弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中、上告人の控訴を棄却した部分を破棄する。
     前項の部分について本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人仁分百合人、同西迪雄、同吉田豊、同種田誠の上告理由について
 原審は、(1) 本件倉庫は、壁及び扉などにより区分された本件建物の部分であ
るが、ブロツクの壁で仕切られた第一倉庫及び第二倉庫の各部分から成り、いずれ
の部分にも本件車庫、電気室、一階正面のロビー等に通ずる通路部分への出入口が
ある、(2) 第一倉庫には一四区画、第二倉庫には三区画の物置がブロック壁に接
して並置され、本件建物の区分所有者の一部の者に利用されている、(3) 第一倉
庫の床には汚水及び雑排水の各マンホールがあり、また、第一倉庫の内側の壁の一
部には本件建物の共用設備である電気のスイツチ、積算電力計の配電盤並びに換気、
汚水処理及び揚水ポンプなどの動力系統のスイツチがはめこまれており、右スイツ
チの操作のため、本件建物の管理人が一日三回程入庫しなければならないが、第二
倉庫には配電盤もマンホールもない、(4) 策一、第二倉庫の各天井の高さはいず
れも約二・八九メートルであるが、床から約二・〇五メートルの高さの部分のいた
るところに直径約一五センチメートルから同三センチメートルまでの大小の電気、
水道等のパイプが通つており、右パイプは、物置の上側にある部分は金網で覆われ
ているが、その他の部分は露出したままになつている、との事実を確定して、右事
実関係のもとにおいては、本件倉庫は、第一倉庫及び第二倉庫のいずれも区分所有
権の目的とすることができず、建物の区分所有等に関する法律三条にいう構造上区
分所有者全員のための共用部分たるべき部分にあたるものと認め、被上告人の本訴
請求のうち本件倉庫に関する部分を認容した。
 しかしながら、一棟の建物のうち構造上他の部分と区分され、それ自体として独
立の建物としての用途に供することができるような外形を有する建物部分であるが、
そのうちの一部に他の区分所有者らの共用に供される設備が設置され、このような
共用設備の設置場所としての意味ないし機能を一部帯有しているようなものであつ
ても、右の共用設備が当該建物部分の小部分を占めるにとどまり、その余の部分を
もつて独立の建物の場合と実質的に異なるところのない態様の排他的使用に供する
ことができ、かつ、他の区分所有者らによる右共用設備の利用、管理によつて右の
排他的使用に格別の制限ないし障害を生ずることがなく、反面、かかる使用によつ
て共用設備の保存及び他の区分所有者らによる利用に影響を及ぼすこともない場合
には、なお建物の区分所有等に関する法律にいう建物の専有部分として区分所有権
の目的となりうるものと解するのが相当である。
 これを本件についてみると、原審が認定した前記事実によれば、第二倉庫は、構
造上他の部分と区分され、それ自体として独立の建物としての用途に供することが
できる外形を有する建物部分であるが、他の区分所有者らの共用に供される設備と
して、床から高さ約二・〇五メートルの高さの部分に電気、水道等のパイプが設置
されているというにすぎず、右共用設備の利用、管理によつて第二倉庫の排他的使
用に格別の制限ないし障害を生ずるかどうかの点についてはなんら明確にされてい
ないから、原審の認定した事実のみでは、少なくとも第二倉庫についてはそれが建
物の区分所有等に関する法律にいう建物の専有部分として区分所有権の目的となる
ことを否定することはできないものといわなければならない。そうすると、原審が、
右の点を斟酌することなく第二倉庫を含め本件倉庫全体を共用部分であると判断し、
本件倉庫についてされた所有権保存登記の抹消登記手続を認容すべきものとしたの
は、建物の区分所有等に関する法律の解釈適用を誤つた違法があるといわざるをえ
ず、論旨は理由がある。したがつて、原判決中、上告人の控訴を棄却した部分は破
棄を免れず、さらに審理を尽くさせるため、これを原審に差し戻すのが相当である。
 よつて、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決す
る。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    中   村   治   朗
            裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    藤   崎   萬   里
            裁判官    本   山       亨
            裁判官    谷   口   正   孝

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