弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人両名の負担とする。
       事   実
 控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人は控訴人Aに対し金三二三万九八
八九円、控訴人Bに対し金七七二万九〇七六円及び右各金員に対する昭和五四年九
月三〇日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、
二審とも被控訴人の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、被控訴代
理人は、控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の主張は、次のとおり訂正し、当審における主張を付加するほかは原
判決事実摘示のとおりであり、証拠は記録中の原審及び当審における証拠関係目録
記載のとおりであるから、これを引用する。
(原判決の主張摘示の訂正)
(一) 原判決三枚目二行目の「本件処分の無効」を「本件処分の実体的な違法」
と、三行目の「無効である。」を「実体的に違法である。」と、同四枚目表三、四
行目の「組織分裂攻撃」を「組織攻撃」とそれぞれ改める。
(二) 同七枚目表五行目の「したがつて本件処分は無効である。」を削る。
(三) 同一一枚目裏三行目の「無効」を「違法」と、四行目の「本件処分の違
法」を「本件処分の手続の違法」とそれぞれ改める。
(四) 同一二枚目表八行目の括弧内を「同通達第一の協約第二条関係3、4」と
改める。
(五) 同一四枚目裏六行目の冒頭から一〇行目の「5のとおり」までを次のとお
り改める。「(二)(1)前記3ないし5のとおり、控訴人らが本件処分以後就労
することができなくなつたのは被控訴人の責めに帰すべき事由によるものであるか
ら、控訴人らは民法五三六条二項により被控訴人に対しそれぞれ右の給与等の支払
請求権を有する。
(2) 仮にそうでないとしても、被控訴人が本件処分をしたこと及び第一審無罪
判決後も右処分を取り消すことなく維持したことは」
(当審における控訴人両名の主張)
 本件起訴休職処分は、それを肯認すべき実質的要件は何ら具備しないにもかかわ
らず、主として全逓浜西支部の弱体化をねらつて控訴人両名を職場から放逐しよう
としたものであり、それが制度本来の目的、効果を逸脱する違法、不当なものであ
ることは、郵政省における同種事案に対する起訴休職処分の運用の実態に徴して
も、一目瞭然である。すなわち、別紙一覧表は、控訴人両名が所属する全逓信労働
組合が犠牲者救援規定を適用した刑事事件についての起訴休職処分の実態(昭和三
一年から昭和五四年までのもの)であるが、これをみても起訴休職処分がなされた
事例が非常に少ないばかりか、その全てが暴力行為、傷害事犯であつて、本件のよ
うなビラ貼り事犯における起訴休職は皆無である。この一事をもつてしても、本件
起訴休職処分が著しく恣意的で、かつ、理由もなく控訴人両名を差別する違法なも
のであることは明らかである。
(控訴人両名の右主張に対する被控訴人の認否)
 別紙一覧表掲記の事犯中、被控訴人において調査できた六六件の内容は、①起訴
休職処分に付したもの二一件、②起訴休職処分に付することなく懲戒免職処分に付
したもの一四件、③組合専従休職中であつたため起訴休職処分に付さなかつたもの
二件、④起訴時に既に職員としての身分がなかつたもの(組合役職専従となるため
既に辞職していたもの等)五件、⑤被告人が当初から部外者であるもの一件(昭和
三三年一二月一九日起訴の横浜中郵支部事犯)、⑥起訴休職処分に付さなかつたも
の二三件(懲戒処分を先行したもの一五件、公職選挙法違反によるもの二件を含
む。)であり、もともと起訴休職処分に付することができないような右②、③、④
及び⑤を除いた四四件中二一件(四八パーセント)が起訴休職処分に付されている
のである。本件のビラ貼り事犯は極めて悪質なものであり、控訴人両名を起訴休職
処分に付したことはなんら異とするに足りない。
       理   由
 当裁判所もまた、控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきものと判断する。そ
の理由は、次のとおり付加、訂正するほかは原判決理由中に説示するところと同一
であるから、これを引用する。
(原判決の訂正)
(一) 原判決二八枚目裏末行の冒頭から二九枚目表六行目の末尾までを削る。
(二) 同三六枚目表三行目の「本件処分の効力」を「本件処分の実体的な違法性
の有無」と改める。
(三) 同三七枚目表五行目の「ただ、原告らを初め」から同裏末行の末尾までを
次のとおり改める。
「(三) 国家公務員法七九条二号によれば、職員が刑事事件につき起訴された場
合には本人の意思に反して休職することができるものとされており、また、本件処
分がその処分事由たる刑事事件の内容との関係からみて処分権者の裁量権の逸脱又
は濫用に当らないことは後記のとおりであるから、それにもかかわらず本件処分が
不当労働行為に該当することがありうるとすれば、それは、処分事由たる刑事事件
の発生に至るまでの過程において当局側が右刑事事件の対象たる行為を余儀なくさ
せるような挑発的な言動を不当労働行為をする意思の下に行つたような場合に限ら
れるものというべきである。しかしながら、前記事実関係からすると、本件ビラ貼
り行為は、郵便物集配業務の実績の向上の方途をめぐつて、これを勤務能率の改善
によるべきであるとする当局側とこれに反発し抗議する控訴人ら浜西支部組合員と
の間に激しい衝突がくり返され、数々の紛争が派生した挙句に行われたものである
が、右衝突は基本的には集配業務の実績向上をいかにして実現するかについての意
見の対立によるものであつて、控訴人両名主張のように当局側において全逓を敵視
し、その闘争力を減退せしめる意図の下にことさら右衝突を発生させ、激化させた
ものとはいい難く、他に右控訴人両名の主張事実を認めるに足りる証拠はない。」
(四) 同三九枚目表一行目の「その担当する」から九行目の「国家公務員は」ま
でを「、郵便事業は高度の公共性を有し、郵便物の配達が適正、確実かつ効率的に
行われることに対する国民の信頼が保持されることは現代社会における不可欠の要
請というべきである。このことに加えて、国家公務員で」と改める。
(五) 同四〇枚目表三行目の「原告らの不利益」を「控訴人両名主張のような経
済上、身分上の種々の不利益」と、九行目の「認められないから、」から一〇行目
の末尾までを「認められない。」と、同裏三行目の「通達」を「郵政省人事局長通
達」と、一〇行目の括弧内を「同通達第一の協約第二条関係3、4」とそれぞれ改
める。
(六) 同四三枚目表六行目の括弧内を「同通達第一の協約七条関係2(2)」と
改める。
(七) 同四四枚目表一行目の「このように」から三行目の「否定された場合
で、」までを「右によれば、控訴人両名の刑事責任の有無は、控訴人両名の行為が
建物の使用、利用を阻害し、その美観を著しく阻害したかどうかという、微妙な法
的評価のいかんにかかつているのであるが、無罪の理由がかかるものであり、」と
改める。
(当審における控訴人両名の主張に対する判断)
 当審証人Cの証言とこれによつて成立の認められる甲第三三号証に弁論の全趣旨
を総合すれば、全逓信労働組合が犠牲者救済規定を適用した別紙一覧表記載の七七
件の刑事事件中、起訴休職処分がされたものはかなり少なく、同処分がされた事件
の大半は暴力行為、傷害事犯であつて、本件のようなビラ貼り行為が建造物損壊罪
に問われたものは皆無であり、岩手大槌郵便局事件は局舎の各所や庁舎外の一部に
縦約二五センチ、横約九センチ大の西洋紙に「合理化粉砕」「大幅賃上げ」「スト
権奪還」「時間短縮」等をガリ版印刷したビラ約一〇〇〇枚を貼りつけたという行
為につき建造物侵入罪に問われたものであつて、一、二審とも無罪判決が下された
ところ、最高裁で破棄・差戻となり、差戻審で有罪判決となつたものであるが、右
事件の被告人二名も起訴休職処分に付されていないことが認められる。
 しかしながら、先に引用した原判決理由中で説示するとおり、本件起訴休職処分
となつた控訴人両名に対する起訴にかかる公訴事実は、「被告人両名は、共謀のう
え、昭和四七年七月一八日午後一一時二五分ころ、横浜市<以下略>所在の戸塚郵
便局において、同郵便局長D管理にかかる同郵便局庁舎一階公衆室はめころし窓ガ
ラス一一枚、同室入口ガラス扉二枚および同庁舎通用口のコンクリート柱、同通用
口に接続するコンクリート塀などに、赤色・黒色などのマジツクインクを使用して
『不当処分粉砕悪徳管理者追放』『つば男E局を出て行け俺達はあまくないぞ』
『Eあやまれ』『郵政の犬車にひかれて死ね』などと記載したビラ一二五枚を糊付
けして貼付し、または赤色スプレー塗料を用いて『Eアヤマレ』『不当処分粉砕』
などと落書きし、もつて建造物を損壊したものである。」というものであつて、そ
の外形的事実の存在は明らかであるところ、起訴休職処分の適否は個々の事例ごと
に各個別的事情を勘案して判断すべきものである。本件についていえば、いやしく
も控訴人両名が勤務する職場庁舎内の、しかも一般国民が恒常的に使用する一階公
衆室の窓ガラス等に多数のビラ貼り等をしたというものであつて、その内容には上
司を悪しざまに誹謗する文言もあり、その表現には国家公務員としていささか品位
に欠ける部分も含まれており、控訴人両名の行為は悪質であるというほかはなく、
たとい全逓信労働組合神奈川地区本部浜西支部の活動の一環として行つたものであ
るとしても、正当な組合活動の範囲を超えるものであつて、とうてい許されるべき
ことではない。そうだとすれば、過去の起訴休職処分の実体が前記認定のような状
況にあるとの一事から、本件起訴休職処分が著しく恣意的であつて公正を欠くもの
であり、理由もなく控訴人両名を差別するものであるということはできず、主とし
て全逓浜西支部の弱体化をねらつて控訴人両名を職場から放逐しようとしたもの
で、制度本来の目的、効果を逸脱する違法、不当なものということもできない。
 控訴人両名の右主張は採用することができない。
 以上の次第で、右と同趣旨の原判決は相当であるから、本件控訴を失当として棄
却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条、九三条一項本
文を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 中島一郎 加茂紀久男 梶村太市)
別紙一覧表(省略)

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