弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主      文
被告人を懲役3年に処する。
未決勾留日数中20日をその刑に算入する。
この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予する。
被告人から金200万円を追徴する。
理      由
(罪となるべき事実)
 被告人は,長崎県北松浦郡鹿町町長として,同町が発注する各種工事に関し,指
名競争入札参加者の指名選定等の職務を行っていたものであるが
第1 平成10年2月11日ころ,同町a番地所在の当時の被告人方において,株
式会社A代表取締役社長Bから,情を知らないCを介し,同町において発注予定の
工事の指名競争入札参加者の指名選定に関して,上記株式会社Aに有利な取り計ら
いをされたいとの趣旨のもとに供与されるものであることの情を知りながら,現金
100万円の供与を受け
第2 平成11年6月16日ころ,同町下歌ヶ浦免290番地2所在の鹿町町役場
1階町長室において,上記株式会社A代表取締役社長B及び同社従業員Dらから,
同町において発注予定の工事の指名競争入札参加者の指名選定に関して上記株式会
社Aに有利な取り計らいをされたいとの趣旨のもとに供与されるものであることの
情を知りながら,現金100万円の供与を受け
第3 平成12年7月17日ころ,当時の上記被告人方において,株式会社E代表
取締役会長Fから,同町において発注予定の工事の指名競争入札参加者の指名選定
に関して上記株式会社Eに有利な取り計らいをされたいとの趣旨のもとに供与され
るものであることの情を知りながら,現金500万円の供与を受け
もって自己の職務に関して賄賂を収受したものである。
(法令の適用)
 被告人の判示各所為はいずれも刑法197条1項前段に該当するが,以上は同法
45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の最も重い判
示第3の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処し,同法
21条を適用して,未決勾留日数中20日をその刑に算入することとし,情状によ
り同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予
することとし,被告人が判示第1及び第2の各犯行により収受した賄賂は没収する
ことができないので,同法197条の5後段によりその価額金合計200万円を被
告人から追徴することとする。
(量刑の理由)
本件は,鹿町町長の地位にあった被告人が,平成10年から平成12年にかけ
て,同町が発注する公共工事の入札参加者選定に関し,建設会社2社の代表者から
3度にわたり合計700万円の賄賂を収受した事案である。
 被告人は,町長という町政の最高責任者として,公正・適正に職務を遂行するこ
とを厳しく求められる立場にありながら,その自覚をせず,自らの選挙に多額の費
用を要するなどとして,建設会社2社の代表者からの賄賂の提供に安易に応じて本
件各犯行に及んでおり,その規範意識は著しく欠けていたと言わざるを得ない。
 また,被告人は2年余りの間に3度にわたり2社の建設会社代表者から賄賂を収
受して犯行を繰り返したもので,収受した賄賂金額も合計700万円と多額にのぼ
る。とりわけ平成12年に収受した500万円については,1度に収受した賄賂金
額としては相当な額であり,被告人はこれを2度に分けて贈賄業者に返還してはい
るものの,それとて贈賄業者が自らの選挙における対立候補者にも金員を提供しよ
うとしたことを知り,憤りを覚えたことや,また自らの犯行の発覚を恐れての行動
であって,その動機,意図からして被告人の刑責を大きく減らすものではない。
 加えて,被告人を含む公共工事発注担当者が特定の業者から賄賂を収受すること
により,町と建設業界との癒着体質をもたらすとともに,建設業界の談合体質を助
長し,ひいては適正,公正であるべき公共工事の入札制度そのものをも歪める結果
となっている点も見逃すことはできない。
 以上のことからすると,被告人の刑事責任は軽視できない。
 一方,被告人は建設業者に対し,自ら賄賂を要求したものではなく,その意味で
は犯行態様は受動的といえること,被告人は本件の発覚を機に鹿町町長の職を辞し
ていること,被告人は心臓に疾患を有すること,妻が被告人の更生に協力する旨証
言していること,被告人にはこれまでいかなる前科前歴もないこと等被告人に酌む
べき事情も存するので,これらの事情を総合考慮し,被告人に対しては,主文の刑
を科した上,その執行を猶予することが相当と思料した。
 よって,主文のとおり判決する。
(求刑 懲役3年,追徴200万円)
平成13年11月7日
長崎地方裁判所刑事部
裁判長裁判官  山 本 恵 三
裁判官  鈴 嶋 晋 一
裁判官  高 石 博 司

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