弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人大山菊治及び其の余の被告人等の弁護人大山菊治の各上告趣意
は後記の通りである。
 被告人A弁護人大山菊治の上告趣意第一点について。
 科刑の種類の選択、刑の量定、ならびに刑の執行を猶予するかどうかは事実審た
る裁判所が諸般の情状を考慮した上、自由裁量をもつて決定すべきところであつて、
本件において、仮に所論の如き事情を参酌するとしても、原審の被告人に対する量
刑が所論のように、実験則に違背するものとは認められない。所論は結局、原審が
専権を以つてした量刑の不当を非難するものであつて、上告適法の理由とはならな
い。
 同第二点について。
 記録を精査すると、昭和二三年七月一四日の原審第一回公判期日において、被告
人Aの弁護人深井竜太郎から、同人の担当する別個の刑事々件の公判期日が、富山
簡易裁判所によつて、同一日時に指定されたことを事由として、本件右期日の変更
を申請したのであるが、原審はこれを許さず、同期日に、右弁護人不出頭のまゝ、
第一回公判を開廷した上、公判手続を進行し、同被告人並に相被告人全部の訊問及
び証拠調を終了したことは、所論の通りである。かくの如く同一日時に公判期日が
重複して指定された場合には、裁判所としては、その間に処して適当な考慮を払ひ、
弁護人の支障を来さないように措置を講ずべきことは、当然であるが、相被告人の
あるような場合論旨の如く、必ず、審理を分離し、期日を変更しなければならぬと
言う訳のものではない。記録によると、原審は被告人Aからの申請もあつたので、
本件の審理を右第一回公判期日のみで終了せず、公判を続行する旨を宣告し、次回
期日を同月二三日と指定して、同期日には被告人Aの弁護人深井竜太郎も出頭列席
の上、第二回公判を開廷したことが明かである。されば同弁護人としては同期日ま
での間に準備を整へ、第一回公判の審理に不尽の点があれば、第二回公判期日にお
いて、被告人等に対する補充訊問なり、証拠調の再開なりを請求して、弁護権を充
分に行使すべきであり、且又之を行使し得る機会もあつたのである。然るに第二回
公判調書を見るに、同弁護人より、かゝる請求のあつたことは認められないし、原
審がその請求を不当に抑圧したと認むべき資料もないのであるから、同弁護人はか
ゝる請求をする必要がないものとして、直ちに弁論をしたものと認むる外はない。
されば同弁護人の提出した原審第一回公判期日の変更申請を、原審において諸般の
事情を考慮して、之を許容しなかつたとしても、本件は刑事訴訟法第三三四条所定
の事件に該当しないのであるから、之を以て所論のごとく、弁護権の行使を不当に
制限したものとは言へない。従つて論旨は理由がない。
 被告人B、同C、同Dの弁護人大山菊治の上告趣意第一点について。
 原審判決が(一)被告人Bに対する検事の聽取書中の同人の供述記載、(二)第
一審における共同被告人Eに対する検事聽取書中の同人の供述記載、及び(三)原
審における共同被告人Fの原審公判廷における供述を綜合証拠として、判示第二の
事実を認定していることは所論の通りである。従つて被告人Bに対する関係におい
ては、被告人本人の公判廷外の自白の外は共同被告人の供述により、又被告人G、
同Dに対する関係においては、すべて共同被告人の供述により、右事実を認定した
ことになるのであるが共同被告人の供述は刑訴応急措置法第一〇条第三項にいわゆ
る「本人の自白」に該らないことは当裁判所の判例とするところであり(昭和二三
年(れ)第四〇九号、同年七月二二日第一小法廷判決)また共同被告人の供述とい
へども、被告人本人の自白と相俟つて犯罪事実の全部を確認するに役立つ限り、同
法条の「本人の自白」の補強証拠となり得ることも当裁判所の判例とするところで
あり(昭和二三年(れ)第一六七号同年七月一九日大法廷判決及び昭和二二年(れ)
第一八八号昭和二三年七月七日大法廷判決参照)、然も本件においては前記の各供
述は互に相俟つて、各被告人等の判示第二の事実を確認するに充分である。(被告
人Fの供述は所論の如く供与者側の供与の点についてのみ証拠とされたものではな
く、その供述が判示第二の事実全部について、他の証拠と綜合的に証拠として採用
されたものである。)従つて、原判決は所論のごとく、前記法条にいわゆる「本人
の自白」を唯一の証拠として、被告人等を断罪したものではないのである。
 次に、仮りに所論の如く被告人等が公判廷において前記の各聽取書の記載と異る
供述をなし、右聽取書における供述を取消したとしても、裁判所は刑事訴訟法第三
四〇条による証拠調をした上、諸般の資料に照らし、右聽取書の記載の方が真実に
合するとの心証を得たときは、これを証拠に採るも差支へなく、そのいづれを措信
し採用するかは事実審裁判所の自由裁野に委されているところである。従つて原判
決には何等所論のような採証の法則に違背した違法はない。
 従つて論旨は理由がない。
 同第二点について。
 裁判所が選挙法違反の事実を認定して、被告人に有罪の判決を言渡すにあたり、
選挙権、被選挙権を停止しないという宣告をするかしないかは、一に事実審裁判所
の自由裁量に委されたところである。かりに所論のような事情かありとしても、原
審が被告人等に対し選挙権、被選挙権を停止しないとの宣告をしなかつたことをも
つて、実験則に反するものとすることはできない。論旨は要するに、原審の専権の
行使を非難するものであつて、上告適法の理由とならない。
 右の理由により刑事訴訟法第四四六条に従い、主文の如く判決する。
 此の判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 長谷川瀏関与
  昭和二三年一二月四日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    藤   田   八   郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛