弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役2年6月に処する。
未決勾留日数中60日をその刑に算入する。
A地方検察庁で保管中の脇差1振り(平成18年領第171号符号1)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は
第1 平成18年1月6日午後11時ころ,神戸市B区C町a丁目b番c号所在の中華料理店「D」において,同店の
客であるEらから退店を求められたことに憤激し,カウンター席に座っていたE(当時48歳)に対し,「さっき言っ
たやつはだれだ。」などと怒鳴りながら,その至近距離で所携の脇差(刃渡り約33.1センチメートル。平成18年
領第171号符号1)を振り上げる暴行を加え,奥に座っていた友人の身を案じたEをして,被告人を制止しようとし
てとっさに上記脇差の刃先を素手でつかませ,よって,Eに加療約3か月間を要する両手挫創及び右示指屈筋腱損傷の
傷害を負わせた
第2 法定の除外事由がないのに,上記日時ころ,上記場所において,上記脇差1振りを所持した
ものである。
(証拠の標目)―括弧内の甲,乙に続く数字は検察官請求証拠番号―
省略
 なお,弁護人は,判示第1の事実につき,被告人が判示脇差を振り上げたことやその結果Eが傷害を負ったこと自体
は争わないものの,Eに対する暴行があったとはいえないと主張する。しかしながら,判示店舗はかなり狭く,カウン
ター席の入口側に座っていたEと被告人との間は約1.5メートルしか離れていなかったことに照らすと,鋭利な判示
脇差を抜き身で振り上げる行為はEの身体に傷害を与える危険性の高い行為といわざるを得ず,判示脇差を振り上げた
行為がEに対する不法な有形力の行使に当たることは明らかである。したがって,弁護人の主張は採用できない。
(累犯前科)
 被告人は,(1)平成12年9月25日F地方裁判所で器物損壊罪により懲役10月(3年間執行猶予,平成13年9月
7日その猶予取消し)に処せられ,平成15年1月16日その刑の執行を受け終わり,(2)平成13年8月16日G地方
裁判所で住居侵入罪により懲役8月に処せられ,平成14年3月16日その刑の執行を受け終わったものであって,こ
れらの事実は検察事務官作成の前科調書(乙11)によって認める。
(法令の適用)
 被告人の判示第1の所為は刑法204条に,判示第2の所為は銃砲刀剣類所持等取締法違反(以下「銃刀法」とい
う。)31条の3第1項,3条1項にそれぞれ該当するので,判示第1の罪について所定刑中懲役刑を選択し,前記の
各前科があるので刑法56条1項,57条によりいずれも再犯の加重をし,以上は同法45条前段の併合罪であるか
ら,同法47条本文,10条により重い判示第1の罪の刑に同法14条2項の制限内で法定の加重をした刑期(ただ
し,短期は判示第2の罪の刑のそれによる。)の範囲内で被告人を懲役2年6月に処し,同法21条を適用して未決勾
留日数中60日をその刑に算入し,A地方検察庁で保管中の脇差1振り(平成18年領第171号符号1)は判示第1
の傷害の用に供した物で被告人以外の者に属しないから,同法19条1項2号,2項本文を適用してこれを没収し,訴
訟費用は,刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
 本件は,狭い中華料理店内で脇差を振り上げるという暴行を加え,被告人を制止しようとした被害者にけがをさせる
とともに,その際上記脇差を所持したという傷害及び銃刀法違反各1件からなる事案である。
 まず,傷害の犯行について見ると,被告人は,妻と立ち寄った同店で酒に酔って大声を出すなどして,被害者らから
退店を求められたことから,これに立腹して自転車に積んであった脇差を持ち出して犯行に及んだもので,その短絡的
で身勝手な動機に酌量の余地はない(なお,被告人の妻は,店員からいきなり退店を求められたなどと証言するが,関
係各証拠に照らし,到底信用できない。)。刃渡り約33センチメートルもの脇差を被害者らに向けて振り上げるなど
した犯行態様も,生命身体に対する危険性が高く,誠に悪質である。また,被害者の負った傷害の程度は重く,日常生
活で様々な不便を強いられるなどしており,その被害感情にも厳しいものがあるが,慰謝の措置は何ら講じられていな
い。また,銃刀法違反の犯行も,本件犯行当日解体現場で拾った旨の被告人の供述を前提にしても,それ自体が危険か
つ悪質といわざるを得ない。
 加えて,被告人には強盗,傷害,銃刀法違反などの前科8犯(服役前科7犯を含む)が存する上,最終刑の執行を受
け終わってわずか3年で本件犯行に及んでおり,規範意識の希薄さや粗暴癖がうかがわれることをも併せ考慮すると,
その刑責はかなり重い。
 しかしながら,他方で,被告人には傷害を負わせるまでの意思はなく,傷害結果の発生には多分に偶発的な面もあっ
たこと,被害者を傷付けたこと自体は反省していること,被告人の帰りを待つ妻がいることなど,被告人のために酌む
べき事情も認められるので,これらの諸事情を総合考慮して刑を量定した。
 よって,主文のとおり判決する。
  平成18年5月22日
神戸地方裁判所第1刑事部
裁判長裁判官  的 場  純 男
   裁判官西 野  吾 一
   裁判官三重野  真 人
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