弁護士法人ITJ法律事務所

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平成25年3月6日宣告
平成24年第10598号
判決
主文
被告人を懲役10月に処する。
未決勾留日数中40日をその刑に算入する。
この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
被告人をその猶予の期間中保護観察に付する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1平成23年3月中旬頃,千葉県木更津市ab番地先路上において,
氏名不詳者が窃取し放置したA所有の自転車1台(時価約1000円
相当)を発見したのに,正規の届出をせず,自己の用途に供する目的
で同自転車を同所から持ち去り,もって占有を離れた他人の物を横領
した。
第2同年8月中旬頃,同市cd番地e先路上において,氏名不詳者が窃
取し放置したB所有の自転車1台(時価約8000円相当)を発見し
たのに,正規の届出をせず,自己の用途に供する目的で同自転車を同
所から持ち去り,もって占有を離れた他人の物を横領した。
第3同年10月下旬頃,千葉市f区gh丁目i番j号所在のk公園内に
おいて,氏名不詳者が窃取し放置したC所有の自転車1台(時価約3
000円相当)を発見したのに,正規の届出をせず,自己の用途に供
する目的で同自転車を同所から持ち去り,もって占有を離れた他人の
物を横領した。
第4平成24年8月下旬頃,千葉県市原市mn丁目p番地q先r内にお
いて,氏名不詳者が窃取し放置したD所有の自転車1台(時価約90
00円相当)を発見したのに,正規の届出をせず,自己の用途に供す
る目的で同自転車を同所から持ち去り,もって占有を離れた他人の物
を横領した。
(証拠の標目)省略
(法令の適用)
罰条いずれも刑法254条(判示第1ないし第4)
刑種の選択いずれも懲役刑(判示第1ないし第4)
併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の
最も重い判示第4の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数の算入刑法21条
刑の執行猶予刑法25条2項
保護観察刑法25条の2第1項後段
訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
1被告人は,平成22年9月に本件と同様の自転車の占有離脱物横領罪
により懲役10月・5年間執行猶予付き判決を受けていながら,その執
行猶予期間中に4件の各犯行に及んでおり,同種前歴を多数有している
ことに照らしても,被告人のこの種事犯に対する常習性は根深いものが
ある。
2被告人は,外出時に自転車を見つけ,移動の手段として自転車があれ
ば便利であるなどと考えて各犯行に及んだもので,誠に短絡的といわざ
るを得ない。その一方,本件が,自転車の占有離脱物横領という軽微な
事案であり,犯行の手口が稚拙であること,被害額が比較的低いこと,
被告人の責任能力に疑問はないものの,70代半ばと高齢の被告人が,
簡易鑑定において,当時,軽度精神遅滞の影響を受けて,その認知判断
能力が標準よりも低い状態にあったと診断されていることも考慮すべ
きである。
3そして,E支援センターの相談員が,公判に出廷して,市役所や保護
観察所等の関係機関と連携し,釈放後の養護老人ホームへの即時入所と
継続的な福祉,行政の支援が可能である旨述べており,被告人も勾留中
に前記相談員と面接して,養護老人ホームへの入所を希望し,公判廷に
おいて,本件犯行に対する反省を踏まえ,養護老人ホームの職員等の生
活指導に従う旨を述べている。本件の背景には,前記のとおり,高齢と
軽度精神遅滞による認知判断能力の低下の影響があることにも鑑みれ
ば,社会内で自立した生活を営むことが困難と認められる被告人を短期
懲役刑の実刑に処したとしても,社会復帰後の生活環境が整っていなけ
れば,これまでの経緯と同様に再び同種の犯罪に至る可能性は高いとい
える。中長期的に見れば,被告人を養護老人ホームに入所させ,関係機
関が連携し,福祉,行政の支援と生活指導をすることが,今後の再犯防
止につながると考える。
4そこで,以上の諸事情を考慮して,被告人に対しては,主文の刑に処
した上,再度刑の執行を猶予し,その猶予の期間中被告人を保護観察に
付するのを相当と判断した。
(求刑懲役10月)
平成25年3月6日
千葉地方裁判所刑事第1部
裁判官藏本匡成

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