弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人鈴木敏夫の上告理由第一点について。
 公職選挙法二五一条の二、同二一一条が、選挙運動を総括主宰した者又は出納責
任者が買收、利害誘導等の罪を犯し刑に処せられたときは当該当選人の当選を無効
とし、選挙人らより当選無効の訴訟を提起することができることとしたのは、選挙
が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保せんと
するものである。
 そして選挙運動を総括主宰した者又は出納責任者の如き選挙運動において重要な
地位を占めた者が買收、利害誘導等の犯罪により刑に処せられた場合は、当該当選
人の得票中には、かかる犯罪行為によつて得られたものも相当数あることが推測さ
れ、当該当選人の当選は選挙人の真意の正当な表現の結果と断定できないのみなら
ず、上述のように選挙人の自由な意思に基づく選挙の公明、適正を期する上からも、
かかる当選人の当選を無効とすることは所論憲法の各条項に違反するものというこ
とはできない。よつて所論は採るを得ない。
 同第二点について。
 公職選挙法二一一条は当選無効の訴訟の出訴期間を刑事裁判確定の日から三〇日
以内としているが、これは当該当選人の当選が一般に少くとも選挙運動の総括主宰
者又は出納責任者の選挙犯罪の裁判確定の日以前に決定し、その効力を生じている
ことを予想して規定したものであつて、本件の如く刑事裁判確定の日よりはるかに
後になつて当選人が定められ、既にその時は右出訴期間が経過しているような場合
には原判決の如く当選告示の日から三〇日以内に出訴できるものと解するのが相当
である。けだし右二二条の当選無効訴訟の趣旨が前示の如く当該当選人の当選は公
正なものと認められないとして、これを失わせる趣旨に出でたものであるから、た
またま刑事裁判確定の日から三〇日を経過した後に当選人の当選が決定した場合に
は最早出訴を許さないとすることは甚しく不当であるからである。また論旨はかか
る場合は民訴一五九条の準用により訴訟行為の追完を為すべきであると主張するが、
本件の場合は刑事裁判確定しても未だ当選人の当選は決定されておらず、当選無効
の訴訟の提起ができない場合であり、従つて出訴期間の進行は開始しないのである
から、不変期間が進行し期間が満了した場合の規定である民訴一五九条の準用の余
地はないのである。よつて所論は採るを得ない。
 同第三点について。
 論旨は、原判決の総括主宰者に関する認定を非難するに過ぎないから、上告適法
の理由とならない。
 よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、全裁判官一致の意見により主文の
とおり判決する
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    横   田   喜 三 郎
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    高   木   常   七
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐

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