弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人神田洋司、同弘中徹、同飛田政雄、同長谷川久二、同永倉嘉行の上告
理由第一及び第二の一について
 原審が適法に確定した事実関係の下においては、本件商品であるポリバリコン等
部品が在中する梱包の紛失につき、上告人の被用者である本件艀の船長に重大な過
失があるとした原審の認定判断は、正当として是認することができ、原判決に所論
の違法はない。論旨は、採用することができない。
 同第二の二から四までについて
 原審の認定によれば、D電機株式会社(以下「D電機」という。)と輸出入貨物
の沿岸荷役を業とする上告人とは、昭和四二年三月ごろ、D電機の輸出にかかる本
件商品のa港岸壁から本船E号までの艀による運送契約をしたが、右運送契約にお
いては、上告人はその港湾運送約款に基づき運送する旨の約定があるところ、同約
款一条二項には、「この約款に定めていない事項は、法令又は慣習(若しくは関係
船会社の海上運送約款)による。」との定めがあり、他方、右関係船会社であるF
株式会社の海上運送約款九条には、運送人(船主)の損害賠償義務につき、「船主
は、貨物の送り状価格又は一梱包当たり一〇〇ポンドのどちらか低い方の金額を超
えてクレームを請求されないものとする。」と定められているというのである。そ
うすると、上告人の損害賠償義務について右海上運送約款九条の規定が適用される
結果、その賠償額が制限されるとの上告人の抗弁が理由があるとされるのは、港湾
運送約款中に上告人の損害賠償義務に関する定めがないときに限られることが明ら
かであるから、原審が右上告人の抗弁の当否を判断するに当たつては、相手側であ
る被上告人によつて、港湾運送約款中に上告人の損害賠償義務に関する定めがあり、
その結果、海上運送約款九条の規定が適用されないとの積極的な主張がされるのを
待つまでもなく、港湾運送約款中における上告人の損害賠償義務に関する定めの有
無及び上告人の損害賠償義務の限度を審理判断しなければならない筋合である。し
たがつて、原審が、上告人の港湾運送約款二一条一項に「当社の責めに帰すべき事
由によつて貨物に損害を生じたときは、当社は、送り状に記載された価額又は委託
者が申告した価額を限度として損害実額を賠償する。」旨の定めがあることを被上
告人に主張させたうえ、同規定に基づき、上告人に本件紛失した商品の損害実額を
賠償すべき義務があると認定判断したのは、正当として是認することができ、原判
決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
 同第二の五について
 原審の認定によれば、被上告人は、D電機との間に同電機を被保険者として貨物
海上保険契約を締結し、同電機を荷送人とする運送品の運送中の事故によつて発生
することあるべき損害について保険金をもつて填補することとし、他方、D電機と
上告人との間の本件運送契約に適用される上告人の港湾運送約款二〇条には、「当
社は、保険に付された危険によつて生じた貨物の滅失等については、損害賠償の責
めに任じない。」旨の定めがあるというのである。
 右約款二〇条の規定の趣旨を、所論のとおり、荷送人であるD電機は、保険に付
された運送品の運送中における滅失等においての損害賠償請求権を予め放棄する旨
の意思表示をしたものであると解すると、保険者は、右放棄がなければ商法の規定
により被保険者に代位して運送人に対して取得することのできたはずの損害賠償請
求権の金額の限度において保険金の支払の義務を免れるものであり、したがつて、
D電機は、運送人である上告人から右損害の賠償を受けることができないのは勿論、
保険者である被上告人からも右損害を填補すべき保険金の支払を受けることができ
ず、また、一旦保険者から受領した保険金は、これを返還しなければならないこと
になり、結局、右損害は、全部、最終的に被保険者であるD電機自身において負担
しなければならなくなるという、同電機にとつては極めて不利益かつ不都合な結果
を生ずることになるわけであつて、同電機がそのような不利益かつ不都合な結果を
甘受して右損害の賠償請求権を予め放棄することは、経験則上異例のことに属し、
特段の事情のない限り、ありえないことというべく、このことは港湾運送契約の場
合であると陸上運送契約の場合であるとにより異なるところはない(最高裁昭和四
一年(オ)第一三八五号同四三年七月一一日第一小法廷判決・民集二二巻七号一四
八九頁参照)。そして、本件においては右特段の事情が存在したことを窺うことは
できないのであるから、右約款の規定は、損害賠償請求権を予め放棄する旨の意思
表示をしたものということはできず、右規定は、たかだか保険金額を超える損害部
分の賠償請求だけを放棄する旨の意思表示をしたのにすぎないものと解すべきであ
る。そうだとすれば、被上告人は、右約款の規定にかかわらず、D電機の上告人に
対する本件損害賠償請求権については、商法六六二条の規定により保険代位するこ
とができることが明らかであり、これと同旨の原審の判断は、結論において正当と
して是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することがで
きない。
 同第二の六について
 原審が適法に確定した事実関係の下においては、上告人に本件事故による損害の
全額について賠償責任があるとした原審の判断は、正当として是認することができ、
原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岸   上   康   夫
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸       盛   一
            裁判官    団   藤   重   光

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