弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
被告人を無期懲役に処する。
未決勾留日数中50日をその刑に算入する。
押収してある折りたたみナイフ1本を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1Aと共謀の上,コンビニエンスストアから商品等を窃取し,店員等に追跡さ
れれば,暴行,脅迫を加えて逮捕を免れようと企て,平成19年10月6日午
前零時50分ころ,大阪府B市内のコンビニエンスストアにおいて,同店店長
C管理に係る缶ビール12本等23点(価格合計6438円相当)を窃取して
同店から出たが,同店店員D(当時27歳)に発見されて追跡され,被告人が,
同日午前零時52分ころ,同市内路上において,上記Dに追いつかれるや,逮
捕を免れる目的で,殺意をもって,所携の折りたたみナイフ(刃体の長さ約8.
3センチメートル)で,同人の左胸部を突き刺し,よって,そのころ,同市内
の空き地において,同人を心臓刺創に基づく心タンポナーデにより死亡させて
殺害し,
第2業務その他正当な理由がないのに,同日午前零時52分ころ,同市内路上に
おいて,刃物である上記折りたたみナイフ1本を携帯した
ものである。
(証拠の標目)<略>
(事実認定の補足説明)
1判示第1につき,弁護人は,被告人には,当初暴行を加えてでも逮捕を免れよ
うとの意思はなく,刺突時には殺意もなかったと主張し,被告人もこれに沿う供
述をする。しかし,当裁判所は,判示第1のとおり事実を認定したので,以下,
その理由を説明する。
2関係各証拠によれば,以下の事実が認められる。
被告人は,平成19年10月5日の夕方から夜にかけて,被告人の住居や友
人方で,後輩のAらと一緒にいた。被告人は,ビールを飲んでいたが,飲み足
らず,ビールを盗もうと思い立ち,Aに対して,かごダッシュ,すなわち,コ
ンビニエンスストアなどで,代金を支払わずに,商品の入った買い物かごごと
持ち出して走り去る方法で,ビールなどを盗むことを提案し,Aもこれに応じ
た。
被告人は,Aやその他の友人らとともに,自動車で判示第1記載のコンビニ
エンスストア(以下「本件コンビニ」という)に向かい,付近の路上に自動

車を止めた。そして,被告人は,Aとともに自動車から降り,徒歩で本件コン
ビニに向かったが,その途中,捕まらないか心配するAに対して「持つもん

持ってるから大丈夫」と言った。被告人の言う「持つもん」とは,ナイフの

ことであり,そのことはAも認識していた。
被告人とAは,翌6日午前零時48分ころ,本件コンビニに入り,缶ビール
等の商品を各々の買い物かごに入れた。そして,同日午前零時50分ころ,最
初にAが,続いて被告人が,いずれも代金を支払わずに,買い物かごを持った
。,
まま,本件コンビニから走って出た。D(以下「被害者」という)は,当時
本件コンビニで働いていたものであるが,被告人らが店外に走って出たのを見
るや,ただちに被告人らを追いかけた。被告人らは,路上に止めておいた上記
自動車のところまで走り,同車に乗って逃げる予定であった。被告人より前を
走っていたAは,自動車に乗り込むことができたが,被告人は,買い物かごを
被害者に向けて投げつけても,なお被害者に追いかけられて距離を詰められた
ため,自動車に乗ることができず,自動車の横を通り過ぎて,なお走って逃げ
続けた。しかし,幹線道路との交差点を横断した後,すぐに被害者に追いつか
れた。
被告人は,いったんは被害者から逃れたが,すぐに追いつかれ,被害者とと
もに転倒した。被告人は,立ち上がってなおも逃げようとしたが,背後から被
害者の腕を首に回されて,首を絞められるようになり,被害者の腕を振りほど
くことができなかった。そこで,被告人は,被害者の腕を引っ張っていたとこ
ろ,体の向きが変わり,被害者と向き合うようになった。しかし,被告人は,
なお被害者に首の後ろをつかまれていたため,中腰気味で前かがみの体勢とな
った。そして,被告人の頭が被害者の胸部付近に当たるほど密着し,被告人の
顔は下を向く状態となっていたため,被告人からは,被害者のへそあたりから
ひざあたりまでしか見えず,主に被害者の太ももが見えていた。
被告人は,被害者から逃げようと考え,ズボンの左ポケットに入れていた折
りたたみナイフ(以下「本件ナイフ」という)を左手で取り出し,体の前あ

たりで右手に持ち替え,左手で刃を出すと,本件ナイフを被害者に向けて1回
突き出した。被害者の刺された部位は,同人の左胸部であり(なお,弁護人は
腹部であると主張するが,上記認定に係る部位も弁護人の主張する部位も,被
害者の左乳頭から14センチメートル下にある同じ部位を指しているので,鑑
定書の記載に従って胸部と表記する,刺創管の方向,すなわちナイフが体


に刺さった方向は被害者の前から後ろに向かい,左側から右側へ約30度,下
方から上方へ約45ないし60度であり,被告人が上記のような前かがみの体
勢になっていたため,自己の体の前で,本件ナイフを突き上げるような方向に
なる。被害者は,左胸部を刺されたため,肋軟骨及び心のうを刺通して心臓ま
で切られ,その結果,心タンポナーデにより死亡した。本件ナイフの刃体の長
さは約8.3センチメートルであるのに対し,被害者が刺された傷の深さは6
ないし7センチメートルであった。また,被害者が刺された肋軟骨部は,刃先
の鋭い物を用いても簡単には刺通することができないため,被害者はきわめて
強い力で刺されたものと認められる。
3ところで,被告人は,検察官調書において,特に被害者の腹部をねらったわ
けではないが,本件ナイフを被害者の腹部に向けて突き出したことはわかって
いたと供述する。
弁護人は,上記検察官調書に記載された供述は,次のような事情から,任意
になされたものではない疑いがあるので,検察官調書には証拠能力がない旨主
張する。すなわち,①検察官の取調べにおいては,それまでのE警部補による
取調べの影響を遮断する措置がとられていない,②被告人は,E警部補と長時
間接していたため,E警部補に対して精神的に依存するようになっていた,③
②の状況の下で,被告人は,E警部補による理詰めの執ような取調べを受けて,
上記のような供述をしたのであるから,被告人の供述は任意になされたもので
はない疑いがあると主張する。また,仮に任意になされたものであるとしても,
上記のような事情があり,実際には,被告人は,被害者から追いかけられて心
理的にパニック状態に陥っており,本件ナイフを被害者の体のどの部分に向け
ていたのかわからなかったのであるから,被告人の検察官調書は信用性がない
旨主張する。
そこで,まず検察官調書における供述の任意性について検討するに,被告人
の公判供述によれば,被告人は,E警部補に対して,本件ナイフを購入した場
所についてはうそを言い,E警部補から殺意があったのではないかとの質問を
受けても,殺意はなかったと答え,関係者の供述と食い違っている部分を指摘
されても「僕はここはこうやと思います」などと述べて,供述を変えるこ
,。
とはなかったことが認められる。このような事情に照らすと,被告人がE警部
補の言うことに迎合するような関係にあったとは認めがたく,むしろ,被告人
は,自分なりの利害判断に基づき,供述すべきと判断したことは供述し,否定
すべきと判断したことは否定するなどしていたものと認められる。
また,弁護人請求に係る被告人の検察官調書によれば,被告人は「検察庁

が(中略)警察とは違うことなどについて説明を受けて分かりました「一


度話したことでも,事実とは違うことは,遠慮なく取り消して正しい話をすれ
ばいいということも聞きました」などと供述しているのであるから,検察官

の取調べにおいては,警察官による取調べの影響が遮断されていたと認められ
る。したがって,被告人が検察官調書においてなした上記供述は,任意になさ
れたものと認められるので,弁護人の主張は採用できない。
また,検察官調書における供述の信用性についても,上記認定した事実によ
ると,被告人は,被害者に首の後ろをつかまれて前かがみになり,主として被
害者の太もも付近が見えていたにもかかわらず,その太ももより上の部分に向
けて本件ナイフを突き出したのであるから,被告人が特に被害者の左胸部を狙
ったわけではないにせよ,腹部など人の体の中心部分に向かって本件ナイフを
突き出していることは通常認識できたと考えられる。本件ナイフを被害者の腹
部に向けて突き出したことはわかっていたとする被告人の検察官調書は,この
ような状況に照らして自然であるから信用できる。
これに対して,被告人は,当公判廷において,当初は,捕まりそうになった
場合,相手に本件ナイフを見せて脅そうと考えており,本件ナイフを取り出し
たときも,被害者の太ももあたりを刺して被害者の足止めをして逃げようと思
ったが,実際に本件ナイフを突き出したときには,焦ってしまい,本件ナイフ
が被害者の腹部に向かっていることはわからなかったなどと供述する。
しかし,被告人は,被害者に捕まったときの体勢や体の動き,見えていた被
害者の体の部位等について,自己の記憶に基づいて詳細に供述しており,当公
判廷においても,捜査官と行った犯行再現における自身の頭の位置が,実際に
はもう少し低かったなどと供述していることに照らすと,本件当時,被告人が,
自己の目の前に何があるかわからないとか,自己が何をしているのかわからな
いといった程度にまで冷静さを失っていたとは考えがたい。そもそも被告人は,
当時,主に被害者の太ももが見えていたのであるから,被害者を足止めして逃
げるために太ももを刺そうと思っていながら,単に焦ったとの理由から,目の
前にある太ももを刺さずに,上方に本件ナイフを突き出したというのは不自然
である。したがって,被告人の当公判廷における上記供述は信用できない。
4以上の事実を前提として,まず殺意の有無について検討するに,被告人は,特
に被害者の左胸部をねらったわけではないにせよ,本件ナイフが被害者の腹部付
近に向いていることを認識しながら,本件ナイフを前に突き出したものである。
また,被害者の左胸部には,本件ナイフが深く,かつ相当強い力で刺されている
が,被告人は,自己の頭が被害者の胸部付近に当たるほど被害者と密着しており,
特に外からの力が加わって本件ナイフが刺さったとも認められないのであるから,
被告人は,被害者の左胸部を,本件ナイフで相当強く突き刺したものと認められ
る。そして,人の体の中心部分に向かって刃物を強く突き刺せば,人を死亡させ
る危険性が高いことは明らかであるから,被告人は,自己の行為により,人を死
亡させる危険性が高いことを認識していたと認められ,かつ,被告人はそのよう
な事実を認識しながら,それを避けるため容易であった太ももなど他の部位に対
する加害にとどめるなどの措置を全くとっていないのであるから,被告人には殺
意があったと認められる。
次に,被告人が,暴行を加えてでも逮捕を免れようという意思を有していたか
について検討する。被告人は,本件コンビニに入る前に,捕まらないか心配する
Aに対し「持つもん持ってるから大丈夫」と言って,ナイフを用いて逮捕を
,。
免れると告げている。被告人は,当公判廷において,本件までにナイフを示して
脅すことで相手を制圧できたこともあって,本件時も脅すことで足りると考え,
暴行を加える意思まではなかったなどと供述するが,ナイフを持ち出した場合に
必ず相手が引き下がるというものでもないし,被告人とAとの間では,そのよう
な場合に暴行,特にナイフを用いた暴行はしないよう,打ち合わせたり,何らか
の措置をほどこしたりした様子は認められず,被告人において特に暴行の手段を
排除せざるを得ないような事情もうかがわれない。逆に,被告人は,現に被害者
に追いかけられた際,本件ナイフを示して被害者を脅すことはなく,むしろ被害
者に向かって買い物かごを投げつけたり,被害者に取り押さえられるや,ただち
に本件ナイフを持ち出して被害者を突き刺しているなど,手段を選ぶことなく,
逃走するためのあらゆる方策を講じているのである。以上によれば,被告人は,
本件コンビニで商品等を盗むのに先立ち,ナイフを用いた脅迫にとどまらず,暴
行を加えてでも逮捕を免れようとする意思を有していたことは優に認められる。
被告人の上記公判供述は信用できない。
5以上により,判示第1のとおり事実を認定した。
(自首の成否について)
1弁護人は,被告人には自首が成立する旨主張するところ,被告人が警察署に出
頭するまでの経緯は次のとおりであったと認められる。
2大阪府警察本部刑事部鑑識課の機動鑑識係の警察官らは,本件発生直後から
本件コンビニに急行し,平成19年10月6日午前1時35分ころから同日午
前9時15分ころまでの間,本件コンビニ及び付近一帯で鑑識活動を行った。
鑑識課のF警部補は,本件コンビニに設置された防犯カメラの映像を確認し
たところ,犯人らが本件コンビニの出入口ドアを押すようにして開けて逃走し
た様子が認められた。なお,この出入口ドアは,西向きに取り付けられ,2枚
の扉,すなわち北側と南側の扉がそれぞれ前後に開閉する構造となっている。
鑑識課のG巡査部長は,同日午前5ないし6時台に,この出入口ドアの南側の
扉のガラス面(以下「南側扉」という)から検出された複数の指掌紋を,指

掌紋採取転写シートに転写し,指紋照会係に対して,過去に検挙された前歴を
有する者の指掌紋が蓄積されたデータと照合するよう依頼した。
本件では,警察署に捜査本部が設置されたが,H警部補は,その捜査本部の
一員として本件の捜査に従事していた。H警部補は,同日午前8時5分ころ,
上記のとおり採取された掌紋が,被告人の左手の掌紋と合致したとの報告を受
けた。なお,照合においては,上記データと合致する指掌紋があれば,該当す
る前歴者全員の名が挙げられる仕組みとなっているが,本件では,被告人以外
に合致する前歴者がいたとの報告はなかった。
そこで,H警部補は,上記防犯カメラの映像をデジタルカメラで撮影した写
真を入手し,これを拡大するなどして解析したところ,犯人は,右手に買い物
かごを持ち,左手で南側扉に手を付いて店外に逃走したことが認められた。さ
らに,同日午前8時35分ころには,被告人の前歴照会結果が寄せられたが,
それによると,被告人が前に検挙されたときの住居地が,犯人が逃走したとさ
れる方向と一致し,また,被告人には万引きの前歴があることも判明した。そ
こで,捜査本部では,被告人が本件の犯人である可能性が高いと判断した。
他方,被告人は,本件後,いったん友人方に立ち寄った後,一人で居住して
いた住居に戻って寝るなどしていたが,犯行現場に本件ナイフを置いたままに
してきたので,すぐに犯人として割り出されると考え,上記被告人宅を訪れた
母に対し,本件を敢行したのは自分である旨告げ,同日午前11時5分ころ,
父とともに,警察署に出頭した。
3以上によれば,被告人が警察署に出頭した時点において,すでに捜査機関は,
犯人の遺留掌紋と被告人の掌紋の一致,本件コンビニの防犯カメラの映像の解析,
被告人の住居地及び犯人の逃走方向などの合理的根拠に基づいて,被告人が本件
の犯人であるとの相当の嫌疑を有していたと認められる。
これに対し,弁護人は,①上記指掌紋の照合結果によると,南側扉から採取さ
れた指掌紋のうち,被告人の左掌紋以外のものは,誰が遺留したものか判明しな
かったのであるから,この判明しなかった指掌紋に係る人物にも,本件の犯人で
あるとの嫌疑があり,被告人が犯人として特定されたとはいえない,②防犯カメ
ラの映像を撮影した写真が鮮明でないなどとして,犯人が指掌紋を遺留したのは
南側扉のみであると判断したことも合理性を欠くと主張する。しかし,①につき,
「捜査機関に発覚した」とは,犯人が特定人に確定した場合のみならず,捜査機
関が合理的根拠に基づき犯人であるとの相当の嫌疑を有する状況に至った場合を
含むものと解すべきである。本件については,被告人が警察に出頭した時点にお
いては,上記のように捜査機関において,合理的根拠に基づいて被告人が犯人で
あるとする相当の嫌疑を有する状況に至っていたのであるから,既に犯人は特定
されていたというべきであり,弁護人の主張は採用できない。②につき,上記映
像の写真を子細に見れば,犯人が左手で南側扉を押し開けた様子が認められるの
で,この点の主張も理由がない。
以上の理由により,本件では自首は成立しないと判断した。
(法令の適用)<略>
(量刑の理由)
1本件は,被告人が,友人と共謀の上,コンビニエンスストアから商品を盗んだ
ものの,追いかけてきた店員に被告人のみが捕まると,逮捕を免れるため,殺意
をもって,持っていた折りたたみナイフで店員の左胸部を突き刺し,店員を殺害
したという強盗殺人及び上記折りたたみナイフ1本を携帯したという銃刀法違反
の各事案である。
2本件の経緯は上述のとおりであり,コンビニエンスストアで,代金を支払わず
に,商品の入った買い物かごごと持ち出して走り去るという態様での窃盗自体,
店員に発見されることを予想しているともいえる大胆で悪質な犯行である。被告
人は,これを発案して友人を誘い,被害店舗の店員に追跡されることを予想し,
かつ,追跡された場合に備えて本件ナイフを持参し,友人にもその旨伝えるなど,
積極的に本件を主導している。そもそもビールを飲みたい,できるだけ多くのビ
ールを得たいという動機に何ら酌むべき点はなく,自己中心的かつ身勝手な犯行
である。
被害者を殺害した点は,わずか6000円余りの窃盗による逮捕から免れるた
めに,人の生命を奪ったというきわめて理不尽かつ短絡的な犯行である。被告人
は,自ら窃盗をしておきながら,なんとしてでも被害者から逃げるために本件殺
害に及んだのであって,被害者殺害の動機も身勝手というほかない。殺害の態様
は,本件ナイフで被害者の左胸部を1回突き刺したというものであり,被害者を
殺害しようとの積極的な意欲があったとはいえないものの,被告人は,本件ナイ
フが被害者の腹部付近に向いていることを認識しながら,相当強い力で,本件ナ
イフを左胸部に突き刺したのであるから,極めて危険な犯行である。
そして,被害者の死という結果は,取り返しのつかない重大なものである。被
害者は,被告人らが本件コンビニから走り去ったのを見かけるや,ただちに被告
人らを追いかけ,夜間でも交通量の多い幹線道路を横断するなどしながら,よう
やく被告人を捕まえたところ,突然,本件ナイフで左胸部を刺されて殺害された
のである。被害者は,持ち前の正義感に基づく行動に出た結果,一瞬にして生命
を奪われ,将来の希望,家族との生活,友人らとの語らいの機会など,人生の全
てを奪われたのであって,被害者の無念さ,悲しみ,憤りは察するにあまりある。
もとより,被害者の父母ら遺族の悲しみも深く,被告人家族からの謝罪すら拒絶
しており,父は,当公判廷において,被告人に対する厳罰を希望する旨の意見を
陳述している。
加えて,被告人は,本件より前から,立腹して他人に本件ナイフを示したり,
ふざけて後輩に本件ナイフを投げつけたりしたこともあったのであるから,被告
人には,刃物を持ち出すことに対する抵抗感が乏しいと認められ,このような傾
向が本件の一因となっていることも否定できない。
また,本件は深夜のコンビニエンスストアという店員数の少ない店舗を狙った
大胆な万引きから始まった犯行であり,同種店舗の従業員に与えた不安感はもと
より,付近住民や社会に与えた衝撃も大きい。
以上によれば,被告人の刑事責任は極めて重い。
3他方で,被告人は店員等に追跡された場合に店員等を殺害することまで事前に
考えていたものではなく,被害者を殺害した点については計画性がなかったこと,
被告人に自首は成立しないものの,本件の数時間後には自発的に警察に出頭して
いること,被告人は中学生のころの万引きや道路交通法違反で検挙された前歴が
あるほかに非行歴はないこと,被告人は犯行時19歳の少年であり,可塑性があ
ること,本件における一連の手続を通じて,被告人なりには反省を深めつつある
様子がうかがわれ,被害者遺族や被害店舗に対する謝罪文を作成していること,
父母が出廷して,被告人の監督を誓っていることなどの酌むべき事情も認められ
る。
4しかし,これらの酌むべき事情も,前述した被告人の刑事責任の重さに照らす
と,刑の酌量減軽をすべき事情とまでは認められない。刑種の選択においては,
これらの事情を総合考慮して,被告人を主文の刑に処するのが相当であると判断
した。
5よって,主文のとおり判決する。
(求刑無期懲役,折りたたみナイフ1本の没収)
平成20年3月18日
大阪地方裁判所第12刑事部
裁判長裁判官並木正男
裁判官井戸俊一
裁判官安原和臣

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