弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 本件各控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人らの負担とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人ら
1 原判決を取消す。
2 控訴人らが、破産者株式会社うえの屋に対して雇用契約による雇人の給料とし
て別紙債権一覧表中の債権額欄記載のとおりの優先破産債権を有することを確定す
る。
3 訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
 主文同旨
第二 当事者双方の主張及び証拠関係は次のとおり付加するほか原判決事実摘示と
同じであるからこれを引用する。
一 控訴人らの主張
1 破産者株式会社うえの屋(以下「破産会社」という)の社長と赤帽富山県軽自
動車運送事業組合(以下「本件組合」という)の理事長との間で、本件組合の組合
員が破産会社の仕事(配達等の仕事)に従事する場合は一時間あたり一六〇〇円と
する旨協定され、その条件を了承した控訴人らが破産会社の仕事に従事したもので
あり、控訴人らが個別的に契約内容を話し合つたことがなかつたこと、契約書を交
わしたことがなかつたことをもつて、雇用を否定する理由にはならない。
 また、労務の提供がある程度の期間継続することは雇用たるための要件ではな
く、一日だけ又は何時間だけ労務を提供するという内容のものでも、労務自体を契
約の目的とするものであれば、雇用契約である。従つて、長期間継続的に雇用され
た場合なら、その間自己の都合で仕事を断わつたり、他の仕事をすることはできな
いとしても、本件の如く一日単位又は数時間単位で雇用される場合は、破産会社の
仕事に従事しない日は他の仕事をすることが自由であるのは当然である。但し、破
産会社の仕事に従事した日は、破産会社から帰宅を許可されるまでは拘束されてい
たものであり、またその間他の仕事をすること(即ち、他の荷物の運搬等)は許さ
れていなかつたし、事実控訴人らは他の仕事をしていなかつた。
2 本件契約が運送請負契約であれば、請負人の車両で運送するのが当然であり、
荷主の社員を名乗ることを強制されたり、自己の制服の着用を禁止されるというこ
とはあり得ない。控訴人らの車両が小さくて家具の配送には不適当であつたとの理
由で控訴人らが破産会社の車両を使用したのであれば、大型車両を有する運送会社
に請負させればよい筈である。破産会社が、「寿」のマークの入つた自社の車両を
使用させて自社の社員の如く振るまわさせ、自社の伝票を使用させたのは、配達す
る商品(家具)が婚礼にかかわるもので、イメージを大切にしなければならないと
の特殊性から、運送の請負によることは不適当であると判断したからであり、従つ
て、逆に言えば、控訴人らは運送の請負をしたのではなく、労務の提供を目的とし
たものである。
二 被控訴人の答弁
 控訴人らの右主張は争う。
       理   由
一 当裁判所も控訴人らの本訴各請求は理由がなく棄却すべきものと判断するとこ
ろ、その理由は次のとおり付加訂正するほか原判決の理由説示と同じであるからこ
れを引用する。
1 原判決六枚目裏四行目「さらに、」の次に「右当事者間に争いのない事実に加
え、成立に争いのない甲第三号証の一ないし一四、第四号証の一ないし一三、第五
号証の一、二、第六号証の一ないし一七、第七号証の一、二、第八号証の一ないし
九、第九号証の一ないし四、第一〇、第一一号証の各一、二、第一二号証の一ない
し五、第一三号証の一ないし三七、第一四号証の一ないし五〇、第一五号証の一な
いし四二、第一六号証の一ないし四、第一七号証の一ないし二五、第一八号証、第
一九号証の一ないし二八、第二〇号証の一ないし一二、第二一号証の一ないし二
九、第二二号証の一ないし四、第二三号証の一ないし九、第二四号証の一ないし
五、第二六号証の一ないし三、第二七号証の一ないし五、第二八号証の一ないし一
〇、第二九号証の一ないし八、第三〇号証の一、二、第三一号証の一ないし四五、
第三二号証の一ないし四四、第三三号証、第三四号証の一、二、第三五号証の一な
いし八、乙第三ないし第一一号証、」を加える。
2 同六枚目裏末行から同九枚目表一〇行目までを次のとおり改め、同末行の
「六」を「五」に訂正する。
「(一)破産会社は、呉服及び婚礼家具等の販売、婚礼衣裳の貸出し等を業とする
会社であり、従来、家具の配送について自社の配送担当の社員で処理しきれないと
きは日本通運、トナミ運輸等の運送業者に依頼していたが、昭和五四年頃、本件組
合に呉服等の小荷物の配送を依頼するようになつたことから、本件組合の理事長か
らの要請で家具についても本件組合の組合員に配送させるようになつた。その際理
事長は控訴人ら組合員が原則として各一台の軽自動車を保有して貨物運送を業とす
る事業者であり、右事業者で組織する本件組合が受注あつせん、料金請求の代行等
を責任をもつて行ない、各組合員も受注した仕事を一事業主として誠意をもつて処
理する旨を説明したので、破産会社代表者はこれを了承した。
(二) その結果、破産会社、本件組合及び所属組合員間に、その頃、家具運送等
の必要が生じた都度破産会社から本件組合に組合員の派遣要請をし、本件組合はこ
れを組合員に伝達して注文のあつせんをし、これに応諾する組合員が破産会社指定
の日時に同指定の場所に赴き、破産会社から業務内容と遂行方法の指示を受ける。
組合員はこれを受けて業務を遂行し、完了後破産会社担当者に報告し、仕事の完了
と従事した時間の確認を受けて帰る。右確認は本件組合名義の領収書を組合員が提
示し、これに担当者がサインする方法をとり、
料金は、遠距離配送の場合は行先別定額(例えば東京は三万八〇〇〇円、神奈川は
四万円、静岡は三万二〇〇〇円、埼玉は三万六〇〇〇円など)で、遠距離配送でな
い場合は一時間一六〇〇円と定め(勿論固定給なし)、各組合員は右サインのある
領収書を本件組合に持帰り、本件組合において毎月二〇日締切で集計し、その合計
金額を本件組合から破産会社に請求し、破産会社から一括支払を受けた金員を本件
組合において各人の仕事量時間数に分けて配布する(源泉徴収なし)旨の基本的合
意が成立した。
(三) 右の如く本件は、破産会社が運送等の仕事を発注すると、本件組合がこれ
を所属組合員にあつせんし、所属組合員と破産会社間で家具運送等に関する契約が
成立し、その後本件組合が料金の集金業務を代行する制度であつた。従つて組合か
らの連絡があつても各組合員は他の仕事が入つている場合等には断わることがで
き、右注文に応じない自由、また注文がないときは他の仕事に従事する自由が保障
されていた。もつとも破産会社としては、家具運搬の性質上、入れ替わり、立ち替
わり別の組合員が派遣されると困るので、できる限り同じ人を派遣して貰いたい旨
の要望を出し、組合もこれに沿つてあつせんし、一旦派遣された組合員が破産会社
から直接次の仕事を依頼されるようなこともあつて、破産会社へ派遣される者は固
定化の方向に向つていた。しかし指定された組合員に支障が生じたときは、その者
の責任においてパートを雇つて代替派遣をすることも容認されていた。
(四) 業務内容は、主として婚礼家具、ほかに呉服類、ふとん類の配送であり、
組合員単独または他の組合員や破産会社従業員と共に自動車を用いて配送する。大
型の家具は破産会社保有の「寿」のマークの入つた普通貨物自動車を使用し、小型
の家具及び呉服、ふとん類は組合員保有の軽貨物自動車を使用した。そして破産会
社は、前者の場合には営業上のイメージアツプのため各組合員は本件組合の制服・
制帽を着用せず、商品を顧客に引渡す際は、破産会社従業員の如く振る舞うことを
要望していた。各組合員は、荷物を受取人に引渡したときは納品書控に受取印を押
捺してもらい、また顧客が代金を支払うときはこれを受領して帰つた。右商品配送
のほか、時に展示場の設営の手伝いを依頼されることがあり、従業員とともに家具
を展示場まで運搬しこれを配列する仕事に従事し、中には技能を見込まれて、商品
配送のほか家具のアフターサービスとしての修繕の仕事を頼まれこれに従事する組
合員もいた。各組合員が破産会社に派遣された日数は、一か月平均多い者で一五、
六日、少い者で四、五日程度であつた。
3 以上のとおり認められるところ、控訴人らは、破産会社の社長から日常も破産
会社の社員として振る舞うよう指示され又は教育されていた、或いは仕事も完全に
破産会社の指示に従つて行ない、派遣を求められた日は一日中拘束されていた旨主
張するが、これに沿う原審証人Aの証言、原審における控訴人B及び同C各本人の
供述は、前記乙第一・二号証、原審証人Dの証言に照らして措信できず、ほかに右
事実を認めさせる証拠はない。
4 ところで当該契約が雇用契約なりや否やは契約の形式のみによらず、実質的な
労務供給の実態をも総合し、それがいわゆる使用従属関係に当るか否かを基準とし
て判断するのが相当であると解されるところ、前認定事実によると、控訴人らはい
ずれも軽貨物自動車を保有して貨物運送事業を営む事業者であり、破産会社からの
依頼に対しても諾否の自由を有し、また労務の代替性が認められ、仕事開始の時間
の指定はあるが、依頼された仕事が終れば何時でも帰宅できるのであつて、拘束時
間の指定はなく、報酬も遠距離運送の場合は定額制で明らかに請負代金的な定め方
をしていること、その他前認定にかかる実態に照らして判断すると、控訴人らの本
件労務提供は、破産会社の指揮監督下での労働とみることはできず、むしろ指定さ
れた仕事の完成を目的とする請負契約であつたと認めるのが相当である。
 もつとも、前認定によると、控訴人らが従事した仕事の中には、時間給の部分が
あり、また控訴人らの本来の運送業務からは若干外れる集金業務、展示会場設営、
家具修理等の仕事をした者もいるが、注文者の依頼によつて引受けた臨時的な附帯
業務と認められ、全体的観察のもとでは、これによつていまだ控訴人らの事業者性
は失われていないと認められる。また大型家具の場合赤帽等を着用しない様指示さ
れているが平服でよいというのであつて、特に控訴人らに負担を課す程のものでは
なく、また配達先の客に対して破産会社の者である旨名乗る様指示されたことも末
梢的な事柄であつて、これによつて業務遂行の主要部分にまで依頼者の指揮監督が
及んでいたとは認められない。軽自動車使用の場合は自己の営業であることを表示
することが許されていたことは前認定のとおりである。
 控訴人らは、控訴人らが破産会社の仕事に従事した日は破産会社から帰宅を許可
されるまで拘束され、その間他の仕事をすることは許されず、実際に他の仕事をし
なかつたから時間単位の雇用契約が成立していた旨主張する。
 しかし、依頼された仕事が終れば帰宅できたのであつて終業時間の指定がなかつ
たことは前認定のとおりであり、控訴人らが破産会社の配送の仕事に従事した時間
内に他の仕事をすることができないのは、破産会社の仕事をした時間についてのみ
料金が支払われるという時間制の定めによるものというべきであり、右事実をもつ
て控訴人らと破産会社との間に時間単位の雇用関係が成立していたものと認めるこ
とはできない。
 また、破産会社が控訴人らに「寿」のマークの入つた自社の車両を使用させたこ
と、破産会社の社員を名乗らせ、自己の制服の着用を禁止したこと、自社の伝票を
使用させたことをもつて雇用契約の表われであると主張するが、いずれも婚礼家具
を扱うという破産会社の業務の特殊性から運送契約において特に条件を付したもの
というべきであり、右の如き条件を付した請負契約も可能であると解されるから、
右条件の存在をもつて破産会社と控訴人らとの間に使用従属関係があるともいえな
い。控訴人らは、右特殊性から破産会社は請負契約によることを不適当と判断した
ものであり、控訴人らは労務の提供を目的としたものである旨主張するが、上記判
断に照らせば理由がない。」
二 よつて、原判決は相当であるから本件各控訴を棄却することとし、控訴費用の
負担につき民訴法九五条、八九条、九三条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 井上孝一 紙浦健二 森高重久)
別紙債権一覧表(省略)

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