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平成12年(行ケ)第129号 特許取消決定取消請求事件
     判    決
 原 告 バーグ・テクノロジー・インコーポレーテッド
 訴訟代理人弁理士 鈴江武彦、風間鉄也
 被 告  特許庁長官 及川耕造
 指定代理人 治田義孝、茂木静代、小林信雄、吉村宅衛
     主    文
 原告の請求を棄却する。
 訴訟費用は原告の負担とする。
 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
     事実及び理由
第1 原告の求めた裁判
「特許庁が平成9年異議第75389号事件について平成11年12月9日にした
決定を取り消す。」との判決。
第2 事案の概要
 1 特許庁における手続の経緯
 原告は、名称を「コネクタ装置」とする特許第2659030号の発明(平成3
年9月12日出願、平成9年6月6日設定登録。本件発明)の特許権者であるが、
特許異議の申立てがあり、平成9年異議第75389号事件として審理されたとこ
ろ、平成11年12月9日、「特許第2659030号の請求項1ないし12に係
る特許を取り消す。」との決定があり、その謄本は同月27日原告に送達された。
 2 本件発明の要旨
 (1) 請求項1記載の発明(以下「本件訂正発明」と略称)の要旨(全文訂正(補
正後)明細書の特許請求の範囲)(判決注・「夫々」は「それぞれ」と、「また
は」は「又は」と表記。以下、本件明細書等を引用する際も同様に表記を改め
た。)
 メモリーカードとメモリーカードより厚いハードディスクドライブパッケージの
いずれか一方と選択的に接続するためのコネクタ装置であって:
 コネクタ部材と;
 コネクタ部材から延び、メモリーカードをそれぞれが収納可能であるとともにハ
ードディスクドライブパッケージを相互に協働して収納可能である互いに連続した
上部収納空間と下部収納空間とを定める構造体と;
 を備えており、
 コネクタ部材が、
 上部収納空間と下部収納空間にそれぞれ配置され、上部収納空間と下部収納空間
のそれぞれがメモリーカードを収納した時に対応するメモリーカードと接続し、上
部収納空間と下部収納空間とが相互に協働してハードディスクドライブパッケージ
を収納した時に少なくとも一方がハードディスクドライブパッケージに接続する上
段コンタクト列及び下段コンタクト列を含んでおり、
 前記構造体が、
 コネクタ部材に連結してコネクタ部材から延び、メモリーカードの幅にほぼ等し
い間隔で相互に平行関係にある一対の側壁と、
 上記一対の側壁の少なくとも一方の内表面を長手方向に沿って延び、上部収納空
間と下部収納空間とを定める案内手段と、を含んでおり、
 上記コネクタ装置はさらに、
 上記構造体において上部収納空間と下部収納空間のいずれか一方の近くに配置さ
れてコネクタ部材に対し相対的に前後方向に移動可能であり、上記いずれか一方の
内部に延び上記いずれか一方に設けられた上段コンタクト列又は下段コンタクト列
に接続されたメモリーカード又はハードディスクドライブパッケージの前方端面に
係合する排出フックを備えたスライドプレートと、
 スライドプレートをコネクタ部材から遠ざかる前方向に移動させて、上部収納空
間と下部収納空間の上記いずれか一方から上記メモリーカード又はハードディスク
ドライブパツケージを排出させるスライドプレート移動手段と、
 をさらに備えている、
 ことを特徴とするコネクタ装置。
 (2) 訂正後の請求項2~8記載の発明は、直接又は間接に本件訂正発明の構成を
引用し、これに異なる限定を付与したものであるから、その進歩性は本件訂正発明
の進歩性の有無に依拠する。
 3 決定の理由の要点
 (1) 異議手続における経緯
 本件異議手続において平成10年6月18日に取消理由通知があり、平成11年
1月7日に訂正請求がなされ、平成11年4月2日に訂正拒絶理由通知があり、平
成11年10月18日に訂正請求書の補正がされた。
 (2) 訂正の適否(独立特許要件の存否)
 (2)-1 訂正(補正)後の発明
 訂正後の明細書及び図面の記載からみて、本件訂正発明の目的、効果は「メモリ
ーカードとハードディスクドライブパッケージとに対して兼用可能」にすることで
あり、
 その発明の構成は、
「メモリーカードとメモリーカードより厚いハードディスクドライブパッケージの
いずれか一方と選択的に接続するためのコネクタ装置であって、
 コネクタ部材と、
 コネクタ部材から延び、メモリーカードをそれぞれが収納可能であるとともにハ
ードディスクドライブパッケージを相互に協働して収納可能である互いに連続した
上部収納空間と下部収納空間とを定める構造体と、
 を備えており、
 コネクタ部材が、
 上部収納空間と下部収納空間にそれぞれ配置され、上部収納空間と下部収納空間
のそれぞれがメモリーカードを収納した時に対応するメモリーカードと接続し、上
部収納空間と下部収納空間とが相互に協働してハードディスクドライブパッケージ
を収納した時に少なくとも一方がハードディスクドライブパッケージに接続する上
段コンタクト列及び下段コンタクト列を含んでおり、
 前記構造体が、
 コネクタ部材に連結してコネクタ部材から延び、メモリーカードの幅にほぼ等し
い間隔で相互に平行関係にある一対の側壁と、
 上記一対の側壁の少なくとも一方の内表面を長手方向に沿って延び、上部収納空
間と下部収納空間とを定める案内手段と、を含んでおり、
 上記コネクタ装置はさらに、
 上記構造体において上部収納空間と下部収納空間のいずれか一方の近くに配置さ
れてコネクタ部材に対し相対的に前後方向に移動可能であり、上記いずれか一方の
内部に延び上記いずれか一方に設けられた上段コンタクト列又は下段コンタクト列
に接続されたメモリーカード又はハードディスクドライブパッケージの前方端面に
係合する排出フックを備えたスライドプレートと、
 スライドプレートをコネクタ部材から遠ざかる前方向に移動させて、上部収納空
間と下部収納空間の上記いずれか一方から上記メモリーカード又はハードディスク
ドライブパツケージを排出させるスライドプレート移動手段と、
 をさらに備えている、
 ことを特徴とするコネクタ装置」
である。(特許請求の範囲の欄の請求項1あるいは【課題を解決するための手段】
の欄の記載参照)
 なお、明細書の記載から見て、メモリーカードとハードディスクドライブパッケ
ージの幅はほぼ等しい(明細書第6頁第22行~第24行参照)ので、前記「一対
の側壁」の間隔はハードディスクドライブパッケージの幅とほぼ等しい。
 (2)-2 刊行物記載発明
 以下述べる刊行物1、2、6は((4)-2に説示の刊行物7、8も)、いずれも
「コンピュータ」等の外部電子機器に対して外部記憶装置(メモリカード、ハード
ディスクドライブ、フレキシブル(フロッピー)ディスクドライブが含まれる。)
を接続するためのコネクタ装置の分野のものである。
 a 刊行物1(特開平3-30007号公報(平成3年2月8日特許庁発行))
には、
 「メモリカード」(「半導体カード5」の例)と「メモリカード」より厚い「ハ
ードディスクドライブ」等の「ディスクパックユニット3」のいずれか一方と選択
的に接続するための(「パーソナルコンピュータ」の)コネクタ装置であって、
 「コネクタ1c」と、
 「コネクタ1c」から延び、「メモリカード」を(「カードパックユニット4」
を介して)それぞれが収納可能であるとともに「ディスクパックユニット3」を相
互に協働して収納可能である互いに連続した複数(3個)の収納空間を定める「パ
ックユニット収納スロット1a」と、
 を備えており、
 「コネクタ1c」が、
 「メモリカード」を収納した時に(「カードパックユニット4」を介して)「メ
モリカード」と接続し、複数の収納空間が相互に協働して(「パックユニット収納
スロット1a」に)「ディスクパックユニット3」を収納した時に「ディスクパッ
クユニット3」に接続するコンタクト列を含んでおり、
 前記「パックユニット収納スロット1a」が、
 「コネクタ1c」に連結して「コネクタ1c」から延び、「ディスクパックユニ
ット3」の幅にほぼ等しい間隔で相互に平行関係にある一対の側壁を含んでいる、
 コネクタ装置、
であって、
 「メモリカード」と「ディスクパックユニット3」とに対して兼用可能にするこ
とができる、
という発明が記載されている。
 ここで、上記発明を本件訂正発明の用語で表現する。
 上記発明の「メモリカード」は本件訂正発明の「メモリカード」と同義であり、
 上記発明の「ディスクパックユニット3」、「コネクタ1c」、「パックユニッ
ト収納スロット1a」は、それぞれ本件訂正発明の「ハードディスクドライブパッ
ケージ」、「コネクタ部材」、「構造体」と等価であり、
 上記発明の「複数(3個)の収納空間」は本件訂正発明の「上部収納空間と下部
収納空間」を包摂することを考慮すると、
 刊行物1には、
 メモリーカードとメモリーカードより厚いハードディスクドライブパッケージの
いずれか一方と選択的に接続するためのコネクタ装置であって、
 コネクタ部材と、
 コネクタ部材から延び、メモリーカードをそれぞれが収納可能であるとともにハ
ードディスクドライブパッケージを相互に協働して収納可能である互いに連続した
複数の収納空間を定める構造体と、
 を備えており、
 コネクタ部材が、
 メモリーカードを収納した時にメモリーカードと接続し、複数の収納空間が相互
に協働してハードディスクドライブパッケージを収納した時にハードディスクドラ
イブパッケージに接続するコンタクト列を含んでおり、
 前記構造体が、
 コネクタ部材に連結してコネクタ部材から延び、被収納部品の幅にほぼ等しい間
隔で相互に平行関係にある一対の側壁を含んでいる、
 コネクタ装置、
であって、
 メモリーカードとハードディスクドライブパッケージとに対して兼用可能にする
ことができる、
という発明(以下「第1の発明」という。)が記載されている。
 b 刊行物2(特開平3-150617号公報(平成3年6月27日発行)、特
に第7図~第9図参照)には、
 「半高ディスク駆動機構195」と「半高ディスク駆動機構195」より厚い
「全高ディスク駆動機構185」のいずれか一方と選択的に接続するための(「パ
ーソナル・コンピュータ組立体10」の)「格納装置」であって、
 コネクタ部材と、
 コネクタ部材から延び、「半高ディスク駆動機構195」をそれぞれが収納可能
であるとともに「全高ディスク駆動機構185」を相互に協働して収納可能である
互いに連続した「ベイC2」と「ベイC1」とを定める「ディスク駆動機構支持構
造20」と、
 を備えており、
 コネクタ部材が、
 「ベイC2」と「ベイC1」にそれぞれ配置され、「ベイC2」と「ベイC1」
のそれぞれが「半高ディスク駆動機構195」を収納した時に対応する「半高ディ
スク駆動機構195」と接続する上段コンタクト列及び下段コンタクト列と、及び
「ベイC2」と「ベイC1」とが相互に協働して「全高ディスク駆動機構185」
を収納した時に「全高ディスク駆動機構185」に接続するコンタクト列を含んで
おり、
 前記「ディスク駆動機構支持構造20」が、
 コネクタ部材に連結してコネクタ部材から延び、「半高ディスク駆動機構19
5」の幅にほぼ等しい間隔で相互に平行関係にある一対の「側壁30、35」と、
 上記一対の「側壁30、35」の内表面を長手方向に沿って延び、「ベイC2」
と「ベイC1」とを定める「支持ガイド受け溝95A、95B及びレール受けガイ
ド100A、100B」と、を含んでいる、
 「格納装置」、
の発明(以下「第2の発明」という。)が記載されている。
 なお、刊行物2には、上段コンタクト列、下段コンタクト列、及びコンタクト列
を含むコネクタ部材は明記されていないが、「半高ディスク駆動機構195」及び
「全高ディスク駆動機構185」が「格納装置」に収納されて機能するのであるか
ら、複数のコンタクト列を含むコネクタ部材が設けられていることは当業者に自明
事項である(必要なら、刊行物5の特開平2-213916号公報参照)。ただ
し、前記コンタクト列が上段コンタクト列あるいは下段コンタクト列を兼ねている
か否かは不明である。
 c 刊行物6(実願平1-64532号(実開平3-6756号公報)のマイク
ロフィルム(平成3年1月23日発行、補正後の従来技術参照))には、
 「ICカード」と接続するための「カードコネクタ34」であって、
 「コネクタ本体31」と、
 「コネクタ本体31」から延び、「ICカード」を収納可能である収納空間を定
める構造体と、を備えており、
 前記構造体において前記収納空間の近くに配置されて「コネクタ本体31」に対
し相対的に前後方向に移動可能であり、内部に延びコンタクト列に接続された「I
Cカード」の前方端面に係合する(一対の)「脚部37a」を備えた「イジェクト
レバー37」と、
 「イジェクトレバー37」を「コネクタ本体31」から遠ざかる前方向に移動さ
せて、前記収納空間から上記「ICカード」を排出させる(「プッシュロッド3
6」と「リンクレバー38」から成る。)「イジェクトレバー37」移動手段とを
備えた、
「カードコネクタ34」
の発明(以下「第3の発明」という。)が記載されている。
 (2)-3 本件訂正発明の創作可能性
 本件訂正発明と刊行物1に記載された第1の発明とを比較すると、
 両者が、
 メモリーカードとハードディスクドライブパッケージとに対して兼用可能にする
こと、を目的、効果とし、
 メモリーカードとメモリーカードより厚いハードディスクドライブパッケージの
いずれか一方と選択的に接続するためのコネクタ装置であって、
 コネクタ部材と、
 コネクタ部材から延び、メモリーカードをそれぞれが収納可能であるとともにハ
ードディスクドライブパッケージを相互に協働して収納可能である互いに連続した
複数の収納空間を定める構造体と、
 を備えており、
 コネクタ部材が、
 メモリーカードを収納した時にメモリーカードと接続し、複数の収納空間が相互
に協働してハードディスクドライブパッケージを収納した時にハードディスクドラ
イブパッケージに接続するコンタクト列を含んでおり、
 前記構造体が、
 コネクタ部材に連結してコネクタ部材から延び、ハードディスクドライブパッケ
ージの幅にほぼ等しい間隔で相互に平行関係にある一対の側壁を含んでいる、
 コネクタ装置、
を構成要件としている点で一致しており、
 ① 前記収納空間の個数を、本件訂正発明が、2個設け上部収納空間及び下部収
納空間としているのに対して、第1の発明が3個例示している点、
 ② 前記コンタクト列として、本件訂正発明が、上段コンタクト列及び下段コン
タクト列の2列を上部収納空間及び下部収納空間にそれぞれ配置されるように設け
ているのに対して、第1の発明が1列しか設けていない点、
 ③ 本件訂正発明が、上部収納空間及び下部収納空間のそれぞれにメモリーカー
ドを収納した時にこの収納空間に配置されたコンタクト列に接続され、両収納空間
にハードディスクドライブパッケージを収納した時に上段コンタクト列及び下段コ
ンタクト列の少なくとも一方に接続されるようにしているのに対して、第1の発明
がコンタクト列を1列しか設けていない点、
 ④ 前記構造体に、本件訂正発明が、上記一対の側壁の少なくとも一方の内表面
を長手方向に沿って延び、上部収納空間と下部収納空間とを定める案内手段を設け
ているのに対して、第1の発明がそのような案内手段を設けていない点、
 ⑤ 前記構造体に、本件訂正発明が、上部収納空間と下部収納空間のいずれか一
方の近くに配置されてコネクタ部材に対し相対的に前後方向に移動可能であり、上
記いずれか一方の内部に延び上記いずれか一方に設けられた上段コンタクト列又は
下段コンタクト列に接続されたメモリーカード又はハードディスクドライブパッケ
ージの前方端面に係合する排出フックを備えたスライドプレートと、スライドプレ
ートをコネクタ部材から遠ざかる前方向に移動させて、上部収納空間と下部収納空
間の上記いずれか一方から上記メモリーカード又はハードディスクドライブパッケ
ージを排出させるスライドプレート移動手段を設けているのに対して、第1の発明
がそのようなスライドプレートもスライドプレート移動手段も設けていない点、
で相違している。
 したがって、本件訂正発明は、刊行物1に記載された第1の発明において、①′
前記収納空間の個数を2個設け上部収納空間及び下部収納空間とし、②′前記コン
タクト列として上段コンタクト列及び下段コンタクト列の2列を上部収納空間及び
下部収納空間にそれぞれ配置されるように設け、③′上部収納空間及び下部収納空
間のそれぞれにメモリーカードを収納した時にこの収納空間に配置されたコンタク
ト列に接続され、両収納空間にハードディスクドライブパッケージを収納した時に
上段コンタクト列及び下段コンタクト列の少なくとも一方に接続されるようにし、
④′前記構造体に、上記一対の側壁の少なくとも一方の内表面を長手方向に沿って
延び、上部収納空間と下部収納空間とを定める案内手段を設け、さらに⑤′前記構
造体に、上部収納空間と下部収納空間のいずれか一方の近くに配置されてコネクタ
部材に対し相対的に前後方向に移動可能であり、上記いずれか一方の内部に延び上
記いずれか一方に設けられた上段コンタクト列又は下段コンタクト列に接続された
メモリーカード又はハードディスクドライブパッケージの前方端面に係合する排出
フックを備えたスライドプレートと、スライドプレートをコネクタ部材から遠ざか
る前方向に移動させて、上部収納空間と下部収納空間の上記いずれか一方から上記
メモリーカード又はハードディスクドライブパッケージを排出させるスライドプレ
ート移動手段を設けることにより、発明をすることができたものである。
 (2)-4 本件訂正発明の創作容易性
 上記①′~⑤′について検討する。
 ①′~④′について、
 「半高ディスク駆動機構195」(外部記憶装置として本件訂正発明の「メモリ
ーカード」と等価である。)と「半高ディスク駆動機構195」より厚い「全高デ
ィスク駆動機構185」(本件訂正発明の「ハードディスクドライブパッケージ」
と等価である。)のいずれか一方と選択的に接続するための(「パーソナル・コン
ピュータ組立体10」の)「格納装置」(本件訂正発明の「コネクタ装置」と等価
である。)であって、
 コネクタ部材と、
 コネクタ部材から延び、「半高ディスク駆動機構195」をそれぞれが収納可能
であるとともに「全高ディスク駆動機構185」を相互に協働して収納可能である
互いに連続した「ベイC2」(本件訂正発明の「上部収納空間」と等価である。)
と「ベイC1」(本件訂正発明の「下部収納空間」と等価である。)とを定める
「ディスク駆動機構支持構造20」(本件訂正発明の「構造体」と等価である。)
と、
 を備えており、
 コネクタ部材が、
 「ベイC2」と「ベイC1」にそれぞれ配置され、「ベイC2」と「ベイC1」
のそれぞれが「半高ディスク駆動機構195」を収納した時に対応する「半高ディ
スク駆動機構195」と接続する上段コンタクト列及び下段コンタクト列と、及び
「ベイC2」と「ベイC1」とが相互に協働して「全高ディスク駆動機構185」
を収納した時に「全高ディスク駆動機構185」に接続するコンタクト列を含んで
おり、
 前記「ディスク駆動機構支持構造20」が、
 コネクタ部材に連結してコネクタ部材から延び、「半高ディスク駆動機構19
5」の幅にほぼ等しい間隔で相互に平行関係にある一対の「側壁30、35」と、
 上記一対の「側壁30、35」の内表面を長手方向に沿って延び、「ベイC2」
と「ベイC1」とを定める「支持ガイド受け溝95A、95B及びレール受けガイ
ド100A、100B」(本件訂正発明の「案内手段」と等価である。)と、を含
んでいる「格納装置」は、刊行物2に第2の発明として記載されており、
 兼用可能な部品を兼用して構成部品を減少することが電子機器の分野においては
周知であるので、この第2の発明において、「半高ディスク駆動機構195」と接
続する上段コンタクト列あるいは下段コンタクト列と「全高ディスク駆動機構18
5」に接続するコンタクト列を兼用するようにすることは、当業者に容易に相当し
得ることを考慮すると、
 刊行物1に記載された第1の発明において、
 前記収納空間の個数を2個設け上部収納空間及び下部収納空間とし、前記コンタ
クト列として上段コンタクト列及び下段コンタクト列の2列を上部収納空間及び下
部収納空間にそれぞれ配置されるように設け、上部収納空間及び下部収納空間のそ
れぞれにメモリーカードを収納した時にこの収納空間に配置されたコンタクト列に
接続され、両収納空間にハードディスクドライブパッケージを収納した時に上段コ
ンタクト列及び下段コンタクト列の少なくとも一方に接続されるようにし、上記一
対の側壁の少なくとも一方の内表面を長手方向に沿って延び、上部収納空間と下部
収納空間とを定める案内手段を設けて本件訂正発明のようにすることは、当業者が
容易になし得たことである。
 ⑤′について、
 「ICカード」(本件訂正発明の「メモリーカード」と等価である。)と接続す
るための「カードコネクタ34」(本件訂正発明の「コネクタ装置」と等価であ
る。)であって、「コネクタ本体31」(本件訂正発明の「コネクタ部材」と等価
である。)と、「コネクタ本体31」から延び、「ICカード」を収納可能である
収納空間とを定める構造体と、を備え、前記構造体に、前記収納空間の近くに配置
されて「コネクタ本体31」に対し相対的に前後方向に移動可能であり、内部に延
びコンタクト列に接続された「ICカード」の前方端面に係合する一対の「脚部3
7a」(本件訂正発明の「排出フック」と等価である。)を備えた「イジェクトレ
バー37」(本件訂正発明の「スライドプレート」と等価である。)と、「イジェ
クトレバー37」を「コネクタ本体31」から遠ざかる前方向に移動させて、前記
収納空間から上記「ICカード」を排出させる「イジェクトレバー37」移動手段
(本件訂正発明の「スライドプレート移動手段」と等価である。)とを備えた、
「カードコネクタ34」は、刊行物6に第3の発明として記載されているので、
 刊行物1に記載された第1の発明において、
 前記構造体に、上部収納空間と下部収納空間のいずれか一方の近くに配置されて
コネクタ部材に対し相対的に前後方向に移動可能であり、上記いずれか一方の内部
に延び上記いずれか一方に設けられた上段コンタクト列又は下段コンタクト列に接
続されたメモリーカード又はハードディスクドライブパッケージの前方端面に係合
する排出フックを備えたスライドプレートと、スライドプレートをコネクタ部材か
ら遠ざかる前方向に移動させて、上部収納空間と下部収納空間の上記いずれか一方
から上記メモリーカード又はハードディスクドライブパッケージを排出させるスラ
イドプレート移動手段を設けて本件訂正発明のようにすることは、当業者が容易に
なし得たことである。
 (2)-5 訂正の適否に関する結び
 以上(2)-1~4を総合して判断すると、本件訂正発明は、刊行物1に記載された
第1の発明に基づき刊行物2、6に記載された第2、第3の発明を用いて当業者が
容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特
許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
 したがって、訂正後の特許請求の範囲の欄の請求項2~請求項8記載に係る発明
の進歩性を審理するまでもなく、本件訂正は、特許法第120条の4第3項で準用
する特許法第126条第4項の規定に違反するので、当該訂正は認められない。
(訂正後の特許請求の範囲の欄の請求項2~請求項8記載に係る発明もまた進歩性
がないことは後記(4)参照)
 (3) 特許異議申立ての理由の要旨
 特許異議申立人ヒロセ電機株式会社は、訂正前の特許請求の範囲の欄の請求項1
~請求項11(請求項12を除く。)の本件発明(以下請求項nの特許発明を「本
件第nの発明」という。)に対して異議甲第1号証~甲第8号証刊行物を用いて、
特許異議申立人吉岡英樹は、全請求項(12個)の本件発明に対して甲第1号証~
甲第4号証刊行物を用いて、特許異議申立人宮本龍雄は、全請求項の本件発明に対
して甲第1号証~甲第9号証刊行物を用いて、特許異議申立人横地朗は、全請求項
の本件発明に対して甲第1号証~甲第3号証刊行物を用いて、それぞれ当業者が容
易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により
特許を受けることができないものである旨主張している。
 (4) 特許異議申立ての理由の適否
 (4)-1 本件第1~第12の発明
 特許明細書及び図面の記載からみて、本件第1~第12の発明は、特許請求の範
囲の欄の請求項1~請求項12に記載された事項を発明の構成とするものであり、
 本件第1~第4の発明は、(2)に記載の本件訂正発明から請求項2~4、6に記載
された構成事項の1~4個を除いたものを最大構成事項とするものであり、
 本件第6、第5の発明は、本件訂正発明に請求項5に記載された構成事項を加え
たものか、その加えたものから請求項6に記載された構成事項を除いたものを最大
構成事項とするものであり、
 本件第7~第12の発明は、本件訂正発明に請求項5に記載された構成事項を加
え、更に請求項7~12に記載された構成事項を加えたものを最大構成事項とする
ものである。(特許請求の範囲の欄あるいは【課題を解決するための手段】の欄の
記載参照)
 (4)-2 刊行物記載発明
 a 刊行物1(特開平3-30007号公報(平成3年2月8日特許庁発行))
には、
 メモリーカードとメモリーカードより厚いハードディスクドライブパッケージの
いずれか一方と選択的に接続するためのコネクタ装置であって、
 コネクタ部材と、
 コネクタ部材から延び、メモリーカードをそれぞれが収納可能であるとともにハ
ードディスクドライブパッケージを相互に協働して収納可能である互いに連続した
複数の収納空間を定める構造体と、
 を備えており、
 コネクタ部材が、
 メモリーカードを収納した時にメモリーカードと接続し、複数の収納空間が相互
に協働してハードディスクドライブパッケージを収納した時にハードディスクドラ
イブパッケージに接続するコンタクト列を含んでおり、
 前記構造体が、
 コネクタ部材に連結してコネクタ部材から延び、被収納部品の幅にほぼ等しい間
隔で相互に平行関係にある一対の側壁を含んでいる、
 コネクタ装置、
であって、
 メモリーカードとハードディスクドライブパッケージとに対して兼用可能にする
ことができる、
という発明(第1の発明)が記載されている。((2)-2のa参照)
 b 刊行物2(特開平3-150617号公報(平成3年6月27日発行)、特
に第7図~第9図参照)には、
 「半高ディスク駆動機構195」と「半高ディスク駆動機構195」より厚い
「全高ディスク駆動機構185」のいずれか一方と選択的に接続するための(「パ
ーソナル・コンピュータ組立体10」の)「格納装置」であって、
 コネクタ部材と、
 コネクタ部材から延び、「半高ディスク駆動機構195」をそれぞれが収納可能
であるとともに「全高ディスク駆動機構185」を相互に協働して収納可能である
互いに連続した「ベイC2」と「ベイC1」とを定める「ディスク駆動機構支持構
造20」と、
 を備えており、
 コネクタ部材が、
 「ベイC2」と「ベイC1」にそれぞれ配置され、「ベイC2」と「ベイC1」
のそれぞれが「半高ディスク駆動機構195」を収納した時に対応する「半高ディ
スク駆動機構195」と接続する上段コンタクト列及び下段コンタクト列と、及び
「ベイC2」と「ベイC1」とが相互に協働して「全高ディスク駆動機構185」
を収納した時に「全高ディスク駆動機構185」に接続するコンタクト列を含んで
おり、
 前記「ディスク駆動機構支持構造20」が、
 コネクタ部材に連結してコネクタ部材から延び、「半高ディスク駆動機構19
5」の幅にほぼ等しい間隔で相互に平行関係にある一対の「側壁30、35」と、
 上記一対の「側壁30、35」の内表面を長手方向に沿って延び、「ベイC2」
と「ベイC1」とを定める「支持ガイド受け溝95A、95B及びレール受けガイ
ド100A、100B」と、を備えており、
 「ベイC2」と「ベイC1」のそれぞれの高さは「半高ディスク駆動機構19
5」(本件第1の発明の「第一入出力パッケージ」と等価である。)の高さにほぼ
等しく、「ベイC2」と「ベイC1」の合計の高さは「全高ディスク駆動機構18
5」(本件第1の発明の「第二入出力パッケージ」と等価である。)の高さ以上で
ある、
 「格納装置」、
の発明(以下「第4の発明」という。)が記載されている。((2)-2のb参照)
 c 刊行物6(実願平1-64532号(実開平3-6756号公報)のマイク
ロフィルム(平成3年1月23日発行、補正後の従来技術参照))には、
 「ICカード」と接続するための「カードコネクタ34」であって、
 「コネクタ本体31」と、
 「コネクタ本体31」から延び、「ICカード」を収納可能である収納空間を定
める構造体と、を備えており、
 前記構造体において前記収納空間の近くに配置されて「コネクタ本体31」に対
し相対的に前後方向に移動可能であり、内部に延びコンタクト列に接続された「I
Cカード」の前方端面に係合する(一対の)「脚部37a」を備えた「イジェクト
レバー37」と、
 「イジェクトレバー37」を「コネクタ本体31」から遠ざかる前方向に移動さ
せて、前記収納空間から上記「ICカード」を排出させる「イジェクトレバー3
7」移動手段とを備え、
 「イジェクトレバー37」移動手段が、
 構造体に設けられ構造体に沿って「コネクタ本体31」に対し相対的に前後方向
にスライドする「プッシュロッド36」(本件訂正発明の「排出スライド部材」と
等価である。)と、
 「イジェクトレバー37」の面に平行な面内で揺動するよう構造体に設けられ、
「イジェクトレバー37」に連結した一端と、「プッシュロッド36」に連結した
他端と、を有している「リンクレバー38」(本件訂正発明の「揺動レバー」と等
価である。)とを含んでいる、
 「カードコネクタ34」
の発明(以下「第5の発明」という。)が記載されている。((2)-2のc参照)
 d 刊行物7(米国特許第4,952,161号明細書(1990年8月28日
特許))には、
 複数の「メモリーカードC」と接続するための「カードコネクタ」装置であっ
て、
 「導電ピンユニット5」(本件訂正発明の「コネクタ部材」と等価である。)
と、
 「導電ピンユニット5」から延び、「メモリーカードC」をそれぞれが収納可能
である互いに連続した上部収納空間と下部収納空間とを定める構造体と、
 を備えており、
 「導電ピンユニット5」が、
 上部収納空間と下部収納空間にそれぞれ配置され、上部収納空間と下部収納空間
のそれぞれが「メモリーカードC」を収納した時に対応する「メモリーカードC」
と接続する上段「導電ピン52」及び下段「導電ピン52」(本件訂正発明の「上
段コンタクト列」及び「下段コンタクト列」と等価である。)を含んでおり、
 上記「カードコネクタ」装置はさらに、
 上記構造体において上部収納空間と下部収納空間のそれぞれの近くに配置されて
「導電ピンユニット5」に対し相対的に前後方向に移動可能であり、上記それぞれ
の内部に延び上記それぞれに設けられた上段「導電ピン52」又は下段「導電ピン
52」に接続された「メモリーカードC」の前方端面に係合する「係合爪26」
(本件訂正発明の「排出フック」と等価である。)を備えた第1、第2の「スライ
ダ2」(本件訂正発明の「スライドプレート」と等価である。)と、
 「スライダ2」を「導電ピンユニット5」から遠ざかる前方向に移動させて、上
部収納空間と下部収納空間のそれぞれから上記「メモリーカードC」を排出させる
第1、第2の「スライダ2」移動手段と、
 第1、第2の「スライダ2」移動手段が、
 構造体に設けられ構造体に沿って「導電ピンユニット5」に対し相対的に前後方
向にスライドする第1、第2の「アクチュエータ8」(本件訂正発明の「排出スラ
イド部材」と等価である。)と、
 「スライダ2」の面に平行な面内で揺動するよう構造体に設けられ、「スライダ
2」に連結した一端と、「アクチュエータ8」に連結した他端と、を有している第
1、第2の「シャフト6」(本件訂正発明の「揺動レバー」と等価である。)と、
を含んでおり、
 上段「導電ピン52」及び下段「導電ピン52」それぞれが、
 対応する上部収納空間又は下部収納空間内に延びて上記対応する上部収納空間又
は下部収納空間内に収納された「メモリーカードC」に接続する第一接続部と、
 「導電ピンユニット5」から外部に延びて、外部電子機器に接続する第二接続部
と、
を備えている、
「カードコネクタ」装置
という発明(以下「第6の発明」という。)が記載されている。
 e 刊行物8(米国特許第5,033,972号明細書(1991年7月23日
特許))には、
 「メモリーカードC」と接続するための「電気コネクタ」装置であって、
 「接触子群5」(本件訂正発明の「コネクタ部材」と等価である。)と、
 「接触子群5」から延び、「メモリーカードC」を収納可能である収納空間を定
める構造体と、
 を備えており、
 前記構造体において前記収納空間に対する「メモリーカードC」(外部記憶装置
として本件訂正発明の「第一入出力パッケージ」あるいは「第二入出力パッケー
ジ」と等価である。)の挿入口の近傍に設けられて上記挿入口の少なくとも一部を
遮る遮断位置(第5図)と上記挿入口から引っ込んだ引っ込み位置(第4図)との
間で揺動自在な「保持部83」(本件訂正発明の「係止部材」と等価である。)を
さらに備えており、
 上記「保持部83」は、「メモリーカードC」が前記収納空間に収納されて「コ
ンタクト群52」(本件訂正発明の「コンタクト列」と等価である。)に接続され
た時に上記遮断位置に配置され、上記遮断位置において上記挿入口の少なくとも一
部を遮り、前記収納空間からの「メモリーカードC」の離脱を阻止して「コンタク
ト群52」に対する「メモリーカードC」の接続を保証し、
 上記引っ込み位置において上記挿入口から引っ込み前記収納空間に対する「メモ
リーカードC」の離脱及び挿入を許容して「コンタクト群52」に対する「メモリ
ーカードC」の接続解除及び接続を許容する、
「電気コネクタ」装置、
の発明(以下「第7の発明」という。)が記載されている。
 (4)-3 本件第1~第12の発明の創作容易性
 a 本件訂正発明は、(2)で詳細に述べたとおり、刊行物1に記載された第1の発
明に基づき刊行物2、6に記載された第2、第3の発明を用いて当業者が容易に発
明をすることができたものである。
 b 本件第1~第4の発明の創作容易性
 b-1 本件第1~第4の発明は、本件訂正発明から請求項2~4、6に記載さ
れた構成事項の1~4個を除いたものを最大構成事項とするものである。すなわ
ち、本件第1~第4の発明は、本件訂正発明よりも構成要件が少ないものである。
 b-2 したがって、本件第1~第4の発明は、刊行物1に記載された第1の発
明に基づき刊行物2、6に記載された第2、第3の発明を用いて当業者が容易に発
明をすることができたものである。
 c 本件第5、第6の発明の創作容易性
 c-1 本件第5の発明は、本件訂正発明に請求項5に記載された構成事項を加
えるとともに、請求項6に記載された構成事項を除いたものを最大構成事項とする
ものであり、本件第6の発明は、本件訂正発明に請求項5に記載された構成事項を
加えたものを最大構成事項とするものである。
 c-2 請求項5に記載された構成事項は、「上部収納空間と下部収納空間のそ
れぞれの高さは第一入出力パッケージの高さにほぼ等しく、上部収納空間と下部収
納空間の合計の高さは第二入出力パッケージの高さ以上である」ことであるが、
 この事項は刊行物2に第4の発明として記載されている。
 c-3 したがって、本件第5、第6の発明は、刊行物1に記載された第1の発
明に基づき刊行物2、6に記載された第3、第4の発明を用いて当業者が容易に発
明をすることができたものである。
 d 本件第7~第12の発明の創作容易性
 d-1 本件第7~第12の発明は、本件訂正発明に請求項5に記載された構成
事項を加え、更に請求項7~12に記載された構成事項を加えたものを最大構成事
項とするものである。
 d-2 請求項5に記載された構成事項は、c-2で述べたように、刊行物2に
第4の発明として記載されている。
 d-3 請求項7に記載された構成事項は、「スライドプレート移動手段が、構
造体に設けられ構造体に沿ってコネクタ部材に対し相対的に前後方向にスライドす
る排出スライド部材と、スライドプレートの面に平行な面内で揺動するよう構造体
に設けられ、スライドプレートに連結した一端と、排出スライド部材に連結した他
端と、を有している揺動レバーと、を含んでいる」ことであるが、この事項は刊行
物6に第5の発明として記載されている。
 d-4 請求項8に記載された構成事項は、「前記構造体において上部収納空間
と下部収納空間の他方の近くに配置されてコネクタ部材に対し相対的に前後方向に
移動可能であり、上記他方の内部に延び上記他方に設けられた上段コンタクト列又
は下段コンタクト列に接続された第一又は第二入出力パッケージの前方端面に係合
する排出フックを備えた第二スライドプレートと、第二スライドプレートをコネク
タ部材に対して相対的に前後方向に移動させて、上部収納空間と下部収納空間の上
記他方から上記第一又は第二入出力パッケージを排出させる第二スライドプレート
移動手段と、をさらに備えた」ことであり、
 請求項9に記載された構成事項は、「第二スライドプレート移動手段が、構造体
に設けられ構造体に沿ってコネクタ部材に対し相対的に前後方向にスライドする排
出スライド部材と、第二スライドプレートの面に平行な面内で揺動するよう構造体
に設けられ、第二スライドプレートに連結した一端と、上記排出スライド部材に連
結した他端と、を有している揺動レバーと、を含んでいる」ことであり、
 請求項10に記載された構成事項は、「上段コンタクト列及び下段コンタクト列
それぞれが、対応する上部収納空間又は下部収納空間内に延びて上記対応する上部
収納空間又は下部収納空間内に収納された第一入出力パッケージに接続するととも
に上部収納空間及び下部収納空間に協働して収納された第二入出力パッケージに接
続可能な第一接続部と、コネクタ部材から外部に延びて、外部電子機器に接続する
第二接続部と、を備えている」ことであるが、
 これらの事項は刊行物7に第6の発明として記載されている。
 d-5 請求項11に記載された構成事項は、「前記外部電子機器が、パーソナ
ルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ノートブックコンピュータのいずれ
かである」ことであるが、
 「パーソナルコンピュータ」の事項は刊行物1、2に第1、4の発明として記載
されている。
 なお、「ラップトップコンピュータ」及び「ノートブックコンピュータ」は、
「パーソナルコンピュータ」と共に情報処理装置(「前記外部電子機器」)として
周知である。
 d-6 請求項12に記載された構成事項は、「前記構造体において上部収納空
間と下部収納空間に対する第一入出力パッケージ及び第二入出力パッケージの挿入
口の近傍に設けられて上記挿入口の少なくとも一部を遮る遮断位置と上記挿入口か
ら引っ込んだ引っ込み位置との間で揺動自在な係止部材をさらに備えており、上記
係止部材は、第二入出力パッケージが上部収納空間と下部収納空間との協働により
上部収納空間及び下部収納空間に収納されて上段コンタクト列及び下段コンタクト
列の一方に接続された時に上記遮断位置に配置され、上記遮断位置において上記挿
入口の少なくとも一部を遮り、上部収納空間及び下部収納空間からの第二入出力パ
ッケージの離脱を阻止して上段コンタクト列及び下段コンタクト列の上記少なくと
も一方に対する第二入出力パッケージの接続を保証し、上記引っ込み位置において
上記挿入口から引っ込み上部収納空間及び下部収納空間に対する第二入出力パッケ
ージの離脱及び挿入を許容して上段コンタクト列及び下段コンタクト列の上記少な
くとも一方に対する第二入出力パッケージの接続解除及び接続を許容する」ことで
あるが、
 この事項は刊行物8に第7の発明として記載されている。
 d-7 したがって、本件第7~第12の発明は、刊行物1に記載された第1の
発明に基づき刊行物2、6~8に記載された第4~第7の発明を用いて当業者が容
易に発明をすることができたものである。
 (4)-4 特許異議申立ての理由の適否に関する結び
 以上1~3項を総合して判断すると、特許請求の範囲の請求項1~12記載に係
る本件第1~第12の発明はいずれも、刊行物1に記載された第1の発明に基づい
て当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許請求の範囲の請求
項1~12記載に係る本件特許はいずれも、特許法第29条第2項の規定に違反し
てなされたものである。
 したがって、特許異議申立ては理由がある。
 (5) 結び
 以上述べたとおり、特許請求の範囲の請求項1~12記載に係る本件特許は、特
許法第113条第1項第2号に該当するので、取り消すべきものである。
第3 原告主張の決定取消事由
 本件訂正発明は独立特許要件を具備するのに、決定は、刊行物1に記載された発
明の認定を誤り、この誤って認定した刊行物1記載の発明を本件訂正発明と対比
し、重要な相違点を看過して、独立特許要件の判断を誤ったものである。
 1 刊行物1記載発明の認定の誤り
 (1) 決定は、刊行物1の記載事項の摘出を行い、これに続いて「「メモリーカー
ド」と「ディスクパックユニット3」とに対して兼用可能にすることができる、と
いう発明が記載されている。」と認定するが、誤りである。
 刊行物1記載のコネクタ装置は、「カードパックユニット4」と「ディスクパッ
クユニット3」とに対して兼用可能にすることができるだけであって、決定がいう
ように、「「メモリーカード」と「ディスクパックユニット3」とに対して兼用可
能にすること」はできない。前記コネクタ装置が「メモリーカード」と「ディスク
パックユニット3」とに対して兼用可能であることは、刊行物1のどこにも記載さ
れていない。
 被告は、刊行物1の「本発明は上記実情に鑑みなされたもので、使用用途等に応
じ、外部より情報を供給する記憶媒体として、フロッピィディスク、ハードディス
クパック等の回転磁気記録媒体、又は、メモリーカード、ICカード等を任意選択
的に使用できる構成としたパーソナルコンピュータを提供することを目的とす
る。」(2頁右上欄14行~20行)という記載を根拠に、刊行物1に「メモリー
カード5」と「ディスクパックユニット3」とに対して兼用することができるコネ
クタ装置が開示されていると主張する。しかし、被告のこの主張は、以下の理由に
より誤りである。
 被告が指摘する刊行物1の前記記載中にも用いられている「構成」という用語
は、特許文献中においては一般に、特許法第36条にいう特許請求の範囲の記載又
はこれに直接関連する記載の意味に使用される場合が多い。この一般的慣習が刊行
物1においても当て嵌まることは、刊行物1の2頁左下欄における「[発明の構
成]」の説明欄において、「内蔵バッテリィ電源により動作可能な・・・回路接続
するコネクタ」という特許請求の範囲の請求項1の記載がほとんどそのまま引用さ
れている点からも明らかである。そして、刊行物1の特許請求の範囲の請求項1、
2には、いずれの請求項にも「ディスクドライブユニットを収めた第1のパックユ
ニット」と「カードアダプタを収めた第2のパックユニット」に対して兼用可能な
コネクタが記載されているが、「メモリーカード」と「ディスクパックユニット」
に対して兼用可能であるとは記載されていない。また、「メモリーカード」と「デ
ィスクパックユニット」に対して兼用可能なコネクタは、前記特許請求の範囲の請
求項1、2の記載を裏付ける実施例にも、添付図面にも全く記載がないばかりでな
く示唆もされていない。
 原告は、更に、被告のいう記載と全く同一表現からなる刊行物1の4頁右下欄3
行~7行の「フロッピィディスク、・・・使用できる。」という記載が、「FDD
又はHDD等のディスクドライブユニットを収めた第1のパックユニット、又は、
カードスロットを持つカードアダプタを収めた第2のパックユニットを任意選択的
に挿着し回路接続できる構成としたことにより、」(4頁左下欄19行~右下欄3
行)という先行記載に続く一文をなす点及び「フロッピィディスク、・・・使用で
きる。」(2頁左下欄17行~20行)という記載もまた、前に指摘した、「内蔵
バッテリィ電源により動作可能な・・・回路接続するコネクタ」という特許請求の
範囲の請求項1の記載がほとんどそのまま引用されている先行記載に続く一文をな
す点を特に強調するものである。
 被告は、刊行物1中の3箇所にわたって存在する同一趣旨の記載のうち、第2の
パックユニットとの関連を述べる他の2箇所の記載は黙殺し、被告の指摘する記載
だけをことさら取り上げ、これを特許請求の範囲、実施例及び添付図面の記載とは
技術的に異なる、「「コンピュータ」で異なる型の外部情報記憶媒体を使用するこ
とが主目的である」と捉え、「メモリーカード」と「ディスクパックユニット」に
対して兼用可能、すなわち、メモリーカードを第2のパックユニット(カードパッ
クユニット)を介することなくパーソナルコンピュータと接続するという技術思想
を開示したものとして理解しようとするものである。
 被告が取り上げた刊行物1の前記の記載は、「構成」なる用語を用いることによ
って特許請求の範囲の記載の引用に代えただけで、他の2箇所の記載と全く同様な
意味に、すなわち、ディスクパックユニットと、メモリーカードを挿入した「カー
ドパックユニット」とに対して兼用可能と解することが正しいのであって、これの
みをもって、刊行物1記載の技術思想が、「「コンピュータ」で異なる型の外部情
報記憶媒体を使用することが主目的である」こと及び「メモリーカード」と「ディ
スクパックユニット」に対して兼用可能なことを意味するものと解すべき根拠はな
く、また、そう解さなければならない特段の事情も見当たらない。
 (2) 刊行物1の「メモリーカード5」は、「カードパックユニット4」に備わる
アダプタとしての「接栓部41」と「回路接続ケーブル43」を欠く以上、「メモ
リーカード5」を前記「スロット1a」に直接収納してこれを前記「パーソナルコ
ンピュータ本体1」と電気的に接続することは不可能である。すなわち、刊行物1
記載のコネクタ装置は、「カードパックユニット4」と「ディスクパックユニット
3」とに対して兼用可能にすることができるだけであって、「メモリーカード5」
と「ディスクパックユニット3」とに対して兼用可能にすることはできないのであ
る。
 (3) 「メモリーカード5」と「ディスクパックユニット3」とに対して兼用可能
ではない刊行物1記載の発明を、「メモリーカード2」と「ハードディスクドライ
ブパッケージ4」とに対して兼用可能な「本件訂正発明の用語で表現」することが
できるはずもない。
 刊行物1記載の「パックユニット収納スロット1a」と本件訂正発明の「構造体
22」を機能的対応関係に置くことについては、原告に異論はない。しかしなが
ら、電気的接続を目的として本件訂正発明の「構造体22」に収納される対象が
「メモリーカード2」と「ハードディスクドライブパッケージ4」であり、電気的
接続を目的として刊行物1の「パックユニット収納スロット1a」に収納される対
象が「カードパックユニット4」と「ディスクパックユニット3」である点を考慮
すれば、決定がした「ディスクパックユニット3」と「ハードディスクドライブパ
ッケージ4」の等価性判断のみでなく、「メモリーカード2」と「カードパックユ
ニット4」の等価性判断を合わせ行わなければならないことが当然であるにもかか
わらず、決定はこの点の判断を怠っている。
 本件訂正発明の「ハードディスクドライブパッケージ4」と、刊行物1の「ディ
スクパックユニット3」は、決定の指摘するとおり「等価」である。しかしなが
ら、「コネクタ部材34」を備える本件訂正発明の「構造体22」は、刊行物1の
「カードパックユニット4」を収納しても、「カードパックユニット4」に備わる
「接栓部41」及び「回路接続ケーブル43」の存在が障害となって、「カードパ
ックユニット4」を「パーソナルコンピュータ」と電気的に接続することができな
い。これが不可能であることは、本件訂正発明が、「上部収納空間と下部収納空間
のそれぞれがメモリーカードを収納した時に対応するメモリーカードと接続
し、・・・少なくとも一方がハードディスクドライブパッケージに接続する上段コ
ンタクト列及び下段コンタクト列を含んでおり、」、「メモリーカード2」が、
「構造体22」の一部をなす「コネクタ部材24」に備わる両「コンタクト列3
2」と電気的に接続する点を構成要件として明記していることによって明らかであ
る。
 また、刊行物1の「パーソナルコンピュータ本体1」の部分である前記「スロッ
ト1a」は、本件訂正発明の「メモリーカード2」を収納しても、「メモリーカー
ド2」はアダプタとしての「ピンコンタクト列32」を欠くので、「メモリーカー
ド2」を前記「パーソナルコンピュータ本体1」と電気的に接続することができな
い。
 すなわち、本件訂正発明の「メモリーカード2」と、刊行物1の「カードパック
ユニット4」は、「等価」すなわち技術的に同じ機能を有するとはいえない。
 したがって、刊行物1記載の発明は、決定が認定するような「メモリーカードと
メモリーカードより厚いハードディスクドライブパッケージのいずれか一方と選択
的に接続するためのコネクタ装置」でもなく、「メモリーカードとハードディスク
ドライブパッケージとに対して兼用可能にすることができる、という発明(第1の
発明)」でもない。
 決定は、本件訂正発明の「メモリーカード2」と刊行物1の「カードパックユニ
ット4」の等価性判断を行うことを怠り、その代わりに、本件訂正発明の「メモリ
ーカード2」と刊行物1の「メモリーカード5」を対比しているが、これは対比対
象の選択を誤った判断という外はない。したがって、決定のいう「本件訂正発明の
用語で表現」された「第1の発明」は、刊行物1には開示のない発明である。
 2 対比の誤り
 したがってまた、決定の「両者が、メモリーカードとハードディスクドライブパ
ッケージとに対して兼用可能にすること、を目的、効果とし、」との認定、及び、
これに続く「メモリーカードと・・・を構成要件としている点で一致しており」と
する両者の間の一致点の認定もまた、本件訂正発明と決定が誤って認定した「第1
の発明」との比較結果を述べているにすぎないから、やはり誤りである。
 それゆえ、両者の一致点と相違点の認定もまた、全体として誤りである。
 3 判断の誤り
 決定が認定した刊行物2及び刊行物6の記載事項については争うものではない
が、メモリーカードとハードディスクドライブパッケージ(ディスクパックユニッ
ト)とに対して兼用可能であるコネクタ装置は、刊行物1に記載されていないのみ
ならず、刊行物2及び刊行物6のいずれにも開示されていないのであるから、メモ
リーカードとハードディスクドライブパッケージ(ディスクパックユニット)とに
対して兼用可能ではない第1の発明に、決定が認定したように「刊行物2、6に記
載された第2、第3の発明を用いる」ことはできない。当業者の技術的動機付けが
生まれる余地がない。
第4 決定取消事由に対する被告の反論
 1 刊行物1記載発明の認定誤りの主張に対して
 (1) 刊行物1の2頁右上欄14行~20行には「本発明は上記実情に鑑みなされ
たもので、使用用途等に応じ、外部より情報を供給する記憶媒体として、フロッピ
ィディスク、ハードディスクパック等の回転磁気記録媒体、又は、メモリカード、
ICカード等を任意選択的に使用できる構成としたパーソナルコンピュータを提供
することを目的とする。」と記載されている。刊行物1の発明の「パーソナルコン
ピュータ」は、外部より情報を供給する「外部記憶媒体」を使用することが主目的
であり、その「外部記憶媒体」として回転磁気記録媒体とカード記録媒体(その例
として「ハードディスクパック」と「メモリカード」)を選択的に使用できるもの
であると明記されている。したがって、原告の前記主張は事実に反し失当である。
 (2) 刊行物1の「パーソナルコンピュータ」のコネクタ装置は「カードパックユ
ニット4」を介在して)「メモリーカード」を使用でき、かつ「ディスクパックユ
ニット3」も使用可能であるから、「メモリーカード」と「ディスクパックユニッ
ト3」とに対して兼用可能にすることができる、という決定の認定に誤りはない。
 (3) 本件訂正発明は、「コンピュータ」で異なる型の外部情報記憶媒体を使用す
ることが主目的であるから、本件訂正発明と刊行物1記載の発明の構成要素を対応
付ける場合に、外部情報記憶媒体の観点から対応付けるべきである。本件訂正発明
と刊行物1記載の発明における外部情報記憶媒体は、「メモリーカード2」と「メ
モリーカード5」(及び「ハードディスクドライブパッケージ4」と「ディスクパ
ックユニット3」)であり、決定ではこの両者を対応付けて、「上記発明の「メモ
リーカード」は本件訂正発明の「メモリーカード」と同義であ」ると認定している
ものである。
 (4) 決定の「メモリーカードとメモリーカードより厚いハードディスクドライブ
パッケージのいずれか一方と選択的に接続するためのコネクタ装置」という認定
は、「メモリカード」(「半導体カード5」の例)と「メモリカード」より厚い
「ハードディスクドライブ」等の「ディスクパックユニット3」のいずれか一方と
選択的に接続するための(「パーソナルコンピュータ」の)コネクタ装置」という
認定を、本件訂正発明の用語で表現したものである。
 決定が、本件訂正発明の「メモリーカード2」と刊行物1の「メモリーカード
5」が同義であると認定したのは、両発明を正当に比較し対応付けたからである。
 2 対比の誤りの主張に対して
 刊行物1記載の認定は誤りであるとする原告の主張が失当であることは、1で述
べたとおりである。
 3 判断の誤りの主張に対して
 メモリーカードとハードディスクドライブパッケージ(ディスクパックユニッ
ト)とに対して兼用可能であるコネクタ装置が刊行物1に記載されていること、原
告のメモリーカードとハードディスクドライブパッケージ(ディスクパックユニッ
ト)とに対して兼用可能であるコネクタ装置は刊行物1に記載されていないという
原告の主張が失当であることは、1で述べたとおりである。
第5 当裁判所の判断
 1 刊行物1記載発明の認定の誤りの主張について
 (1) 原告は、決定における刊行物1(甲第4号証)記載発明について、決定が
「「メモリーカード」と「ディスクパックユニット3」とに対して兼用可能にする
ことができる、という発明が記載されている。」とした認定が誤りであると主張す
る。
 甲第4号証によれば、刊行物1に、「本発明は上記実情に鑑みなされたもので、
使用用途等に応じ、外部より情報を供給する記憶媒体として、フロッピィディス
ク、ハードディスクパック等の回転磁気記録媒体、又は、メモリカード、ICカー
ド等を任意選択的に使用できる構成としたパーソナルコンピュータを提供すること
を目的とする。」(2頁右上欄14行~20行)との記載、「3及び4は・・・パ
ックユニットであり、このうち3は小形フロッピィディスクドライブ(FDD)又
は小型ハードディスクドライブ(HDD)等の磁気ディスクドライブを内蔵したパ
ックユニット(以下ディスクパックユニットと称す。)」(同頁右下欄10行~1
6行)との記載、「[発明の構成](課題を解決するための手段及び作用)・・・
本発明は・・・これによりフロッピィディスク、ハードディスクパック等の回転磁
気記録媒体、又は、メモリカード、ICカード等を任意選択的に使用できる。」
(同頁左下欄1行~20行)との記載及び「[発明の効果]以上詳記したように本
発明によれば・・・フロッピィディスク、ハードディスクパック等の回転磁気記録
媒体、又は、メモリカード、ICカード等をその時々の使用用途、使用形態等に応
じて、任意選択的に使用できる。」(4頁左下欄7行~右下欄7行)との記載のあ
ることが認められる。
 これによれば、刊行物1記載の発明はメモリカード等又はハードディスクパック
等を選択的に使用できるものであり、小型ハードディスクドライブ(HDD)等の
磁気ディスクドライブを内蔵したパックユニットを「ディスクパックユニット」と
称しているのであるから、決定が、上記のように、「「メモリーカード」と「ディ
スクパックユニット3」とに対して兼用可能にすることができる、という発明が記
載されている。」と認定した点に誤りはないというべきである。
 原告は、刊行物1の前記記載、すなわち「本発明は上記実情に鑑みなされたもの
で、使用用途等に応じ、外部より情報を供給する記憶媒体として、フロッピィディ
スク、ハードディスクパック等の回転磁気記録媒体、又は、メモリーカード、IC
カード等を任意選択的に使用できる構成としたパーソナルコンピュータを提供する
ことを目的とする。」(2頁右上欄14行~20行)は、「構成」なる用語を用い
ることによって特許請求の範囲の記載の引用に代えただけで、ディスクパックユニ
ットと、メモリーカードを挿入した「カードパックユニット」とに対して兼用可能
と解することが正しいのであって、これのみをもって、刊行物1記載の技術思想
が、「「コンピュータ」で異なる型の外部情報記憶媒体を使用することが主目的で
ある」こと及び「メモリーカード」と「ディスクパックユニット」に対して兼用可
能なことを意味するものと解すべき根拠はないと主張するが、上記「構成」という
語について特許請求の範囲の記載のみを意味するものと解すべき理由はなく、刊行
物1の上記記載を原告主張のように理解すべきものとは認められない。
 (2) 原告は、刊行物1の「メモリーカード5」を「スロット1a」に直接収納し
てこれを前記「パーソナルコンピュータ本体1」と電気的に接続することは不可能
であると主張するが、決定が、「「メモリーカード」と「ディスクパックユニット
3」とに対して兼用可能にすることができる、という発明が記載されている。」と
したのは、刊行物1の「メモリーカード5」を「スロット1a」に直接収納して
「パーソナルコンピュータ本体1」と電気的に接続することが可能としている構成
に関するものではなく、コネクタ装置について「メモリカード」と「ディスクパッ
クユニット」とに対して兼用可能にすることができるという構成にとどまるもので
ある。
 メモリーカードの収納に関する本件訂正発明の具体的な構成については、刊行物
1記載発明との間の相違点として別途挙げ、その容易想到性について判断している
ところである。原告の上記主張は、刊行物1記載発明との間の一致点に関する誤り
の主張に関するものではなく、理由がない。
 (3) したがって、刊行物1について、「「メモリーカード」と「ディスクパック
ユニット3」とに対して兼用可能にすることができる、という発明が記載されてい
る。」とした決定の認定に原告主張の誤りがあるということはできない。
 2 対比の誤りの主張について
 原告は、決定の刊行物1記載発明の認定の結果として、決定の「両者が、メモリ
ーカードとハードディスクドライブパッケージとに対して兼用可能にすること、を
目的、効果とし、」との認定、及び、これに続く「メモリーカードと・・・を構成
要件としている点で一致しており、」とする一致点と相違点の認定もまた、全体と
して誤りであると主張する。
 しかし、決定の刊行物1記載の発明の認定に誤りがないことは前記判断のとおり
であって、決定の本件訂正発明と刊行物1記載発明との一致点の認定に原告主張の
誤りはない。なお、両者の間の相違点についてした決定の認定の誤りに関しては、
原告の具体的な主張はない。
 3 判断の誤りの主張について
 甲第4号証によれば、刊行物1に「本発明は、フロッピィディスク、ハードディ
スク等のディスクドライブを内蔵したパックユニット、又はメモリカード、ICカ
ード等のカード類接続アダプタを内蔵したパックユニットを・・・任意選択的に収
納し回路接続する機構を備えたパーソナルコンピュータと、パーソナルコンピュー
タ用パックユニット構造に関する。」(1頁右下欄19行~2頁左上欄6行)との
記載があることが認められ、甲第5号証によれば、刊行物2に「本発明は、計算機
の駆動装置に関し、特に駆動装置のための取付け構造に関する。」(1頁左下欄2
0行~右下欄1行)との記載があることが認められ、甲第6号証によれば、刊行物
6に「本考案は、イジェクト機構付ICカードコネクタに関する。」(明細書2頁
3行~4行)との記載があることが認められる。
 これによると、刊行物1記載発明はディスクドライブ又はICカードに関するも
のであり、刊行物2記載発明はディスク駆動装置に関するものであり、刊行物6記
載発明はICカードに関するものである。そうすると、刊行物2、6に記載の発明
は、刊行物1記載発明と技術分野を共通とするものということができ、刊行物1記
載の発明に、これと技術分野を共通とする刊行物2、6記載の発明を適用する動機
付けがないということはできない。この点の動機付けがないとする原告の主張は理
由がない。
第6 結論
 以上のとおりであり、原告主張の決定取消事由は理由がないので、原告の請求は
棄却されるべきである。
(平成13年10月2日口頭弁論終結)
 東京高等裁判所第18民事部
         裁判長裁判官   永   井   紀   昭
            裁判官   塩   月   秀   平
            裁判官   古   城   春   実

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