弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人Aを懲役一年六月及び原判示第二(一)の事実につき罰金弐万
円、同(二)の事実につき罰金参万円に、
     被告人Bを懲役一年及び原判示第二(一)の事実につき罰金弐万円、同
(二)の事実につき罰金参万円に、
     被告人C、同Dを各懲役八月に、
     被告人E、同F、同G、同H、同Iを各懲役六月に
     処する。
     被告人Aに対し原審における未決勾留日数中三十日
     被告人Cに対し原審における未決勾留日数中五十日
     を夫れ夫れ右各懲役の本刑に算入する。
     右各罰金を完納することができないときは金弐百円を壱日に換算した期
間当該被告人を労役場に留置する。
     被告人B、同D、同E、同F、同G、同H、同Iについては此の裁判が
確定した日から参年間右各懲役刑の執行を猶予する。
     検証第六十七号(J丸その附属具共)(記録第百六丁第百七丁)、第一
乃至第十一号、第十三号、第十五号乃至第十九号(記録第百九丁)は被告人B以外
の各被告人から、検証第十四号(記録第百九丁)は被告人Dからいづれもこれを没
収する。
     原審における訴訟費用中被告人C、同D、同F、同G、同H、同Iにつ
き各国選弁護人に支給して生じた部分は夫れ夫れ当該被告人の、爾余の部分は被告
人B以外の被告人等及び原審相被告人Kの連帯負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は被告人Bの弁護人豊川忠進及び爾余の被告人等の弁護人田村稔
の各控訴趣意書の通り。
 田村弁護人の論旨第一について
 一、 原判決が同論旨一所説のようにその第一の(一)の事実を判示していると
とは記録上明らかなところである。
 而して所説の指摘にかかる「其の積荷等一切を完了し」とあるはその措辞やや明
確を欠く憾がないわけではないけれども受け継いだ前文をも通じて考えれば原判決
別表目録第一の物件の積込みその他一切の出港準備を完了した趣旨に解するととが
でき、その積荷の範囲については右別表第一の物件に限られているものと認められ
所説のように更に他の物件を積荷した趣旨とは解し難く、二、従つて原判決がその
第一(一)の関係において同論旨二所説のように右別表目録第一の物件以外の物を
積荷した事実を謳つたものとは認めがたい。又、三、原判決が同論旨三所説のよう
にその第一の各事実を認定しこれに法令の適用を示していることけ明らかであるけ
れ<要旨>ども関税法第七十六条の第一、二項を比較対照し、同第二項の予備又は未
遂の罪の明確に規定せられた後における本件につき、その輸出せんとしたる
物件の未だわが国領海の外に出でざる点に鑑みると右原判示第一の各所為は未だ未
遂の域を出でないものも解すべきである。よつて原判決には各所説のように判示事
実を明確にしなかつたり、審判の請求を受けない事実につき判決をしたり、法令の
適用を誤つたりしたような廉はいづれもこれを認められない。然れども四、原判決
が同論旨四所説のように没収した検証第六十八号乃至第七十六号は検証第十二号と
共に本件公訴の範囲の外にあり原判決も右各物件について右説示のように関税法第
七十六条の犯罪にかかる物件と認定しなかつた趣旨に認められるのでこれら物件に
ついて関税法第八十三条により没収することができないのにも拘らず敢てこれを没
収した原判決には所説のように没収に関する法令の適用に誤があり、その誤が判決
に影響を及ぼすことが明らかである。よつて原判決中被告人B以外の被告人等に関
する部分は刑事訴訟法第三百九十七条、第三百八十条によつて破棄を免れない。
 同論旨第二、第三について
 原判決が所説のように検証第六十七号(J丸其附属具共)を没収し、これが法令
の用を示していることは記録上明らかである。而して原判決の挙示する証拠によれ
ば被告人B以外の被告人等は被告人Aを中心に被告人Cにおいて多額の資金を提供
して、夫れ夫れその地位の軽重、目的の直接間接の差はあるにしても本件原判示第
一の密輸出を共謀し右J丸を借入れてこれを使用して前説示のようにこれが密輸出
物件を積載してその準備を完了しまさに出港せんとする段階にあつて、右船舶は同
被告人等の実力支配下におかれ、もつてその共同占有にあつたことが明らかに認め
られ、原判決には所説のような理由不備、審理不尽又は事実誤認の廉はいづしも認
められないので各論旨はこれを採用しない。
 豊川弁護人の論旨第一について
 昭和二十三年七月七日法律第百七号所得税法の一部を改正する等の法律第二十三
条関税法第百四条等によれば被告人Bの本件犯行当時において沖縄が関税法の適用
上外国と看做されていたことが明らかであるので論旨はこれを採用しない。
 職権をもつて調査するに
 原判決が被告人Aにつきその判示第一(一)、第二(一)、(二)、被告人Bに
つきその判示第二(一)、(二)の各事実を認定し、関税法第七十六条第二項第一
項(尚第二(一)については旧法)を適用して夫れ夫れ懲役及び罰金を併科し、被
告人Aに対し懲役壱年六月及び罰金五万円、被告人Bに対し懲役壱年(三年間執行
猶予)及び罰金五万円の刑を科したことが記録上明らかである。しかるに関税法第
八十四条の四(前記昭和二十三年七月七日法律第百七号、昭和二十五年四月三十日
法律第百十七号によつて各改正せられたものにつき各別に)によれば関税法を犯し
たる者には刑法第四十八条第二項の規定の適用のないことが明らかである。よつて
右のように刑法第四十八条(第二項)の規定を適用した原判決には法令の適用に誤
がありその誤が判決に影響を及ぼすことが明らかであるので原判決中被告人A、同
Bに関する部分は刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十条によつて破棄を免れな
い。
 よつて爾余の各論旨について判断をなすまでもなく本件各控訴は理由あるに帰
し、且つ本件は当審において直ちに判決をすることができるものと認め刑事訴訟法
第四百条但書によつて更に判決をする。
 当審の認定する事実は原判決が各その挙示の証拠によつて認定した事実(本件各
公訴事実)と同一であるからここにこれを引用する。
 而して右事実に法令の適用を示すと、原判示第一(一)、(二)の各所為は夫れ
夫れ現行関税法第七十六条第二項、第一項(尚右第一(一)については刑法第六十
条)にあたるので各所定刑中懲役刑を選択し、原判示第二(一)の所為は行為時法
によれば昭和二十三年七月七日法律第百七号によつて改正せらたた関税法(旧法)
第七十六条第一項、刑法第六十条に、裁判時法によれば昭和二十五年四月三十日法
律第百十七号によつて改正せられた現行関税法第七十六条第一項、刑法第六十条に
各あたり右は犯罪後の法律に因り刑の変更ありたる場合にあたるので刑法第六条、
第十条によつて新旧両法の比照をなし其軽い前者の刑に従い同旧法第七十六条第二
項によつて懲役及び罰金を併科し、原判示第二(二)の所為は現行関税法第七十六
条第一項にあたるので懲役及び罰金を併科し、被告人Dの原判示第一(一)、
(二)の所為は包括一罪にかかり被告人A、同Bの右各所為は各刑法第四十五条前
段の併合罪であるから刑法第四十七条、第十条によつて各重き原判示第二(二)の
罪の懲役刑につき併合罪の加重をなし各刑法第四十八条第一項に従い、以上各刑期
及び罰金額の範囲内で、被告人Aを懲役壱年六月及び原判示隼二(一)の事実につ
き罰金弐万円、同(二)の事実につき罰金参万円に、被告人Bを懲役壱年及び原判
示第二(一)の事実につき罰金弐万円同(二)の事実につき罰金参万円に、被告人
C、同Dを各懲役八月に、被告人E、同F、同G、同H、同Iを各懲役六月に各処
し、刑法第二十一条によつて被告人Aに対し原審における未決勾留日数中三十日、
被告人Cに対し原審における未決勾留日数中五十日を夫れ夫れ右各懲役の本刑に算
入し、右各罰金を完納することができないときは刑法第十八条によつて各金弐百円
を壱日に換算した期間当該被告人を労役場に留置し、尚被告人B、同D、同E、同
F、同G、同H、同Iについては情状懲役刑の執行を猶予するのを相当と認め各刑
法第二十五条によつてこの裁判が確定した日から各参年間右各懲役刑の執行を猶予
し、(一)検証第六十七号(J丸その附属具共)第二乃至第十一号第十三号第十五
号乃至第十九号、(二)同第十四号は現行関税法第七十六条の犯罪に係る貨物乃至
其の犯罪の用に供した船舶で(一)については被告人B以外の被告人等(一)
(二)については被告人Dの各占有にかかのるで関説法第八十三条第一項によつて
(一)については被告人B以外の被告人等から、(二)については被告人Dからい
ずれもこれを没収し、刑事訴訟法第百八十一条第一項(尚連帯の点については刑事
訴訟法第百八十二条)によつて原審における訴訟費用中被告人C、同D、同F、同
G、同H、同Iにつき各国選弁護人に支給して生じた部分は夫れ夫れ全部当該10
39被告人の、爾余の部分は全部被告人B以外の被告人等及び原審相被告人Kの連
帯負担とすべきものとする。
 (裁判長判事 羽田秀雄 判事 小林登一 判事 小沢三朗)

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