弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被告人A及び被告人Bに関する部分を破棄する。
     被告人Aを懲役六月に、被告人Bを懲役四月に処する。
     ただし、この裁判確定の日から二年間右各刑の執行を猶予する。
     押収にかかる現金四二、二六〇円(証第一五号)は、被告人Bから没収
する。
     被告人Bから金九七、七四〇円を追徴する。
     被告人C、被告人Dの本件各控訴を棄却する。
     原審における訴訟費用中証人E、同F、同G、同H、同I及び同Jに支
給した分は被告人Aの負担、証人Kに支給した分は被告人Bの負担、証人L及び同
Mに支給した分は被告人A及び同Bの連帯負担とし、当審における訴訟費用中証人
Nに支給した分は被告人Dの負担、その余は被告人四名の連帯負担とする。
         理    由
 本件各控訴の趣意は、各被告人の弁護人山根喬提出の控訴趣意書記載のとおり
(事実誤認)であるから、これを引用する。
 論旨第一点について。
 所論は、要するに、原判示第一、第二、第三、第五の一の各金銭はA後援会の設
立事務費として授受されたもので、原判決認定のように買収費を含むものではな
く、且つ右後援会の設立は法の許容する選挙運動の準備行為であるから、その設立
事務費の授受は公職選挙法に違反するものではないというにある。
 よつて調査するに、原判決挙示の証拠によれば、すでに原判決も詳細に認定して
いるように、昭和三四年二月中空知郡a町及びb村においてA後援会と称する団体
が結成式を挙げたこと並びに本件一〇万円及び五万円の現金が被告人Aによつて支
出され右後援会の運動資金名義で被告人等の間に授受されたことは認めることがで
きるが、右各現金は所論のように事務費のみとして授受されたものとは認められ
ず、原判示趣旨の下に饗応等による買収費を含むものとして供与又は交付されたも
のであることが認められる。そして、このように公職の候補者となろうとする者を
支持推薦する団体の設立自体が所論のように正当なものであるとしても、そのこと
によつてその団体の運動資金として金銭を授受する行為がすべて正当化されるもの
ではなく、その行為が公職選挙法罰則の構成要件に該当する限り犯罪の成立を阻却
するいわれがなく、しかも、右A後援会なるものが、後援会とはほとんど名ばかり
であつて、その実質において、被告人等が被告人Aの当選を得る目的をもつて饗応
接待等を含む手段により行なう法定期間前の選挙運動を偽装する組織にすぎなかつ
たこともまた原判決挙示の証拠によつてうかがうに足りるところであるから、被告
人等の行為が選挙運動の準備行為にすぎないもので選挙運動ではないとか正当な行
為であるとかいうことはできない。また、所論各被告人の検察官及び司法警察員に
対する供述調書が任意性又は信憑性を欠くものとは認められない。従つて、この点
において原判決には事実誤認又は法令適用の誤は存しない。
 論旨は理由がない。
 論旨第二点について。
 所論は、要するに、原判示第五の二及び第六の各会食はいずれも会員の割かんに
よる負担において行なわれたもので、饗応接待ではないというにある。
 しかし、原判決挙示の関係証拠を総合すると、原判示第六のO旅館における会食
に際し、被告人Dが割かんにするというような趣旨の発言をしたことは認められな
いではないが、この会合が本来被告人Cの依頼に基づく被告人Dの招請によつて開
かれたものであること、後援会結成式の挨拶ないし議事を利用して被告人C、同D
等から被告人Aのための投票及び選挙運動の依頼がなされ、これに引き続いて本件
酒食が提供されたこと、出席者中被告人Dの前記発言を聞いた者でも真に割かんに
より支払をする意思を起した者がなく、かえつて皆御馳走になるものと思つて飲食
しており、現に誰一人当日又はその頃支払をした者がないこと、主催者側である被
告人D等において出席者の氏名を確認せず会食費徴収の時期、方去も全然定めてい
ないこと等が認められ、これらを総合すれば、割かんというのは被告人C、同Dの
声音でなく仮装であり、出席者においてもその情を知つて飲食したものであつて、
本件会食は右被告人等による饗応接待と認めるのが相当である。
 次に原判示第五の二のP旅館における会食についてみると、原判決挙示の関係証
拠を総合すれば、この会食は当初から会食者間において会費制を仮装して被告人D
が飲食物を提供することの了解の下に行われたものであつて、右仮装のため架空の
領収書も作成され、実際には被告人Dが即日飲食費全額を支払い、会食者に対し後
日会費を徴収する旨を告げておらす、会食者の氏名も確認していないことが認めら
れるから、被告人Dによる饗応接待と認めるのが相当である。従つて論旨は理由が
ない。
 論旨第三点について。
 所論は、要するに、被告人A等の原判示第九の所為は、前記後援会の会員に対す
る挨拶に赴いたのであつて投票を依頼しに訪問したのではないというにあるけれど
も、原判決挙示の関係証拠を総合すれば被告人Aが原判示三名と共謀の上投票を得
る目的をもつて原判示のように戸別訪問をし、投票を依頼したことを認めるに十分
である。論旨は理由がない。
 次に職権により原判決の法令適用の当否に関し調査するに、原判決は、被告人A
の原判示第一の一、二の各所為及び被告人Bの原判示第三の一、二、三の各所為に
対し公職選挙法第二二一条第三項を適用して処断していることが明らかである。し
かし、同項にいう「公職の候補者」とは同法第八六条の規定に基づく立候補の届出
又は推薦届出のされた者を、「出納責任者」とは同法第一八〇条の規定に基づく選
任の届出のされた者をいい、いずれも同法第二二一条第三項所定の罪を犯す当時す
でに右各届出によりその地位を有するに至つているときに限り同項の適用があるも
のと解すべきである(最高裁判所昭和三四年(あ)第一一九〇号、同三五年<要旨>
二月二三日第三小法廷判決、判例集一四巻二号一七〇頁参照)。これに反し同項に
「選挙運動を総括主宰した者」というのは、特定の者に当選を得しめる目的
をもつてその選挙運動に関する諸般の事務を事実上総括し指揮した者をいい、その
事実のある限り当該候補者の立候補の届出又は推薦届出のされる前であつてもこれ
に該当するものと解するのが相当である。原判決は、被告人Aは本件選挙に立候補
し落選した者、被告人Cは被告人Aの選挙運動を総括主宰した者、被告人Bは被告
人Aの出納責任者であると認定しているところ、挙示の証拠に徴すると、被告人C
は本件犯行当時選挙運動を総括主宰していた者であることが認められるが、原判示
事実からもうかがわれるように、被告人Aが推薦届出により、被告人Bが出納責任
者選任の届出により各候補者又は出納責任者としての地位を有するに至つたのは
(昭和三四年四月八日)、同被告人等の前記各所為の後であることが明らかであ
る。従つて、原判決が被告人A及び同Bの右各所為に対し前記法条を適用したのは
法令の適用を誤つたもので、その誤は明らかに判決に影響を及ぼすものといわなけ
ればならない。
 よつて被告人C及び同Dの本件各控訴は理由がないので刑事訴訟法第三九六条に
よりいずれもこれを棄却し、同法第三九七条第一項、第三八〇条により原判決中被
告人A及び同Bに関する部分を破棄し、同法第四〇〇条但書により右両名に対し更
に次のとおり判決する。
 原判決が適法に認定した罪となるべき事実中被告人A及び同Bに関する部分に法
令を適用すると、右両名の原判示所為中被告人Aの各金銭供与の点は公職選挙法第
二二一条第一項第一号に、戸別訪問の点は同法第二三九条第三号、第一三八条第一
項、刑法第六〇条に、被告人Bの各金銭受供与の点は公職選挙法第二二一条第一項
第四号に、金銭交付の点は同項第五号に、両名の各事前運動の点は同法第二三九条
第一号、第一二九条(原判示第九の所為についてはなお刑法第六〇条)に該当する
ところ、右各金銭供与、金銭交付、個別訪問とこれに対応する各事前運動とはそれ
ぞれ一個の行為で数個の罪名に触れる関係にあるので、刑法第五四条第一項前段、
第一〇条により重いと認められる各前者の刑をもつて処断すべく、所定刑中各金銭
供与、各金銭受供与及び金銭交付の罪については懲役刑を、個別訪問罪については
禁錮刑を選択し、両名につき以上はそれぞれ同法第四五条前段の併合罪であるから
同法第四七条本文、第一〇条により最も重いと認められる被告人Aにつき原判示第
一の一の、被告人Bにつき同第三の一の罪に対する刑に法定の加重をした刑期の範
囲内で被告人Aを懲役六月に、被告人Bを懲役四月に処し、情状により両名に対し
同法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日からいずれも二年間右刑の執行を
猶予し、押収にかかる現金四二、二六〇円(証第一五号)は被告人Bが原判示第三
の一の所為により収受した現金一〇〇、〇〇〇円の一部と認められるから公職選挙
法第二二四条前段により同被告人からこれを没収し、右一〇〇、〇〇〇円の残部五
七、七四〇円及び同被告人が原判示第三の二の所為により収受した現金五〇、〇〇
〇円のうちその利益に帰したと認められる金四〇、〇〇〇円は費消されて没収する
ことができないから、同条後段によりその価額合計金九七、七四〇円を同被告人か
ら追徴することとする。
 よつて訴訟費用の負担につき刑事訴訟法第一八一条第一項本文第一八二条を適用
し主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 矢部孝 裁判官 中村義正 裁判官 小野慶二)

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