弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
1 原判決を次のとおり変更する。
2 本件訴えをいずれも却下する。
3 訴訟費用は第1,2審とも控訴人の負担とする。
       事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 (主位的請求)控訴人が平成13年8月15日付けで被控訴人に提出した「公
営住宅の共益費の件」及び「公共的団体の件」に関する各請願書について,被控訴
人が請願法に適合するか否かの判断及びそれに基づく受理又は不受理の行政処分を
すべき請願法上の作為義務があるにもかかわらず,これを懈怠したことが請願法に
反し,不作為の違法があることを確認する。
3 (予備的請求)控訴人が平成13年8月15日付けで被控訴人に提出した「公
営住宅の共益費の件」及び「公共的団体の件」に関する各請願書について,被控訴
人が控訴人にした請願書の不受理処分を取り消す。
第2 事案の概要
1 本件は,控訴人が,被控訴人に対し,控訴の趣旨記載の各請願書を請願法に基
づく請願として提出したにもかかわらず,被控訴人が同法に適合する請願であるか
否かについて判断しなかったと主張して,主位的に不作為の違法の確認を,予備的
に被控訴人が不受理処分をしたと主張して,その取消しを求めた事案である。
 原審裁判所は,控訴人の請求のうち,主位的請求にかかる部分については不適法
であるとして却下し,予備的請求にかかる部分については,被控訴人が不受理処分
をしたことになるわけではないとして棄却したため,これを不服とする控訴人が控
訴したものである。
2 争いのない事実等及び当事者の主張は,後記のとおり当審における控訴人の主
張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄第2「事案の概要」の1及び2
(原判決3頁2行目から5頁21行目まで)に記載のとおりであるから,これを引
用する。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,控訴人の本件訴えはいずれも不適法であると判断するものであ
り,その理由は以下のとおりである。
2 主位的請求について
 控訴人の主位的請求について,これが不適法であり却下すべきものであること
は,原判決「事実及び理由」欄第3「当裁判所の判断」の1(原判決6頁冒頭から
同頁13行目まで)に説示するとおりであるから,これを引用する。
3 予備的請求について
(1) 行政事件訴訟法3条2項所定の処分の取消しの訴えは,行政庁の処分その
他公権力の行使に当たる行為の取消しを求める訴訟であり,ここに行政庁の処分そ
の他の公権力の行使に当たる行為とは,公権力の主体たる国又は公共団体が法令の
規定に基づき行う行為のうち,その行為によって直接国民の権利義務を形成し又は
その範囲を確定することが法律上認められているものをいうところ(最高裁昭和3
0年2月24日判決,民集9巻2号217頁参照),請願法上の請願については,
請願の事項を所轄する官公署は,請願の事項について請願者の希望に添った対応を
講ずる義務を負うものでないことはもとより,何らかの応答をすることすら義務付
けられていないから,請願をした者は,請願が受理されることによって何らかの具
体的な法律上の権利を付与されるわけではないし,また,請願が受理されないこと
によって何らかの義務が課されるものでもない。
 この点に関し,原判決は,上記と同様の説示をした上,請願法5条が「この法律
に適合する請願は,官公署において,これを受理し誠実に処理しなければならな
い。」と定めていることを根拠として,請願法に適合した請願をした者には,自ら
の申出が当該事項を所管する官公署に受理され,その誠実な処理を待つことができ
る手続上の権利,利益があり,請願の受理それ自体を拒絶することは,上記の処分
に当たるものと判示した。
 たしかに,請願が憲法上の権利とされ,請願法5条が上記のとおり定めている以
上,請願を受けた官公署は,これを受理すべき義務があるというべきである。
 しかし,上述した請願の性質に照らせば,請願をした者がその受理を拒否された
としても,請願により実現しようとした権利ないし法的地位が侵害されたとはいえ
ないから,請願の受理を拒否する行為が,国民の権利ないし法律上の地位に直接影
響を及ぼすものであるとはいえない。したがって,上記の手続上の権利,利益があ
ることをもって,請願の受理を拒否することが,上記最高裁判決のいう「直接国民
の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているもの」に
当たるとするのは相当でない。
 したがって,請願法に適合する請願の受理それ自体を拒絶することは,行政事件
訴訟法による不服の対象となる処分性を有しないというべきであり,本件予備的請
求にかかる訴えもまた不適法である。
(2) なお,控訴人は,当審において,原判決のうち,被控訴人が不受理処分を
したことになるものではないとした点が不当である旨をるる主張するが,上記のよ
うに請願の受理を拒絶することが行政事件訴訟法の取消訴訟の対象とならない以
上,不受理処分といえるか否かを判断する余地はなく,同主張に対する判断を要し
ないものである。
第4 結論
 以上のとおり,控訴人の本件訴えはいずれも不適法であるから,原判決をその旨
変更することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第21民事部
裁判長裁判官 石垣君雄
裁判官 大和陽一郎
裁判官 蓮井俊治

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