弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人等を各懲役六年に処する。
     原審の未決勾留日数中、被告人Aに対しては一〇〇日を、被告人Bに対
しては一三〇日をそれぞれ被告人等の右各本刑に算入する。
     訴訟費用中、原審の証人Cに支給した分は被告人Aの負担とし、原審の
証人D並びに当審の証人E及び同Fに各支給した分は被告人Bの負担とする。
         理    由
 重富、関根両弁護人連名の控訴趣意第一点について。
 所論は、(一)、原判決は、原判示第二の(一)の事実を認定する証拠として、
Gの司法警察員に対する昭和三四年一月二八日付の供述調書の謄本及びHの司法警
察員に対する同日付の供述調書の謄本を引用しているが、右はいずれも謄本の謄本
であるところ、謄本に証拠能力が認められるためには、原本が滅失その他の事由に
よつて使用することができないか又は困難な場合であつて、しかも供述者の署名押
印が存している原本が存在しており、謄本が原本と相違ないことを確認することが
できる場合であり、且つ原本に証拠能力がある場合であることを必要とするものと
解すべきであるから、謄本の謄本は、たとえ被告人又は弁護人が同意しても証拠と
することができないものであり、(二)、原判決は、原判示第二の(一)の事実認
定の証拠として、Hの司法警察員に対する昭和三三年一二月二〇日付及び昭和三四
年一月一四日の各供述調書の各謄本を引用しているが、右はいずれも抄本であつて
謄本ではないから、原判決が、謄本としての効力のない抄本を、右事実認定の証拠
に引用したことは違法であり、結局右(一)及び(二)の各供述調書の謄本又は抄
本に証拠能力がないとすれば、原判決には、いわゆる補強証拠がないのに、被告人
Bの自白だけで、原判示第二の(一)の事実を認定した違法があることに帰着し、
右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるというのであるが、記録を精査す
ると、(一)及び(二)に摘記した各供述調書は、昭和三四年九月八日に開廷され
た原審第二回公判において、検察官から、いずれもその謄本が証拠として申請さ
れ、同月二二日に開廷された原審第三回公判において、それぞれその証拠調がなさ
れたことが明らかであるところ、(一)については、記録に編綴してあるGの司法
警察員に対する昭和三四年一月二八日付の供述調書の謄本の謄本は同年三月二〇日
に作成されたものであり、又記録に編綴してあるHの司法警察員に対する同年一月
二八日付の供述調書の謄本の謄本は同年五月一二日に作成されたものであることに
徴すれば右各供述調書は、当初から、いずれもその謄本の謄本が証拠として申請さ
れたもの<要旨第一>と思われるが、供述調書の謄本又は写等は、(1)その原本が
存在していたか又は存在していること、(2)その内容が原本と同一で
あること、(3)その原本が滅失したか又は提出困難であることの三つの要件が具
備されていれば、その原本と同様の証拠能力を持つているものと解すべく、なお供
述調書の謄本又は写等が証拠として申請された場合に、相手方の当事者が、原本の
存在を承認し、月つ原本に代えてこれを証拠として提出することを承認したとき
は、特に、その原本が存在していたか又は存在しているか或はその内容が原本と同
一であるか等について疑がある等格別の事由がない限り、これに原本と同様の証拠
能力を認めるべきものと解すべく、且つこのことは供述調書の謄本であると、謄本
の謄本であると又写であるとによつて差異はないものと解すべきところ、前記第三
回公判調書によつて明らかなように、被告人等の弁護人等が、右各供述調書の謄本
の謄本を証拠として申請されたのに対して、これを証拠とすることに異議を申し立
てることなく、これに同意していることに徴すれば、被告人等の弁護人等が、右各
供述調書の謄本の謄本の原本の存在を承認し、且つその内容が原本と同一のものと
して、原本に代えてこれを証拠として提出することを承認すると共に刑事訴訟法第
三二六条第一項により、これを証拠とすることに同意したものと認めるのが相当で
あり、特にその原本が存在していたか又は存在していること及びその内容が原本と
同一であること等について疑をさしはさむべき余地はないから、原判決が右各供述
調書の謄本の謄本に証拠能力を認めたことは当然であつて、この点に関する非難は
当らないし、(二)については、(二)に摘記した各供述調書の抄本はいずれも謄
本の抄本であるが、右各供述調書については、いずれもその謄本が証拠として申請
されたところ、被告人等の弁護人等がその一部のみを証拠とすることに同意したこ
と及び右各謄本の抄本はいずれも昭和三四年九月二二日に作成されたものであるこ
とを総合すれば、記録に編綴されている右各供述調書の謄本の抄本は、右各謄本の
内証拠とすることに同意があつた部分だけを前記原審第三回公判期日において証拠
調をした上、その部分についての各抄本が提出されたものと思わ<要旨第二>れると
ころ、刑事訴訟法第三一〇条は「証拠調を終つた証拠書類又は証拠物は、遅滞なく
これを裁判所に提出しなければならない。但し、裁判所の許可を得たと
きは、原本に代え、その謄本を提出することができる。」と規定しており、原本に
代えて抄本を提出することができる場合を明記していないが、場合によつてはこれ
を否定すべき理由はないものと解すべきところ、本件のように、供述調書の一部だ
けが証拠とすることに同意されている場合には、その部分だけの証拠調をした上、
その部分だけの抄本を提出することはむしろ極めて望ましいことであり、このよう
な場合には右規定にかかわらず抄本を提出すべきものと思われるから、右抄本を記
録上に編綴した上、これを証拠に引用したことを非難することも当らないので、論
旨はすべて理由がない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 井上文夫 判事 久永正勝 判事 河本文夫)

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