弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役5年に処する。
未決勾留日数中70日をその刑に算入する。
A地方検察庁で保管中の出刃包丁1本(平成18年領第65号符号5)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は
第1 平成17年12月29日午後6時10分ころ,神戸市B区C町a番b号D所在のE株式会社F店2階売場におい
て,同店店長G管理に係るジャンパー1着等6点(物品時価合計1万5340円相当)を窃取し,上記F1階東側出入
口付近において,上記犯行を目撃した警備員H(当時56歳)に呼び止められたことから,逮捕を免れるため,同人に
対し,その腹部に所携の出刃包丁(刃体の長さ約16センチメートル。平成18年領第65号符号5)を突き付けるな
どの暴行を加え,危険を感じた同人が上記包丁を取り上げようとした際,同人に加療約1か月間を要する右中指不全切
断の傷害を負わせ
第2 業務その他正当な理由による場合でないのに,上記日時場所において,上記出刃包丁1本を携帯した
ものである。
(証拠の標目)―括弧内の甲,乙に続く数字は検察官請求証拠番号―
省略
(事実認定の補足説明)
1 弁護人は,判示第1の犯行について,(1)被告人がHに判示の包丁を突き付けたことはなく,逮捕免脱目的もなかっ
た,(2)いずれの犯行についても,被告人は飲酒酩酊による心神耗弱の状態にあった旨主張するので,当裁判所がこれら
の主張を排斥した理由について補足説明する。
2 まず,(1)の点について検討すると,被害店舗に警備員として勤務中に被告人が被害品を万引きしたのを目撃し,同
人を呼び止めたところ,判示の包丁を突き付けられた旨明確に供述するH証言は,その内容が具体的で迫真性に富むも
のである上,記憶にあることとないこととを明確に区別して供述するなど,その供述態度も真しなものであること,被
告人自身も,ほとんど記憶がないと供述するにとどまり,H証言の内容を積極的に否定する供述をしているわけではな
いことなどに照らすと,H証言の信用性は十分であり,逮捕免脱目的の存在を含め,判示事実を優に認めることができ
る。
3 次に,(2)の点について検討するに,被告人は本件当時相当飲酒していたから,ある程度の記憶の減退が存すること
は考えられるとしても,犯行後の飲酒検知においては呼気1リットルにつき0.4ミリグラムのアルコールを身体に保
有するにすぎなかった上,その供述するところによっても,完全に記憶が欠落しているわけではないこと,上記飲酒検
知の際の応答状況を含む犯行前後の言動からすると,自己の行為や置かれた状況を正確に認識していたものと認められ
ること,本件犯行態様は,段ボール箱に次々と衣類を入れていくという大胆なものではあるが,本件被害店舗のような
大型商業施設内においては,周囲の目をはばかることなく万引きを実行することも,予想される万引きの手口の1つと
考えられ,殊更特異なものとまではいえない上,判示出刃包丁を所持していたからこそこそと盗む必要はなかった旨の
被告人の捜査段階の供述にもそれなりに首肯できるものがあるから,責任能力に疑問を抱かせるほど異常なものとはい
えないことに照らせば,本件犯行当時,被告人は,自己の行為の是非を弁識しそれに従って行動する能力に著しく影響
を及ぼすような精神的状態にはなく,心神耗弱の状態にはなかったと認めるのが相当である。
4 以上のとおり,弁護人の主張はいずれも採用できない。
(法令の適用)
 被告人の判示第1の所為は刑法240条前段(238条)に,判示第2の所為は銃砲刀剣類所持等取締法(以下「銃
刀法」という。)32条4号,22条にそれぞれ該当するが,判示第1の罪については有期懲役刑を,判示第2の罪に
ついては懲役刑をそれぞれ選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により重い判
示第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重をし,なお犯情を考慮し,同法66条,71条,68条3
号を適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で,被告人を懲役5年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中70日
をその刑に算入し,押収してある出刃包丁1本(平成18年領第65号符号5)は,判示第1の強盗致傷の用に供した
物で被告人以外の者に属しないから,同法19条1項2号,2項本文を適用してこれを没収し,訴訟費用は,刑事訴訟
法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
 本件は,被告人が衣類などの万引きを警備員にとがめられたことから,所携の出刃包丁を同人に突き付けるなどして
判示の傷害を負わせた強盗致傷及びその際の銃刀法違反各1件からなる事案である。
 安易に万引きに及んだ動機には酌量の余地がなく,段ボール箱を用意してその中に衣類を入れるなどした手口も大胆
である上,被告人を呼び止めた被害者に対し,いきなり先端が鋭利な出刃包丁を身体の枢要部である腹部に突き付ける
などした犯行態様は,危険性がかなり高く悪質である。また,被害者は何らの落ち度もないのに,判示の重い傷害を負
わされ,後遺症も残っているなど,その心身に受けた苦痛は大きく,その処罰感情が厳しいのも当然であるが,被告人
側から慰謝の措置は講じられておらず,その見込みもない。
 以上の諸事情に照らすと,被告人の刑責は相当に重いといわざるを得ない。
 しかしながら,他方では,被害者の傷害結果は被告人が意図したものとまではいえないこと,被害品は回復している
こと,被告人には10年以上前の前科以外に目立った前科がないこと,それなりに反省の情を示していることなど,被
告人のために酌むべき事情も認められるので,酌量減軽の上,その刑期を定めた。
 よって,主文のとおり判決する。
  平成18年5月26日
神戸地方裁判所第1刑事部
裁判長裁判官  的 場  純 男
   裁判官西 野  吾 一
   裁判官三重野  真 人
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