弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決をつぎのとおり変更する。
     一、 控訴人の請求中
     (一)、 被控訴人が昭和二十三年二月二十七日付をもつてした府県道
A線長生郡a町―山武郡b村(現c町)地内道路の区域を一部変更し昭和二十三年
二月二十七日から旧地域に属する道路の供用はこれを廃止する旨の告示のうち旧地
域の一部山武郡c町d字efのg所在の土地に関する部分の無効確認をもとめる請
求はこれを棄却する。
     (二)、 その余の控訴人の訴はいずれもこれを却下する。
     二、 訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴人は、
 原判決をとりけす
 一、 被控訴人千葉県知事が昭和二十三年二月二十七日付をもつてした府県道A
線長生郡a町―山武郡b村(現c町)地内道路の区域を一部変更し昭和二十三年二
月二十七日から、旧地域に属する道路はこれを廃止する旨の告示のうち、旧地域の
一部山武郡c町d字efのg所在の土地に関する部分は無効であることを確認す
る。
 二、 (イ)、被控訴人千葉県知事が昭和二十三年十一月十日山武郡c町d字e
fのg廃道敷五畝三歩を公共団体たる千葉県に交付した処分の無効であることを確
認する。
 (ロ)、 被控訴人は控訴人にたいしみぎ土地につき千葉県地方法務局大網出張
所昭和二十三年十二月二十日受付第一〇二二号をもつて千葉県のためにされた所有
権保存登記の抹消登記手続をせよ。
 三、 (イ)、被控訴人千葉県知事が昭和二十三年十一月十日前項の土地を訴外
Bに払下げた処分の無効であること確認する。
 (ロ)、 被控訴人は控訴人にたいしみぎ土地につき千葉地方法務局大網出張所
昭和二十三年十二月二十日受付第一〇二三号をもつてBのためにされた所有権取得
登記の抹消登記手続をせよ。
 四、 被控訴人は控訴人にたいし山武郡c町d字efのg所在五畝三歩の土地に
つき昭和二十三年二月二十七日当時の地形に原状回復せよ。
 五、 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
 との判決をもとめ、
 被控訴代理人は控訴棄却の判決をもとめた。
 当事者双方の事実上ならびに法律上の主張、証拠の提出、援用、認否はつぎのと
おり補正するほか原判決の事実らんにしるすところと同じであるからこれを引用す
る。
 (事実関係)
 控訴人は、原審において、本件判決の言渡時刻を午前十時と定め告知したとこ
ろ、言渡期日の法廷内には言渡の時刻を午後一時と表示され、廷吏もその旨控訴人
に告げたので控訴人は十時三十分まで法廷外に去つていたところその間に判決の言
渡があつた。すなわち判決の言渡手続に重大な違法があるから原判決はとりけさる
べきである、とのべた。
 (証拠関係)
 控訴人は、甲第六号証の一、二第七号証を提出し、当審証人Cの証言を援用し、
原判決事実中乙第三号証の五の控訴人の印影の真正であることは認めるとあるは誤
りで、同号証の成立は不知であり、乙第七号証を援用するとあるのも誤で援用しな
い。また原審において乙第三号証の六の成立を不知としたのは誤で成立を否認する
とのべた。
 被控訴代理人は、甲第六号証はその一のうち郵便局の日付印のみを認めその余は
不知、同第七号証の成立を認める、なお、原判決事実に乙第四号証の五を提出した
旨記載せられているのは誤でみぎは提出していない。
         理    由
 控訴人の請求一について。
 まず、みぎ請求について訴の利益があるかどうかを考えるに、道路がいわゆる公
共用物であつて、公衆がこれを通行することのできるのは公物主体である道路管理
者がこれを公物として維持し、一般交通の用に供していることによることは被控訴
人のいうとおりである。したがつて、みぎ道路の存する公共団体の住民ないし一般
公衆がみぎ道路を通行する便益は道路がみぎ公用に供せられたことの反射的利益で
あつて、各人に個別的に<要旨>なんらかこれを使用する特別の権利が設定せられた
ものとなすことはできないというべきであるが、行政庁がその管理する道路
について公物としての供用を廃止する処分をなし、その処分が無効な場合その無効
確認を請求することができる者を当該道路について道路法による占有使用権とか地
方自治法第二〇九条所定の慣行による使用権等を有する者にかぎるとなすは狭きに
すぎるものであつて当該廃止処分の無効につき直接の利害関係を有する者は、みぎ
廃止処分の無効確認をもとめるにつき利益あるものとして広くその訴を許容し、そ
の利益を保護すべきである。
 本件について、これを見るに、控訴人は、被控訴人千葉県知事が昭和二十三年二
月二十七日付千葉県告示第一二二号をもつてなした府県道A線長生郡a町―山武郡
b村(現c町)地内道路の区域を一部変更し昭和二十三年二月二十七日から旧地域
に属する道路の供用はこれを廃止する旨の告示のうち旧地域の一部山武郡c町d字
efのg所在土地に関する部分の無効の確認をもとめるものであるところ、成立に
争ない乙第一号証の一、二乙第四号証の四と原審における控訴人本人尋問の結果な
らびに本件弁論の全趣旨をあわせると、本件係争土地である山武郡c町字efのg
廃道敷五畝三歩は旧府県道路の一部で、みぎ土地の北西に同所h番宅地(D所
有)、同所i番宅地(控訴人所有)、同所j番宅地(E所有)、が相並んで直接道
路に面し、控訴人はみぎ所有宅地上に住家を有し、道路に向つて出入口を設け、み
ぎ道路を利用することによつてのみ外界と交通する状況にあつたことがうかがわ
れ、自己の住家の唯一の出入口が廃道処分によつて塞がれたことにより直接生活上
重大な支障をこうむつた者として前示無効確認を請求していることがあきらかであ
る。そうすると控訴人は被控訴人が当該道路部分を廃道としたことについて直接の
利害関係があるものというべきであるから、みぎ廃道処分を無効ならしむべき違法
があればその無効確認をもとめる法律上の利益があるものというべできある。
 そこで進んで本案について審理すると、当裁判所は被控訴人が昭和二十三年二月
二十七日付告示をもつてした本件土地の道路供用廃止の処分は適法になされたもの
と判断せざるを得ないのであつて、その理由は「甲第六号証の一、二、同第七号
証、当審証人Cの証言によつても原審における認定を左右することはできない」と
つけ加えるほか原判決にしるすところ(判決書十五枚目表第十行ないし十八枚目裏
第六行)を引用する。
 すなわち控訴人の請求一は訴を不適法として却下すべきものではなく、理由がな
いとして棄却すべきものといわねばならない。
 控訴人の請求二の(イ)について。
 控訴人はつぎに、被控訴人知事が昭和二十三年十一月十日山武郡c町d字efの
g廃道敷五畝三歩を公共団体たる千葉県に交付した処分の無効確認をもとめるもの
であるが、前記請求一について説示したように控訴人は本件土地が道路たる公用を
廃止されることについては直接の利害関係を有するものであるけれども、すでに廃
道敷となつた本件土地がその管理者たりし被控訴人知事によつて公共団体たる千葉
県に交付せられたとしても控訴人は被控訴人知事のみぎ行政処分については、直接
利害関係なく、その無効の確認をもとめる利益がない。よつてみぎ訴を不適法とし
て却下すべきもので、この点に関する控訴は結局理由がない。
 その余の控訴人の請求について。
 控訴人の二(ロ)、三および四の各請求については当裁判所は訴を却下すべきも
のと判断するものでありその理由は原判決に示す理由(判決書十八枚目裏第七行な
いし十九枚目表第十行)と同じであるからこれを引用する。すなわちこの部分に関
する原判決は正当で控訴は理由がない。
 なお、控訴人は原裁判所が原判決の言渡手続を誤つたもののように主張するけれ
ども本件記録中の口頭弁論調書の記載によると、裁判長は昭和三十四年七月二十七
日の口頭弁論期日においてみぎ判決の言渡期日を同年九月十四日午前十時と指定
し、同日時にみぎ判決が言渡されたことがあきらかであり、なんら手続に違法のあ
ることを認めることはできない。
 以上の次第で原判決は一部失当であるからこれを変更し、訴訟費用の負担につい
て民事訴訟法第九十六条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 牧野威夫 判事 谷口茂栄 判事 満田文彦)

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