弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被上告人B1、同B2、同B3の請求を認容した部分を破棄し、
右部分につき本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
     上告人の被上告人B4に対する上告を棄却する。
     前項に関する上告費用は、上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人高野裕士、同丸山冨夫の上告理由第一点中被上告人B1、同B2、同
B3に関する部分について
 原審は、(1) 被上告人B1(昭和三〇年九月一八日生まれ)、同B2(昭和三
四年七月九日生まれ)、同B3(昭和三九年五月二日生まれ)(以下「被上告人B
1ら」という。)の母親である訴外D(昭和九年八月一二日生まれ)と上告人とは、
小学校、中学校の同級生で、そのころ親しい間柄であつたところ、上告人が昭和四
五年三月ごろ勤務先のE商事株式会社のメキシコ駐在員に命ぜられたために催され
た中学校の同級生による送別会に出席したDは、久し振りに上告人と会い、これを
きつかけに二人の交際が始まつた、(2) 上告人は、それから間もなくメキシコへ
赴任したが、現地からDと秘かに手紙や電話のやりとりを続けるうち、Dへ愛情を
打ち明けるようになり、Dの心は次第に上告人の方へ傾いて行つた、(3) Dは、
昭和四六年七月ごろ上告人に逢いたさにメキシコまで赴く決心をし、夫である被上
告人B4には、女友達とアメリカ旅行に出かけるといつてその許しを得、同年八月
中旬単独でメキシコへ渡航し、上告人と再会し、二人は初めて肉体関係を持つに至
り、Dの心はますます夫から離れて行き、Dはメキシコから帰つた後同四七年一〇
月ごろには夫に対し性格が合わないことを理由に別居を申し出るようにもなつた、
(4) 上告人は、同年末及び昭和四八年一月に一時日本へ帰国したが、その際にも
Dと密会を重ねていたところ、同年三月、二人の関係を知つた被上告人B4は、大
いに驚き、上告人との関係を絶つように強く説得したが、Dがそれを聞き入れなか
つたため、Dに暴力を振うこともあつた、(5) Dは、同年六月二三日被上告人B
4に顔面を殴打されたことがきつかけとなつて被上告人B3(当時九歳)を連れて
出奔するに至り、ホテル、上告人の同僚方、上告人方、上告人の実弟方等を転々と
し、同年八月ごろから昭和四九年四月初めまで被上告人B3とともにDの従兄弟方
で暮したが、同月八日、いつたん、夫や他の子のところに帰つたものの、翌日、単
身で上告人の実弟方に身を寄せた後、同年一〇月ごろ日本を発つてメキシコへ渡り、
同所で上告人と同棲するに至り、現在に及んでいる、以上のことを認定したうえ、
上告人がDと肉体関係を結び、同棲するに至つた行為は、未成熟子である被上告人
B1らの母親に対する身上監護請求権及び同被上告人らの平穏な家庭生活を営むこ
とによる精神的利益を侵害することになり、同被上告人らに対し、不法行為を構成
するものであるとして、同被上告人らの損害賠償請求を認容した。
 しかし、夫及び未成年の子のある女性と肉体関係を持つた男性が夫や子のもとを
去つた右女性と同棲するに至つた結果、その子が日常生活において母親から愛情を
注がれ、その監護、教育を受けることができなくなつたとしても、その男性が害意
をもつて母親の子に対する監護等を積極的に阻止するなど特段の事情のない限り、
右男性の行為は、未成年の子に対して不法行為を構成するものではない。けだし、
母親がその未成年の子に対し愛情を注ぎ、監護、教育を行うことは、他の男性と同
棲するかどうかにかかわりなく、母親自らの意思によつて行うことができるのであ
るから、他の男性との同棲の結果、未成年の子が事実上母親の愛情、監護、教育を
受けることができず、そのため不利益を被つたとしても、そのことと右男性の行為
との間には相当因果関係がないものといわなければならないからであり、このこと
は、同棲の場所が外国であつても、国内であつても差異はない。
 したがつて、前記のとおり、原審が特段の事情の存在を認定しないまま、いずれ
も成年に達していなかつた被上告人B1らのもとを去つたDと同棲した上告人の行
為と同被上告人らが不利益を被つたことの間に相当因果関係があることを前提に上
告人の行為が同被上告人らに対する関係で不法行為を構成するものとしたのは、法
令の解釈適用を誤り、ひいては、審理不尽の違法をおかしたものというべく、右違
法は、判決に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は、この点において理由があ
り、原判決中被上告人B1らの請求を認容した部分は、破棄を免れず、更に審理を
尽くさせるのを相当とするから、右部分につき本件を原審に差し戻すこととする。
 同第一点中被上告人B4に関する部分について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができ
ない。
 同第二点について
 本件事実関係のもとにおいては、未成年者である被上告人B2、同B3の親権は
父親だけによつて行使されることを許さなければならない場合であるというべきで
あるから、同被上告人らの訴訟手続が父親だけを法定代理人としてされたとしても、
法定代理権の欠缺があつたものとはいえない。したがつて原審に所論の違法はなく、
論旨は、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇七条一項、三九六条、三八四条、三八六条、九五条、八九条
に従い、裁判官大塚喜一郎の補足意見、裁判官本林讓の反対意見があるほか、裁判
官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 裁判官大塚喜一郎の補足意見は、次のとおりである。
 上告理由第一点中被上告人B1、同B2、同B3に関する部分について、私は、
上告人の行為と被上告人B1らが被つた不利益との間には相当因果関係がないとす
る多数意見に同調するものであるが、その理由の詳細は、当裁判所昭和五一年(オ)
第三二八号同五四年三月三〇日第二小法廷判決の補足意見で述べたとおりである。
 裁判官本林讓の反対意見は、次のとおりである。
 私は、上告理由第一点中被上告人B1、同B2、同B3に関する部分について、
本件事実関係のもとにおいても、上告人の行為と被上告人B1らが被つた不利益と
の間には、相当因果関係があり、また、同被上告人らが被つた右不利益が法律の保
護に価する法益であると考えるのである。その理由の詳細は、当裁判所昭和五一年
(オ)第三二八号同五四年三月三〇日第二小法廷判決の私の反対意見中で述べたと
おりである。したがつて、上告人の行為が同被上告人らに対する関係で不法行為を
構成し、上告人には、損害賠償責任があるとした原審の判断は、正当として是認す
べきであり、この点についての論旨は理由がないから、上告人の本件上告をいずれ
も棄却するのが相当であると考える。
     最高裁判所第二小法廷
            裁判官    大   塚   喜 一 郎
            裁判官    本   林       讓
            裁判官    栗   本   一   夫
 裁判長裁判官吉田豊は退官につき署名押印することができない。
            裁判官    大   塚   喜 一 郎

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