弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人らの負担とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴の趣旨
1 原判決を取消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 控訴の趣旨に対する答弁
控訴棄却
第二 当事者の主張及び証拠
原判決事実摘示及び当審証拠目録記載のとおりである。
ただし、次のとおり付加訂正する。
一 原判決の訂正
原判決二五枚目表九行目の「め」を「ぬ」と訂正する。
二 当審での当事者の主張
1 控訴人ら
(一) 被控訴人は、昭和六〇年一一月一五日付で、予約課に関して次のような昇
格等の人事を発表した。すなわち、スペースコントロール・スーパーバイザーのA
がスペースコントロール担当をはずされて、スーパーバイザーグループの監督者に
なり、ジユニアのBが旅客課に配転されてコンピユーターインストラクターのタイ
トルを与えられ、シニアのCが営業課に配転された。そして、予約課のD、E、旅
客課のFの三名がジユニアから予約課のスーパーバイザーに各昇格した。その結
果、現在の予約課の構成は、マネージヤー一名(G)、アシスタント・マネージヤ
ー一名(H)、スペースコントロール部門のスーパーバイザー一名(E)、スーパ
ーバイザー三名(A、D、F)、シニア二名(I、J)、ジユニア約四〇名となつ
た。従来予約課員約四〇名で、マネージヤー一名、アシスタントマネージヤー一
名、スペースコントロール部門を除いたスーパーバイザー二名、シニア六名であつ
たのだから、現在は少なくともシニア四名が欠員となつていることになる。
(二) 右の人事は、本件の不当労働行為性を裏付けるものである。
 第一に、D、E、Fの三名がジユニアからシニアを飛び越してスーパーバイザー
に昇格していることで、その狙いは本件が係属しているため、誰であつてもシニア
に昇格させることを避けているのである(すなわち、被控訴人はジユニアからシニ
アへの昇格の必要性がない、と主張するのである。)。
 第二に、ジユニアからスーパーバイザーに昇格した三名がいずれも非組合員であ
るということである。Dは昭和六〇年七月に、Eは昭和六〇年一〇月に、それぞれ
組合を脱退しており、Fはもともと反組合の立場であつた。このように現在予約課
で昇格できるのは組合を脱退している者だけである。D及びEの組合脱退は、昇格
の直前といつてよいが、これが偶然でないことは説明するまでもあるまい。
 第三に、Cが予約課から営業課へ、Fが旅客課から予約課へ、Bが予約課から旅
客課へ配転されたことである。被控訴人において配転は原則として本人の同意が必
要であり、三人はむしろ配転を希望していた。そして三人とも非組合員である。な
お、予約課から営業課への配転は給与も上がるので昇格の一種といえる。このよう
に、昇格のみならず、配転の希望がかなえられるのも非組合員だけとなつている。
 以上述べたように、現在では組合員である限り昇格はできず、配転の希望もかな
えられないということであり、これらの事実からしても、本件の不当労働行為性は
明らかであるといわなければならない。
2 被控訴人
(一) 控訴人ら主張の1の(一)の事実は認める。ただし、そのうち「Aがスペ
ースコントロール担当をはずされた」と記載されているのは相当でない。Aは職務
の遂行上問題があつてその担当を「はずされた」のではなく、より責任の重い職務
に任命された結果スペースコントロール担当でなくなつたにすぎない。
(二) 控訴人らは、一一月一五日付の人事は組合脱退者及び非組合員のみを昇格
させるものであつて組合員を不利益に扱つていることが明らかであるから、かかる
事実は本件の不当労働行為性を裏付けるものであると主張しているが失当である。
 右人事は、予約課のみならず、その他の会社の全部門を通じて行なわれた全体的
人事異動の一環であつて、この全体的異動においては勿論組合員も対象になつてお
り、また異動は公平な客観的評価に基づいてなされているものであつて、組合員で
あることを理由とする差別は全くない。右の予約課の人事においてD、E、Fの三
名がジユニアからシニアを飛びこして、スーパーバイザーに昇格したのは、最近に
おける航空業界の競争の激化のために、会社の営業政策として、従前は予約課にお
ける全部の勤務シフト(土、日を含む週七日のシフト)を通じて、週日の夜間(一
八時以降)及び日曜のシフトはシニア以下の職員だけでカバーしていたが、昭和六
〇年一一月一五日以降はすべてのシフトについてより高い統轄権限をもつ職員を配
置するということに方針を変更したこと、及び予約課の受付電話に新しいシステム
を導入し、従前は予約課員の大部分が予約電話の繁閑に関係なく常時電話に対応す
るシステムになつていたのを、新システムの下では特定の責任者が電話受付予約課
員の業務の実情を的確に判断し、受付の業務を適宜特定の予約課員のグループに集
中するよう指揮命令することにしたことなどから、スーパーバイザーを増員する必
要が生じたからである。また、ジユニアからシニアを飛び越してスーパーバイザー
に任命されるというようなことは必ずしも異例のことではなく、発券課のKはジユ
ニアからいきなりLのマネージヤーに、客室乗務員課のM、Nの両名はジユニアあ
るいは一般課員からスーパーバイザーに、車輛整備課のO、Pらはジユニアまたは
一般のエージエントからいきなりマネージヤーに、営業課員になつたM、Cらは他
部署のスーパーバイザーまたはシニアから営業課員になつているのであるが、同じ
く営業課員になつたU、Vらはジユニアからいきなり営業課員になつているのであ
つて、しかもこれら昇格等の対象となつた者のなかには相当数の組合員が含まれて
いる。このような実態からしても、業務の実情に合わせ適切と認められた場合に
は、昇格は必ずしも順を追つて逐次昇格するのではなくジユニアからスーパーバイ
ザーあるいはマネージヤー等に昇格することも何ら異例ではなく適材・適所の人事
が実行されている。管理職の人事としてもHは現にアシスタントマネージヤーの地
位にあるが、同人は原審判決(四五丁裏)においても認定されているとおり、昭和
四五年八月に六人を追い越してシニアに昇格し、シニアとしては、いわゆる後輩で
あつたが、その後間もなくスーパーバイザーをとび越してアシスタントマネージヤ
ーに任命され、マネージヤーに次ぐ重要な地位についている。また、スーパーバイ
ザーに昇格したDは昭和五三年一〇月Cがシニアに昇格した当時、既にマネージヤ
ーミーテイングでCとともにシニアの候補者として推薦され当時の管理者からシニ
ア昇格を打診されたが、Dが「十分心の準備ができていない」として推薦を受けな
かつたため昇格が見送られ、Cが昇格したものであつて以前からその能力に対して
高い評価をうけていた者である。以上の次第であるから、最近における予約課の人
事においてD外二名の者が新たにスーパーバイザーに任命されたことは業務上の必
要性とこれをみたすに足る同人らの能力が評価された結果であつて何ら異例ではな
く、被控訴人の組合敵視や組合対策とは無関係である。
 なお、控訴人らは、予約課においてスーパーバイザーに昇格した三名がいずれも
非組合員であり、そのうち二名は昇格の直前に組合を脱退しているところから、昇
格と組合脱退は偶然ではないなどとして、あたかも被控訴人が組合の脱退をそその
かし組合に介入したかのごとき主張をしているが、何ら根拠もないものであり、こ
れまた見当違いと言うべきである。組合員の脱退については、昭和五〇年頃当時の
組合執行部が次期組合役員に立候補する者を執行部の推薦するものに限定するとい
うやり方をしたところから一部の組合員が反発し、「民主的組合運営を求める有
志」なるものが結成されるなどして当時の組合執行部との対立状態が公然化し、そ
れ以後毎年のように組合脱退者が出ているのであつてこのような組合員の脱退は全
く組合内部の事情によるものであり、被控訴人とは無関係である。したがつて、脱
退の件について未だかつて一度も組合から会社に対し、抗議等がなされたことはな
い。
 次に、会社と組合とが昭和三五年以降継続して毎年のように締結している労働協
約書においては、当該労働協約が適用される職種を別表として添付し、労使間には
これら別表に記載されている職種の従業員が組合によつて代表される従業員であ
り、そこに記載されていない職種の従業員は非組合員乃至管理職として扱うという
長年の慣行が存在していた。そしてスーパーバイザーは初めからこのような職種に
は含まれておらず管理職として認識され、スーパーバイザーの候補者として推薦さ
れこれを受け入れる意思を示した者は例外なく任命前又は任命後に組合から脱退す
る手続をとつていた。予約課でスーパーバイザーに任命された前記二名の者も、従
前のスーパーバイザー候補者の選定任命の場合と何ら異なるものではなく、同人ら
の組合脱退はあくまでも自主的判断によるものであり会社は一切介入していない。
 また従前の昇進・昇格の事例において対象となつたものをみてみると、非組合員
の数が組合員に比較して多くなつているところから、控訴人らは、被控訴人が昇格
にあたつて組合員を差別しているかのごとく主張しているが、従前の昇格事例をみ
ても、相当数の組合員が昇格の対象とされており、このような従前の昇格事例につ
いて組合員差別があるというような抗議、苦情は全くされていない。
       理   由
一 当裁判所は被控訴人の本訴請求は認容すべきものと判断する。その理由は原判
決の理由と同一であるからこれを引用する。ただし、次のとおり付加訂正する。
1 原判決四一枚目表一〇行目の「証人Q」の次に「参加人R」を加え、同行目の
「証人」の次に「(ただし、右参加人Rの供述中後記信用しない部分を除く。)」
と訂正する。
2 同四九枚目表四行目の「例もある。」の次に、「以上の認定に反する参加人R
の供述は前掲各証拠と対比して容易に信用できない。」を加える。
3 同四九枚目裏八行目の「三、」の次に、「成立に争いのない乙第一三三号証に
よつて真正に成立したと認められる甲第一一号証、右甲第一一号証により真正に成
立したと認められる甲第九、第一〇号証の各一、二」を加える。
4 同四九枚目裏九行目の「甲第九、一〇号証の各一、二、同第一一号証」を削
る。
5 同五〇枚目表二~三行目の「各証言」の次に、「参加人Rの供述」を加える。
6 同五〇枚目表三行目の「認められる」の次に「(ただし、右参加人Rの供述中
後記信用しない部分を除く。)」を加える。
7 同五四枚目裏一行目の「である。」の次に、「(ただし、重量の換算につき一
部誤記があるが、右評価を左右するものではない。)」を加える。
8 同五四枚目裏一一行目の「付記してあつた」の次に、「(ただし、極く一部に
誤記があるが、右資料及び作成の努力についての評価を左右する程のものではな
い。)」を加える。
9 同五九枚目表六行目の「乙第一六七号証」を「乙第一五四号証」と訂正する。
10 同六〇枚目表五行目の「ロスアンゼルス」を「サンフランシスコ」と訂正す
る。
11 同六六枚目表四行目の「ない。」の次に、「以上の認定に反する参加人Rの
供述は前掲各証拠と対比して容易に信用できない。」を加える。
12 同七二枚目裏三行目の「解される。」の次に、「このことは、参加人R本人
自身そのように認識していることが参加人Rの供述によつても明らかである。」を
加える。
13 同八〇枚目裏四行目~五行目の「乙第一五六号証により真正に成立したもの
と認められる」を「成立に争いのない」と訂正する。
二 控訴人らは、当審において、被控訴人が昭和六〇年一一月一五日付で発表した
昇格等の人事異動に照らせば、本件は不当労働行為になると主張する。右主張どお
りの人事異動の発表がなされたことについては当事者間に争いがないところ、当審
における証人Sの証言及び控訴人(参加人組合)代表者T本人尋問の結果によれ
ば、それらの人事異動は被控訴人の職域の各部門にわたつてなされた全体的なもの
であつて、予約課にのみ関するものではなく、また、最近における航空業界の競争
の激化に対応した営業政策による必要からなされたものであること(予約課から二
名、旅客課から一名、以上三名がいずれも予約課のスーパーバイザーに昇格したと
の点についても、昭和六〇年一〇月電話システムの変更に伴い全ての時間帯にわた
り予約受付の電話をスーパーバイザーが直接監督できる体制をとることになつたこ
とによるものであること。)が認められるから、右人事異動があつたことから直ち
にもつてRの右不昇格を不当労働行為と目すことはできず、また、右人事異動のほ
か、原判決認定の過去における労使関係、Rの組合活動歴等を合わせ考えても、未
だこれらの主張を首肯するに足りない。
三 その他当審における証拠を加えて検討しても、原判決の認定判断を左右するこ
とはできないから、被控訴人の請求は理由がある。
 なお、本件は第一審被告東京都地方労働委員会から適法な控訴がなされたもので
あるが、本件記録によれば、参加人らはいずれも行訴法二二条に基づく訴訟参加人
であることが明らかであるから、同条四項による民訴法六二条の準用により被参加
人たる控訴人東京都地方労働委員会との間で必要的共同訴訟における共同訴訟人に
準ずる地位に立つものというべきであり、同控訴人から控訴の申立てがなされたこ
とにより、その効力は参加人らについても及び、参加人らもまた控訴人たる地位を
取得したものというべきである。
四 以上の理由により、原判決は相当であるから、民訴法三八四条により本件控訴
を棄却する。
訴訟費用の負担につき、行訴法七条、民訴法九五条九三条八九条適用
(裁判官 武藤春光 菅本宣太郎 秋山賢三)

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