弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人小中信幸、同外山興三、同長岡敏満の上告理由第一点について
 原審の確定したところによると、訴外Dは、同人が代表者である訴外E(以下「
訴外会社」という。)の上告人香港支店に対する当座貸越債務を担保するため原判
決別紙債権目録13579の各定期預金(以下「本件定期預金」という。)証書の
裏面元利金受領署名欄に日付空白のまま署名し、これを右支店に交付して担保設定
契約をしたというのであるから、これは債権質設定契約にあたるものと解すべきで
ある(以下「本件債権質」という。)。
 そこで、本件債権質に適用されるべき法律について考えるに、わが法例一〇条一
項は、動産及び不動産に関する物権その他登記すべき権利はその目的物の所在地法
によるものと定めているが、これは物権のように物の排他的な支配を目的とする権
利においては、その権利関係が目的物の所在地の利害と密接な関係を有することに
よるものと解されるところ、権利質は物権に属するが、その目的物が財産権そのも
のであつて有体物でないため、直接その目的物の所在を問うことが不可能であり、
反面、権利質はその客体たる権利を支配し、その運命に直接影響を与えるものであ
るから、これに通用すべき法律は、客体たる債権自体の準拠法によるものと解する
のが相当である。したがつて、右と同旨の原審判断は、正当として是認することが
でき、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
 同第三点について
 前記のように、本件債権質には客体である本件定期預金契約上の債権の準拠法が
適用されることとなるが、その準拠法を決定するには、まず法例七条一項に従い当
事者の意思によるべきところ、原審の確定したところによれば、当事者の明示の意
思表示を認めることはできないが、上告人(本店所在地タイ国)東京支店は、当時
日本に居住していた華僑のDと円を対象とする本件定期預金契約をし、同預金契約
は、上告人東京支店が日本国内において行う一般の銀行取引と同様、定型的画一的
に行われる附合契約の性質を有するものであるというのであり、この事実に加えて、
外国銀行がわが国内に支店等を設けて営業を営む場合に主務大臣の免許を受けるべ
きこと、免許を受けた営業所は銀行とみなされること(銀行法三二条)等を参酌す
ると、当事者は本件定期預金契約上の債権に関する準拠法として上告人東京支店の
所在地法である日本法を黙示的に指定したものと解すべきである。したがつて、右
と同旨の認定判断のもとに、本件定期預金契約が訴外会社の上告人香港支店に対す
る当座貸越債務を担保するため締結されたということは、本件定期預金契約をする
に至つた縁由たる事情にすぎず、これによりその準拠法を香港法とする旨の黙示の
意思表示がされたものとは認められないとした原審の判断は、正当として是認する
ことができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
 同第二点について
 民法三六四条一項は、指名債権を目的とする質権の設定を第三債務者その他の第
三者に対抗するためには、同法四六七条の規定に従い確定日付のある証書をもつて
第三債務者に通知をし又はその承諾を得ることを要するものと定めているが、前記
のとおり本件債権質には日本法の適用がある以上、右の規定も適用されるべきは当
然である。論旨は、右通知・承諾が債権質の方式にあたるものとして法例八条二項
本文の適用がある旨を主張するけれども、この通知・承諾は、債権質の効力に関す
る要件であると解すべきであるから、これを法例八条にいう法律行為の方式にあた
るものとする論旨は、その前提において失当である。原審は、物権であることにつ
き疑いのない本件債権質の方式については、法例八条二項但書により行為地法によ
ることができず、同条一項によつて本件債権質の効力に関する準拠法である日本法
によらざるをえないと判示したが、結局は本件債権質の成立及び効力につき日本法
を適用するに帰しており、所論の点は結論に影響を及ぼさず、上告適法の理由とは
ならない。論旨は、採用することができない。
 同第四点及び第五点について
 原審の確定したところによれば、上告人香港支店は、同東京支店に対し昭和四〇
年一二月二〇日到達の書面をもつて、訴外会社に対する前記当座貸越債権を清算す
るため本件定期預金の送金依頼をしたが、東京支店では、当時における日本政府の
外国為替管理政策上右送金許可を得ることが困難であると判断してその許可手続を
とらず、帳簿上はもちろん、現実にも本件定期預金の解約、弁済充当の措置をとら
ないまま、本件転付命令送達後の昭和四七年四月東京支店の定期預金口座からアン
クレイムド・バランスに振替えて本件定期預金の元利金を保留していたというので
ある。右事実関係のもとにおいて、本件定期預金契約が本件転付命令送達前に解約
され、訴外会社の上告人香港支店に対する前記債務に弁済充当されたものとは認め
難いとした原審の判断は、正当として是認することができる。また、上告人香港支
店と同東京支店とは、上告人の支店相互の関係ではあるが、前記のごとく日本国内
にある外国銀行支店は、主務大臣の免許を受けて銀行として営業活動を行つている
ものであるから、上告人東京支店が本件転付命令の送達前に本件定期預金契約を解
約し同香港支店へ送金する手続をとらずこれを保留していた以上、同香港支店がD
との間でした上告人主張の保証契約の成否について判断するまでもなく、右保証契
約による債権と本件定期預金契約上の債権とを相殺することは許されないものとい
うべく、上告人の右相殺の抗弁を排斥した原審の判断は、結論において相当であり、
原判決に所論の違法はない。論旨は、いずれも採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    藤   崎   萬   里
            裁判官    岸       盛   一
            裁判官    岸   上   康   夫
            裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    本   山       亨

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