弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被上告人の控訴を棄却する。
     控訴審及び上告審における訴訟費用は、被上告人の負担とする。
         理    由
 上告指定代理人浜本一夫、同星智孝、同今井文雄の上告理由について。
 原審判決は、準禁治産宣告の取消申立事件は、家事審判法九条一項甲類二の規定
により家庭裁判所の専属管轄に属すること明かであるから、通常裁判所に提起され
た本訴は、民事訴訟法三〇条の精神にのつとり、これを管轄裁判所たる家庭裁判所
に移送すべきものなるに拘らず、第一審が、本訴を不適法として却下したのは失当
であると判示し、第一審裁判所をして移送手続をとらしめるため第一審判決を破棄
して本訴を第一審裁判所に差戻としていることは、所論のとおりである。
 思うに、民事訴訟法三〇条一項は、単に「裁判所ハ訴訟ノ全部又ハ一部カ其ノ管
轄ニ属セスト認ムルトキハ決定ラ以テ之ヲ管轄裁判所ニ移送ス」とあり、訴訟事件
についての移送に関する規定たるにとどまり、原則として、移送された訴訟事件が
移送された裁判所においても訴訟手続によつて処理されることを前提としているも
のといわなくてはならない。それゆえ、非訴事件または審判事件が訴訟事件として
裁判所に提起された場合特別の規定のない限り(例えば民事調停法四条家事審判規
則一二九条の二等は地方裁判所より家庭裁判所への事件の移送を認めている)みだ
りに前示民事訴訟法三〇条を適用ないし準用してこれを他の管轄裁判所に移送する
ことは許されないと解するのが相当である。従つて、通常訴訟手続にしたしまない
家事審判法九条一項甲類二に規定されている準禁治産宣告取消申立事件について移
送の許されないことは明らかである。
 しからば、右と異なり、地方裁判所に提起された準禁治産宣告取消の訴訟を管轄
家庭裁判所に移送しうることを前提として第一審判決を取り消した原審判決は失当
として破棄を免れない。そして、準禁治産宣告取消の申立は、原審判決判示のとお
り、家事審判事項として家庭裁判所の専属管轄に属するから、本件訴訟は不適法と
して却下を免れず、従つて、本件訴を却下するとした第一審判決は当審と理由を異
にするが結論を同じくするから、結局被上告人のした控訴は理由がないことになり、
これを棄却すべきものである。
 よつて、原審判決を破棄し、民事訴訟法四〇八条一号の規定により被上告人のし
た控訴を棄却し、訴訟費用の負担については同法八九条、九六条の規定を適用し、
裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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