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判決 平成14年3月13日 神戸地方裁判所 平成13年(ワ)第533号預託
金返還請求事件
主文
1被告は,原告Aに対して,260万円及びこれに対する平成12年1月4日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告は,原告Bに対し,780万円及び内金260万円に対する平成12年
1月4日から,内金520万円に対する平成13年3月17日から,それぞれ支払
済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3訴訟費用は被告の負担とする。
4この判決は仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
主文と同旨
第2事案の概要
本件は,原告らが被告に対し,ゴルフ場預託金の返還及び遅延損害金の支払
いを求める事案である。
1争いのない事実等(末尾に証拠の標目の記載のない事実は当事者間に争いが
ない)
(1)本件預託金1
亡Cは,平成7年2月2日,被告が経営する三日月カントリークラブの下
記会員権を購入して正会員となった。
金額520万円(以下「本件預託金1」という)
証券番号第HS096号
預託日昭和63年12月12日
名義人D
本件預託金1の据置期間は10年であった。
亡Cは,平成12年1月3日に死亡した。原告Aは,亡Cの妻であり,原
告Bは,亡Cの子である(甲3)。
(2)本件預託金2
原告Bは平成7年10月4日,被告の経営する三日月カントリークラブの
下記会員権を購入して正会員となった。
金額520万円(以下「本件預託金2」という)
証券番号第HA122号
預託日昭和63年11月25日
名義人E株式会社(代表取締役F)
本件預託金2の据置期間は10年であった。
(3)原告らの請求
よって,原告Aは被告に対し,本件預託金1の2分の1である260万円
及びこれに対する平成12年1月4日(亡C死亡日の翌日)から支払済みまで民法
所定の年5分の割合による遅延損害金を,原告Bは被告に対し,本件預託金1の2
分の1である260万円及びこれに対する平成12年1月4日から支払済みまで民
法所定の年5分の割合による遅延損害金及び本件預託金2の520万円及びこれに
対する平成13年3月17日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年
5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
2争点
①被告取締役会による据置期間延長決議の有効性,②名義変更手続によって
入会した会員に対する特則の有効性
(1)被告取締役会による据置期間延長決議
ア被告の主張
被告の旧会則によれば,会則の改廃は取締役会及び理事会の決議を経る
ことを要するとされていた。そこで,平成10年2月16日及び28日にそれぞれ
開催された取締役会及び三日月カントリークラブ理事会において審議の結果,制定
された現行会則9条には,「会社の運営を円滑に遂行するために必要なとき,また
は本クラブ運営上会員の利益を著しく阻害するおそれのあるとき,あるいは天災地
変,社会情勢の急激な変化等,止むを得ない事態が発生したときは,会社取締役会
の決定に基づいて第7条の据置期間を一定の期間内で延長又は短縮することができ
る。この場合会社は,会員に対して期間延長又は短縮の理由とその期間を通知しな
ければならない」との定めがある。
被告は,平成10年5月7日開催の取締役会において,預託金の据置期
間を5年間延長する旨の決議(以下「本件延長決議」という)をし,6月末,全会
員に対し据置期間を延長する旨通知した。
被告は,会員が,会員権を市場で売却することにより預託金を回収する
ことを予定して,会員を計画募集した。ところが,バブル経済の崩壊,その後のデ
フレの進行により,会員権相場は長期的に低落傾向を続け,被告の現在の会員権相
場は30万円未満と,預託金額を大きく下回っている。そのため,会員は会員権の
売却により投下資本を回収することが困難になり,被告に対して預託金の返還を請
求することになった。被告の会員募集は開場前後の一定期間に集中して行ったた
め,据置期間の到来も平成10年11月以降順次集中する結果となっており,平成
11年4月末日現在で3700名の会員のうち約770名から総額約50億円の預
託金の返還請求を受ける事態となっている。これは,被告の当初の予測に全く反す
るものであり,これに直ちに応じることは,被告が支払不能に陥るなどによりゴル
フ場の経営に重大な支障を生じさせ,ひいては会員に対する預託金の返還が不能に
なることはもちろん,会員権の根幹を形成する会員のプレー権を存続させることも
できないおそれが生じている。
本件延長決議は,かかる事態の下,経費削減努力を推進しても,なおゴ
ルフ場の運営資金が逼迫し,経営破綻のおそれが生じたことから,緊急やむを得な
い措置として行われたものである。また,延長期間も5年間と長期ではなく合理的
である。さらに,据置期間の延長につき,相当数の会員から同意も得ている。
以上の次第で,本件延長決議当時は,被告会則9条の「止むを得ない事
態」が発生していたから,本件延長決議は有効である。
イ原告らの認否反論
現行会則への改正手続の有効性を争う。
仮に,現行会則への改正手続が有効であったとしても,預託金の如き会
員の基本的権利の消長については会員の個別の同意が必要であって,右権利を取締
役会の決定で自由に変更できるとする規約はいわゆる随意契約(民法134条)で
ある。また,信義則違反(民法1条2項),権利の濫用(同条3項)にも該当す
る。したがって,本件延長決議は無効である。また,預託金の返還を5年間延長し
ても,10年間延長しても,被告の経常損益は赤字であって,その期限に全額返還
することは不可能であるから,被告の主張する期限の延長は返済の目途のない単な
る口実である。
(2)名義変更手続によって入会した会員に対する特則
ア被告の主張
平成10年2月16日及び28日にそれぞれ開催された被告取締役会及
び三日月カントリークラブ理事会において審議の結果,制定された現行会則7条1
項後段によれば,名義変更手続によって新たに入会した場合は,預託金の据置期間
は会員権の券面の記載如何に関わらず,その入会の認められた日より10年間とす
る旨が定められている(以下,これを「本件特則」という)。
したがって,本件預託金1の据置期間は平成17年2月3日まで,本件
預託金2の据置期間は平成17年10月5日まで,それぞれ延長されたことにな
る。
イ原告らの認否反論
現行会則への改正手続の有効性を争う。
第3争点に対する判断
1本件延長決議の有効性
以下に掲げる証拠及び弁論の全趣旨によれば,預託金の据置期間の延長に関
する被告の会則は,次のとおり改正されたことが認められる。
被告ゴルフ場オープン当初の会則(乙4)の34条においては,預託金の据
置期間について「理事会の決議により短縮又は延長することができる」と定められ
ていたが,平成10年1月1日から施行された改正会則において同条は,「預託金
の据置期間はクラブ運営上あるいは会社経営上やむを得ない場合は,会社取締役会
の決議により理事会の承認を得て,短縮または延長することができる」という内容
に改正され(乙5ないし7),さらに,平成10年2月28日から施行された現行
会則においては,「会社の運営を円滑に遂行するために必要なとき,または本クラ
ブ運営上会員の利益を著しく阻害するおそれのあるとき,あるいは天災地変,社会
情勢の急激な変化等,止むを得ない事態が発生したときは,会社取締役会の決定に
基づいて第7条の据置期間を一定の期間内で延長又は短縮することができる。この
場合会社は,会員に対して期間延長又は短縮の理由とその期間を通知しなければな
らない」という9条の規定に改正された(乙1,8,9)。
そして,上記現行会則9条に基づいて,被告取締役会は,平成10年5月7
日,預託金据置期間を5年間延長する旨の本件延長決議を可決した事実が認められ
る(乙2,3)。
しかしながら,そもそも,ゴルフクラブ会員の預託金返還請求は,会員の契
約上の基本的権利というべきであるから,これを変更するには会員の個別的な承諾
を得ることが必要であって,承諾を得ないまま被告において一方的に据置期間の延
長の効力を主張することはできないと考えられるから,被告の会則の,据置期間延
長に関する上記各規定は,当初のものから現行のものに至るまでいずれも無効とい
うべきである。
また,仮に被告の現行会則が有効であるとしても,被告のゴルフ場のオープ
ン時期は平成4年12月8日であって(乙4,弁論の全趣旨),当時,既に景気の
後退期にさし掛かっていたと認められること(公知の事実)に照らすと,その後の
いっそうの景気の悪化,ゴルフ会員相場の低迷といった被告主張の諸事情は,被告
の経営者にとって全く予想外の事態であったとは認められないから,これをもっ
て,被告現行会則9条の「止むを得ない事態」に該当すると認めることはできな
い。
さらに,仮に,被告主張の事情が現行会則9条の「止むを得ない事態」に当
たるとしても,延長期間が経過した5年後において被告主張の諸事情が改善される
見込みは窺えないから,5年後において,再度,据置期間が延長されるおそれがな
いとはいえない。もし,そのようなことになれば,実質的に,預託金返還請求権を
会員から奪うに等しいというべきであって,預託金返還請求がゴルフ場会員の基本
的権利であることに照らすと,そのような結論を認めることはできない。
以上の次第で,本件延長決議の効力を認めることはできない。
2本件特則の有効性
証拠(乙5ないし7)によれば,被告においては,従前,名義書換手続によ
って新たに入会した会員の預託金据置期間については,原始会員と格別区別が設け
られていなかったところが,平成10年1月1日に施行された改正会則(乙7)の
34条において,「名義書換手続によって新たに入会した場合は,預託金の据置期
間は会員権の券面の記載の如何にかかわらず,その入会の認められた日より10年
とする」と変更され,同年2月28日に施行された現行会則(乙1)においても,
同規定が,そのまま7条1項に引き継がれた事実が認められる。
しかしながら,前記のとおり,ゴルフクラブ会員の預託金返還請求は,会員
の契約上の基本的権利というべきであるから,これを変更するには会員の個別的な
承諾を得ることが必要であって,承諾を得ないまま被告において一方的に据置期間
の延長の効力を主張することはできないと考えられる。そして,前記争いのない事
実のとおり,亡Cが被告の会員になったのは平成7年2月2日,原告Bが被告の会
員になったのは平成7年10月4日であって,いずれも,上記改正会則の施行前で
あるから,上記会則改正は,原告らに対する関係では効力を有しないと解すべきで
ある。
3結論
以上の次第で,被告の主張する抗弁はいずれも理由がないから,原告らの本
件預託金1,2の返還請求権を認容する。
神戸地方裁判所第4民事部
裁判官太田敬司

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