弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士長野国助、同中野道、同滝沢国雄の上告理由第一点について。
 原判決が本件係争家屋は本件売買の目的物件たることにつき争のない二階建居宅
の「下家」でそれに建てついだものと認定していることは所論摘示の通りであるが、
原判決は同時に成立に争のない甲第一号証その他原判決挙示の各証拠を綜合して右
家屋が構造上、利用上独立性を有することを認め、右二階建居宅とは独立して所有
権の目的物とせられたことを認定しているのであつて原判決には所論のような証拠
によらずして事実を認定した違法又は経験則違背理由不備の違法は何ら認められな
い。されば所論は採用できない。
 同第二点について。
 原判決が甲第一号乃至第四号証の写真を上告人(控訴人)の利益にも不利益にも
事実を認定するの資料とはなし難い旨を判示したのは本件係争家屋取毀当時上告人
主張のような物件が右現場に存在したかどうかの争点についてであることは原判決
文上容易に了解しうるところであるから、原審が右争点以外の事実関係を認定する
に当り右甲第一号証を他の証拠と綜合して判断に用いたことは適法であつて所論の
ごとき理由そご又は理由不備の違法は認められない。論旨は理由がない。
 同第三点について。
 原判決挙示の証拠のうち第一審証人D、同E、同F、同G、原審証人H、同Iの
各証言並びに第一審及び原審における被上告人B本人尋問の結果の中には本件係争
家屋取毀当時現場に在つたのは廃品類似の物件だけであつたことを認めるに足るべ
き証言供述が存するのであつて、原審が証拠に基かず所論の点を認定したという論
旨は理由がない。
 同第四点について。
 原判決は本件係争家屋が上告人の所有である事実及び本件家屋取毀当時右家屋内
に上告人主張のような物件が存在し、取毀によつて該物件に損害を生じた事実をそ
れぞれ認め難いとして上告人の本訴請求を排斥したのであつて、右家屋が被上告人
の所有であるから家屋の所有者は自己の意思により如何なる処分行為をなすも随意
であるとの考方に基いて被上告人の賠償責任を否定したものではない。されば所論
は、原審の判示に副わない新たなる主張を前提として、権利濫用、民法及び憲法違
反をいうのであつて、論旨は採用できない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条により裁判官全員一致の意見で主文の通
り判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎

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