弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主       文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 控訴人
 (1) 原判決を取り消す。
 (2) 控訴人が,訴外日腸工業株式会社の亡A名義の株式1万2000株及び亡
B名義の株式のうち1500株の株主であることを確認する。
  (3) 被控訴人は,控訴人に対し,前項の各株式の株券につき,被控訴人から
控訴人への名義書換をし,かつ,これを控訴人に引渡せ。  
 (4) 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
 2 被控訴人
   主文と同旨
第2 事実関係
 1 本件訴訟における控訴人の請求の原因は,別紙1のとおりであり,被控訴人
のこれに対する答弁は,別紙2のとおりである。
 2 本件訴訟は,平成12年4月26日,原審である津地方裁判所に提起され,口
頭弁論,弁論準備手続及び証拠調べを経た上,平成13年3月28日の第4
回口頭弁論期日において和解勧告がなされ,その後,同年7月5日の第7回
口頭弁論期日において,別紙3のとおりの訴訟上の和解(以下「本件和解」と
いう。)が成立した。
 3 控訴人は,同年7月23日,本件和解は無効であるとして,本件訴訟につき,
口頭弁論期日の指定を申し立て,本件和解の無効原因を次のとおり主張し
た。
(1) 控訴人は,本件和解が成立したとされる平成13年7月5日の期日におい
て,裁判所から本件和解の和解条項について読み聞け及び説明を受けて
いないし,控訴人及び当時の控訴人訴訟代理人弁護士Cは,本件和解に
応じる意思表示をしておらず,本件和解に同意していないから,本件和解
は無効である。
(2) また,本件和解条項の第2項は,「原告は,被告に対し,本件株式を原告
の死亡時に,被告に対して死因贈与する。」となっているが,「本件株式」が
何をさすものか不明であるから,本件和解は,和解内容が特定できないも
のとして無効である。
 4 被控訴人は,本件和解において,裁判所から和解条項の読み聞けがなさ
れ,控訴人及びC弁護士は本件和解に同意したのであるから,控訴人の本
件和解無効の主張は認められない旨争う。
第3 当裁判所の判断
 1 本件記録によれば,上記第2の1,2の事実及び控訴人が平成13年7月23
日に本件和解が無効であるとして本件訴訟につき口頭弁論期日の指定を
申し立てた事実が認められる。
 2 控訴人は,本件和解が成立したとされる平成13年7月5日の口頭弁論期日
において,裁判所から本件和解条項の読み聞けや説明を受けておらず,控
訴人及びC弁護士は本件和解に同意していない旨主張する。
   しかしながら,控訴人の陳述書(甲30)及び当審における控訴人本人尋問の
結果中には控訴人の主張に沿う記載ないし供述があるものの,乙16,17の
1,17の2の1,2,17の3,18,19,証人Cの証言及び弁論の全趣旨によ
れば,控訴人は,平成13年3月28日以降同年7月5日までの各口頭弁論期
日に,いずれもC弁護士とともに出頭し,裁判所からの和解勧告を受けてい
ること,同年6月5日の期日には,被控訴人側から書面により和解案(乙17
の2の2のうち手書きによる加除修正がなされる前のワープロ文字の内容)
が提示され,同和解案に対する回答につき,C弁護士が控訴人と同月16日
と同月30日の2回にわたって打合せをし,その控訴人との意見交換に基づ
いて,C弁護士が,控訴人側の意見として被控訴人側の和解案を記載した書
面に手書きで加除訂正した書面(乙17の2の2)を作成したこと,その内容
は,控訴人が被控訴人に株式目録記載の株式を控訴人死亡時までの間に
贈与し,被控訴人が控訴人に対し同株式取得までの間毎月5万円を支払うこ
とや日腸工業株式会社が控訴人に対し毎月15万円を支払う等の内容であ
り,本件和解条項とかなり類似した内容であるところ,控訴人はこれに特に反
対していなかったこと,同月30日の打ち合わせの際に,控訴人はC弁護士に
対し,控訴人名義の3000株は既に決まっている控訴人の権利であるから和
解の対象外とし,B名義の3000株のうち1500株と,A名義の1万2000株
のうち6000株については条件によっては被控訴人に譲渡しても良いとの趣
旨の案を新たに示したが,同弁護士は,その内容では被控訴人が同意する
見込みは非常に少ないので,被控訴人が同意しない場合に,控訴人と打合
せをして取りまとめた上記和解案(乙17の2の2,加除訂正後のもの)で和解
するか否かを同年7月5日の期日までに検討しておくよう控訴人に述べたこ
と,C弁護士は,本件和解が成立したとされる同日の口頭弁論期日で,一応
控訴人の上記新たな提案の趣旨に則って被控訴人側に話をしたが,被控訴
人は即座にこれを拒否し,結局,乙17の2の2の書面の内容を中心とした話
合いとなり,最終的に本件和解が成立したこと,同期日における和解の話合
いの最終段階では,控訴人も特に迷った様子もなく本件和解に応じたこと,
以上の各事実がそれぞれ認められる。これらの事実に,控訴人の依頼で訴
訟代理人となったC弁護士が,本件和解条項に同意をしていないにもかかわ
らず,本件和解を成立させることは有り得ないと考えられること,控訴人は,C
弁護士と何回も本件和解に至るまでに打ち合わせを重ね,控訴人と同弁護
士との間の意思疎通がなされていた上に,控訴人は,裁判所の各期日にい
ずれも出頭し,本件和解が成立した口頭弁論期日にも出頭していて,意見を
述べる機会は十分あったから,控訴人の知らないうちに本件和解が成立した
とはおよそ考えられないこと,控訴人は,上記本人尋問において,7月5日の
期日に裁判所のラウンドテーブル法廷の席に座っていたが裁判官の声が聞
こえなかった旨供述しているが,ラウンドテーブル法廷の広さに照らし,控訴
人の供述はにわかに信用できないこと等を考え合わせると,控訴人の本件
和解条項を聞いておらず,同人及びC弁護士がこれに同意していない旨の上
記主張は,採用できない。
 3 次に,控訴人は,本件和解条項第2項の「原告は,被告に対し,本件株式を
原告の死亡時に,被告に対して死因贈与する。」との記載部分の「本件株式」
が何をさすものか,本件和解条項上特定できないから,本件和解は無効であ
る旨主張する。
   しかしながら,同和解条項が,本件和解条項第1項の「被告及び利害関係人
会社は,原告に対し,原告が利害関係人会社の原告名義の株式3000株の
株主であることを確認する。」との条項を受けて上記のとおり記載されている
ことは,別紙和解条項の文脈上明らかであるところ,第2項の「本件株式」が
 第1項の利害関係人会社(日腸工業株式会社)の原告名義の株式3000株
を特定して表示していることは,何ら疑問の余地がなく,その他和解条項全
体を見ても,誤認,混同の可能性がないというべきであるから,「本件株式」
が何をさすものか本件和解条項上特定できない旨の控訴人の主張も採用で
きない。
 4 以上によれば,本件和解には無効となる事由はないから,本件訴訟は平成1
3年7月5日に成立した本件和解によって終了した。
 5 よって,これと同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,こ
れを棄却することとし,控訴費用の負担について民事訴訟法67条,61条を
適用して,主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所民事第2部
裁判長裁判官    大 内 捷 司
裁判官島  田  周  平
裁判官玉  越  義  雄
(別紙は掲載を省略する。)

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