弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人青柳健三の上告理由第一点について。
 原判決の引用する第一審判決(以下単に「原判決」という。)の認定したところ
によれば、訴外Dは、当時東京都経済局農林部農地管理課に勤務する技術吏員であ
つたというのであるから、右訴外人は、東京都知事の補助機関として、上司の命を
受け、技術を掌る職務を行うものであり(地方自治法一七三条三項)、ただ、東京
都知事から、その権限に属する事務の一部を特定して、委任を受け、または授権さ
れた場合にかぎり、自己の名においてまたは東京都知事を代理して、東京都知事の
権限を行使できるものである(同法一五三条一項)。そして、本件農地買収処分を
取り消す権限が東京都知事に属することは、自作農創設特別措置法上明白であると
ころ、右訴外人が東京都知事から本件買収処分の取消の権限について委任を受けま
たは授権された事実は、原判決の認定していないところである。されば、右訴外人
が本件買収処分の取消に関してした言動は、東京都知事の補助機関としての立場に
おいてしたものであつて、東京都知事を代理してしたものではないとする原判決の
判断は、正当であつて、その判断の過程において所論の違法はない。されば、論旨
は採るを得ない。
 同第二点について。
 訴外Dが適法に本件買収処分を取り消したことを前提とする所論は、右前提の主
張自体採り得ないことは、すでに第一点において説示したとおりである。また、所
論の文書は、その体裁および内容からみて、原判決判示のように、東京都知事から
東京都世田谷区a地区農業委員会長あてに出された行政庁相互間の内部的な連絡な
いし指示の文書にすぎず、たとえ、右文書の送付が関係者に告知されたとしても、
これによつて、本件買収処分が取り消されたものと解することはできない。されば、
原判決には、所論の違法はないから、論旨は採るを得ない。
 同第三点について。
 農地の所有権の移転があつた後まだその旨の所有権移転登記が経由されない間に
前所有者である登記簿上の所有名義人を所有者としてされた農地買収処分が当然無
効ではないとすることは、最高裁判所の判例とするところである(最高裁昭和二八
年(オ)第一二六六号同三三年四月三〇日大法廷判決、民集一二巻六号九二六頁)。
そして、上告人が本件農地について所有権移転登記を経由することができなかつた
事情が所論のとおりであり、また、その他所論のような事情があつたとしても、そ
れがため、本件農地の前所有者であり、かつ、登記簿上の所有名義人であつた訴外
Eを所有者としてされた本件買収処分が無効となるものではない。論旨は、独自の
見解に立つて、原判決を論難するものであつて、採るを得ない。
 同第四点について。
 本件農地買収処分が、上告人に対してではなく、訴外Eに対してされた以上、買
収の対価が、上告人にではなく、右訴外人に支払われたのは、当然である。しかし、
本件農地が上告人の所有に属していた以上、上告人は、右訴外人に対しその受領し
た対価に相当する金額の支払を求め、結局、右金額を受領できる筋合である。され
ば、所論の違憲の主張は、その前提を欠き、採るを得ない。
 同第五点について。
 原判決の認定判断したところによれば、被上告人Bは、昭和一九年春頃から本件
農地を耕作していたが、同被上告人の右耕作が、被傭者としての立場においてして
いたものか、小作人としての立場においてしていたものか、客観的に一見して明白
であるといえないのが通常であるから、かりに同被上告人が被傭者としての立場で
本件農地を耕作していたとしても、本件農地を小作地であるとしてした本件買収処
分には、明白な瑕疵があるとはいえず、したがつて本件買収処分は、当然無効では
ない、というのであり、右判示は、正当として首肯するに足りる。また、本件農地
の境界が所論のような状況にあつたとしても、それがため、本件農地を小作地と認
定した瑕疵が明白となるものではない。論旨は、原判決を正解しないで、論難する
ものであつて、採るを得ない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    色   川   幸 太 郎

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