弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人野呂栄一の上告理由第一点ないし第四点について。
 論旨は、原判決が、本願商標「リユーマゾロン」および引用商機「RHEUMA
SONロイマゾン」につき、その「リユーマ」および「ロイマ」の文字をそれぞれ
の象徴的、特徴的部分と認めて取り上げ、その部分は、いずれも世人をしてその周
知の「リユーマチ(ス)」または「ロイマチス」と称される疾患ないし右疾患関係
のもの、特にその治療剤を推察、連想せしめるものとし、右両商標は観念において
類似するものと判断したのに対し、右「リユーマ」または「ロイマ」だけでは世人
一般につきそのような観念を直感せしめるに足りないものと主張し、かつ、右両商
標はいずれも一連の不可分的な文字から造語されてその称呼において非類似と認め
られる以上、その観念においても異なるものと認めうべきにかかわらず、原判決が
各商標の末尾の部分を除外し、「リユーマ」、「ロイマ」の文字についてのみ観念
の類否を判断したのは、商標の類否判定の方法として失当というのである。
 しかし、前記両商標の末尾の「ゾロン」または「SONゾン」の部分は、化学製
品、薬剤類の名称において単に語形、語調を整えるために好んでその末尾に付され
る語であつて、格別の意味を有するものではなく、また「リユーマ」あるいは「ロ
イマ」を主部とする用語は、わが国では「リユーマチ(ス)」または「ロイマチス」
以外にはほとんど見当らないことは、いずれも原判示のとおりであり、右両商標の
「リユーマ」または「ロイマ」の文字は、もともと「リユーマチ(ス)」または「
ロイマチス」なる疾患名にちなんで採択されたものであることは、容易に推認しう
るところである。もつとも、商標がいかなる観念を生ずるかは、その採択者の意図
に関係なく、客観的にその指定商品とその取引者層、需要者層との関係において判
断するのを相当とする。そこで、前記両商標がそれぞれの指定商品に属する「リユ
ーマチ(ス)」(「ロイマチス」)の治療剤に使用された場合を想定し、その取引
者、需要者は薬品販売業者、医師、薬剤師その他「リユーマチ(ス)」(「ロイマ
チス」)の患者ないしその関係者であることに思いを致せば、それらの者が、右「
リユーマ」または「ロイマ」の部分から原判示のような観念を直感するものと認め
て誤りないということができる。右両商標が一運の造語から成るものにしても、そ
の特徴的な部分から特定の観念を生じえないものとする理由はなく、一概に所論の
ように、造語上称呼を異にするから、その商標から感得される観念も当然相違する
といえるものではない。前記両商標には観念において共通のものが存し、それら商
標を使用した商品につき出所の混同をきたす虞れなしとしないのであるから、右両
者は類似商標というに値するものと認められ、これと趣旨を同じくする原判決を、
失当ということはできない。
 なお論旨はビタミン剤、ホルモン剤に関する登録例をあげて、原判決の判断は、
化学製品、薬剤類についての商標採択の事情、その使用の実態を無視するものとい
い、商標の観念類似の範囲を不当に拡大するものと論ずる。
 しかし、論旨引用のような事例が存するとしても、それをもつて、本件における
前記両商標の使用によつて生ずべき商品の出所の混同の虞れを否定するに足りない
ことは、多言を要しない。所論によつて前叙の判断を動かすことはできない。
 このほか、原判決の認定判断を非難する論旨のいずれも理由のないことは、前叙
したところから明らかであり、論旨はすべて採用しがたい。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    色   川   幸 太 郎

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