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平成12年(ワ)第2091号特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成13年7月18日
判決
原      告  A
訴訟代理人弁護士  滝 井 朋 子
補佐人弁理士    酒 井 正 美
被      告  ラサ工業株式会社
訴訟代理人弁護士藤 田 一 伯
補佐人弁理士    尾 股 行 雄
主文
1 別紙イ号物件目録及びロ号物件目録記載の掘進機が特許第13889
99号特許権に係る特許発明の技術的範囲に属することの確認を求める訴えを却下
する。
2 被告は原告に対し、金1600万2000円を支払え。
3 原告のその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用は、これを3分し、その2を被告の負担とし、その余を原告
の負担とする。
5 この判決の第2項は仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
1 被告が製作し、使用し、譲渡し、貸し渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出
(譲渡又は貸渡しのための展示を含む)をしている、別紙イ号物件目録記載のイ
(一)号、イ(二)号、イ(三)号の各掘進機「ユニコーンG」、及び別紙ロ号物件目録
記載のロ(一)号、ロ(二)号、ロ(三)号の各掘進機「ユニコーンロング」は、いずれ
も特許第1388999号特許権に係る特許発明の技術的範囲に属することを確認
する。
2 被告は原告に対し、金2373万5000円を支払え。
第2 事案の概要
  本件は、掘進機に関する特許発明に係る特許権をその存続期間満了まで有し
ていた原告が、被告に対し、被告が製造、貸渡し等をしている掘進機が当該特許発
明の技術的範囲に属することの確認を求めるとともに、特許権侵害による損害賠償
を請求した事案である。
1 争いのない事実
(1) 原告は、次の特許権(以下「本件特許権」、その発明を「本件発明」、そ
の特許出願に係る明細書を「本件明細書」という。)を、その存続期間満了(平成
13年7月6日)まで有していた(本件発明に係る特許公報(以下「本件公報」と
いう。)を本判決に別紙として添付する。)。
特許番号     第1388999号
発明の名称    掘進機
出 願 日    昭和56年7月6日
公 告 日    昭和61年12月2日(特公昭61-56391)
登 録 日    昭和62年7月14日
特許請求の範囲
「1 管状本体の先に刃口部を同軸に冠着し、刃口部を本体に対して首振
り可能にし、刃口部の先端にカッターヘッドを回転可能に付設し、カッターヘッド
の後部には大歯車を一体に固定して小歯車と咬み合わせ、小歯車の駆動によりカッ
ターヘッドを回転させるようにした掘進機において、原動機を管状本体内に固定
し、原動機の出力軸と小歯車の軸との間に、自在軸継手とその伸縮機構とを備えた
連結桿を付設して、回転力を伝達するようにした掘進機。
2 刃口部を管状にし、刃口部の管軸方向の長さを管径の3分の1ない
し3分の2としてなる、特許請求の範囲第1項に記載の掘進機。」
(2) 本件発明(特許請求の範囲第1項)は、次の構成要件に分説することがで
きる。
A 管状本体の先に刃口部を同軸に冠着し、刃口部を本体に対して首振り可
能にし、刃口部の先端にカッターヘッドを回転可能に付設し、カッターヘッドの後
部には大歯車を一体に固定して小歯車と咬み合わせ、小歯車の駆動によりカッター
ヘッドを回転させるようにした掘進機において、
B 原動機を管状本体内に固定し、
C 原動機の出力軸と小歯車の軸との間に、自在軸継手とその伸縮機構とを
備えた連結桿を付設して、回転力を伝達するようにした掘進機
(3) 被告は、平成9年ころから、別紙イ号物件目録記載のイ(一)号、イ(三)号
の掘進機「ユニコーンG」及び別紙ロ号物件目録記載のロ(一)号、ロ(二)号、ロ
(三)号物件の掘進機「ユニコーンロング」を各1台製造し、貸し渡し(レンタ
ル)、貸渡しの申出をしてきた(以下、別紙イ号物件目録記載の掘進機を「イ号物
件」、別紙ロ号物件目録記載の掘進機を「ロ号物件」といい、イ号物件とロ号物件
を併せて「被告物件」という。)。
(4) 被告物件は、本件発明の構成要件Aを充足する。
2 争点
(1) 請求第1項に係る訴えの適否
(2) 被告物件は本件発明の技術的範囲に属するか。
(3) 本件特許には明白な無効理由が存在するか。
(4) 損害額
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(請求第1項に係る訴えの適否)について
【原告の主張】
 原告は、特許権者として、被告物件が本件特許権を侵害していることを理由
としてその差止めと損害賠償を求めて本訴を提起したが、本件特許権は、その判決
を待たずに存続期間満了により消滅した。しかし、被告物件が本件特許権を侵害し
ていたか否かの判断は、例えば、刑事告訴をするなどの際には原告にとって極めて
重要な意義を有する。したがって、上記理由により差止請求が認められなくなる以
上、権利侵害の有無について十分審理を尽くした本訴においては、これに代わるも
のとして、侵害の有無についての確認判決がなされるべきであり、原告はこれを求
めるについて法律上の利益を有する。
【被告の主張】
 本件特許権が存続期間満了により消滅した以上、被告物件が本件発明の技術
的範囲に属することの確認を求める利益はない。
2 争点(2)(被告物件は本件発明の技術的範囲に属するか)について
 【原告の主張】
(1) 構成要件B、C充足性
  本件発明の構成要件B、Cにいう「原動機」とは、火力、水力、電力など
のエネルギーを機械的エネルギーに変換する装置の総称であって、熱機関、水力機
関、電動機、風力機などをいい(広辞苑第5版)、電動モータも油圧モータも、本
件発明にいう「原動機」に含まれる。こうした「原動機」は、必要に応じて、更に
減速機などの他の機構を追加的に付加使用することがあるが、その場合にも、「原
動機」はあくまで前記定義に合致するモータを指すものである。
 被告物件は、カッタモータを本体テール部内に固定しているところ、カッ
タモータは電動機であるから、本件発明にいう「原動機」に相当し、また、被告物
件の本体テールは後方筒と共に本件発明の「管状本体」に当たる。したがって、被
告物件は、原動機が管状本体内に固定されているといえる。本件発明では、減速機
については構成要件としていないから、これを使用してもしなくても、またどの場
所に使用しても、構成要件該当性には何の影響もない。
 被告物件は、減速機をカッタモータ(原動機)から切り離し、刃口部最後
部であって、連結桿と小歯車との間に介在させているが、本件発明の構成要件Cを
充足することに変わりはない。
 したがって、被告物件は本件発明の構成要件B、Cを充足する。
(2) 作用効果
ア 本件発明の技術分野における特許出願前の従来技術に係る掘進機では、
原動機を刃口部内に付設していたが、本件発明は、原動機を管状本体の内部に移
し、カッターヘッドと原動機の間に回転力の伝達手段として自在軸継手とその伸縮
機構を備えた連結桿を設けることにしたものである。その結果、本件発明は、次の
ような作用効果を奏し、技術的利点を有するものである。
  ① 従来の掘進機では、大きな重量を持った原動機が、刃口部の中に固定
されていたが、本件発明の掘進機では、原動機が刃口部から離れて、管状本体の後
部内に固定されている。このため、従来の掘進機では刃口部に重量が集中していた
が、本件発明の掘進機では刃口部が軽量となり、管状本体が逆に重量を増加し、掘
進機全体を通じて重量がほぼ均等に分散し、均等化されている。その結果、刃口部
が自重のために従来沈下し勝ちであったのを抑制することができる。したがって、
刃口部を首振りさせて、掘進機の進行方向を定めることが容易になる。
  ② 本件発明では、自在軸継手とその伸縮機構とを備えた連結桿を用いる
ので、カッターヘッドが管状本体に対して傾斜しても、管状本体内の原動機によ
り、常にカッターヘッドを確実に回転させることができる。また、上述のような連
結桿を用いるので、刃口部と原動機との間を大きく離すことができる。したがっ
て、刃口部のあとにある空間を大きく取ることができる。その結果、刃口部への出
入が容易となり、また掘進機内での作業がしやすくなる。
 イ 被告物件は、前記のとおり、本件発明にいう原動機に当たるカッタモー
タを管状本体内に固定しているものであり、その結果、前記アの①、②に記載した
本件発明の作用効果を奏している。
 すなわち、被告物件は、カッタモータ(原動機)を刃口部から管状本体
内に移したことにより、カッタモータの重量分だけ刃口部の重量が軽くなってお
り、このため軽くなった分だけ刃口部の沈下する傾向が抑制され、したがって、そ
れなりに掘進機の進行方向を定めることが容易となっている。また、カッタモータ
を刃口部から管状本体内に移したことにより、刃口部の後の空間が広がり、したが
って、刃口部への出入が容易となり、ビットの取り替えなどの掘進機内での作業が
容易となっている。
【被告の主張】
(1) 構成要件B、C充足性
 本件明細書の特許請求の範囲には、「原動機」の意義が特定されていない
が、本件明細書の発明の詳細な説明によれば、従来の掘進機の刃口部は原動機のた
め重かったので、これを管状本体に移して刃口部を軽量化したものとされている。
この記載からすると、電動機と直結した減速機の場合、それらを一体化したものを
原動機と呼び、これを管状本体に移すことによって、その目的・効果を達成しよう
としたものと考えられる。このことは、本件明細書の発明の詳細な説明及び図面に
おいて、原動機は一貫してカッタモータと減速機とが一体化したものとして特定さ
れ、第1図及び第2図では、原動機7・17の引き出し線がいずれもカッタモータ
ではなく減速機を指し示していることからも裏付けられる。また、掘進機の技術分
野では、電動モータを使用した場合には、掘削に必要な高いトルクを得るために、
減速機はモータと一体的になって駆動源を供給する必須の構成要素である。現在使
用されている種々の掘進機において、カッタモータと減速機は一体のものとして設
置されており、しかも、一体化されたカッタモータと減速機のうちカッタモータを
指示する場合には「原動機」という名称は用いられておらず、「駆動モータ」、
「電動機」あるいは「モータ」といった名称が使用されている。このような技術的
慣行からみても、本件発明の「原動機」という用語が、カッタモータと減速機が一
体化されたものとして特定されていることは疑いない。
 これに対し、被告物件におけるカッタモータは、あくまで電動機だけであ
り、減速機は別に設置されているので、本件発明の原動機に該当しない。被告物件
では、本体フロント(刃口部)が本体テール(管状本体)に対して首振りする際に
本体テールがカッタモータと互いに干渉しないよう、単にカッタモータを本体テー
ル側に移設し、カッタモータと減速機とを自在軸継手とその伸縮機構とを備えた連
結桿で連結したものである。これを本件発明と対比すると、いわば原動機内に連結
桿を介装したものであり、本件明細書添付図面において原動機7・17として指示
されている減速機は、本体フロント(刃口部)に固定されているものであるから、
被告物件は、本件発明にいう原動機を管状本体に移したものではなく、さらには原
動機の出力軸と小歯車との間に連結桿を付設したものでもない。したがって、被告
物件は本件発明の構成要件B、Cを充足せず、本件発明とはその技術的思想を異に
する。なお、被告物件の「後方筒」は、付属機器類が装着されており、付属機器類
は掘進機の基本的構成品ではなく、あくまで補助的なものであるから、後方筒を本
件発明の「管状本体」に含ませるべきではない。
(2) 作用効果
 ア 刃口部の沈下
(ア) 本件発明の掘進機は、主に土砂の層を掘進する装置であるため、刃
口部の重量が重いと、その重量で刃口部が下方に沈下するのを問題とする掘進機で
あり、この課題解決のために原動機を刃口部から管状本体側に移すという構成を採
ったものである。これに対し、被告物件は、主に岩盤層及び礫層を掘進する装置で
あるため、刃口部の沈下が問題になることは少ない掘進機である。
 被告物件におけるカッタモータの総重量は、5台分合計約500㎏な
いし650㎏であるのに対し、本体フロント(刃口部)の重量は、カッタモータよ
りも重量の大きな減速機が依然として固定されている結果、減速機を含めて約6.
0tないし8.4tであり、さらに、カッタモータと減速機との間に連結桿を介装
した結果、組立後の製品たる被告物件においては、右重量に当該連結桿5台分の総
重量(約100㎏)の2分の1程度が別途加算されている。したがって、カッタモ
ータを本体フロント側から本体テール(管状本体)側に移設することによる本体フ
ロントの重量軽減効果はわずかであり、これによっても本体フロント(刃口部)の
重量は、本体テール(管状本体)の重量よりも、約3.5ないし5.0tも大きい
のである。
 前記重量比から明らかなように、被告物件は、本件発明の前記【原告
の主張】(2)ア①の効果(重量に関する効果)を奏し得るものではない。
(イ) また、被告物件においては、カッタモータのみを本体フロント(刃
口部)から本体テール側に移設したことにより、逆に刃口部が沈下しようとする作
用が増大しているから、原告の主張は失当である。
 本体フロント(刃口部)は、本体テールに対して、方向修正ジャッキ
の回転自在継手位置を首振りの支点として沈下しようとする。被告物件において、
本体フロントに減速機及びカッタモータ(首振りの支点から距離l2後方)が取り
付けられている場合は(モータはテールに支持されていない)、本体フロントを沈
下させようとする方向に、減速機を含む本体フロント及びカッタヘッドの総重量
(m1)×首振り支点とカッターヘッドの重心位置との距離(l1)で表される回転
モーメント(M1)が生じ、本体フロントを持ち上げようとする方向に、カッタモ
ータの重量(m2)×支点からの距離(l2)で表される回転モーメント(M2)が
生じるため、本体フロントを支点まわりに沈下させようとする回転モーメントM
は、M=M1-M2となる。しかし、被告物件のようにカッタモータを本体テール側
に移設した場合は、カッタモータが本体テールに支持されている結果(モータの重
量はフロントにはかかっていない)、支点まわりに本体フロントを持ち上げようと
する方向の回転モーメントが生じなくなり、本体フロントを沈下させようとする方
向の回転モーメント(M′=m1×l1=M1)のみが生じることになるため、前記
本体フロントに減速機及びカッタモータが取り付けられている場合(M=M1-M2
)と比べて、支点まわりに本体フロントを沈下させようとする回転モーメントが大
きくなる。
 イ 被告物件は、本件発明の前記【原告の主張】(2)ア②の効果(空間に関す
る効果)も奏しない。
 すなわち、被告物件は、カッタモータと減速機との間に連結桿を設けた
結果、連結桿はカッタモータの出力軸と同じ毎分1000回転以上の高速で回転す
るため、安全上必須の構成として、連結桿の周囲に軸カバーが設けられている。そ
のため、被告物件においては、カッタモータの移設後においても、依然として本体
フロントに固定されている減速機と連結桿の周囲に設けた軸カバーにより、移設前
と比較して本体フロント後方に大きな空間が取れないばかりか、かえって、減速機
からカッタモータまでの長さ寸法が大きくなる結果、軸線方向に狭い空間の範囲が
増加している。例えば、イ(一)、(三)号物件について、カッタモータ移設の前後に
おける本体フロント後方の空間の変化について対比すると、最も内径の大きなイ
(三)号物件では、カッタモータを移設しない場合に、本体フロント後方の空間88
4㎜の範囲に、幅621ないし651㎜の狭い空間が形成されていたのに対し、カ
ッタモータ移設後は、本体フロント後方の空間1513㎜の範囲に、幅621ない
し670㎜の狭い空間が形成されるようになった。また、内径の最も小さいイ(一)
号物件においては、カッタモータを移設しない場合に、本体フロント後方の空間8
07ミリの範囲に、幅516ミリの狭い空間が形成されていたのに対し、カッタモ
ータ移設後においては、本体フロント後方の空間1356㎜の範囲に、幅516な
いし550㎜の狭い空間が形成されるようになった。
 したがって、被告物件は、本件発明における「刃口部のあとにある空間
を大きく取ることができる。その結果、刃口部への出入が容易となり、また掘進機
内での作業がしやすくなる」との効果を奏し得ない。
3 争点3(本件特許には明白な無効理由が存在するか)について
【被告の主張】
 本件特許には次のとおり無効理由が存在することが明らかであるから、本件
特許権に基づく損害賠償請求は、権利の濫用であり許されない。
 本件特許出願前に頒布された刊行物である米国特許第3907365号明細
書(乙12の1、以下「米国明細書1」という。)図2及び図3には、掘削時にト
ンネル内面に固定されるシールド10内に、内側シールド11が複数の複動ピストン-
シリンダユニット16によって軸線方向に進退自在に設けられ、この内側シールド
11の先端に、支持リング21が複数のピストン-シリンダユニット28、29によって相
対的に全方向に移動可能に設けられ、この支持リング21にカッタ片12を有するカッ
タヘッド22が回転自在に設けられたトンネル掘削機の構成が記載されている。ま
た、同掘削機においては、カッタヘッド22の歯付リング27に、支持リング21に回転
自在に設けられたピニオン24が噛合され、このピニオン24を回転させるモータ25が
内側シールド11に設けられるとともに、これらピニオン24とモータ25の出力軸と
が、関節軸(カルダン軸33)を介して互いに連結されている構成も記載されてい
る。
 同掘削機は、本件発明も対象とするシールド工法に用いられるトンネル掘削
機であり、シールド10は掘削時にトンネル面に拘束されるもので、前進する内側シ
ールドの反力を受けるものであるから、本件発明と対比すると、「内側シールド
11」が本件発明における「管状本体」に相当し、「支持リング21」が「刃口部」に
対応する。また、支持リング21がユニット28、29によって移動した際には、モータ
25とピニオン24との間においては当然相対角度のみならず軸間距離も変化するか
ら、明示はないものの、関節軸(カルダン軸33)が伸縮機構を有することは当業者
において明白である(そのような構成は実公昭54-41882号実用新案公報
(乙13)にも記載されている。)。
 なお、米国明細書1記載の掘削機においては、支持リング21が、複数のピス
トン-シリンダユニット28・29を制御することにより、ロッド23後端を回転中心と
して首振り可能に設けられており、一方、本件発明においては、単に刃口部が首振
り可能に設けられていることのみを特定しているから、これらは互いに同一の構成
である。ちなみに、本件明細書には、刃口部12が、方向制御ジャッキ13により軸線
に対して傾斜するように首振り可能となる実施例が記載されているが、仮に特許請
求の範囲において、刃口部の首振り状態を上記実施例記載の構成に限定するとして
も、このような構成は、本件特許出願前に頒布された刊行物である米国特許第36
72726号明細書(乙11、以下「米国明細書2」という。)に示されるよう
に、本件特許出願前における公知の技術である。
 そうすると、本件発明は、米国明細書1に記載された発明と実質的に同一で
あるか、又は、米国明細書1と、米国明細書2及び/又は実公昭54-41882
号実用新案公報とを組み合わせることにより、当業者であれば容易に発明すること
ができたものである。
 したがって、本件特許は、特許法29条1項3号又は同条2項の規定に違反
してされた無効理由を有することが明らかである。
【原告の主張】
 米国明細書1及び2に記載された掘進機は、いずれも、外側シールドの中に
内側シールドを入れ子式に嵌め込んで伸縮可能とした二重シールド構造の掘進機で
ある。その掘進様式は、まず外側シールドを固定して内側シールドを伸ばし、内側
シールドの先に付設したカッターヘッドで地山を掘削し、次いで内側シールドを固
定し、外側シールドを進行させて長さを縮め、これを繰り返して掘進するという、
尺取虫様に進行するものである。したがって、この掘進機は、内側シールドが先行
して掘削した空洞内に外側シールドを誘導して進行するので、外側シールドの沈下
は起こり得ない。また、この掘進機は、土砂が崩れるような軟弱地盤で使用される
ことは当初から予定されていない。
 したがって、これら二重シールドの掘進機には、土砂が崩れ落ちるような軟弱
地盤で使用する際に生ずる掘進機の沈下を防ごうとする思想は初めから存在しな
い。また、この掘進機は軟弱地盤の際には避けることのできない、土砂の掘進機内
への流れ込みを想定していないから、掘進機の内部に隔壁を設けていない。それ故
に、この隔壁を設けることによって必然的に要求される隔壁用のドアを付設する必
要がない。
 これに対し、本件発明の属する型の掘進機は、日本においてはよく見られる軟
弱地盤にも用いられることが出発点である。それは、管状本体が一重シールドで構
成されていて、その先端に付設された刃口部は管状本体に対して首振り可能とさ
れ、進むべき方向に刃口部を向けて全体を一体として推進する。したがって、この
型の掘進機は、刃口部を取り巻く地盤が軟弱となって刃口部を支えきれなくなる
と、刃口部が沈下することを避けられない。さらに、この型の掘進機は、軟弱地盤
でも用いられることが予定されているから、地山が崩れて土砂が掘進機内に進入す
る場合に備えて、刃口部の後に隔壁を設けるが、この隔壁には、人が掘進機内の後
方から先端のカッターヘッドへ接近することを可能とするためにドアを付設してい
る。
 このように、前記公知文献上の掘進機は、本件発明の掘進機とは、そもそも掘
削する地盤が異なり、それ故に掘進機の構造及び掘進機構が全く異なるから、これ
らの公知文献に本件発明の技術・構成が記載されているとはいえない。
 米国明細書1と本件発明の構成の対比において、本件発明にいう「管状本体」
に相当するものは、「内側シールド11」だけでなく、「外側シールド10」も加えた
ものであり、また、「支持リング21」は、カッターヘッドを支える部品にすぎない
から、本件発明の「刃口部」には相当するものではない。
 4 争点(4)(損害額)について
 【原告の主張】
   次の(1)を主位的に主張、予備的に(2)及び(3)を択一的に主張(いずれも損害
金内金として請求第2項記載の金員を請求)。
  (1) 本件特許権の存続期間中に被告が製造したことを自認している下記各物件
の基礎価格は、被告の価格表によれば次のとおりである。
    イ(一)号物件     105,700,000円
    イ(三)号物件     121,500,000円
    ロ(一)号物件     117,400,000円
    ロ(二)号物件     124,700,000円
    ロ(三)号物件135,000,000円
     合 計  604,300,000円
被告は、前記各物件を生産することにより本件特許権を侵害したものであ
るから、原告は、被告がこれらを販売して代価として利益を一度に取得したか、又
は、貸渡しを繰り返すことによりレンタル料として利益を逐次取得したかにかかわ
らず、本件特許権侵害による損害賠償として前記製品価格を基礎として実施料相当
額を請求できるものというべきである。本件発明の実施に対し受けるべき実施料の
額は、前記製品価格の5%を下らない。したがって、原告は被告に対し実施料相当
額として3021万5000円の損害賠償請求権を有する。
  (2) 被告は、平成10年9月から平成12年3月までの間に、被告物件(イ
(二)号物件を除く。)のいずれかを第三者に対し合計4082m使用させ、そのレ
ンタル料として少なくとも3億2004万円の収益を得た。レンタル料金はその7
割が粗利益であるから、被告は少なくとも2億2402万8000円の粗利益を得
た。原告は、同額の損害賠償請求権を有する。
  (3) 被告は、(2)記載のとおり、被告物件(イ(二)号物件を除く。)のレンタ
ル料として少なくとも3億2004万円の収益を得たところ、このレンタル料金を
基礎にした原告が受けるべき実施料はその15%である。したがって、原告は48
00万6000円の損害賠償請求権を有する。
  【被告の主張】
  (1) 【原告の主張】(1)のうち被告が被告物件(イ(二)号物件を除く。)を合
計5台製造したことは認めるが、その余は争う。原告は、本件特許権を自らは実施
せず、代表取締役を務める株式会社推研に実施させていたものであるから、逸失利
益の損害賠償を請求できない。
  (2) 同(2)、(3)のうち、被告が被告物件(イ(二)号物件を除く。)を原告主張
の数量を第三者にレンタルし、主張の収益を上げたことは認めるが、その余は否認
する。
第4 争点に対する判断
 1 争点(1)(請求第1項に係る訴えの適否)について
   請求第1項に係る訴えの適否について検討するに、原告のこの訴えは、口頭
弁論終結時には既に存続期間が満了し消滅した本件特許権の特許権者であった原告
が、被告において本件特許権の存続期間中に製造等をした被告物件が本件発明の技
術的範囲に属することの確認を求めるものである。原告と被告の間で被告物件が本
件発明の技術的範囲に属するかどうかについて争いがあっても、技術的範囲に属す
るか否かは事実上の判断であって、判断の対象は権利又は法律関係ではない(しか
も、特許権が消滅している以上、過去の事実関係である。)。したがって、特許権
侵害の有無について紛争を生じている場合において、その紛争が技術的範囲の属否
の争いに起因しているときでも、その紛争を解決するためには特許権侵害による損
害賠償の訴え又はそのような請求権の不存在確認の訴えを提起する必要があり、か
つ、それで足りるのであって、そのほかに技術的範囲に属することの確認の訴えを
認めることはできず、その必要もない(登録意匠についての権利範囲確認の訴えの
適否について判示した最高裁昭和47年7月20日判決・民集26巻6号1210
頁参照)。よって、請求の趣旨第1項に係る訴えは不適法である。
 2 争点(2)(被告物件は本件発明の技術的範囲に属するか)について
  (1) 被告は、本件発明の「原動機」は、電動機と直結した減速機の場合、それ
らを一体化したものを指すと主張する。しかし、「原動機」という用語は、原告が
主張するように、火力、水力、電力などのエネルギーを機械的エネルギーに変換す
る装置の総称であって、熱機関、水力機関、電動機、風力機などをいうものであ
り、また、「減速機」とは回転速度を減少させ、動力を伝達する装置をいうから、
原動機と減速機とは区別された概念である。このように、本件発明の「原動機」
は、特許請求の範囲に記載された用語自体からその技術的意義が明らかである。電
動機(モータ)は原動機の一種であるが、電動機と減速機が直結されている場合で
も、両者は一体として原動機と称されるわけではないし、掘進機において電動機と
減速機が離れて設置されている場合に、電動機のみで原動機に当たることは明らか
である。本件明細書の記載をみても、減速機に触れた記述は一切なく、本件発明に
いう「原動機」が減速機も含めたものとして特定されることを示唆するものはな
い。被告は、明細書添付の図面第1図、第2図の引出線7、17がいずれも減速機を
指示していると主張するが、これら図面(第1図は従来の掘進機の縦断面図、第2
図は本件発明に係る掘進機の縦断面図)上その趣旨が明確であるともいえないし、
この点について明細書中に格別の説明もなく(本件公報参照)、仮に被告の主張す
るとおりであるとしても、電動機と減速機が直結されて一体になった場合にこれを
全体として原動機と称したものと解し得る余地があるにすぎず、電動機と減速機が
分離されている場合にも、減速機まで本件発明の原動機に含めなければならない根
拠とはならない。本件発明においては、減速機は構成要件に含まれていないから、
これを使用するかしないか、また使用するとしてどの場所にどのような態様で使用
するかは、構成要件該当性の判断に影響しないものというべきである。
    被告物件においては、当事者間に争いのない別紙イ号物件目録及びロ号物
件目録の記載によれば、カッタモータ5個が本体テール部内に固定されているもの
であるところ、カッタモータは原動機に当たり、また、本体テールが本件発明の
「管状本体」に該当することは明らかである(被告も認めている。)から、被告物
件においては、原動機が管状本体内に固定されているといえる。したがって、被告
物件は、本件発明の構成要件Bを充足する。
    また、前記各目録の記載によれば、被告物件は、「カッタモータの出力軸
と減速機との間を、自在軸継手とその伸縮機構とを備えた連結桿であるユニバーサ
ルジョイントで連結し、減速機を介して小歯車の軸に回転力を伝達するようにした
掘進機」であるから、本件発明の構成要件Cと比べると、減速機を介するという点
が加わっただけで、ほかは同一であるということができ、減速機を介したからとい
って、構成要件Cの構成を備えることには変わりがない。したがって、被告物件
は、本件発明の構成要件Cを充足する。
 (2) 作用効果について
   ア 刃口部の重量軽減の効果
    a 本件明細書の発明の詳細な説明の欄には次のような内容の記載のある
ことが認められる(甲2)。
      本件発明は、シールド工法や推進工法に用いられる掘進機に関する発
明であるところ、従来の掘進機(本件公報第1図)では、原動機が刃口部内に付設
されていた。その理由は、原動機がカッターヘッドを回転させるためのものである
から、これをカッターヘッドの近くに設けるのが便利であり、逆に原動機を管状本
体内に設けたのでは、刃口部を管状本体に対して首振りさせるために、原動機と小
歯車との連結が複雑になるからである。しかし、本件発明の発明者は、従来の掘進
機では、原動機を刃口部に設けているために、かえって、原動機のために刃口部が
重くなり、刃口部が重力によって下方に沈下する傾向を生じ、また、刃口部を動か
すのに大きな力を要し、このため進行方向の制御が予期したとおりになり得ないと
いう欠点のあることを見出した。本件発明は、小歯車を回転させるための原動機を
管状本体の内部に移し、これに伴い、カッターヘッドが管状本体に対してある程度
傾斜しても、カッターヘッドが原動機によって回転されることを確実にするため
に、カッターヘッドと原動機との間に、回転力の伝達手段として、例えばユニバー
サルジョイントとスプラインとを備えた連結桿を設けることとした。
      その結果、本件発明の掘進機(本件公報第2図)が従来の掘進機と異
なる点の一つが次の点である。「従来の掘進機では、大きな重量を持った原動機7
が、刃口部2の中に固定されていたが、この発明の掘進機では、原動機17が刃口部
12から離れて、管状本体11の後部内に固定されている。このため、従来の掘進機で
は刃口部2に重量が集中していたが、この発明の掘進機では刃口部12が軽量とな
り、管状本体11が逆に重量を増加し、掘進機全体を通じて重量がほぼ均等に分散
し、均等化されている。その結果、刃口部12が、自重のために従来沈下し勝ちであ
ったのを抑制することができる。従って、刃口部12を首振りさせて、掘進機の進行
方向を定めることが容易となる。」(本件公報4欄4行~16行)
    b 被告物件は、前記のとおり、本件発明の原動機に当たるカッタモータ
を刃口部でなく、管状本体である本体テール部内に設けたものである。被告の主張
によれば、被告物件におけるカッタモータの総重量は、5台分合計約500㎏ない
し650㎏というのであるから、重量の大きい減速機が刃口部に固定されているこ
とによりその効果が減殺されているとはいえ、カッタモータが刃口部から管状本体
に移設されていることにより、刃口部に原動機(被告物件でいえばカッタモータ)
を設けた従来の掘進機と対比すれば、刃口部と管状本体の重量の均等化に無視でき
ない寄与をしており、その結果、刃口部の沈下の抑制の効果を奏しているものと認
められる(刃口部の沈下の有無・程度はその重量と地盤支持力との相対関係による
が、刃口部が軽くなることによって軟弱地盤における沈下抑制に寄与することは明
らかである。)。証拠(乙3の1ないし5、乙7の1ないし5、乙15の1ないし
5)によれば、被告物件においては、刃口部の重量が大きく、イ(一)号物件では、
カッタディスクと本体フロント(両者で刃口部)の重量が約6050㎏、本体テー
ルの重量が約2500㎏、後方筒の重量が約2800㎏であること(減速機と電動
機の重量は別)、同様にイ(三)号物件は順に約8400㎏、約3400㎏、約28
00㎏であり、ロ(一)号物件は順に約7000㎏、約2500㎏、約1400㎏で
あること(なお、カッタモータは1個約100ないし150㎏、減速機は1個11
0ないし150㎏)が認められる。被告物件においては、本体テールの後ろに油圧
ユニットその他の付属機器類を収納する後方筒が存在するところ(別紙イ号物件目
録及びロ号物件目録添付の各図面参照)、本件発明の掘進機は刃口部と管状本体と
からなり、その重量の均等化を問題にするものであるから、本件発明との対比の上
では本体テールと後方筒を含めたものが本件発明の管状本体に相当するものという
べきである。そうすると、上記重量の対比からみても、被告物件でカッタモータを
刃口部でなく管状本体内に設置したことにより、相応の重量の分散、均等化が図ら
れているものとみることができる。
    c 被告は、本件発明の掘進機は、主に土砂の層を掘進する装置であるの
に対し、被告物件は、主に岩盤層及び礫層を掘進する装置であるため、刃口部の沈
下が問題になることは少ない掘進機であると主張する。そこで検討するに、甲4に
よれば、被告物件のカタログでは、イ号物件(ユニコーンG)について、「概要」
欄に「主に岩盤層を対象とした掘進機」であること、「特長」欄に「カッタ交換に
より軟岩から硬岩まで幅広い岩質の掘削が可能」であることが記載されており、ロ
号物件(ユニコーンロング)については、「概要」欄に「本掘進機は長距離推進を
対象とした掘進機」であり、「長距離推進においては、当然ながら普通土から巨
礫・岩さらにこれ等を含む互層地盤に遭遇しますが、地層に応じたカッタを機内か
ら取り替えながら長距離推進に対応します。」と、「特長」欄に「カッタ交換によ
り普通土から巨礫・岩、互層地盤の推進が可能です。」と記載されていることが認
められる。また、乙8、9の各1ないし3によれば、被告従業員がイ号物件及びロ
号物件をそれぞれ紹介した論文において、イ号物件の適用土質として、主として岩
盤層としながら、「岩盤層から砂礫層や軟弱土層に変化したり複合層等の複雑な土
質条件でも適用できる」(66頁)と記載されており、ロ号物件の工法の特長の項
に「普通土~砂礫層で呼び径の約100倍……の曲線推進が可能である」(149
頁)と記載され、適用土質の項に「次の土質条件では補助工法を必要とする。(1)N
値が3以下の軟弱層で方向修正やカーブ推進のための地盤反力が不足する。」(1
51頁)と記載されていることが認められる。これらの事実に照らせば、被告物
件、特にイ号物件は、確かに主として岩盤層を対象にした掘進機であるといえる
が、軟弱土層でも適用可能であるとされており、本件発明の作用効果である刃口部
の沈下の抑制が無関係なものとはいえない。
dなお、被告は、被告物件においては、カッタモータのみを本体フロン
ト(刃口部)から本体テール側に移設したことにより、方向修正ジャッキの回転自
在継手位置(首振りの支点)のまわりに本体フロントを持ち上げようとする方向の
回転モーメントが働かなくなり、逆に刃口部が沈下しようとする作用が増大してい
ると主張する。
 同被告の主張は、掘進機を支持する力が「首振りの支点」一点のみに
かかり、かつ、「カッタモータと減速機が刃口部にある場合」にも、減速機が「首
振りの支点」より前方に、カッタモータが支点より後方にあることを前提にしてい
る。しかし、本件明細書の詳細な説明によれば、本件発明に係る「掘進機」とは、
「シールド工法や推進工法に用いられ」(本件公報1欄17~18行)、「孔の全
断面を機械力によって削り取り、削り取った土砂を後方に運び出しつつ、自から進
行方向を定めて前進していく機械掘りのもの」(同1欄19~22行)であり、
「管状本体1と刃口部2との間に複数個のジャッキ3が付設され、各ジャッキ3の
伸び具合により、刃口部2が本体1に対して傾斜自在にされた」(同2欄1~4
行)ものである。このような掘進機は、地中を進行する際には、刃口部と管状本体
をジャッキで一体化した底面全体が地盤支持力により支えられているのであり、方
向修正ジャッキの回転継手位置(被告のいう「首振りの支点」)一点のみで支持さ
れているものではない。このように、同被告の主張は、掘進機が使用される場合に
かかる地盤支持力を無視するもので採用できない。
   イ 空間に関する効果
    a 本件明細書の発明の詳細な説明の欄には、本件発明の掘進機と従来の
掘進機との別の相違点の一つとして、「上述のような連結桿を用いるので、刃口部
と原動機との間を大きく引き離すことができ、従って、刃口部のあとにある空間を
大きく取ることができる。その結果、刃口部への出入が容易となり、また掘進機内
での作業がしやすくなる。」(本件公報5欄10行~15行)との記載があること
が認められる(甲2)。
    b 被告は、被告物件においては、連結桿の周囲に軸カバーが設けられて
いるため、カッタモータの管状本体側への移設前と比較して本体フロント後方に大
きな空間が取れないばかりか、かえって、減速機からカッタモータまでの長さ寸法
が大きくなる結果、軸線方向に狭い空間の範囲が増加している旨主張する。なるほ
ど、別紙イ号物件目録及びロ号物件目録添付の各図面によれば、被告物件には、連
結桿の周囲に軸カバーが設けられていることが認められる。しかし、これらの各図
面の記載と乙16及び弁論の全趣旨によれば、被告物件の連結桿の軸カバーは、カ
ッタモータに比べれば小径である上、ボルトで本体テール部に取り付けられている
ので、必要に応じ取り外し可能であると認められ、このことと甲5の1ないし3に
よれば、被告物件においても、カッタモータを刃口部ではなく管状本体(本体テー
ル)に設けたことにより、そうでない掘進機に比べれば作業空間を広く取ることが
できていると認められる。したがって、被告物件は刃口部と原動機を引き離すこと
により刃口部のあとの空間を大きく取ることができるという前記の本件発明の作用
効果と同様の作用効果を奏しているものというべきである。
  (3) 以上によれば、被告物件は、本件発明の技術的範囲に属する。
 3 争点3(無効理由)について
   乙12の1、2によれば、米国明細書1に記載された発明は、外側シールド
と内側シールドの二重シールドからなるトンネル掘削機に関するものであり、内側
シールド11は外側シールド10に対して軸方向に変位できるようになっており、カッ
ターヘッド22を内側シールド11の先端に接続した支持リング21によって支持し、支
持リング21と内側シールド11の間に複数設けられたピストン-シリンダユニット
28、29によって支持リング21を一定範囲内で全方向に移動可能にしており、カッタ
ヘッド22に設けられた歯付リング27と支持リング21に支持されるピニオン24が噛合
し、内側シールド11内に設けたモータ25によって駆動されることによってカッター
ヘッド22が回転可能となっており、また、図3では、モータ25の出力軸を関節軸す
なわちカルダン軸33を介して連結する構成が示されていることが認められる。米国
明細書1に記載された発明に係る掘進機は、前記のとおり、二重シールド構造のも
のであり、原告主張のような掘進動作をするものであるが、被告が本件発明の管状
本体に相当すると主張する内側シールド11は、外側シールド10によって保持されて
いるのであるから、そもそも、本件発明のように、刃口部と管状本体との重量の分
散というような課題とは無関係である。また、被告が本件発明の刃口部に相当する
と主張する米国明細書1における支持リング21は、カッターヘッドを支持する内側
シールド先端に取り付けられた部材にすぎないから、管状本体との関係でその重量
や軸方向長さが問題になる本件発明の刃口部とは異なるものというべきである。こ
のように、米国明細書1に記載された発明は、本件発明とは基本的な構成が異なっ
ている。
   また、米国明細書2に記載された発明も、二重シールド構造の掘進機に関す
るものであるから(乙11)、やはり、本件発明とは基本的な構成が異なってい
る。
   前記事実からすれば、米国明細書1に本件発明と実質的に同じ技術が記載さ
れているとはいえないし、これらの明細書及び実公昭54-41882号実用新案
公報(乙13)を組み合わせることによって当業者が容易に本件発明をすることが
できたとも認められない。したがって、本件特許に無効理由があることが明白であ
るとはいえない。
 4 争点4(損害額)について
   被告が、本件特許権の存続期間内に被告物件(イ(二)号物件を除く。)を製
造し、これを第三者に貸し渡してきた(レンタル)こと、その使用数量は合計40
82メートルであり、レンタル料として3億2004万円の収益を得たことは当事
者間に争いがない。
   原告は、主位的には、被告物件の価格表による基礎価格を基準として実施料
相当額を請求するものであるところ、被告は、被告物件を製造したものの、これを
販売したわけではないのであるから、逸失利益の算定に当たって、販売する場合の
価格に基づいて実施料相当額を算出することはできない。
   次に、被告は、前記のとおり被告物件(イ(二)号物件を除く。)を第三者に
貸し渡して収益を得ているところ、原告は特許権者ではあったが、自ら本件発明を
実施していたことの主張立証はないから、上記貸渡しによって被告が得た利益をも
って原告の損害の額と推定することはできないものというべきである。また、この
点を措くとしても、被告が得た利益の額を具体的に認め得る証拠はない。
   一方、原告は、被告の上記被告物件の製造と貸渡し行為により本件特許権を
侵害されたものであるから、実施料相当額を請求できるものというべきである。本
件発明は、前記のとおり、従来の掘進機が原動機を刃口部に設けていたことによる
欠点を、原動機を管状本体に移すことによって解決しようとしたものであるとこ
ろ、被告物件は主として岩盤層を対象としたり(イ号物件)、長距離推進を対象と
する(ロ号物件)掘進機であって、刃口部の重量が大きく、また、減速機が原動機
(カッタモータ)と切り離されて刃口部内にあることとも相まって、被告物件が本
件発明と同一の構成を採ったことによるその効果の寄与はそれほど大きくないと推
認されること、その他本件に現われた諸般の事情を勘案すると、原告が受けるべき
実施料としては、レンタル料の5%が相当であると認める。甲16(原告の陳述
書)には、レンタル料金の15%が実施料として支払われるべきである旨の記載が
あるが、特段の根拠が示されているわけではなく、採用できない。そうすると、原
告が被告に請求できる損害額は、前記3億2004万円の5%に当たる1600万
2000円となる。
 5 以上によれば、請求第1項に係る訴えは不適法であるから却下し、請求第2
項は上記金額の支払を求める限度で理由があるから、この限度で認容し、その余は
失当であるから棄却する。
  大阪地方裁判所第21民事部
           裁判長裁判官     小  松  一  雄
              裁判官     阿  多  麻  子
              裁判官     前  田  郁  勝
イ号物件目録 イ(一)号図面 イ(二)号図面 イ(三)号図面
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