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平成14年(行ケ)第105号 特許取消決定取消請求事件
平成16年6月23日判決言渡,平成16年6月9日口頭弁論終結
     判    決
 原      告  セイコーエプソン株式会社
 訴訟代理人弁理士  上村輝之,宮川長夫,中村猛
 被      告  特許庁長官 小川洋
 指定代理人     川嵜健,吉村宅衛,小林信雄,林栄二,高橋泰史,小曳満
昭,大橋信彦,大野克人
     主    文
 原告の請求を棄却する。
 訴訟費用は原告の負担とする。
     事実及び理由
 本判決においては,決定及び書証等を引用する場合を含め,公用文の用字用語例
に従って表記を変えた部分がある。
第1 原告の求めた裁判
 「特許庁が異議2001-70136号事件について平成14年1月15日にし
た決定のうち,特許第3065053号の請求項1ないし69に係る特許を取り消
した部分を取り消す。」との判決。
第2 事案の概要
 本件は,後記本件発明の特許権者である原告が,特許異議の申立てを受けた特許
庁により本件特許(請求項1ないし69に係る特許)を取り消す旨の決定がされた
ため,同決定の取消しを求めた事案である。
 1 特許庁における手続の経緯
 (1) 本件特許
 特許権者:セイコーエプソン株式会社(原告)
 発明の名称:「機器監視システム,ローカル監視装置,統合監視装置,機器監視
方法,及び,プログラムを格納したコンピュータ可読媒体」
 特許出願日:平成10年12月7日(特願平10-347359号)
 設定登録日:平成12年5月12日
 特許番号:第3065053号
 (2) 本件手続
 特許異議事件番号:異議2001-70136号
 訂正請求日:平成13年10月9日(本件訂正)
 異議の決定日:平成14年1月15日
 決定の結論:「訂正を認める。特許第3065053号の請求項1ないし69に
係る特許を取り消す。」
 決定謄本送達日:平成14年2月2日(原告に対し)
 2 本件発明の要旨(本件訂正後のもの。以下,請求項番号に対応して,それぞ
れの発明を「本件第1発明」などという。)
【請求項1】監視対象機器の稼働状態を示すステータス情報を,コンピュータネッ
トワークを介して,統合監視装置に送信するローカル監視装置であって,第1種の
コンピュータネットワークを介して,前記ステータス情報を前記機器から取得する
ローカル情報取得手段と,前記ローカル情報取得手段によって取得されたステータ
ス情報を保存するローカル情報保存手段と,このローカル情報保存手段に保存され
た複数個のステータス情報のうちの少なくとも一部を,前記第1種のコンピュータ
ネットワークを前記統合監視装置に接続する第2種のコンピュータネットワークを
介して,前記統合監視装置に向けて送信するローカル情報送信手段と,前記機器を
前記統合監視装置に登録するための機器情報を,前記第2種のコンピュータネット
ワークを介して前記統合監視装置に送信する機器情報送信手段と,を備え,それに
より,前記統合監視装置をして,前記第2種のコンピュータネットワークを介して
受信した前記機器情報を用いて,前記ローカル監視装置の監視下の機器のステータ
ス情報を管理することを可能にならしめるローカル監視装置。
【請求項2】前記第1種のコンピュータネットワークはローカルエリアネットワー
クであり,前記第2種のコンピュータネットワークはインターネットである請求項
1記載のローカル監視装置。
【請求項3】前記ローカル情報送信手段は,前記ステータス情報を,前記統合監視
装置のアドレスを付した電子メールのフォーマットに変換する電子メール生成手段
と,この電子メール生成手段によって生成された電子メールを,前記第2種のコン
ピュータネットワークのメールサーバに向けて送出する電子メール送出手段とから
なる請求項1記載のローカル監視装置。
【請求項4】前記ローカル情報取得手段は,複数の機器のステータス情報を取得
し,前記ローカル情報送信手段の電子メール生成手段は,複数の機器から取得した
ステータス情報を一個の電子メールに変換する請求項3記載のローカル監視装置。
【請求項5】前記ローカル情報取得手段は,前記ステータス情報を第1の周期で取
得し,前記ローカル情報送信手段は,前記第1の周期よりも長い第2の周期で,各
機器についての最新のステータス情報を前記統合監視装置に向けて送信する請求項
1記載のローカル監視装置。
【請求項6】前記ローカル情報取得手段によって取得されたステータス情報が前記
機器の異常状態を示すか否かを識別する状態識別手段を更に備えるとともに,前記
ローカル情報取得手段は,前記ステータス情報が前記機器の異常状態を示している
と前記状態識別手段が識別している間のみ,前記第1の周期よりも短い周期で前記
ステータス情報を取得する請求項5記載のローカル監視装置。
【請求項7】前記ローカル情報取得手段は,複数の機器のステータス情報を取得
し,特定の機器から取得したステータス情報がその機器の異常状態を示していると
前記状態識別手段が識別している間は,前記特定の機器からのステータス情報の
み,前記第1の周期よりも短い周期で取得する請求項6記載のローカル監視装置。
【請求項8】前記ローカル情報取得手段によって取得されたステータス情報が前記
機器の異常状態を示すか否かを識別する状態識別手段を更に備えるとともに,前記
ローカル情報送信手段は,前記ステータス情報が前記機器の異常状態を示すと前記
状態識別手段が識別し始めた時には,前記第2の周期如何に拘わらず,前記ステー
タス情報を前記統合監視装置に向けて送信する請求項5記載のローカル監視装置。
【請求項9】前記ローカル情報取得手段によって取得されたステータス情報が前記
機器の異常状態を示すか否かを識別する状態識別手段を更に備えるとともに,前記
ローカル情報送信手段は,前記ステータス情報が前記機器の異常状態を示すと前記
状態識別手段が所定時間に亘って識別した時には,前記第2の周期如何に拘わら
ず,その旨を示すステータス情報を前記統合監視装置に向けて送信する請求項5記
載のローカル監視装置。
【請求項10】前記第1種のコンピュータネットワークを介して接続されている全
ての機器の情報を示すメイン画面と,このメイン画面上で指定された個々の機器の
情報を詳細に示すサブ画面とを,表示する表示手段を,更に備える請求項1記載の
ローカル監視装置。
【請求項11】前記機器はコンピュータシステムの周辺機器である請求項1記載の
ローカル監視装置。
【請求項12】前記機器はネットワークプリンタである請求項11記載のローカル
監視装置。
【請求項13】監視対象機器の稼働状態を示すステータス情報を,コンピュータネ
ットワークを介して,統合監視装置に送信するローカル監視装置であって,前記機
器に接続されたローカルなコンピュータネットワークを介して,前記ステータス情
報を前記機器から取得するローカル情報取得手段と,このローカル情報取得手段に
よって取得されたステータス情報を,前記統合監視装置のアドレスを付した電子メ
ールのフォーマットに変換する電子メール生成手段と,この電子メール生成手段に
よって生成された電子メールを,広域のコンピュータネットワークのメールサーバ
に向けて送出するロー力ル情報送信手段と,前記機器を前記統合監視装置に登録す
るための機器情報を,前記広域のコンピュータネットワークを介して前記統合監視
装置に送信する機器情報送信手段と,を備え,それにより,前記統合監視装置をし
て,前記広域のコンピュータネットワークを介して受信した前記機器情報を用い
て,前記ローカル監視装置の監視下の機器のステータス情報を管理することを可能
にならしめるローカル監視装置。
【請求項14】第1種のコンピュータネットワークに接続された監視対象機器の稼
働状態を示すステータス情報を,前記第1種のコンピュータネットワークに接続さ
れた第2種のコンピュータネットワークを介して受信する統合監視装置であって,
前記ステータス情報を前記機器から取得するグローバル情報取得手段と,個々の機
器に関する情報を格納するデータベースと,前記グローバル情報取得手段によって
取得されたステータス情報によって前記データベースを更新するデータベース管理
手段と,前記データベースに格納された情報を表示する表示手段と,前記機器を前
記統合監視装置に登録するための機器情報を,前記第2種のコンピュータネットワ
ークを介して受信する機器情報受信手段と,を備え,前記データベース管理手段
は,さらに,前記第2種のコンピュータネットワークを介して受信された前記機器
情報を前記データベースに登録し,登録した前記機器情報を用いて,前記機器のス
テータス情報を管理するようになっている統合監視装置。
【請求項15】前記第1種のコンピュータネットワークはローカルエリアネットワ
ークであり,前記第2種のコンピュータネットワークはインターネットである請求
項14記載の統合監視装置。
【請求項16】前記グローバル情報取得手段は,前記ステータス情報を格納した電
子メールを前記第2種のコンピュータネットワークのメールサーバから受信する電
子メール受信手段と,この電子メール受信手段が受信した電子メールから前記ステ
ータス情報を抽出する抽出手段とからなる請求項15記載の統合監視装置。
【請求項17】前記データベースは,複数の機器の夫々に関し,前記グローバル情
報取得手段によって過去に取得されたステータス情報をも格納しており,前記表示
手段は,前記第1種のコンピュータネットワークを介して接続されている複数台の
機器のステータス情報を示すメイン画面と,このメイン画面上で指定された個々の
機器のステータス情報の履歴を示すサプ画面とを,表示する請求項14記載の統合
監視装置。
【請求項18】前記メイン画面は,個々の機器の最新のステータス情報を示す請求
項17記載の統合監視装置。
【請求項19】前記メイン画面は,前記第1のコンピュータネットワーク毎にグル
ープ化して,前記機器のステータス情報を示すことを特徴とする請求項17記載の
統合監視機器。
【請求項20】前記ステータス情報には消耗品の残量を示す情報が含まれており,
前記個々の機器のステータス情報の履歴を示すサプ画面には,その機器の消耗品の
残量の履歴が表示される請求項17記載の統合監視機器。
【請求項21】前記機器はコンピュータシステムの周辺機器である請求項14記載
の統合監視装置。
【請求項22】前記機器はネットワークプリンタである請求項21記載の統合監視
装置。
【請求項23】監視対象機器の稼働状態を示すステータス情報を,コンピュータネ
ットワークを介して受信する統合監視装置であって,前記ステータス情報を格納し
た電子メールをコンピュータネットワークのメールサーバから受信する電子メール
受信手段と,この電子メール受信手段が受信した電子メールから前記ステータス情
報を抽出する抽出手段と,個々の機器に関する情報を格納するデータベースと,前
記抽出手段によって抽出されたステータス情報によって前記データベースを更新す
るデータベース管理手段と,前記データベースに格納された情報を表示する表示手
段と,前記機器を前記統合監視装置に登録するための機器情報を,前記コンピュー
タネットワークを介して受信する機器情報受信手段と,を備え,前記データベース
管理手段は,さらに,前記コンピュータネットワークを介して受信された前記機器
情報を前記データベースに登録する登録手段と,登録した前記機器情報を用いて,
前記機器のステータス情報を管理するようになっている統合監視装置。
【請求項24】監視対象機器の稼働状態を示すステータス情報を,コンピュータネ
ットワークを介して受信する統合監視装置であって,前記ステータス情報を複数の
前記機器から取得するグローバル情報取得手段と,前記機器を前記統合監視装置に
登録するための機器情報を,前記コンピュータネットワークを介して受信する機器
情報受信手段と,前記コンピュータネットワークを介して受信された前記機器情報
を登録する登録手段と,登録した前記機器情報を用いて,前記グローバル情報取得
手段によって取得されたステータス情報を,前記機器が設置されたエリア単位で表
示する表示手段と,を備えた統合監視装置。
【請求項25】前記機器は,第2種のコンピュータネットワークを介して相互に接
続された第1種のコンピュータネットワークに接続されており,前記表示手段は,
前記機器に関するステータス情報を,前記機器が接続された第2のコンピュータネ
ットワーク単位で表示する請求項24記載の統合監視装置。
【請求項26】前記表示手段は,前記各機器に関する最新のステータス情報を表示
する請求項24記載の統合監視装置。
【請求項27】監視対象機器の消耗品の残量情報を含むステータス情報を,コンピ
ュータネットワークを介して受信する統合監視装置であって,前記ステータス情報
を前記機器から周期的に取得するグローバル情報取得手段と,個々の機器に関する
情報を格納するデータベースと,前記グローバル情報取得手段によって取得された
ステータス情報を前記データベースに蓄積するデータベース管理手段と,前記デー
タベースに格納されている各機器についての複数のステータス情報に基づき,前記
消耗品の残量の推移を予測する統計処理手段と,統計処理手段によって予測された
消耗品の残量の推移を出力する出力手段と,前記機器を前記統合監視装置に登録す
るための機器情報を,前記コンピュータネットワークを介して受信する機器情報受
信手段と,を備え,前記データベース管理手段は,さらに,前記コンピュータネッ
トワークを介して受信された前記機器情報を前記データベースに登録し,登録した
前記機器情報を用いて,前記機器のステータス情報を管理するようになっている統
合監視装置。
【請求項28】前記機器はプリンタであり,前記消耗品はインク,トナー又はイン
クリボンである請求項27記載の統合監視装置。
【請求項29】前記統計処理手段は,月単位,週単位又は日単位で前記消耗品の残
量の推移を予測する請求項27記載の統合監視装置。
【請求項30】前記データベースは,複数の機器の夫々に関し,前記グローバル情
報取得手段によって取得されたステータス情報を格納しており,前記出力手段は,
複数台の機器のステータス情報を示すメイン画面と,このメイン画面上で指定され
た個々の機器の消耗品の残量の推移を示すサプ画面とを,表示する請求項27記載
の統合監視装置。
【請求項31】前記出力手段は,前記機器の消耗品の残量の推移をグラフ形式で出
力する請求項27記載の統合監視装置。
【請求項32】前記出力手段は,前記機器の消耗品の残量の履歴と前記統計処理手
段によって予測された前記機器の消耗品の残量の推移とを,グラフ形式で出力する
請求項27記載の統合監視装置。
【請求項33】監視対象機器の稼働状態を示すステータス情報を集中監視するため
の機器監視システムであって,第1種のネットワークを介して前記監視対象機器に
接続されているとともに,前記監視対象機器に関するステータス情報を第2種のネ
ットワークに送出するローカル監視装置と,このローカル監視装置によって前記第
2種のネットワークに送出されたステータス情報を受信する統合監視装置とを有
し,前記ローカル監視装置は,前記機器を前記統合監視装置に登録するための機器
情報を,前記第2種のコンピュータネットワークを介して前記統合監視装置に送信
する手段を有し,前記統合監視装置は,前記ローカル監視装置から送信された前記
機器情報を受信する手段と,受信した前記機器情報を登録し,登録した前記機器情
報を用いて,前記機器のステータス情報を管理する手段と,を有する機器監視シス
テム。
【請求項34】前記ローカル監視装置は,第1種のコンピュータネットワークを介
して,前記ステータス情報を前記機器から取得するローカル情報取得手段と,前記
ローカル情報取得手段によって取得されたステータス情報を保存するローカル情報
保存手段と,このローカル情報保存手段に保存された複数個のステータス情報のう
ちの少なくとも一部を,前記第2種のコンピュータネットワークを介して,前記統
合監視装置に向けて送信するローカル情報送信手段とを備えており,前記統合監視
装置は,前記ステータス情報を前記第2種のコンピュータネットワークを介して受
信するグローバル情報取得手段と,個々の機器に関する情報を格納するデータベー
スと,前記グローバル情報取得手段によって取得されたステータス情報によって前
記データベースを更新するデータベース管理手段と,前記データベースに格納され
た情報を表示する表示手段とを備えている請求項33記載の機器監視システム。
【請求項35】前記第1種のコンピュータネットワークは,ローカルエリアネット
ワークであり,前記第2種のコンピュータネットワークは,インターネットである
請求項34記載の機器監視システム。
【請求項36】前記ローカル監視装置のローカル情報送信手段は,前記ステータス
情報を,前記統合監視装置のアドレスを付した電子メールのフォーマットに変換す
る電子メール生成手段と,この電子メール生成手段によって生成された電子メール
を,前記第2種のコンピュータネットワークのメールサーバに向けて送出する電子
メール送出手段とからなり,前記統合監視装置のグローバル情報取得手段は,前記
ステータス情報を格納した電子メールを前記第2種のコンピュータネットワークの
メールサーバから受信する電子メール受信手段と,この電子メール受信手段が受信
した電子メールから前記ステータス情報を抽出する抽出手段とからなる請求項35
記載の機器監視システム。
【請求項37】前記ローカル監視装置のローカル情報取得手段は,前記ステータス
情報を第1の周期で取得し,前記ローカル情報送信手段は,前記第1の周期よりも
長い第2の周期で,各機器についての最新のステータス情報を前記統合監視装置に
向けて送信する請求項34記載の機器監視システム。
【請求項38】監視対象機器の稼働状態を示すステータス情報を集中監視するため
の機器監視システムであって,第1種のネットワークを介して前記監視対象機器に
接続されているとともに,前記監視対象機器に関するステータス情報を電子メール
のフォーマットに変換して第2種のネットワークに送出するローカル監視装置と,
このローカル監視装置によって前記第2種のネットワークに送出された電子メール
を受信して前記ステータス情報を抽出する統合監視装置とを有し,前記ローカル監
視装置は,前記機器を前記統合監視装置に登録するための機器情報を,前記第2種
のコンピュータネットワークを介して前記ローカル監視装置へ送信する手段を有
し,前記統合監視装置は,前記ローカル監視装置から送信された前記機器情報を受
信する手段と,受信した前記機器情報を登録し,登録した前記機器情報を用いて,
前記ローカル監視装置の監視下の前記機器のステータス情報を管理する手段と,を
有する機器監視システム。
【請求項39】前記ローカル監視装置は,前記ステータス情報を前記機器から取得
するローカル情報取得手段と,このローカル情報取得手段によって取得されたステ
ータス情報を,前記統合監視装置のアドレスを付した電子メールのフォーマットに
変換する電子メール生成手段と,この電子メール生成手段によって生成された電子
メールを,コンピュータネットワークのメールサーバに向けて送出するローカル情
報送信手段とからなり,前記統合監視装置は,前記ステータス情報を格納した電子
メールをコンピュータネットワークのメールサーバから受信する電子メール受信手
段と,この電子メール受信手段が受信した電子メールから前記ステータス情報を抽
出する抽出手段と,個々の機器に関する情報を格納するデータベースと,前記抽出
手段によって抽出されたステータス情報によって前記データべースを更新するデー
タベース管理手段と,前記データべースに格納された情報を表示する表示手段とか
らなる請求項38記載の機器監視システム。
【請求項40】第1種のコンピュータネットワークに接続された監視対象機器の稼
働状態を示すステータス情報を取得して,前記第1種のコンピュータネットワーク
に接続された第2種のコンピュータネットワークへ送出するローカル監視工程と,
前記第2種のコンピュータネットワークを介して前記ステータス情報を取得するグ
ローバル監視工程とを有する機器監視方法であって,前記ローカル監視工程は,前
記機器のステータス情報を取得するローカル情報取得工程と,取得されたステータ
ス情報を保存するローカル情報保存工程と,保存されたステータス情報を前記第2
種のコンピュータネットワークに送出するローカル情報送信工程と,前記機器を前
記グローバル監視工程で登録するための機器情報を,前記第2種のコンピュータネ
ットワークに送出する機器情報送信工程と,を有し,前記グローバル監視工程は,
前記第2種のコンピュータネットワークを介してステータス情報を取得するグロー
バル情報取得工程と,前記監視対象機器に関する情報が蓄積された機器データベー
スを,前記ステータス情報によって更新するデータベース管理工程と,前記第2種
のコンピュータネットワークを介して前記機器情報を受信する機器情報受信工程
と,受信した前記機器情報を前記機器データベースに登録し,登録した前記機器情
報を用いて,前記ローカル監視工程の監視下の前記機器のステータス情報を管理す
るステータス情報管理工程と,前記機器データベース内に蓄積された情報をディス
プレイに表示する表示工程とを有する機器監視方法。
【請求項41】前記第1種のコンピュータネットワークはローカルエリアネットワ
ークであり,前記第2種のコンピュータネットワークはインターネットである請求
項40記載の機器監視方法。
【請求項42】前記ローカル情報送信工程では,前記機器の前記ステータス情報を
電子メールのフォーマットに変換して前記第2のコンピュータネットワークに送出
し,前記グローバル情報取得工程では,前記第2のコンピュータネットワークを介
して受信した電子メールから前記ステータス情報を抽出する請求項41の機器監視
方法。
【請求項43】前記ローカル情報取得工程では,前記ステータス情報を第1の周期
で取得し,前記ローカル情報送信工程では,前記ステータス情報を前記第1の周期
と異なる第2の周期で送出する請求項40記載の機器監視方法。
【請求項44】前記ローカル情報取得工程では,前記ステータス情報が前記機器の
異常状態を示している間のみ,前記第1の周期よりも短い周期で前記ステータス情
報を取得する請求項43記載の機器監視方法。
【請求項45】前記ローカル情報送信工程では,前記ステータス情報が前記機器の
異常状態を示し始めた時に,前記第2の周期如何に拘わらず,前記ステータス情報
を前記統合監視装置に向けて送信する請求項44記載の機器監視方法。
【請求項46】前記表示工程は,前記データベースに登録されている機器が列挙さ
れたメイン画面を前記ディスプレイに表示するメイン画面表示工程と,前記メイン
画面上で指定された個々の前記機器の個別情報を示すサプ画面を前記ディスプレイ
に表示するサプ画面表示工程とを,含んでいる請求項40記載の機器監視方法。
【請求項47】前記表示工程は,前記データベースに登録されている複数の機器か
列挙されたメイン画面を前記ディスプレイに表示するメイン画面表示工程と,前記
メイン画面で指定された機器のステータス情報の履歴が示されるサプ画面を前記デ
ィスプレイに表示するサプ画面表示工程とを,含んでいる請求項40記載の機器監
視方法。
【請求項48】前記メイン画面には前記機器の最新のステータス情報が表示される
請求項47記載の機器監視方法。
【請求項49】前記メイン画面には,前記第1のコンピュータネットワーク毎にグ
ループ化された状態で前記機器のステータス情報が示される請求項47記載の機器
監視方法。
【請求項50】前記ステータス情報には消耗品の残量を示す情報が含まれており,
前記個々の機器のステータス情報の履歴を示すサプ画面には,その機器の消耗品の
履歴が示される請求項47記載の機器監視方法。
【請求項51】監視対象機器の稼働状態を示すステータス情報を取得してコンピュ
ータネットワークへ送出するローカル監視工程と,前記コンピュータネットワーク
を介して前記ステータス情報を取得するグローバル監視工程とを有する機器監視方
法であって,前記ローカル監視工程は,前記機器のステータス情報を取得するロー
カル情報取得工程と,取得されたステータス情報を電子メールのフォーマットに変
換する電子メール生成工程と,生成された電子メールを前記コンピュータネットワ
ークへ送出する電子メール送出工程と,前記機器を前記グローバル監視工程で登録
するための機器情報を,前記コンピュータネットワークに送出する機器情報送信工
程と,を有し,前記グローバル監視工程は,前記コンピュータネットワークを介し
て前記電子メールを受信する電子メール受信工程と,受信された電子メールから前
記ステータス情報を抽出する抽出工程と,前記監視対象機器に関する情報が蓄積さ
れた機器データベースを,前記ステータス情報によって更新するデータベース管理
工程と,前記コンピュータネットワークを介して前記機器情報を受信する機器情報
受信工程と,受信した前記機器情報を前記機器データベースに登録し,登録した前
記機器情報を用いて,前記ローカル監視工程の監視下の前記機器のステータス情報
を管理するステータス情報管理工程と,前記機器データベース内に格納された情報
をディスプレイに表示する表示工程とを有する機器監視方法。
【請求項52】コンピュータネットワークに接続された複数の監視対象機器の稼働
状態を示すステータス情報を前記コンピュータネットワークを介して取得するデー
タ取得工程と,前記機器を登録するための機器情報を,前記コンピュータネットワ
ークを介して受信する機器情報受信工程と,受信された前記機器情報を登録する登
録工程と,登録した前記機器情報を用いて,前記各機器に関するステータス情報
を,前記機器が設置されたエリア単位でディスプレイに表示する表示工程とを有す
る機器監視方法。
【請求項53】前記機器は,第2種のコンピュータネットワークを介して相互に接
続された第1種のコンピュータネットワークに接続されており,前記表示工程で
は,前記機器に関するステータス情報を,前記機器が接続された第2のコンピュー
タネットワーク単位でディスプレイに表示する請求項52記載の機器監視方法。
【請求項54】前記表示工程では,前記各機器に関する最新のステータス情報を表
示する請求項53記載の機器監視方法。
【請求項55】コンピュータネットワークに接続された監視対象機器に関する消耗
品の残量情報を含むステータス情報を,周期的に取得するデータ取得工程と,取得
されたステータス情報を保存するデータ保存工程と,保存された各機器についての
複数のステータス情報に基づき,前記消耗品の残量の推移を予測する統計処理工程
と,予測された前記消耗品の残量の推移を出力する出力工程と,前記機器を登録す
るための機器情報を,前記コンピュータネットワークを介して受信する機器情報受
信工程と,受信された前記機器情報を登録し,登録した前記機器情報を用いて,前
記機器のステータス情報を管理するステータス情報管理工程とを有する機器監視方
法。
【請求項56】前記機器はプリンタであり,前記消耗品はインク,トナー又はイン
クリボンである請求項55記載の機器監視方法。
【請求項57】前記統計処理工程では,月単位,週単位又は日単位で前記消耗品の
残量の今後の推移を予測する請求項55記載の機器監視方法。
【請求項58】前記データべースは,複数の機器の夫々に関し,前記グローバル情
報取得手段によって取得されたステータス情報を格納しており,前記出力工程は,
複数台の機器のステータス情報を示すメイン画面をディスプレイ上に表示するメイ
ン画面表示工程と,このメイン画面上で指定された個々の機器の消耗品の残量の推
移を示すサブ画面をディスプレイ上に表示するサブ画面表示工程とを,含む請求項
55記載の機器監視方法。
【請求項59】前記出力工程では,前記機器の消耗品の残量の推移をグラフ形式で
ディスプレイ上に表示する請求項55記載の機器監視方法。
【請求項60】前記出力工程では,前記機器の消耗品の残量の履歴と前記統計処理
手段によって予測された前記機器の消耗品の残量の推移とを,グラフ形式でディス
プレイ上に表示する請求項55記載の機器監視方法。
【請求項61】第1種のコンピュータネットワークを介して監視対象機器に接続さ
れたコンピュータに対して,前記監視対象機器の稼働状態を示すステータス情報を
取得するローカル情報取得工程と,ステータス情報を保存するローカル情報保存工
程と,前記ステータス情報を第2種のコンピュータネットワークを介して統合監視
装置へ送信するローカル情報送信工程と,前記機器を前記統合監視装置に登録する
ための機器情報を,前記第2種のコンピュータネットワークを介して前記統合監視
装置へ送信する機器情報送信工程と,を有し,それにより,前記統合監視装置をし
て,前記第2種のコンピュータネットワークを介して受信した前記機器情報を用い
て,前記機器のステータス情報を管理することを可能にならしめる機器監視方法を
実行させるプログラムを格納したコンピュータ可読媒体。
【請求項62】前記プログラムは,前記コンピュータに対して,前記ローカル情報
送信工程において,前記ステータス情報を電子メールのフォーマットに変換させ
て,前記第2種のコンピュータネットワークへ送出させる請求項61記載のコンピ
ュータ可読媒体。
【請求項63】前記プログラムは,前記コンピュータに対して,取得したステータ
ス情報に基づいて,前記第1種のコンピュータネットワークを介して接続された全
ての監視対象機器に関する情報を示すメイン画面の画像データと,このメイン画面
上で指定された個々の機器のステータス情報を詳細に示すサブ画面の画像データと
を出力させる請求項61記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項64】監視対象機器に接続されたコンピュータに対して,前記監視対象機
器の稼働状態を示すステータス情報を取得するローカル情報取得工程と,取得され
たステータス情報を,電子メールのフォーマットに変換させる電子メール生成工程
と,生成された電子メールを前記コンピュータネットワークを介して統合監視装置
へ送信するローカル情報送信工程と,前記機器を前記統合監視装置に登録するため
の機器情報を,前記コンピュータネットワークを介して前記統合監視装置へ送信す
る機器情報送信工程と,を有し,それにより,前記統合監視装置をして,前記コン
ピュータネットワークを介して受信した前記機器情報を用いて,前記機器のステー
タス情報を管理することを可能にならしめる機器監視方法を実行させるプログラム
を格納したコンピュータ可読媒体。
【請求項65】コンピュータネットワークを介して監視対象機器に接続されたコン
ピュータに対して,前記監視対象機器の稼働状態を示すステータス情報を,前記コ
ンピュータネットワークを介して取得するグローバル情報取得工程と,前記機器の
監視情報が蓄積された機器データベースを前記ステータス情報によって更新するデ
ータベース管理工程と,前記機器を登録するための機器情報を,前記コンピュータ
ネットワークを介して受信する機器情報受信工程と,受信された前記機器情報を前
記機器ミニタベースに登録し,登録された前記機器情報を用いて,前記機器のステ
ータス情報を管理するステータス情報管理工程と,前記機器データベースの情報を
ディスプレイに表示する表示工程とを実行させるプログラムを格納したコンピュー
タ可読媒体。
【請求項66】前記プログラムは,前記コンピュータに対して,前記グローバル情
報取得工程において,前記コンピュータネットワークを介して受信した電子メール
から前記ステータス情報を抽出させる請求項63記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項67】コンピュータネットワークを介して監視対象機器に接続されたコン
ピュータに対して,前記監視対象機器の稼働状態を示すステータス情報を格納した
電子メールを,前記コンピュータネットワークを介して受信する電子メール受信工
程と,受信された電子メールから前記ステータス情報を抽出する抽出工程と,前記
監視対象機器に関する情報が蓄積された機器データベースを,前記ステータス情報
によって更新するデータベース管理工程と,前記機器を登録するための機器情報
を,前記コンピュータネットワークを介して受信する機器情報受信工程と,受信さ
れた前記機器情報を前記機器データベースに登録し,登録された前記機器情報を用
いて,前記機器のステータス情報を管理するステータス情報管理工程と,前記機器
データベース内に格納された情報をディスプレイに表示する表示工程と実行させる
プログラムを格納したコンピュータ可読媒体。
【請求項68】コンピュータネットワークを介して複数の監視対象機器に接続され
たコンピュータに対して,前記各監視対象機器の稼働状態を示すステータス情報
を,夫々,前記コンピュータネットワークを介して取得するグローバル情報取得工
程と,前記各監視対象機器を登録するための機器情報を,前記コンピュータネット
ワークを介して受信する機器情報受信工程と,受信された前記機器情報を登録する
登録工程と,登録した前記機器情報を用いて,取得された前記ステータス情報を,
各機器が設置されたエリア単位で表示する表示工程とを実行させるプログラムを格
納したコンピュータ可読媒体。
【請求項69】コンピュータネットワークを介して監視対象機器に接続されたコン
ピュータに対して,前記監視対象機器の消耗品の残量情報を含むステータス情報
を,前記コンピュータネットワークを介して周期的に取得するグローバル情報取得
工程と,取得されたステータス情報を保存するデータ保存工程と,保存された各機
器についての複数のステータス情報に基づき,前記消耗品の残量の推移を予測する
統計処理工程と,予測された前記消耗品の残量の推移を出力する出力工程と,前記
機器を登録するための機器情報を,前記コンピュータネットワークを介して受信す
る機器情報受信工程と,受信された前記機器情報を登録し,登録した前記機器情報
を用いて,前記機器のステータス情報を管理するステータス情報管理工程とを実行
させるプログラムを格納したコンピュータ可読媒体。
 3 決定の理由の要点
 (1) 決定は,本件訂正請求を認めた。
 (2) 決定は,特許異議の申立てについての判断として,まず,本件発明を本件訂
正後のものとして認定し,刊行物1~11の記載事項を認定した。これらの刊行物
とは,次のとおりである。
 刊行物1:特開平8-115125号公報(本訴甲3)
 刊行物2:特開平9-134297号公報(本訴甲4)
 刊行物3:特開平4-256971号公報(本訴甲5)
 刊行物4:特開平9-251356号公報(本訴甲6)
 刊行物5:特開平9-152815号公報(本訴甲7)
 刊行物6:特開平3-161765号公報(本訴甲8)
 刊行物7:特開平7-288871号公報(本訴甲9)
 刊行物8:特開平6-348632号公報(本訴甲10)
 刊行物9:特開平5-236555号公報(本訴甲11)
 刊行物10:特開平8-286854号公報(本訴甲12)
 刊行物11:特開平8-241019号公報(本訴甲13)
 (3) 決定は,本件第1発明と刊行物2記載の発明とを対比し,一致点及び相違点
を次のとおり認定した。
 「刊行物2に記載された『管理情報』,『LAN』,『管理情報格納部』及び
『電子メールによりデータの送信が可能に構成されている』点は,それぞれ本件第
1発明における『監視対象機器の稼働状態を示すステータス情報』,『第1種のコ
ンピュータネットワーク』,『ローカル情報保存手段』及び『第2種のコンピュー
タネットワーク』に相当する。
 したがって,両者は,『監視対象機器の稼働状態を示すステータス情報を,コン
ピュータネットワークを介して,統合監視装置に送信するローカル監視装置であっ
て,第1種のコンピュータネットワークを介して,前記ステータス情報を前記機器
から取得するローカル情報取得手段と,前記ローカル情報取得手段によって取得さ
れたステータス情報を保存するローカル情報保存手段と,このローカル情報保存手
段に保存された複数個のステータス情報を,前記第1種のコンピュータネットワー
クを前記統合監視装置に接続する第2種のコンピュータネットワークを介して,前
記統合監視装置に向けて送信するローカル情報送信手段とを備えたローカル監視装
置。』である点で一致し,
 (a)第1発明においては,送信するステータス情報が『少なくとも一部』であるの
に対して,刊行物2には,特段の記載がない点(判決注:以下「相違点(a)」とい
う。)と,
 (b)『ローカル監視装置』が第1発明においては,『機器を統合監視装置に登録す
るための機器情報を,前記第2種のコンピュータネットワークを介して前記統合監
視装置に送信する機器情報送信手段と,を備え,それにより,前記統合監視装置を
して,前記第2種のコンピュータネットワークを介して受信した前記機器情報を用
いて,前記ローカル監視装置の監視下の前記機器のステータス情報を管理すること
を可能ならしめる』ものであるのに対し,刊行物2には,該点について明瞭な記載
がない点(判決注:以下「相違点(b)」という。)で相違する。」
 (4) 決定は,上記相違点(a),相違点(b)について,次のとおり判断した。
 「相違点(a):刊行物1の記載によれば,管理した情報を必要に応じて通知する旨
が記載されており,また,収集した情報の中,必要な情報のみを通知することは,
当業者が適宜に行う事項であることを考慮すれば,刊行物2に記載されたローカル
監視装置において,刊行物1に記載された上記技術を採用することにより,本件第
1発明のように構成することに格別の創意を要するものではない。
 相違点(b):顧客の使用するローカルな機器を中央の統合監視装置で監視する場合
において,監視対象機器を登録するための機器情報を中央の統合監視装置において
管理しなければならないことは,当該技術分野において普通に行われていることで
あり,該情報をステータス情報と同様にLANとインターネットを経由するという
刊行物2に記載された手段を用いて統合監視装置で収集することは,当業者が適宜
に行う設計的事項にすぎない(監視対象機器から,管理機器に機器情報を通知する
ことは,例えば,刊行物7における機器コードの返送,刊行物10に記載された印
刷出力装置の識別子の通知等の事例を参照。)。
 刊行物2に記載されたローカル監視装置において,上記周知技術を採用すること
により,本件第1発明のように構成することに格別の創意を要するものではな
い。」
 (5) 決定は,上記本件第1発明のほか,本件第2発明ないし第69発明につい
て,刊行物1~11に記載された事項から当業者が容易に発明できたものであり,
各特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであると判断した。
第3 原告の主張(決定取消事由)の要点
 1 本件発明の特徴と作用効果
 (1) 本件発明の特徴
本件第1発明の特徴は,「ローカル監視装置が,その監視下にある第1種のコン
ピュータネットワーク上の機器を統合監視装置に登録するための機器情報を,第2
種のコンピュータネットワークを経由して統合監視装置に送信し,それにより,統
合監視装置をして,第2種のコンピュータネットワークを経由して受信した前記機
器情報を用いて,ローカル監視装置の監視下の機器のステータス情報を管理するこ
とを可能ならしめる」点(以下,この動作を機器の「オンライン登録」という。)
にある。
第13発明の特徴は,上記において「第1種の」及び「第2種の」を「ローカル
な」及び「広域の」にそれぞれ読み替えることにより理解される。
第14発明,第25発明,第33発明,第38発明,第40発明,第51発明,
第53発明,第61発明及び第64発明の特徴も,上記と実質的に同様である。
(2) 本件発明の作用効果
本件発明によれば,統合監視装置をしてローカル監視装置の監視下にある監視対
象機器のステータス情報を管理することを可能にならしめるための監視対象機器の
機器情報が,ローカル監視装置から第2種コンピュータネットワークを通じて統合
監視装置にオンライン登録されることにより,統合監視装置は,ローカル監視装置
を介した監視対象機器のステータス情報管理サービスを開始するために,事前に行
わなくてはならない以下の①~③の作業を,オンライン登録という一つのプロセス
で一挙に果たすことができる。
① 監視対象機器を統合監視装置に登録するための監視対象機器の機器情報を取
得する。
② ローカル監視装置と正しく通信できるという事実を確認する。すなわち,オ
ンライン登録が行われれば,統合監視装置は,ローカル監視装置を第2種コンピュ
ータネットワーク上で特定するための情報(例えば,ローカル監視装置の通信アドレ
スなど)を取得し,かつ,その情報を用いてローカル監視装置と実際に通信したこと
になるから,上記事実が自ずと確認できる。
③ その監視対象機器がそのローカル監視装置の監視下に置かれているという事
実を確認する。すなわち,オンライン登録が行われれば,統合監視装置は,ローカ
ル監視装置と実際に通信して,その監視対象機器に関する情報をそのローカル監視
装置から実際に取得したことになるから,この事実が自ずと確認できる。
これに対し,例えば,オペレータが登録用紙に書かれた機器情報を統合監視装置
に入力するというようなオフラインでの機器登録方法を行った場合には,その機器
登録の完了後に,統合監視装置は,ローカル監視装置と実際に通信してみないと,
上記②及び③の確認を行うことができないから,一挙に①~③の作業を果たすこと
はできない。
したがって,本件発明によれば,統合監視装置は,オンライン登録によって一挙
に①~③の作業が果たせるから,より能率的に監視対象機器のステータス情報管理
サービスを開始できるという作用効果を奏することができる。この作用効果による
利点は,監視対象機器の台数が増え,ローカル監視装置の台数が増えるほど,一層
顕著となり,明細書記載の発明の目的の達成に貢献する。
 2 取消事由1(相違点(b)の判断の誤り)
 決定は,本件第1発明と刊行物2記載の発明との相違点(b)について,前記第2,
3(4)に記載のように判断したが,誤りである。
 (1) 決定が引用する各刊行物及び被告が周知事項として引用する各公報の記載に
ついて
 (a) 刊行物2には,ユーザ側のLAN上に存在するユーザ側管理装置2(ローカル
監視装置)が,そのLAN上のネットワークエレメント6~12(監視対象機器)のス
テータス情報を収集して,収集した情報を電子メールで遠隔管理装置1(統合監視
装置)へ報告するように構成された遠隔管理システムが開示されている。このシス
テムでは,ローカル監視装置が,監視対象機器の機器情報をMIBで管理していて,統
合監視装置からターゲットとなる機器を指定した要求が来ると,MIB内のターゲット
機器の機器情報を統合監視装置に通知する。
刊行物2に記載されたローカル監視装置から統合監視装置へのターゲット機器の
機器情報の通知動作は,事前にターゲットとなり得る監視対象機器が統合監視装置
に登録されていて初めて実行可能になるものであるから,監視対象機器のステータ
ス情報管理サービスの一環として行われる機器情報の収集動作にすぎない。よっ
て,この動作は,第2種コンピュータネットワークを経由したローカル監視装置か
ら統合監視装置への監視対象機器の事前のオンライン登録動作を開示するものでは
ない。
(b) 刊行物7には,コインランドリ店内で,ツイストペア線9(第1種コンピュ
ータネットワーク)によって接続されたDTC7(ローカル監視装置)と乾燥機
8,8,…(監視対象機器)間の通信が記載されている。ここでは,第1種コンピ
ュータネットワーク上で,ローカル監視装置からのコマンドに応答して監視対象機
器が自機の機器コードをローカル監視装置に返送する。
しかし,この機器コードの通知動作は,第1種コンピュータネットワーク内での
ローカル監視装置と監視対象機器との間の通信にすぎず,第2種コンピュータネッ
トワーク上のローカル監視装置と統合監視装置との間の通信ではないとともに,ロ
ーカル監視装置に事前に監視対象機器が登録されていて初めて実行可能になるもの
であるから,ローカル監視装置による監視対象機器のステータス情報管理サービス
の一環として行われる機器情報の収集動作にすぎない。よって,この動作は,第2
種コンピュータネットワークを経由したローカル監視装置から統合監視装置への監
視対象機器の事前のオンライン登録動作を開示するものではない。
 (c) 刊行物10には,一つのLAN10(第1種コンピュータネットワーク)上に
おける複数の印刷出力装置12,13,14(監視対象機器)と印刷管理装置20
0(ローカル監視装置)との間の通信について記載されている。ここでは,監視対
象機器が第1種コンピュータネットワークに接続されたときに,自機の識別子をロ
ーカル監視装置に送信する。
しかし,この識別子の送信動作は,第1種コンピュータネットワーク内で監視対
象機器とローカル監視装置との間で行われる,監視対象機器の識別子の通信動作に
すぎず,第2種コンピュータネットワーク上のローカル監視装置と統合監視装置と
の間の通信ではない。よって,この動作は,第2種コンピュータネットワークを経
由したローカル監視装置から統合監視装置への監視対象機器の事前のオンライン登
録動作を開示するものではない。
(d) 特開平7-334445号公報(乙1)には,サブマネージャ10(ローカ
ル監視装置)が,その管理範囲のIPノード(監視対象機器)の管理オブジェクトを
MIBで管理していて,統合マネージャ50(統合監視装置)からIPアドレスを指定し
た要求が来ると,指定されたIPアドレスの管理オブジェクトを統合監視装置に通知
することが記載されている。しかし,このIPアドレスの通知動作は,事前に全ての
監視対象機器のIPアドレスが統合監視装置に登録されて初めて実行可能になるもの
であるから,監視対象機器のステータス情報管理サービスの一環として行われる機
器情報の収集動作にすぎない。よって,この動作は,第2種コンピュータネットワ
ークを経由したローカル監視装置から統合監視装置への監視対象機器の事前のオン
ライン登録動作を開示するものではない。
(e) 特開平9-298543号公報(乙2)及び特開昭57-172497号公
報(乙3)にも,監視対象機器の機器情報を統合監視装置に登録するための方法に
関する記載は全くない。
 (2) 上記判断のうち,「刊行物2に記載されたローカル監視装置において,上記
周知技術を採用することにより,本件第1発明のように構成することに格別の創意
を要するものではない。」との点について
上記のとおり,刊行物2,7,10及び乙1ないし3のいずれにも,本件第1発明
の特徴である第2種コンピュータネットワークを経由したローカル監視装置から統
合監視装置への監視対象機器の事前のオンライン登録動作についての明確な記載は
ない。
 本件第1発明の特徴であるオンライン登録動作によって登録される機器情報は,
「監視対象機器を統合監視装置に登録するための」という限定のついた「機器情
報」であり,これは,「それが統合監視装置に通知されることにより,統合監視装
置をして,ローカル監視装置の監視下の機器のステータス情報を管理することを可
能ならしめる」,換言すれば,「それが統合監視装置に登録されない限り,統合監
視装置において監視対象機器のステータス情報の管理サービスを開始することがで
きない」という,統合監視装置の動作上重要な役割をもつものである。
この点において,上記「監視対象機器を統合監視装置に登録するための機器情
報」は,刊行物2及び乙1などに記載されたステータス情報管理サービスの一環と
してオンラインで収集される機器情報やステータス情報からは,統合監視装置の動
作上の役割において明らかに異なるものであり,ゆえに,コンピュータ処理上も区
別して取り扱われるものである。
したがって,本件第1発明の特徴である監視対象機器を統合監視装置に登録する
ための機器情報をオンラインで登録することが,刊行物2及び乙1などに記載され
たステータス情報管理サービスの一環として機器情報やステータス情報をオンライ
ンで収集することに基づいて,当業者が格別の創意を要せずに導くことができたよ
うな自明な事柄であったと判断することはできない。
また,上記「監視対象機器を統合監視装置に登録するための機器情報」は,統合
監視装置にとって,自機と同じ第2種コンピュータネットワーク上に存在する,直
接的監視の可能な監視対象機器を統合監視装置に登録するための情報ではなく,ロ
ーカル監視装置を介して間接的にしか事情を窺い知ることができない第1種コンピ
ュータネットワーク上に存在する,直接的監視の不可能な監視対象機器を統合監視
装置に登録するための情報である。
この点で,上記「監視対象機器を統合監視装置に登録するための機器情報」は,
刊行物10に記載された第1種コンピュータネットワーク内で監視対象機器からロ
ーカル監視装置へ送信される監視対象機器の識別コードのように,監視装置と同じ
ネットワーク上に存在して直接的監視の可能な監視対象機器を監視装置に登録する
ための情報からは,監視装置の動作上の役割において明確に区別されるものであ
り,ゆえに,コンピュータ処理上も区別して取り扱われるものである。そして,上
述したように,機器登録のための機器情報は,ステータス情報管理サービスで通信
されるステータス情報や機器情報からは,コンピュータ処理上区別して取り扱われ
るものであるから,刊行物2や乙1などに記載されたステータス情報管理サービス
におけるステータス情報や機器情報のローカル監視装置と統合監視装置間の通信方
法を,刊行物10に記載された機器登録のための識別コードにも適用するという考
えが,当業者にとって自明であったとはいえない。
したがって,本件第1発明の特徴である監視対象機器を統合監視装置に登録する
ための機器情報をオンラインで登録することが,刊行物10に記載された第1種コ
ンピュータネットワーク内で監視対象機器からローカル監視装置へ監視対象機器の
識別コードを送信すること,及び刊行物2や乙1などに記載されたステータス情報
管理サービスにおいてステータス情報や機器情報をローカル監視装置から統合監視
装置へ通信することに基づいて,当業者が格別の創意を要せずに導くことができた
ような自明な事柄であったと判断することはできない。
以上の次第であるから,決定の上記判断は,失当である。
 3 取消事由2(本件第1発明以外の発明についての進歩性判断の誤り)
 本件第13発明,第14発明,第25発明,第33発明,第38発明,第40発
明,第51発明,第53発明,第61発明及び第64発明についての決定の進歩性
の判断には,本件第1発明に関する判断について上記2(取消事由1)で主張した
のと同様の誤りがある。
 したがって,上記各発明を引用して従属形式で記載された請求項に係る他の本件
発明について,進歩性を否定した決定の判断には,同様の誤りがある。
 4 取消事由3(作用効果の認定判断の誤り)
 (1) 決定は,すべての本件発明につき,「各発明において当該構成を採用したこ
とによる作用効果も,各刊行物記載の事項を参酌すれば,格別のものではない」と
いう認定判断したが,誤りである。
 (2) 本件発明は,前記1のとおり,監視対象機器の統合監視装置への登録のため
機器情報を,ローカル監視装置から統合監視装置へオンラインで登録することによ
り,統合監視装置は,ステータス情報管理サービスを開始するために事前に行う必
要のある前記①~③の作業を一挙に果たし得るから,統合監視装置をして,より効
率的に監視対象機器のステータス情報管理サービスを開始することを可能にならし
めるという,優れた作用効果を奏することができる。
 上記作用効果が本件発明に基づくことは,次の理由から明らかである。すなわ
ち,甲14及び15に記載されているように,ネットワーク上の全てのノードには
アドレスが割り当てられ,各ノードは通信するときに相手のアドレスと自分のアド
レスを相手ノードに対して明確にすることは,本件特許に係る特許出願の最先の優
先日(平成10年1月6日)において当業者の一般的な技術常識であった。この技
術常識に基づけば,ローカル監視装置から統合監視装置へのオンライン登録の際
に,ローカル監視装置の通信アドレスが統合監視装置に通知されることは明白であ
り,よって,上記作用効果が必然的に導かれる。
これに対し,刊行物2に記載されたローカル監視装置に,刊行物7,10又は乙
1ないし3に記載された機器情報の通信を単に適用しただけでは,ステータス情報
管理サービスの一環として統合監視装置が監視対象機器の機器情報を収集するこ
と,及びローカル監視装置が監視対象機器の機器情報を収集することが導かれるに
すぎず,監視対象機器の機器情報をローカル監視装置から統合監視装置へオンライ
ンで登録することは導かれ得ない。よって,上記の本件発明と同等の作用効果を奏
することは不可能である。
 したがって,決定の上記認定判断は,誤りである。
第4 被告の主張の要点
 1 本件発明の特徴と作用効果の主張に対して
 本件発明の特徴は,原告主張のとおりである。しかし,作用効果については,原
告主張の作用効果が生じる旨の記載は,本件明細書にはなく,明細書に記載されて
いない作用効果の主張である。
 2 取消事由1(相違点(b)の判断の誤り)に対して
 (1) 「事前登録」がされた後に監視動作が行われることは,本件第1発明も刊行
物2記載の発明も何ら差がない。「事前登録」を行う手段において,本件第1発明
と刊行物2記載の発明とは相違している。決定においても,この点を相違点として
抽出した上で,情報として,機器情報もステータス情報と何ら変わりがないこと
と,情報をLANとインターネット(本件第1発明の第1及び第2のコンピュータ
ネットワークに相当する。)を経由して送信することが普通に行われていることを
説明し,これを踏まえて,「ステータス情報」も「機器情報」もコンピュータネッ
トワークを経由して統合監視装置に通知される「情報」という点において差異がな
いのであるから,機器情報をコンピュータネットワークを経由して収集することは
設計的事項であり,周知技術を採用することにより,本件第1発明のように構成す
ることに格別の創意を要するものではないと判断したのである。
 (2) 決定においては,刊行物7と10を,「監視対象機器から管理機器に機器情
報を通知する」ことの事例として挙げたものでしかない。
 なお,「機器情報を第1種及び第2種のネットワークを経由して送信する」こと
に関して,乙1ないし3に記載されており,当該技術は周知技術である。
 乙1ないし3は,「機器情報」がコンピュータネットワークを経由して送信され
る「情報」であり,コンピュータネットワークを経由して収集され,これにより登
録ないしは更新されることが普通に行われている事例として提示したものである。
 「事前登録」において,刊行物2記載の発明も本件第1発明も何ら差異がないの
であるから,その手段としてこれらの周知技術ないしは刊行物7及び10に記載の
技術を採用すればよい。
 刊行物2に記載された発明と本件第1発明とは,「事前登録」を行う点で差異が
なく,「事前登録」を行う手段において相違するものであるが,相違点について刊
行物2に記載された「情報を第1種及び第2種のコンピュータネットワークを経由
して送信する技術」,刊行物7及び10に記載された「機器情報を登録する技術」
及び乙1ないし3に記載された「第1及び第2のコンピュータネットワークを用い
て登録変更を行う技術」を採用して,本件第1発明のように構成することに格別の
創意を要するものではない。
 本件第1発明の構成が容易なものであり,本件第1発明による効果が格別のもの
ではないとした決定の判断に誤りはない。
 原告は,機器登録のための機器情報は,ステータス情報管理サービスで通信され
るステータス情報や機器情報からは,コンピュータ処理上区別して取り扱われるも
のであるから,刊行物2や乙1などに記載されたステータス情報管理サービスにお
けるステータス情報や機器情報のローカル監視装置と統合監視装置間の通信方法
を,(刊行物10に記載された)機器登録のための識別コードにも適用するという
考えが,当業者にとって自明であったとはいえない旨主張しているが,失当であ
る。
 すなわち,機器登録のための機器情報と,ステータス情報管理サービスで通信さ
れるステータス情報や機器情報とが,コンピュータ処理上区別して取り扱われるも
のであるからといって,両者を同一の経路で伝達できない理由はないこと,機器登
録のための機器情報とステータス情報管理サービスで通信されるステータス情報や
機器情報とは,いずれも監視対象機器から統合監視装置に伝達されるべき情報であ
ることなどを勘案すれば,ステータス情報管理サービスにおけるステータス情報や
機器情報のローカル監視装置と統合監視装置間の通信方法を,機器登録のための識
別コードにも適用することは,当業者にとって自明であったというべきである。
 3 取消事由2(本件第1発明以外の発明についての進歩性判断の誤り)に対し

 決定の認定判断に誤りはない。
 4 取消事由3(作用効果の認定判断の誤り)に対して
 (1) 前記のとおり,本件第1発明は,各刊行物に記載された発明を採用して当業
者が容易に構成し得たものであり,また,その奏する効果についても格別のもので
はない。本件第1発明以外の各発明についても同様である。
 (2) 甲14及び15は,いずれも,インターネットプロトコルないしはOSI参
照モデルに関する技術的事項を示すものであるが,本件第1発明には第1種,第2
種のコンピュータネットワークがインターネットやOSI参照モデルに則したもの
であることの限定はなく,本件第1発明は,発明を実施する者が独自に構築するコ
ンピュータネットワークを使用する構成をも含むのであって,そのような場合に
は,ローカル監視装置から統合監視装置へのオンライン登録の際に,必ずしもロー
カル監視装置の通信アドレスが統合監視装置に通知されるとは限らない。
 仮に,ローカル監視装置と統合監視装置とが通信する場合にはローカル監視装置
の通信アドレスが統合監視装置に通知されるのが通常であったとしても,統合監視
装置が通知されるローカル監視装置の通信アドレスを利用するための構成を備えて
いなければ,原告主張のような作用効果は奏し得ないところ,本件各発明は,ロー
カル監視装置の通信アドレスを利用するための構成を備えるものではない。
 以上によれば,本件各発明の発明特定事項から原告主張の作用効果が必然的に導
かれるということはできない。
第5 当裁判所の判断
 1 取消事由1(相違点(b)の判断の誤り)について
 (1) 原告の前掲主張をふまえつつ,決定の相違点(b)についての判断の当否を検
討する。
 まず,刊行物2(甲4)には,次の(ⅰ)ないし(ⅵ)の記載がある(以下,記載番
号に対応して,それぞれの記載を「刊行物2記載(ⅰ)」などという。)。
 (ⅰ)「図1を参照して,遠隔管理システムは,管理会社側に設置される遠隔管理
装置1,ユーザ側の企業(例えば,A社)に設置される,ユーザ側管理装置2,幹
線LAN(LocalAreaNetwork)3,支線LAN4,5,ワークステーション,パ
ソコン,プリンタサーバ等のネットワークに接続された端末6~10,ブリッジ,
ルータ等の中継装置11,12を含む。」(段落【0010】)
 (ⅱ)「ユーザ側管理装置2には,統合ネットワーク管理システム,例えば,住友
電気工業株式会社製の統合ネットワーク管理システムがインストールされ,LAN
3~5及びネットワークエレメント6~12により構成されるネットワークを管理
する。この統合ネットワーク管理システムは,マンマシンインタフェース,管理機
能,管理情報格納部,管理プロトコルといった種々の機能により構成されるソフト
ウェアである。ユーザ側管理装置2は,この統合ネットワーク管理システムによ
り,構成管理,障害管理,性能管理等の種々の機能を実行し,ネットワークの管理
を行う。また,ユーザ側管理装置2には,後述するメールゲートウェイがインスト
ールされ,通常の電子メールのメールフォーマットで送信されたテキストを統合ネ
ットワーク管理システムで処理可能なデータに変換し,変換したデータに基づき,
管理情報の収集等を行う。」(段落【0011】)
 (ⅲ)「管理会社の遠隔管理装置1とA社のユーザ側管理装置2とは電子メールで
接続されており,電子メールによりデータの送信が可能に構成されている。すなわ
ち,遠隔管理装置1及びユーザ側管理装置2には,それぞれ,後述するメールサー
バがインストールされており,両者の間で電子メールの送信及び受信を行うことが
できる。また,遠隔管理装置1に上記した統合ネットワーク管理システムがインス
トールされている場合,ユーザ側管理装置2を介してユーザ側のネットワークを管
理することができる。なお,インストールされていない場合でも,専用のGUIに
より情報を見ることができる。さらに,遠隔管理装置1には,予めユーザが登録さ
れた登録データが記憶されており,本実施の形態の場合,A社に関するデータが登
録されている。なお,本実施の形態では,A社の遠隔管理について説明するが,ユ
ーザ側は1社に限らず,複数の場合であっても,各企業と管理会社とが電子メール
により接続されていれば,本実施の形態と同様にして各ユーザのネットワークを管
理することが可能である。」(段落【0012】)
 (ⅳ)「上記の構成により,ユーザ側の管理装置2により収集された構成,障害,
性能等の情報(ログ)を電子メール(例えば,インターネット)を用いて,遠隔管
理装置1が獲得し,獲得した情報をもとにユーザ側のネットワークの遠隔監視,遠
隔メンテナンス等を行うことが可能となる。一般に,ユーザが企業,官庁等の場
合,セキュリティの制約上,IP等によりリアルタイムでの接続は難しいが,上記
のように電子メールを用いて接続した場合,電子メールは各企業間等で広く使用さ
れており,セキュリティ上の問題が少なく,かつ,アクセスパスの構築が容易であ
る。したがって,セキュリティ上の問題がなく,かつ,経済的で簡便な遠隔管理シ
ステムを提供することが可能となる。次に,上記の構成により,電子メールを用い
て管理会社の遠隔管理装置1が収集できる情報について説明する。ユーザ側管理装
置2が収集できる情報には,大きく2通りの情報がある。1つは,ユーザ側管理装
置2自身が各ネットワークを構成するネットワークエレメント3~12から収集し
た情報をもとに作成した障害,性能といったログ情報である。もう1つは,管理装
置2が持つ機器情報の収集機能を直接用い,その結果得られる情報である。」(段
落【0013】~【0014】)
 (ⅴ)「上記の管理装置2が保有する情報としては,ネットワークエレメントの名
前,アドレス,接続,位置情報等の構成情報,障害ログ,トラベルチケット(障害
報告書),性能ログ,ダウンロードログ(特定機器のダウンロードの記録),シス
テムログ(管理装置自体のログ:メンテナンス用)等がある。上記の各情報は,管
理装置2内部でファイル又はデータベースに格納されている。」(段落【0015】)
 (ⅵ)「まず,図2を参照して,ユーザ側管理装置2が保有する情報に関する電子
メールを送信する場合について説明する。To:Net@xxx.xxx.co.jpは電子メールの
送信先を示し,From:xxxxは発信者を示し,Subject:Dr_Net_Requestはメールの題
名を示している。また,破線以下に示すReq=GetLogは,ログ情報の収集の要求を示
し,Category=FMは,カテゴリとしてフォールトマネージメントすなわち障害管理
を示し,Target=機器Aは,ログ情報を収集するターゲットが機器Aであることを
示し,Info=AlarmLogは,要求する情報がアラームログであることを示し,MaxLogs
=10は収集するログの最大数が10件であることをそれぞれ示している。上記の
電子メールが遠隔管理装置1からユーザ側管理装置2へ送信された場合,ユーザ側
管理装置2は,自身が保有する機器Aに関するアラームログを電子メールにより遠
隔管理装置1へ送信する。」(段落【0018】)
 (2) そこで,刊行物2に記載された発明の構成を検討すると,「遠隔管理装置
1」,「ユーザ側管理装置2」は,それぞれ,本件第1発明の「統合監視装置」,
「ローカル監視装置」に相当すると認められ(原告もこのことを前提に主張す
る。),刊行物2の「ネットワークエレメント」は,ワークステーション,パソコ
ン,プリンタサーバ等のネットワークに接続された端末6~10,ブリッジ,ルー
タ等の「中継装置11,12」を意味し(刊行物2記載(ⅰ),(ⅴ)),「監視対象
機器」であると認められる。
 そして,刊行物2記載(ⅵ)からすると,ログ情報を収集するターゲットが「機器
A」とする電子メールが遠隔管理装置1からユーザ側管理装置2へ送信されるので
あるから,その前提として,「機器A」のデータは,遠隔管理装置1にあらかじめ
登録されていると考えるのが自然かつ合理的である。よって,刊行物2の「機器
A」のデータは,遠隔管理装置1に登録されているものと認められる。
 刊行物2の「A社に関するデータ」,「機器A」のデータは,「統合監視装置」
といえる遠隔管理装置1に登録され,利用されていることから(刊行物2記載
(ⅲ),(ⅵ)),これらの情報は,機器(「機器A」)を「統合監視装置」に登録す
るための機器情報であったものであり,また,「統合監視装置」で必要とされる情
報であるといえる。したがって,本件第1発明と同様,「それが統合監視装置に登
録されない限り,統合監視装置において監視対象機器のステータス情報の管理サー
ビスを開始することができない」という,「統合監視装置」の動作上重要な役割を
もつものであるといえる。この点において,本件第1発明との差異がない。
 「ローカル監視装置」といえる刊行物2のユーザ側管理装置2は,「ネットワー
クエレメントの名前,アドレス,接続,位置情報等の構成情報」を保有し(刊行物
2記載(ⅴ)),この構成情報は,監視対象機器(例えば「機器A」)についての機
器情報であるといえるから,刊行物2記載の発明においても,「ローカル監視装
置」が監視対象機器(例えば「機器A」)についての機器情報を保持しているとい
える。
 そして,刊行物2記載の発明において,「統合監視装置」といえる管理会社の遠
隔管理装置1と「ローカル監視装置」といえるA社のユーザ側管理装置2とは,電
子メールで接続されており,電子メールによりデータの送信が可能に構成され(刊
行物2記載(ⅲ)),ユーザ側の管理装置2により収集された構成,障害,性能等の
情報を電子メール(例えば,インターネット)を用いて遠隔管理装置1が獲得し,
その獲得した情報をもとにユーザ側のネットワークの遠隔監視,遠隔メンテナンス
等を行うことが可能となっている(刊行物2記載(ⅳ))。よって,刊行物2記載の
発明も,電子メール(例えば,インターネット)により,「ローカル監視装置」に
保有されているデータを「統合監視装置」に送信可能に構成しているといえ,「統
合監視装置」をして,電子メール(例えば,インターネット)を介して受信した
「機器情報」を用いて,「ローカル監視装置」の監視下の機器のステータス情報を
管理することを可能にしているといえる。
 また,受信側で必要とする情報が特定されており,その特定された情報が送信側
に保有されている場合,送信側にその特定された情報を送信する手段を備えさせ,
ネットワークを介して受信側にその情報を送信することは,ネットワーク技術及び
その技術を用いた遠隔監視技術分野において普通に行われているといえる。例え
ば,刊行物7(甲9)では,受信側として中央装置,送信側としてDTC(データ
コントローラ),必要とされ特定された情報として,乾燥機のトラブル情報,運転
残時間情報,売上金額情報,機器設定情報,運転情報が記載されている。また,刊
行物10(甲12)では,受信側としてエンドシステムの印刷指示装置,送信側と
してコンピュータ11Aの印刷管理機能部,必要とされ特定された情報として,印
刷出力装置の識別子情報,ジョブ情報,装置情報が記載されている。さらに,乙1
では,受信側として統合マネージャ,送信側としてサブマネージャ,必要とされ特
定された情報として,エージェントの構成情報,状態情報等の管理オブジェクト
が,乙2では,受信側として管理装置,送信側として中間管理装置,必要とされ特
定された情報として,端末装置の管理情報が,乙3では,受信側として親機のCR
MC(集中遠隔監視制御装置),送信側として子機のCRMC,必要とされ特定さ
れた情報として端末機の端末情報が,それぞれ記載されている。
 そして,機器を登録するための機器情報をネットワークを介して送信すること
は,刊行物7(甲9)に開示されている。
 そうすると,刊行物2において,受信側である「統合監視装置」(遠隔管理装置
1)で必要とする「機器を統合監視装置に登録するための機器情報」が特定されて
おり,この機器情報が,送信側である「ローカル監視装置」(ユーザ側管理装置
2)に保有されていたものと認められるから,送信側である「ローカル監視装置」
に,上記のように特定された「機器を統合監視装置に登録するための機器情報」を
送信する手段を備えさせ,ネットワークを介して受信側である「統合監視装置」に
機器情報を送信して,「統合監視装置」により,電子メール(例えば,インターネ
ット)を介して受信した「機器情報」を用いて,「ローカル監視装置」の監視下の
機器のステータス情報を管理することを可能とすることは,当業者が容易に推考す
ることができたものと認められる。
 (3) 以上のとおり,刊行物2には,(ⅰ)ないし(ⅵ)のような記載があり,これら
に加え,刊行物7(甲9),刊行物10(甲12)及び乙1ないし3に記載された
事項に基づけば,本件第1発明の相違点(b)として認定された構成を,当業者が容易
に推考することができたものと認められる。
 決定の相違点(b)についての判断は,上記と同旨をいうものとして,是認すること
ができるのであって,これを誤りであるとする原告の前記主張は,採用することが
できない。
 2 取消事由2(本件第1発明以外の発明についての進歩性判断の誤り)につい

 原告の取消事由2の主張は,前記のとおり,本件第1発明における相違点(b)に
ついての決定の判断に誤りがあることを前提として,その余の本件各発明に関する
進歩性の判断においても同様の誤りがあるというものである。
 しかし,前判示のとおり,本件第1発明における相違点(b)についての決定の判
断に誤りがあるとはいえないのであるから,原告の取消事由2の主張は,採用する
ことができない。
 3 取消事由3(作用効果の認定判断の誤り)について
 既に判示したところに照らせば,作用効果についても次のとおりに判断される。
 まず,刊行物2に記載された発明においては,機器情報を「統合監視装置」(遠
隔管理装置1)にあらかじめ登録してあるのであるから,「統合監視装置」が,監
視対象機器のステータス情報管理サービスを開始するために事前に行う必要のある
作業のうち,原告が主張する①の作業(監視対象機器を統合監視装置に登録するた
めの監視対象機器の機器情報を取得する作業)を果たすことができることは,格別
なものとはいえはない。
 次に,ネットワーク技術分野において,あらかじめ,送信側からネットワークを
介して受信側に情報を送信して,正しく通信ができるという事実を確認すること
は,技術常識であって,刊行物2において,受信側を「統合監視装置」,送信側を
「ローカル監視装置」とし,機器情報を送信するとしても,同様に確認できること
は明らかである。よって,原告が主張する②の作業(ローカル監視装置と正しく通
信できるという事実を確認するという作業)を果たすことができることは,格別な
ものでない。
 さらに,刊行物2において,「ローカル監視装置」(ユーザ側管理装置2)は,
実際に監視下としているネットワークエレメントの名前,アドレス,接続,位置情
報等の構成情報を保有しており,この構成情報を「統合監視装置」(遠隔管理装置
1)に送信すれば,「統合監視装置」が監視下の「監視対象機器」を確認できるこ
とは明らかであるから,原告が主張する③の作業(その監視対象機器がそのローカ
ル監視装置の監視下に置かれているという事実を確認するという作業)を果たすこ
とができることは,格別なものでない。
 そうすると,上記①ないし③の作業を一挙に果たすことも,当業者が予測可能な
ものであり,格別なものであるとはいえない。
 したがって,原告の主張は,採用することはできない。
 4 結論
 以上のとおり,原告主張の決定取消事由は理由がないので,原告の請求は棄却さ
れるべきである。
 
 東京高等裁判所知的財産第4部
        裁判長裁判官   塚  原  朋  一
           裁判官   田  中  昌  利
           裁判官   佐  藤  達  文

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