の相手方である「前主」とは,所有
者であるかのような外観を有する者に限られず,他人の動産を自己の名にお
いて処分する権限を有する者や代理人も含まれる。被控訴人がDらと本件取
引をするに際し,Dらは本件骨董品を所有者(旧家の奥さん)から依頼されて
売却することを明示していたが,Dらの代理権限には何らの瑕疵がないから,
本件骨董品を占有していたDらは民法192条の「前主」に該当し,旧家の奥さ
んが「前主」となるものではない。
イ そして,被控訴人において,「前主」であるDらが権利者であると信じたことに
つき過失があったとはいえないことは次の点から明らかである。
(ア) Dは,Hという信用できる紹介者の紹介による取引相手であり,服装や
雰囲気からも疑念を抱くべき状況はなかった。D宅で取引され,自筆の領
収書も作成している。
(イ) 所有者とされた者について紹介するとのことだったが,紹介されないまま
終わったに過ぎない。
(ウ) 本件水指が時価1000万円することはない。被控訴人の評価は他の本
件骨董品も含めて350万円を下らないとのものである。
(エ) Dの住居や取引場所は県営住宅であっても,住居の建替え等に際して,
骨董品が多数持ち込まれることは希ではなく,Dの夫も解体業や手配師風
であったもので,従業員らしい者も出入りしていたものであり,古物を運搬
するのに段ボール箱詰めすることはままあるから,旧家の奥さんから依頼
されて処分するとの外観があったものである。
(オ) Dらは,第一回目の取引は不成立であったし,その後も多数回にわたっ
て処分をしているものであり,処分を焦っていたものとは窺われない状況で
あった。
(2) 争点(1)のイのうち,本件骨董品が盗品であるかについて
(控訴人の主張)
本件骨董品は盗品である。詳しくは,原判決8頁8行目から24行目までのと
おりであるからこれを引用する〔ただし,同部分の(刑訴法124条1項の)「贓物」
とする部分を「盗品」と読み替える。〕。
(被控訴人の主張)
本件骨董品は盗品ではない。具体的には,原判決6頁21行目から7頁3行
目までのとおりであるからこれを引用する(同上)。
(3) 争点(1)のイのうち,民法193条の回復請求の有無について
(控訴人の主張)
ア 盗品等の所有権は,盗難等の日から2年間は未だ被害者に帰属し,2年間
に民法193条による回復の請求がないときに,盗品等の善意の取得者はそ
の所有権を即時取得するというべきである。したがって,民法193条所定の
回復の請求とは「占有の回復」を求める行為にすぎないものであり,格別の
様式を要せず,盗難被害品の占有の回復を求める意思が明示されていれば
足りるというべきである。
イ Bは,盗難の翌日の平成10年4月17日に岐阜南署へ本件骨董品を含む被
害届を提出し,同年12月頃の同署での別件取調べにおいて本件骨董品の
返還の請求をする旨意思表示をし,平成11年2月ころC巡査が被控訴人へ
Bの上記意思を伝えた。Bの上記返還請求は有償を前提とするものであった
が,民法193条による回復の請求として欠けるところはない。
ウ Bは,平成11年10月ころから数回にわたって,本件検察官に対し,本件骨
董品を含む被害品の返還を求めた。民法193条による回復請求の相手方は
「占有者」と規定されているだけであるから,その占有者には盗品を領置して
いる検察官等の捜査機関を含むと解すべきである。そのように解すべき理由
は,原判決10頁5行目から11頁5行目までのとおりであるからこれを引用す
る。
(被控訴人の主張)
控訴人の主張アについては争わないが,その余は争う。イについては,C巡
査から被害者が「適価で買い取りたいと言っている」旨を伝えられ,「いいです
よ。」と回答したものであり,このような有償を条件とする返還請求は民法193
条による回復請求に該当しない。ウについては,民法193条の「占有者」とは,
「民法192条の要件を備えた現在の占有者」と解すべきであるから,検察官な
どの捜査機関はこれに該当しない。
(4) 争点(2)ア(本件骨董品の贓物性)について
(控訴人の主張)
本件骨董品は贓物に該当する。詳しくは,原判決8頁8行目から24行目まで
のとおりであるからこれを引用する。
(被控訴人の主張)
本件骨董品は贓物ではない。具体的には,原判決6頁21行目から7頁3行
目までのとおりであるからこれを引用する。
(5) 争点(2)のイ(民法193条の回復請求の有無及び存在の明白性)
双方の主張は上記(3)のとおりである。
(6) 争点(2)のウ(民法192条の要件に該当しないことの明白性)について
双方の主張は上記(1)のとおりである。
(7) 争点(2)のエ(国賠法1条1項の違法性及び過失)について
(控訴人の主張)
本件被害者還付につき違法性がない。詳しくは,原判決11頁13行目の「仮
に,」から24行目までのとおりであるからこれを引用する。
(被控訴人の主張)
押収物は原則として被押収者へ還付すべきであるが(刑訴法123条),贓物
で被害者に還付すべき理由が明らかなときに限り被害者に還付することと定め
られており(同法124条1項),本件では被害者に還付すべき理由が明らかでな
いことが容易に判断できたから,本件被害者還付は国賠法上も違法であり,本
件検察官に同法1条の過失がある。
(8) 争点(3)(本件骨董品の所有権侵害の有無及びその時価)について
双方の主張は,原判決11頁26行目から13頁5行目までのとおりであるから
これを引用する。
第3 当裁判所の判断
1 被控訴人の請求は,本件被害者還付により本件骨董品の所有権を侵害したとす
る国家賠償請求であるところ,当裁判所は,被控訴人に本件骨董品の所有権が認
められない,すなわち,その購入に際し,売主が権利者であると信じたことにつき
被控訴人の過失が認められ,即時取得が成立したといえないものであって,本件
骨董品の所有権侵害は認められず,被控訴人の請求はその余の点について判断
するまでもなく理由がないと判断する。その理由は以下のとおりである。
2 前提となる事実は,次のとおり改めるほかは,原判決14頁17行目から18頁12
行目までのとおりであるからこれを引用する。
原判決15頁16行目の「二,三十万円」を「20万円ないし30万円」と,16頁15
行目から16行目にかけての「県営住宅I荘」を「県営I住宅」と,17頁3行目と14行
目の各「承諾が得られなかった。」をいずれも「応じてもらえなかった。」と,18頁11
行目の「原告の方でも」から12行目までを「被控訴人からDへの携帯電話が通じな
いようになったが,被控訴人は前記I住宅のDの住居を訪問して調査したことは一
度もなかった。」とそれぞれ改める。
3 本件取引への民法192条の適用(争点(1)のアの控訴人の主張ア)について
控訴人は,民法192条の取引行為の相手方すなわち,いわゆる「前主」とは所
有者であるかのような外観を有する者をいい,本件骨董品を第三者から依頼され
て売却することを明示していたDらは「前主」に該当せず,本件取引には民法192
条の即時取得が適用されないと主張する。
しかし,所有者本人から売却の委託を受けて動産を所持する者(占有代理人)
の占有も,本人による占有(間接占有)の一部を構成するものであり,本人による
占有と一体となって,動産の占有による権利表象機能を有するというべきであるか
ら,第三者より委託を受けたDらから本件骨董品を購入した本件取引について民
法192条の即時取得の適用を否定する理由はない。
控訴人の主張は採用できない。
4 本件取引に際して「前主」が権利者であると信じたことにつき被控訴人の過失が認
められるか(争点(1)のアの控訴人の主張イ)について
(1) 民法192条の即時取得の要件である取得者の「無過失」については,取得の
際,「前主」が所有権等の処分ができる者(権利者)と信じたことに過失のなかっ
たことと解すべきところ,上記のとおり,Dらは第三者(A,被控訴人の主張では
「旧家の奥さん」)から依頼されて本件骨董品を売却するものであることを明示し
ていたのであるから,本件取引において前主が権利者であると信じたこととは,
上記「旧家の奥さん」が本件骨董品の所有権を有し,かつDらがその売却の委
任を受けていたものと信じたことと解すべきである。そして,DらがFを介して旧
家の奥さんから委任を受けていたとの被控訴人の主張につき,控訴人はこれを
積極的に争うものではなく,弁論の全趣旨により同事実を認めることができるの
で,本件ではDらへの委任者である「旧家の奥さん」が本件骨董品の所有者で
あると信じたことにつき,被控訴人の過失があると認められるかどうかの検討を
要することとなる。
(2) 上記前提となる事実(原判示),特に,①本件骨董品を含めDらが所持してい
た骨董品は数十点の多数に及び,被控訴人の仕入値において合計200万円を
超える物件であって,相応の由来を窺わせる値打ち物もあったこと,②しかる
に,これらが無造作に段ボール箱に入れられ,車のトランクや県営住宅の一室
に保管されているまま被控訴人に提示されたものであること,③取引を申し出た
Dは,水商売人風であって,上記県営住宅に居住していたことなどの本件取引
の事情に加えて,被控訴人が古物商であって,盗品等不正品の疑いがある物
の警察官に対する申告義務(古物営業法15条2項),取引相手の確認義務(同
条1項),取引内容の帳簿記載義務(同法16条)等の注意義務を負っているも
のであること等を考慮すると,被控訴人は本件取引をするについて,所有者とさ
れた「旧家の奥さん」の所有権の存在についての情報を得るか,少なくとも所有
者から売却を任されたとするDらの話が信用できるものであることの情報,すな
わちDらの職業や身元等について確実な情報とこれを裏付ける資料を得るべき
注意義務があったものというべきである。
(3) しかるに,被控訴人は,Dらに対し,旧家の奥さんに引き合わせてくれるよう求
めたのみで,Dらからこれに応じて貰えないままに,本件取引を含む3回の取引
を終えたものであり,被控訴人は旧家の奥さんが本件骨董品等の所有権を有
する事情について何ら情報を得ないまま本件取引をしたものとみざるを得ない。
そして,被控訴人は,Dについても,同人から運転免許証の提示を受け,代金の
領収証等(甲3ないし5。その住所の地番の記載は「1-79」とも「1-80」とも
記載し,同一でない。)を受け取りながら,運転免許証の顔写真で同一性を確認
したにとどまり,運転免許証と領収証等とに記載されたDの氏名と住所が一致す
るかどうかや,地番の記載の不一致の理由等も確認せず,古物台帳等の帳簿
も作成していなかったものである〔被控訴人は,平成10年11月4日にC巡査か
ら「D」の顔写真を見せられるまで,売主の女性の氏名を領収書記載の「J」と認
識していたものであるから(乙10),運転免許証の氏名との照合をしていないこ
とが明らかである。〕。また,Dらが3回目に売却した骨董品1点の引渡しを遅滞
したまま,Dの携帯電話への連絡が取れなくなった後も,被控訴人はDの住居で
あるという県営I住宅404号室ないし406号室を訪問調査したことがないという
のであるから(原審被控訴人本人),被控訴人は領収証等に書かれた県営I住
宅の住所(K区L-M又はL-N)がDの真の住所であるか等その身元などに重
きを置いていなかったものと見ざるを得ない。結局,被控訴人による所有者の情
報の入手や代理人であるDの身元やその信用性の確認は極めて不十分なもの
であったというほかない。
(4) してみると,被控訴人が,信頼するHの電話での紹介によりDらとの取引を始
め,Dの身なりも整っていてスナック経営者風であり,即時に取引をしないで自
宅訪問によって取引を進め,代金の領収証を徴し,一応免許証の提示も受けた
等の前記認定(原判示)の事情を考慮しても,被控訴人において,Dらへ売却を
依頼した旧家の奥さんに本件骨董品の所有権があると信じたことには過失があ
ると認めざるを得ない。
(5) したがって,その余の点について判断するまでもなく,被控訴人主張の本件骨
董品についての即時取得の成立を認めることはできず,被控訴人主張の本件
骨董品の所有権取得を認めることはできない(民法193条につき,その要件に
該当すれば当然に被控訴人の即時取得は否定されるし,これに該当しないとし
ても上記のとおり民法192条の要件該当性が否定される。)から,本件被害者
還付によって所有権を侵害されたとの被控訴人の主張を認めることはできな
い。
第4 結論
よって,被控訴人の控訴人に対する請求は,その余の争点につき判断するまで
もなく理由がないので,原判決中これを認容した部分は相当でないから,これを取
り消し,被控訴人の控訴人に対する請求を棄却し,第1,2審の訴訟費用を被控訴
人に負担させることとして,主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所民事第1部
裁判長裁判官      田   村   洋   三
裁判官      小   林   克   美
裁判官      戸   田       久

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