弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1被告株式会社A,同B株式会社,同C,同有限会社J及び同Hは,原告に対
し,連帯して,5487万5000円及びこれに対する平成18年6月8日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2原告のその余の被告らに対する請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は,原告と被告株式会社A,同B株式会社,同C,同有限会社G及
び同Hとの間に生じたものは,同被告らの負担とし,原告とその余の被告らと
の間に生じたものは原告の負担とする。
4この判決は,第1項につき,仮に執行することができる。
事実
第1請求の趣旨
被告らは,原告に対し,連帯して,5487万5000円及びこれに対する平
成18年6月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2当事者の主張
1請求原因
(1)当事者
ア原告
原告は,農業を若干営む主婦である。
イ被告ら
(ア)被告株式会社A以下被告Aというは平成14年5月9日(「」。),
に設立された①真珠の養殖業,②宝石・貴金属・装身具の加工業及び販
売業,③産地直送の食料品の販売業等を目的とする株式会社であり,パ
ンフレットには真珠の総販売元と記載されている。
(イ)被告B株式会社以下被告Bというは平成13年12月2(「」。),
0日に設立された①魚介類の養殖及び販売業,②飲食店業,③不動産の
売買,賃貸及びその仲介並びに所有・管理及び利用,④真珠・宝石等を
利用した指輪・ネックレス等のアクセサリーの販売業等を目的とする株
式会社であり,パンフレットには真珠養殖と記載され,被告Aと同一住
所地に本店を置いている。
(ウ)被告C以下被告Cというは被告A及び同Bの代表取締役(「」。),
であり被告D以下被告Dというは被告A及び同Bの取締役,(「」。),
であり被告E以下被告Eというは被告A及び同Bの取締役,(「」。),
,(「」。),。であり被告F以下被告Fというは被告Bの監査役である
(エ)被告有限会社G以下被告Gというは平成16年1月15(「」。),
日に設立された健康機器,健康食品,絵画,貴金属,消防設備機器(ス
プレー式消化器)の販売等を目的とする有限会社である。
(オ)被告H以下被告Hというは被告Gの取締役であり被告(「」。),,
I(以下「被告I」という)は被告Hの夫である。。
(2)主位的請求原因
ア不法行為1(平成15年12月から平成17年1月までの現金詐欺)
(ア)被告らは,共謀して,東北地方等の不特定多数の中高年女性から投
資金名下に金員を詐取することを企て,原告ほか多数の者に対し,配当
金を支払ったり配当として100万円相当の真珠セットを交付する意思
も能力もなく,また受領した投資金について全額までもは返還する意思
も能力もないにもかかわらず,これがあるかのように装い,被告らの真
珠の養殖,加工,商品化及び販売を一貫して行う事業(以下「本件真珠
事業というは投資金の5倍もの利益を生む事業であるので105」。),
万円を投資すれば,直ちに100万円相当の真珠を入手できるほか,1
年半後までに投資金全額が返還され,22万円の配当金も受領できると
の虚偽の事実を申し向け,あたかも,本件真珠事業に1口105万円を
投資すれば,直ちに100万円相当の真珠を入手でき,かつ,1年半後
までに投資金全額の返還を受け22万円の配当金も受領できるものと信
じさせた。すなわち,
a被告ら被告Gを除くは平成15年ころ東北地方等の多数の(。),,
者から真珠生産等の事業への投資名目に資金を集めることを謀議し,
被告Bを真珠養殖会社,被告Aを総販売元,被告Gの前身で屋号をJ
と称する個人を販売店の一つとすることの役割を決め,行く行くはギ
ャラリー(宝石販売店)も出店すると触れ込むこととした。
(。),,b被告ら被告Gを除くは被告Gを平成16年1月15日設立し
被告Hが代表者に就任し,被告Gが真珠セットの販売の中心であるよ
うな外形を整えた。
c個人である被告らの中心は,被告Cであり,法人である被告らの中
心は被告Aであり被告Hがその総括本部長分離前相被告K以,,,,(
下Kというがその北海道・東北地区本部長分離前相被告L以「」。),(
下「L」という)がその北海道・東北地区部長であった。。
d被告らは,資金を集める方法として,投資者をA会に入会させ,被
告Aをその主催者として表示したり,M株式会社をその主催者として
表示したりした。また,被告らは,資金を集める方法として,投資者
を真珠の会N以下真珠の会というに入会させ真珠の会総代(「」。),
表との肩書を付した被告Cをその主催者として表示したりした。
eこのように,被告らは,多数の者から本件真珠事業への投資金名下
に金員を詐取することとし,形式的には,被告A又は同Gとの間に真
珠売買契約書を作成させたが,被告らも,原告を含む多数の者も,こ
の取引は,真珠の売買ではなく,あくまでも投資であって,真珠はい
わば投資に対する配当の意味を有すると理解していた。
f被告らは,原告を含む多数の者に対し,平成15年11月初めころ
,,,から平成17年1月末ころまでの間にLを通じて個別にあるいは
食事会等の集まりの際に,本件真珠事業は投資金の5倍もの利益を生
む事業であるから,投資者が105万円を投資すれば,直ちに100
万円相当の真珠セットを送付し,1年半後までに毎月分割払の方法で
投資金を全額返還し,22万円の配当金も支払う旨虚偽の事実を告知
して,投資を勧誘した。
(イ)被告らは,上記の勧誘によって原告に上記虚偽の事実を信じさせ,
その結果,別紙1一覧表の原告名義の①の番号1ないし17,原告の母
O名義の①の番号1ないし6及び原告の長女P名義の①の番号1ないし
10に記載のとおり,原告をして,原告名義で17回,原告の母O名義
で6回,原告の長女P名義で10回の合計33回にわたり,L宅におい
て,合計3465万円の現金をLに直接手渡す方法で投資させ,これに
よって原告から同額を詐取した。
()イ不法行為2平成16年2月から同年12月までのクレジット契約詐欺
(ア)被告らは,共謀して,原告ほか多数の者に真珠の売買に関するクレ
ジット契約を締結させ,これらの者にクレジット会社に対する分割金支
払債務を負担させた上,クレジット会社から真珠売買代金名下に金員を
詐取することを企て,原告ほか多数の者に対し,クレジット代金相当額
の全額までもは送金する意思も能力もないにもかかわらず,これがある
かのように装い,Lを通じて個別に,あるいは,食事会等の集まりの際
に,以下のように虚偽の事実を告知して,投資を勧誘した。
a投資者が販売店を被告Gとする真珠(1セット100万円,消費税
別途5万円)の売買契約を締結し,その売買代金及び消費税の全額に
ついてクレジット会社とクレジット契約を締結すれば,クレジット会
社から被告Gに売買代金相当額が支払われる。
b他方,上記契約を締結した投資者はクレジット会社に対して,5年
,,,間毎月の分割金支払債務を負担することになるが被告らにおいて
あらかじめ上記契約を締結した者の銀行等の口座に,毎月の分割金相
当額を振り込み,自動引き落としでクレジット会社に対する分割金を
,。支払うので上記契約を締結した者には何らの金銭的負担も生じない
c上記契約をした投資者は被告らから真珠セットを受け取るので,上
記のとおり契約書に署名するだけで,何らの経済的負担もなく,10
0万円相当の真珠セットを手に入れることができる。
d上記契約をした投資者は,被告らから契約後19か月目にクレジッ
ト会社に対する残りの分割金全額の支払を受けるので,5年間も債務
を負担することにはならない。
e上記の形態で投資をすれば,本件真珠事業はさらに拡大して,投資
者により多くの配当ができるようになる。
(イ)被告らは,上記の勧誘によって原告に上記虚偽の事実を信じさせ,
その結果,別紙1一覧表の原告名義の③の番号1ないし3並びに原告の
長女P名義の③の番号1及び2に記載のとおり,原告をして,原告名義
で3回,原告の長女P名義で2回の合計5回にわたり,売買契約及びク
レジット契約を締結させ,これによってクレジット会社から売買代金名
下に525万円を詐取し,原告に同額の債務を負担させた。
()ウ不法行為3平成17年3月16日から同年6月27日までの現金詐欺
(ア)被告らは,それまでの形態では,投資者に詐取した金員から投資金
及び配当金の一部を返還する必要があり,投資者に交付する真珠セット
の費用も嵩んでいた上,新たな会員を加入させるごとに礼金を支払う必
要があり,当初から予定された事態ではあるものの,いずれ投資者に対
する毎月の分割金の支払ができなくなり,投資者がだまされていること
に気付いて社会問題化することが必至の状況にあったので,平成17年
2月ころ,さらに,共謀して,被告らを信じている投資者から,大掛か
り,かつ,短期に金員を詐取することを企て,平成17年2月10日こ
ろから同年6月末ころまでの間に,原告ほかの投資者に対し,全額を一
時に返還する意思も能力もないにもかかわらず,これがあるかのように
装い,Lを通じて個別に,あるいは,食事会等の集まりの際に,以下の
ように虚偽の事実を告知して,投資を勧誘した。
a多くの者に投資をしてもらい,本件真珠事業が順調に推移し,予想
外の利益を生んでいるので,19か月後までに投資金全額を返還し配
当金を支払うとの約定を前倒しで実行することができるようになった
から,平成17年6月末ころまでには,投資金及び配当金を一時に支
払うことができるようになった。
,,b現時点において新たに1口105万円の投資をした者に対しては
100万円相当の真珠セットを交付することはもちろん,平成17年
6月末ころまでに,投資金を全額返還し,かつ,配当金22万円も前
倒しで支払う。
c本件真珠事業の第2ステージが平成17年8月から始まるが,それ
までには,前倒しで,投資金を全額返還し,配当金も支払う。
(イ)被告らは,上記の勧誘によって原告に上記虚偽の事実を信じさせ,
その結果,別紙1一覧表の原告名義の②の番号1ないし7,原告の母O
名義の②の番号1ないし21及び原告の長女P名義の②の番号1ないし
15に記載のとおり,原告をして,原告名義で7回,原告の母O名義で
21回,原告の長女P名義で15回の合計43回にわたり,合計451
5万円を被告Gの金融機関の口座に振り込む方法で投資させ,これによ
って原告から同額を詐取した。
エ損益相殺等
(ア)以上のとおり,原告は,被告らの不法行為により,合計8505万
円を詐取あるいは債務負担させられ,同額の損害を被った。
(イ)他方,原告は,本件真珠事業に1口投資するごとに,配当として商
品化された真珠セットを受領したが,これらは一流の宝石店等による事
実上の鑑定によれば,正確な価格は不明であるものの,高々1セット5
万円であり,81セット合計で高々405万円である。
また,原告は,別紙1一覧表1ないし3に記載のとおり,毎月,各投
資につき2万5000円ないし3万円ずつの配当を受け,これらの合計
は1403万5000円となる。
さらに,原告は,平成15年12月26日から平成17年1月31日
までの間,別紙2一覧表に記載のとおり,被告Aらから,お手間代とし
て,合計508万円の支払を受けたほか,平成19年2月13日,Lか
ら,訴訟上の和解に基づき,700万円の支払を受けた。
(ウ)そこで,上記(イ)を損益相殺等として上記(ア)の損害金から控除す
ると,原告の損害金残金は5487万5000円となる(なお,(ア)か
ら(イ)を控除すると,正確には5488万5000円になるが,原告の
違算に基づく上記主張を摘示した。。)
(3)予備的請求原因1
本件真珠事業は,無限連鎖講の防止に関する法律2条に規定する無限連鎖
講に該当するものであり,主位的請求原因記載の原告と被告A,同B及び同
Gとの間の各契約は,公序良俗違反として無効であり,同被告らは,原告に
対し,原状回復義務があるところ,原状回復すべき額は,主位的請求原因に
おける損害額と同額である5487万5000円となる。
(4)予備的請求原因2
,,,法人たる被告らは主位的請求原因に記載のとおり本件真珠事業につき
原告に法人たる被告らに対し8505万円を投資させたが,同被告らが原告
に交付した真珠セットの価格は高々合計405万円であるし,遅くとも平成
17年7月末ころまでには配当金残額を一括して支払い,投資金の全額も一
括して完済する旨の合意したのに,同年8月に18万円を支払ったのみで残
額を支払わないから,同被告らは,債務不履行責任として,主位的請求原因
における損害額と同額である5487万5000円の損害賠償をすべき義務
,(。),,があり個人たる被告ら被告Iを除くは法人たる被告らの役員として
職務を行うにつき悪意又は重大な過失があるので,原告に対し,同額の損害
賠償をすべき義務がある。
(5)結論
よって,原告は,被告らに対し,主位的に,不法行為による損害賠償責任
に基づき,予備的に,①法人たる被告らにつき公序良俗違反による原状回復
責任に基づき,②法人たる被告らにつき債務不履行責任又は個人たる被告ら
につき役員の損害賠償責任に基づき,連帯して5487万5000円及びこ
れに対する不法行為後で,かつ,訴状送達の日よりも後である平成18年6
月8日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を支払うよ
う求める。
2請求原因に対する認否
(1)ア請求原因(1)アの事実は知らない。
イ請求原因(1)イの事実は認めるただし被告E及び同Fは被告C及び。,,
同Dとの間の子であり,当時の商法による役員定数の関係で名目上登記さ
れていたにすぎない。
(2)請求原因(2)の事実は否認し,原告の主張は争う。
被告Aは,被告Bが製産した真珠を仕入れ,総発売元として,全国に販売
していたが,その方法としては,顧客に対し直接販売する方法と被告G等の
販売代理店に卸して販売する方法があった。
被告Aないしその代表者被告Cが,投資等の勧誘をしたことはない。被告
Aは,原告に直接販売したものではなく,代理店システムを通じて,真珠を
1セット65万円の卸値で販売したにすぎず,また,商品を購入した顧客へ
のお礼の気持ちで真珠の会を運営し,利益還元と称する毎月の謝礼金を支払
っていたが,利益に応じた一定の金員を約したものでも文書化して合意した
ものでもなく,また,義務として1年半後に真珠の買戻しを約したものでも
ない。
被告Gないしその代表者被告Hが,投資等の勧誘をしたことはない。被告
Gは,被告Bが製産した真珠を被告Aが総発売元として全国的に販売したも
のを地域代理店として販売したが,互いに資本関係等はない。そもそも,被
告Gは,真珠売買を目的として設立された会社ではなく,当初,健康機器売
買等をしていたが,たまたま人の紹介で被告Aから1セット65万円で卸さ
れた真珠を1セット105万円(消費税込み)で売買したにすぎず,被告A
が主宰していたとされる真珠の会には関与しておらず,原告とは純然たる売
買契約の当事者の関係である。
とりわけ,被告D,同E及び同Fも,当時の商法の役員定数の関係で商業
登記簿上の役員に名義を貸しただけで,被告Aないし同Bの経営に関与して
おらず,また,被告Iは,被告Hの夫であるが,被告Gの役員でなく,その
経営に関与しておらず,現在,等級1級の身体障害者である満80歳を超え
る高齢者であるから,原告の請求は乱訴の極みである。
(3)請求原因(3)の事実は否認し,原告の主張は争う。
(4)請求原因(4)の事実は否認し,原告の主張は争う。
3抗弁
原告は,本件真珠事業につき,親族名義を含め自ら多額の取引をして利益還
元金を取得するとともに,相当数の第三者に対し取引の勧誘をして紹介手数料
を得るなど深く関与しており,儲け損なった者であっても,被害者ではないか
ら,原告の請求はクリーンハンドの原則に反して許されない。
4抗弁に対する認否
抗弁の主張は争う。
理由
1請求原因(1)について
証拠(甲83)によれば,請求原因(1)アの事実が認められ,同(1)イの事実
,,,(,は被告E及び同Fに関する部分を除き当事者間に争いがなく証拠甲1
3,乙11)及び弁論の全趣旨によれば,被告E及び同Fも,役員定数の関係
があったとしても,本人の意思に基づき,商業登記簿上,役員として登記され
たと認められるから,原告主張の役員の地位にあったというべきである。
2請求原因(2)アないしウについて
(,,,,,,,(1)証拠甲810121315∼7173∼7579∼83
87∼183,191,192,乙9の2及び3,原告(以上,枝番を含む。)
本人)及び弁論の全趣旨によれば,被告A,同B,同C,同G及び(第2回)
同Hにつき請求原因(2)アないしウの各事実ただし被告D同E同F,(,,,
,「」「」及び同Iとの共謀に関する部分を除き1年半とある部分を19か月
と読み替える。また,Lにおいて,自ら関与した本件真珠事業の不法行為性
,。)。につきどの程度の認識があったかについては確定し難いが認められる
ところで,被告らは,上記共謀による投資金詐取の事実を争い,本件真珠
事業につき,独立した事業主間の単純な真珠の卸しと販売であって,真珠の
会における金員の支払は顧客への感謝としての被告Aのサービスにすぎない
かのように主張し,被告C及び同Hは,被告らの主張に沿う陳述をする(順
次,乙6,5。)
しかしながら,原告は,上記認定事実に沿う,あるいは,これを推認させ
(第2る事実を供述ないし陳述(甲83,91,乙9の1及び2,原告本人
)するところ,被告H自身も,平成19年9月1日付け検面調書におい回)
て,本件真珠事業が単純な売買ではなく,元本保証と高利を約した投資であ
って,被告Cの依頼に応じて会員を集めたが,被告Cから法律すれすれであ
る旨聞かされ危険なことと認識した旨供述し甲175平成19年8月2(),
9日付け員面調書において,本件真珠事業の最高責任者は被告Cであり,自
分は,A総括本部あるいは真珠の会副総代の肩書をもらったナンバー2とし
て,被告Cの指示の各リーダー(地区責任者)への伝達,リーダーの取りま
とめ,真珠セットの発注,会員に対する真珠セットの発送,食事会等での会
員の勧誘等を担当していた旨供述し甲176被告C同HK等を被告(),,,
人とする本件真珠事業に関する出資の受入れ,預り金及び金利等の取り締ま
りに関する法律違反被告事件の第1回公判期日(平成19年11月14日)
においても,公訴事実自体は認める旨供述する(なお,被告Cは公訴事実を
否認し,Kは公訴事実を認めた。甲177の1及び2)など原告の供述等と
,,,()符合する供述をしておりさらに原告の供述等は原告本人尋問第2回
の結果のほかその様式及び体裁によって,原告が当時本件真珠事業に係る取
引の経過等を記録したものと認められるノート3冊及びメモ(甲88の1∼
3,89)の記載に裏付けられており,十分に信用できる。また,被告Hの
上記各供述のうち,被告A,同B,同C,同G,同H,K及びLが意思を通
じて本件真珠事業を投資目的のものとして展開していた点については,被告
,,Cが同A及び同Bの代表者であり被告Hが同Gの代表者であることのほか
被告Cも本件真珠事業に関する食事会等に出席したことがあること(食事会
等への出席自体は被告Cも自認する,被告H,K及びLが被告Aの肩書の。)
ある名刺(甲8,10,12)を所持していたこと,真珠セットの売主に被
告Aと同Gとが混在しており甲4647114∼141中には売(,,),,
買契約書が被告A名義で作成されているにもかかわらず,クレジット契約書
が被告H名義ないし被告G名義で作成されたり(甲54∼58,115,1
16119121131売買契約書が被告A名義で作成されている,,,),
にもかかわらず,納品書が被告G名義で発行されたり(甲123∼132,
142∼156,売買契約書が被告G名義で作成されているにもかかわら)
ず,領収証が被告A名義で発行されたり(甲34の2,36の2,47,9
5,96,133∼135)したものがあることにも裏付けられている。し
かも,そもそも,被告Aは,平成17年10月に被告Aが支払停止に至った
際,本訴被告ら訴訟代理人により,顧客各位に状況を説明する通知を発した
が,その中で「顧客各位により事業に対する投資を受け」と述べており(甲
48何よりも原告が本件真珠事業が単純な売買でなくそれにより高),,,,
額の配当が得られるとの説明を受け,それを信じなかったのであれば,一介
の主婦である原告がこれほど多数の真珠セットを購入することは到底説明が
つかないといわなければならないのであって,被告らの主張は到底採用でき
ない。
また,原告が,本件真珠事業に係る真珠セットにつき,所属不明の鑑別人
による宝石鑑別書(甲65)が添付されており,事実上の鑑定をしても,そ
の価値は高々5万円であった旨主張し,その旨陳述する(甲83)にもかか
わらず,被告らは,被告G,同H及び同Iにおいて,宝石が仕入価格の2,
3割といった利幅でなく販売されることは公知の事実であって,65万円で
仕入れたものを105万円で販売するのはむしろ良心的である旨主張し,被
告Cにおいて,宝石類は売買代金が原価の4,5倍程度はごく普通の価格設
定である旨陳述する(乙6)のみで,その価値につき客観的な立証をしてい
ないのであるから,原告が本件真珠事業への投資により受領した真珠セット
の価値は,その時価とされた100万円にはるかに満たなかったと認めるべ
きである。
そして,本件真珠事業が,原告が説明を受けたように1口105万円を投
資すれば,直ちに100万円相当の真珠を入手でき,かつ,19か月後まで
に投資金全額の返還を受け22万円の配当金も受領できるものであるとすれ
ば,本件事業は,新たな顧客の勧誘が成功しているうちはともかく,それが
尽きたころには経済的に破綻することが見込まれるというべきところ,被告
らは,本件真珠事業が顧客に対し説明どおりの利益をもたらし得る合理性に
つき何ら主張立証しないから,被告A,同B,同C,同G及び同Hにおいて
は,原告ほかの顧客を勧誘する際の上記説明が虚偽であることを認識してい
たと認めるべきである。
以上のとおり,被告A,同B,同C,同G及び同Hにつき,原告から,本
件真珠事業につき投資金債務負担を含むを詐取した事実を認めること,(。)
ができる。
,,,,,(2)他方本件全証拠によっても被告D同E同F及び同Iについては
本件真珠事業につき,被告A,同B,同C,同G及び同Hと共謀したことを
認めるに足りる証拠はない。
すなわち,被告D,同E及び同Fが被告A及び同Bの取締役又は監査役で
あった事実は前記1のとおりであるが,被告D,同E及び同Fについて,そ
れ以上に本件真珠事業との関与をうかがわせる証拠はなく,かえって,証拠
(乙9の1,11)及び弁論の全趣旨によれば,①被告Dは,被告Cの妻で
あったが,約20年前に被告Cと離婚し,その後,別居し,被告E及び同F
は,被告Cと同Dとの間の子であるが,同被告らの離婚後は,被告Cと別居
していたこと,②被告D,同E及び同Fは,被告Cが被告A及び同Bを設立
する際,被告Cから名義貸しを頼まれて被告A及び同Bの役員に就任するこ
とを了承したこと,③被告D,同E及び同Fは,被告A及び同Bの役員会に
出席したことはなかったこと,④被告D,同E及び同Fは,本件真珠事業に
関して,被疑者又は参考人として警察の取調べの対象とはされなかったこと
,,,,,の各事実が認められるから被告D同E及び同Fについて被告A同B
同C,同G及び同Hと共謀したことを認めるに足りる証拠はないといわざる
を得ない。
また,被告Iについても,被告Iが被告Hの夫である事実は当事者間に争
いがなく,証拠(甲73,74,87,185,186,乙10)及び弁論
の全趣旨によれば,①被告Iは,被告Gの前身としてのJこと被告H又は被
告Gが株式会社Qと加盟店契約を締結する際,被告Gの連帯保証人となり,
自己所有の不動産を担保に供したこと,②被告Hが,投資者を勧誘する食事
会等において,被告Iに被告Cは信用できると言われた,あるいは,被告I
の了解を得て事業をしている旨発言したことの各事実が認められるが,①に
ついては,以前から事業を手掛けていた妻被告Hに頼まれるまま,被告Hが
新たに本件真珠事業に乗り出したことを知らずに,連帯保証等の協力をした
可能性を否定できず,②についても,被告Hの発言は,勧誘のための方便で
ある可能性があるなど,その趣旨を一義的に確定し難いから,これら事実を
もって,直ちに被告Iが本件真珠事業の内容を知った上でこれに参画してい
たとまではいい難く,かえって,証拠(甲4,9,乙4,9の1,10)に
よれば,①被告I(大正15年生)は,長年,楽器,レコード等の販売業を
営んでいたが,糖尿病が悪化し,身体が不自由になったこともあり,約6年
,,,,前に廃業し年金暮らしをしているがその間被告Gの役員に就任したり
その営業に携わったことはなかったこと,②被告Iは,本件真珠事業に関し
て,被疑者又は参考人として警察の取調べの対象とはされなかったことの各
事実が認められるから,被告Iについて,被告A,同B,同C,同G及び同
Hと共謀した事実を認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない。
3請求原因(2)エについて
原告は,Lから支払を受けた和解金のほかに,配当等として受領した金品に
つき損益相殺等を自認するところ前記2(1)に認定した事実によれば被告,,,
A,同B,同C,同G及び同Hによる本件真珠事業に託けた投資金(債務負担
を含む詐取が反倫理的行為に該当することは明らかであって上記配当金等。),
の交付は,専ら,原告その他の顧客をして本件真珠事業への投資が真に利益を
もたらすものと誤信させることにより,投資金の詐取を実行し,その発覚を防
ぐための手段にほかならないというべきであるから,上記配当金等の交付によ
って原告が得た利益は,不法原因給付によって生じたものというべきであり,
()損益相殺等の対象とはならない最高裁平成20年6月24日第三小法廷判決
が,原告の請求自体が上記配当金等に相当する額を控除したものであるから,
この点が本訴の結論を左右するものではない(なお,被告A,同B及び同Cの
主張には,原告主張の各出資につき原告が自認するよりも若干多額の利益還元
名目の支払をしたとするかの部分もあるが,上記のとおり,その主張はそれ自
体失当であるばかりか,これを認めるべき証拠もない。。)
4請求原因(4)について
,,原告の被告D同E及び同Fに対する予備的請求原因2について判断するに
同被告らが被告A及び同Bの役員であった事実は前記1のとおりであるが,原
告は,抽象的に,被告D,同E及び同Fに職務を行うにつき悪意又は重大な過
,,失があったと主張するのみでこれに該当する具体的な行為を主張しないから
結局,原告の予備的請求原因2は主張自体として失当といわざるを得ない。
5抗弁について
証拠(甲91,乙9の2,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,(第2回)
原告は,自認するだけでも,別紙1一覧表1ないし3に記載のとおり,母又は
長女名義のものを含め,多数回にわたり,投資に対する配当金を取得していた
ほか,別紙2一覧表に記載のとおり,第三者の紹介につきお手間代名目で利得
を得るなど本件真珠事業に一定の関与をしていた事実が認められるけれども,
原告において,いわば欲に目がくらみ,結果として,紹介に係る投資者に損害
を与えた面があるとしても,本件全証拠をもっても,原告が,本件真珠事業が
いずれ破綻し,紹介に係る投資者が損害を被ることを予見していた事実を認め
るに足りないから,原告が,被告A,同B,同C,同G及び同Hに対し,損害
賠償請求をすることが許されないとはいい難い。
6結論
よって,原告の請求は,被告A,同B,同C,同G及び同Hに対する主位的
,,,請求原因に基づくものはすべて理由がありその余の被告らに対するものは
主位的請求原因に基づく請求,予備的請求原因に基づく請求とも,いずれも理
由がないから,主文のとおり判決する。
仙台地方裁判所第2民事部
裁判官畑一郎

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