弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人等三名弁護人原田茂、被告人A弁護人杉山賢三、被告人B弁護人三宅正太
郎、小林直人、被告人C弁護人福井房次の各上告趣意は末尾添附の書面記載のごと
くであつて、これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。
 弁護人原田茂の上告趣意について。
 日本国憲法の施行に伴ふ刑事訴訟法の応急的措置に関する法律第一三条第二項の
規定が日本国憲法の条規に反するものでないことについては当裁判所の判例とする
ところであつて、(昭和二二年(れ)五六号、昭和二三年二月六日大法廷判決、昭
和二二年(れ)四三号昭和二三年三月一〇日大法廷判決参照)未だこれを変更する
必要を認めない。されば、右の法文の無効を主張して刑事訴訟法第四一二条の適用
あることを前提として原審の量刑の不当を上告の理由とする論旨は採用することが
できない。
 弁護人杉山賢三の上告趣意第一点について。
 記録によれば、被告人の弁護人は原審の公判において論旨摘録のごとく被告人の
精神状態を明かにするために精神鑑定その他の証拠調の請求をしたことは認められ
るが、これらの証拠調の請求自体は被告人の精神状態の健否を明かにするための請
求に過ぎないのであるから、それだけでは被告人が本件犯行当時に心神喪失者若し
くは心神耗弱者等であつたことの事実上の主張がなされたものとは言うことができ
ない。そして他には右のような事実上の主張がなされたことを認むべき事跡もない
のであるから、原審が刑事訴訟法第三六〇条第二項の判断を示さなかつたのは当然
であつて原判決には所論のような違法はない。又証拠調の限度は原審の自由裁量に
よつて決するのであるから、原審が鑑定の請求を却下したからとて所論のような違
法はなく論旨は理由がない。
 同第二点、弁護人三宅正太郎、同小林直人の上告趣意第四点について。
 およそ、犯人が屋内に侵入して家人にピストル等を突きつけて脅迫した場合に家
人は犯人が屋外に退去するに至るまで畏怖を感じ反抗を抑圧されることは当然であ
るから、犯人がその間家人の所持する財物を奪取すればそれは窃盗ではなく強盗で
あること言うまでもないことである。されば、被告人Aが懐中時計を奪取した状況
が所論のとおりであつたとしても強盗であることに論はなく、又強盗罪の判示とし
ては所論のように個々の財物について奪取の状況を逐一説明する必要のないことも
多言を要しない処であり、猶共同の強盗であるから仮令論旨のいう様に被告人Bが
時計奪取の事実を知らなかつたとしても共同の責任を負うのは当然である。論旨は
理由がない。
 弁護人福井房次の上告趣意第一点弁護人杉山賢三の上告趣意第三点について。
 裁判所法第二六条第一項において第二項に規定する場合を除いて地方裁判所は一
人の裁判官でその事件を取り扱うと定めた規定が憲法の条規に反するものでないこ
とについては当裁判所の判例として示すところである。(昭和二二年(れ)第二八
〇号、昭和二三年七月一九日大法廷判決)されば、本件強盗罪について横浜地方裁
判所小田原支部において判事秋山悟が単独で事件を審判したことは少しも違法では
なく原判決には所論のような違法はない。それ故、論旨は理由がない。
 弁護人福井房次の上告趣意第二点について。
 精神病者であつても症状によりその精神状態は時に普通人と異ならない場合もあ
るのであるから、その際における証言を採用することは何ら採証法則に反するもの
ではなく、要は事実審の自由な判断によつてその採否を決すべきものである。され
ば、仮りに被告人Aの精神状態に異状があつたとしても原審がその供述を措信する
ことができるものと判断してこれを証拠に引用したからとて違法ではない。所論は
結局原審の事実認証を主張するに帰着するので日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法
の応急的措置に関する法律第一三条第二項により上告の適法な理由とならないから
採用することができない。
 弁護人三宅正太郎、同小林直人の上告趣意第一点について。
 刑事訴訟法第三四七条第一項において裁判長は各個の証拠につき取調を終えた毎
に被告人に意見の有無を問うべきことを規定しているのは、被告人に証拠について
意見を述べる機会を与えなければならないことを規定したのであつて、被告人が述
べる意見を有しない時でも強て之れを述べさせなければならないことまで規定した
ものではない。被告人が弁護人に一任したというのは弁護人に代つて述べて貰へば
それでいい、それ以上自分は述べる意志がないことを表明したものに外ならない、
所論のような見解によると、裁判長が証拠につき被告人の意見を問うたところ被告
人が黙して答えない場合には証拠とならない不合理を生ずる。されば、原審の裁判
長が論旨に摘録するような証拠調をしたことは適法であつて、これを違法であると
主張する論旨は了解することができない。それ故論旨は理由がない。
 同第二点について。
 原判決が判示第一事実を認定する証拠の一つとして被告人Cに対する司法警察官
の第三回訊問調書を引用するに当つて、所論のように「判示同趣旨の供述記載」と
示したこと、右訊問調書には犯罪の日時及び被害者D方屋内において行われた犯行
の具体的内容についての供述記載のないことは所論のとおりである。しかし右に判
示同趣旨の供述とあるのは判示第一事実中被告人Cが関係している部分については
これと同趣旨の供述という意味に解すべきであつて、現に右訊問調書中には判示第
一事案中被告人Cに関する部分についてはこれと同趣旨の供述が記載されているの
である。されば、論旨は原判決が証拠を引用するに当つての措辞精確を欠いたこと
を捉えて虚無の証拠を引用したものと非難するのであるから採用することができな
い。それ故論旨は理由がない。
 同第三点について。
 本論旨についても事実関係は論旨摘録のとおりである。しかしながら、所論の各
証拠書類中の被害金額を原判示第一事実の被害金額の限度においては判示と符合し
ているものと言うことができる。原審は本件被害金額を約二千二百円と認定し寧ろ
被告人について利益な認定をしているのである。然らば右各証拠書類中に表示され
た被害金額の点を捉えて判示の額と差異があるから原判決は虚無の証拠を引用した
ものとする論旨は採用に値せず理由がない。
 同第五点について。
 記録を調べてみると、本件犯罪については最初に被告人Aが賍物牙保被疑事件に
より小田原簡易裁判所判事が発した逮捕状によつて逮捕された結果同人及び被告人
B、Cに対する強盗被疑事実が発覚し日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的
措置に関する法律第八条第二号の所謂緊急逮捕の手続によつて被告人Cが逮捕され
前記判事の同人に対する逮捕状の発布を受けたことが明かである。そして所謂緊急
逮捕の手続は前記法律によつて認められた強制搜査手続であるから現行犯事件の場
合と同様に搜査官憲において被疑者に対して訊問権を有するものと言わなければな
らない。されば、司法警察官が被疑者Cを本件強盗被疑事実について訊問して所論
の訊問調書を作成したのはもとより適法であつてこれを証拠に引用した原判決には
違法はないから論旨は理由がない。
 よつて、最高裁判所裁判事務処理規則第九条第四号刑事訴訟法第四四六条に従い
主文のとおり判決する。
 以上は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 宮本増蔵関与
  昭和二三年一二月二四日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    河   村   又   介

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