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平成13年(行ケ)第186号 特許取消決定取消請求事件(平成13年10月3
日口頭弁論終結)
          判           決
       原      告   A
       原      告   デイビイエス株式会社
       両名訴訟代理人弁護士 大 村 金次郎
       同      弁理士 樺 澤   襄
       同          樺 澤   聡
       同          山 田 哲 也
       同          島 宗 正 見
       被      告   特許庁長官 及 川 耕 造
       指定代理人      石 井 良 夫
       同          森 田 ひとみ
       同          宮 川 久 成
          主           文
 特許庁が平成11年異議第73990号事件について平成13年3月
13日にした決定を取り消す。
      訴訟費用は被告の負担とする。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 原告ら
   主文と同旨
 2 被告
   原告らの請求を棄却する。
   訴訟費用は原告らの負担とする。
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
 (1) 原告らは、名称を「ばっ気槽の濾過装置」とする特許第2885981号
発明(平成3年11月12日特許出願、平成11年2月12日設定登録、以下、こ
の発明を「本件発明」と、その特許を「本件特許」という。)の特許権者である。
    平成11年10月22日、本件特許につき特許異議の申立てがされ、平成
11年異議第73990号事件として特許庁に係属したところ、原告らは、平成1
2年4月25日に明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の各記載を訂正す
る旨の訂正請求をし、平成13年1月16日に訂正請求書の補正をした。
    特許庁は、同特許異議の申立てにつき審理した上、平成13年3月13
日、「特許第2885981号の請求項1に係る特許を取り消す。」と決定(以下
「本件決定」という。なお、本件特許の特許請求の範囲は請求項1だけである。)
をし、その謄本は同年4月4日原告らに送達された。
 (2) 原告らは、本件決定の取消しを求める本訴提起後の平成13年6月14
日、本件明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の各記載を訂正する旨の訂
正審判の請求をしたところ、特許庁は、同請求を訂正2001-39096号事件
として審理した上、平成13年8月21日、上記訂正を認める旨の審決(以下「本
件訂正審決」といい、本件訂正審決に係る訂正を「本件訂正」という。)をし、そ
の謄本は同年9月3日原告らに送達された。
 2 特許請求の範囲の記載
 (1) 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
   【請求項1】間隔保持用の通水性多孔質材を間に介在させて重ね合わせた通
水性シートの周囲を密封して形成した袋状の濾過体をばっ気槽内にばっ気部の上方
に位置して処理水中に浸漬配設し、
   前記濾過体内より低い水頭差により濾過水を低い吸引力で引き抜く吸引管を
前記ばっ気槽の外部に導出させたことを特徴とするばっ気槽の濾過装置。
 (2) 本件訂正によって訂正された特許請求の範囲の記載(注、訂正部分を下線
で示す。)
   【請求項1】間隔保持用の通水性多孔質材を間に介在させて重ね合わせた不
織布または織布の通水性シートの周囲を密封して形成した袋状の濾過体をばっ気槽
内にばっ気部の上方に位置して処理水中に浸漬配設し、
   前記濾過体内より、吸引力を低く保つことにより前記濾過体に形成される汚
泥のケーキ層を脆弱にして前記濾過体へのケーキ層の付着と剥離が繰り返されるよ
うな低い水頭差によって濾過水を低い吸引力で引き抜く吸引管を前記ばっ気槽の外
部に導出させ、
   前記ケーキ層のフィルター作用で前記処理水中の微細な粒子が捕捉される
   ことを特徴とするばっ気槽の濾過装置。
 3 本件決定の理由
   本件決定は、平成13年1月16日付けの補正(訂正請求書)は特許法12
0条の4第3項において準用する同法131条2項の規定に違反するものとして、
平成12年4月25日付けの訂正請求は同法120条の4第2項の規定及び同条3
項において準用する平成6年法律第116号による改正前の同法126条3項の規
定に違反するものとして、いずれもこれを認めず、本件発明の要旨を本件訂正前の
特許請求の範囲の記載のとおり認定した上、本件発明は、特開平2-86893号
公報及び特開昭57-87808号公報記載の各発明に基づいて当業者が容易に発
明をすることができたものであるから、同法29条2項の規定により特許を受ける
ことができないものであり、本件特許は、特許法等の一部を改正する法律の施行に
伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)4条2項の規定により取り
消されるべきものとした。
第3 当事者の主張
 1 原告ら
   本件決定が、本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲の記載のとおり
認定した点は、本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂
正されたため、誤りに帰したことになる。そして、この瑕疵は本件決定の結論に影
響を及ぼすものであるから、本件決定は違法として取り消されるべきである。
 2 被告
   本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正された
ことは認める。
第4 当裁判所の判断
   本件訂正審決の確定により、特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正され
たことは当事者間に争いがなく、この訂正によって特許請求の範囲が減縮されたこ
とは明らかである。
   そうすると、本件決定が、本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲の
とおりであると認定したことは、結果的に誤りであったことに帰する。そして、こ
れが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、本件決定は、瑕疵が
あるものとして取消しを免れない。
   よって、原告らの請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき行政
事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
     東京高等裁判所第13民事部
         裁判長裁判官 篠  原  勝  美
    裁判官 長  沢  幸  男
    裁判官 宮  坂  昌  利

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