弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事実及び理由
 第一 当事者双方の申立て
 一 控訴人
 1 原判決を取り消す。
 2 被控訴人らは、控訴人に対し、各自金二三七四万二三二六円及び内金二三五
〇万円に対する昭和五九年七月二三日から支払済みまで年一四パーセントの割合に
よる金員を支払え。
 3 訴訟費用は、第一、第二審とも、被控訴人らの負担とし、参加によって生じ
た費用は、第一、第二審とも、補助参加人らの負担とする。
 4 仮執行の宣言。
 二 被控訴人ら
 本件控訴を棄却する。
 第二 事案の概要
 一 争いのない事実と証拠及び弁論の全趣旨により明らかに認められる事実
 本件は、控訴人が、被控訴人行方に対しては貸金として、被控訴人向後に対して
はその連帯保証債務の履行として、元金二三五〇万円、利息金二四万二三二六円及
び右元金に対する昭和五九年七月二三日から支払済みまで年一四パーセントの割合
による遅延損害金の支払を求めた事案である。
 1 控訴人は、保証業務、住宅ローン融資などを業とする会社であるが、そのう
ちの住宅ローン融資は、全て訴外株式会社第一勧業銀行及び第一勧業信用組合など
の関連の企業からの紹介により行っている(甲一三の一、甲二二、丙二一、弁論の
全趣旨)。
 2 訴外株式会社都市開発(以下「都市開発」という。)は、不動産の販売、仲
介を業とする会社であり、第一勧業信用組合a支店との取引があったことから、同
信用組合の紹介により、都市開発が販売(仲介)した不動産の購入者らが控訴人に
住宅ローンの融資の申込みをできるようにした(甲二二、弁論の全趣旨)。
 3 都市開発からの不動産購入者に対する控訴人の住宅ローン融資は、全部で一
八八件実行された。控訴人における住宅ローン実行の手続は、購入者から融資申込
書類の提出を受けて審査の上、条件を満たす購入者に対して融資を実行することを
決するが、直ちに融資を実行することをせず、当該不動産について住宅ローン債務
を担保するための抵当権設定登記手続に必要な書類を徴し、これが揃ったとの委託
司法書士からの連絡を受けてから、購入者の指定した第一勧業信用組合a支店の預
金口座に振り込む方法で送金するという方法をとっていた。購入者は、これにより
代金を支払って当該不動産について所有権移転登記を経由した上、控訴人のための
抵当権設定登記をすることになる(甲一〇、一一の一、一二の一、一三の一、丙一
〇ないし一四)。
 4 しかし、控訴人は、昭和五八年中に、抵当権設定登記手続に必要な書類を徴
していないにもかかわらず、委託司法書士の報告を信じて融資を実行したことがあ
った。そして、都市開発は、購入者から支払を受けた代金を自社の運転資金に使用
してしまったために、都市開発が売買を仲介したり、取り次ぎ売買した不動産の所
有者である売主に代金を支払うことができず、その結果、購入者に対する所有権移
転登記も控訴人のための抵当権設定登記もできないという事態が生じた。そのた
め、控訴人は、同年一二月限りで都市開発からの不動産購入者からの住宅ローンの
申込みを断っていた。
 そこで、都市開発は、昭和五九年二月九日に控訴人との間で、同社が販売又は仲
介する不動産の買主が控訴人から住宅ローンの融資を受けるについて、当該不動産
について抵当権設定登記がなされるまでの間に限り、その買主のために金一億円
(昭和五九年五月一一日に金二億一一〇三万円に変更した。)を限度として連帯保
証する旨の包括的保証契約(差し入れた保証書の日付は、昭和五八年一〇月七日と
された。)を締結した。また、補助参加人らは、同日都市開発の依頼により、後記
のとおり自社所有の不動産に都市開発の右の連帯保証債務を担保するため、根抵当
権を設定した。しかして、控訴人は、購入者の承諾を得て、購入者に予め住宅ロー
ンの融資金の振込先の預金口座の預金払戻請求書を作成してもらい、これを控訴人
の融資担当者であるAが預かって、前記のような事態を避けることとした上で、住
宅ローンの融資を再開することとなった。しかし、そのような方策をとったにもか
かわらず、住宅ローンの融資金が不動産所有者である売主に支払われなかった場合
もあり、その結果として、現時点において住宅ローンの融資を実行したにもかかわ
らず、不動産所有者である売主から購入者への所有権移転登記及び控訴人のための
抵当権設定登記がなされていない案件は少なくとも九件であり、その住宅ローン融
資金の合計額は、金一億八五〇〇万円に達している。被控訴人行方の本件事案もそ
のうちの一件であり、同被控訴人が購入した後記のマンションについては、売主か
ら同被控訴人に対する所有権移転登記が経由されていない。(甲八の一、二、甲一
三の一、丙一〇ないし一四、丙二一、二二)。
 5 被控訴人行方は、控訴人に対し、同被控訴人が都市開発から購入する東京都
板橋区b町所在のマンションの購入代金を支払うための資金の融資を申し込み、控
訴人は、昭和五九年六月一二日に被控訴人行方に対し、被控訴人向後の連帯保証の
もとに、次の約定で金二三五〇万円を貸し付け、その資金は同日中に被控訴人行方
が指定した第一勧業信用組合a支店の同被控訴人名義の普通預金口座(以下「本件
預金口座」という。)に振り込まれた(甲一、六、七、九)。
 最終弁済期限 昭和八四年六月二二日
 利息     月利 〇・七六五パーセント
 遅延損害金  年一四パーセント
 返済方法   元利均等割賦返済方式により次のとおり支払う。
        「1」 昭和五九年七月から毎月二二日限り元利金一三万一九九
一円ずつ。
        「2」 同年八月から毎年二月と八月の各二二日限り元利金三九
万五七三七円ずつ。
 過怠約款   被控訴人行方が元利金の返済を一回でも怠ったときは、当然に期
限の利益を失う。
 6 控訴人の融資担当者であるAは、被控訴人から本件預金口座に振り込まれる
融資金を払い戻して都市開発への売買代金として支払うために、被控訴人行方から
同口座の預金の払戻請求書を預かっていた(当事者間に争いがない。)。
 7 被控訴人行方は、昭和五九年七月二二日の第一回の弁済期日に元利金の返済
をしなかったことにより、同日期限の利益を失った。
 8 被控訴人行方の本件貸金債務(以下「本件主債務」ともいう。)について
も、前記4のとおり、被控訴人向後のほかに都市開発も連帯保証をしており、また
都市開発の連帯保証債務を担保するために補助参加人ら所有の別紙物件目録記載の
各不動産(以下「本件不動産」と総称し、個別的には「本件一不動産」などとい
う。)に根抵当権が設定されていたところ、控訴人は、昭和五九年一〇月二六日
に、都市開発に対する右連帯保証債権を請求債権として、本件各不動産につき東京
地方裁判所及び千葉地方裁判所佐倉支部に右の根抵当権の実行としての競売の申立
てをしたところ、東京地方裁判所は昭和五九年一〇月二九日に本件一ないし四不動
産につき(東京地方裁判所昭和五九年(ケ)第二一六五号)、千葉地方裁判所佐倉
支部は本件五ないし八不動産につき(千葉地方裁判所佐倉支部昭和五九年(ケ)第
二二六号)、それぞれ不動産競売開始決定をし、東京地方裁判所の競売開始決定正
本は同年一一月一四日に、千葉地方裁判所佐倉支部の競売開始決定正本は同年一二
月二八日にそれぞれ抵当債務者である都市開発に送達された。また、控訴人は、昭
和六三年四月二三日に千葉地方裁判所佐倉支部に債権計算書を提出し、その内容に
基づいて配当表が作成された上、配当期日の呼出状が都市開発に送達された(当事
者間に争いがない。)。
 9 被控訴人らは、本件貸金債務は右昭和五九年七月二二日の経過により弁済期
限が到来したところ、右請求権の消滅時効の時効期限は商事債務であるため五年で
あるから本件訴訟の提起時(平成元年一〇月二六日)には消滅時効が完成している
として、平成二年一月二五日の本件原審の第二回口頭弁論期日において、右時効を
援用した(当事者間に争いがない。)。
 二 争点
 1 貸金の交付の有無
 被控訴人らは、控訴人の融資担当者であるAが被控訴人行方から、本件預金口座
に振り込まれた融資金を払い戻すための預金払戻請求書を預かっていたから、本件
消費貸借の目的であ金銭の同被控訴人への交付がなく、消費貸借契約の要物性を満
たしていないと主張して、本件金銭消費貸借契約の成立を否認する。
 したがって、第一の争点は、本件貸金が被控訴人行方に交付されたか否かであ
る。
 2 本件貸金返還請求権の消滅時効を援用することの可否
 被控訴人らの消滅時効の援用に対し、控訴人は、次のように主張した。
 本件各不動産に対する前記の各競売申立事件は競売開始決定に対する何らの異議
や不服申立てもなく、競売実施の直前まで手続が進行していた。その段階に至っ
て、補助参加人らは、抵当権実行停止の仮処分命令を得るとともに、昭和六〇年四
月九日に控訴人を被告として、本件各不動産について、前記根抵当権設定登記の末
梢登記手続を求める訴えを東京地方裁判所に提起した(東京地方裁判所昭和六〇年
(ワ)第三八七六号。以下、「別件訴訟」という。)。別件訴訟においては、本件
主債務及び物上保証の被担保債権である都市開発の連帯保証債務の存在について主
張立証が行われ、一段落がついたころに裁判所から和解の勧告があり、補助参加人
らも和解の席に着いた。しかし、補助参加人らは、和解の席上、和解に応じるよう
な態度を示しながらも、支払額を明示せず、徒に期日を重ねるのみであった。そし
て、被控訴人らの主張する消滅時効期間が経過したころに、補助参加人らは態度を
急遽硬化させて、控訴人が到底承認しがたい低額の支払額を提示したため和解は打
ち切られた。補助参加人らは、その直後に開かれた口頭弁論期日において、主債務
である被控訴人行方の本件貸金債務の消滅時効を援用するに至り、被担保債務であ
る都市開発の連帯保証債務も附従性により消滅したとして、これを請求原因に追加
した。和解の席では債務の存在を承認し、和解による解決を希望していた補助参加
人らの右の行為は、それまでの訴訟行為からは全く予測できない態度変更であっ
た。補助参加人らの右の消滅時効の援用は、訴訟上の禁反言、信義則違反又は権利
の濫用として、許されないというべきである。そして、補助参加人小郷建設は、都
市開発が取り扱う中古建物、マンションの内装工事を一手に請け負い、また、都市
開発の中古建物の仕入業務の一翼を担っていたものであり、補助参加人らと都市開
発は、役員、従業員を共通にしていたので、都市開発と補助参加人らとは実質的に
一体である。また、都市開発の紹介により本件事案のように住宅ローンの融資を受
けたもののなかには都市開発に名義貸をしていたものもあり、他の住宅ローン主債
務者についても名義貸ではないかとの疑いがあり、住宅ローン主債務者は、都市開
発、補助参加人らと実質的に一体の関係にあったとみるべきである。被控訴人ら
も、都市開発とともに、補助参加人らと一体の関係にあるから、被控訴人らも本件
訴訟において、本件貸金債務の消滅時効を援用することは許されないという制約に
服するべきである。
 したがって、第二の争点は、被控訴人らが本件貸金返還請求権の消滅時効を援用
することが、禁反言、信義則違反又は権利濫用として許されないか否かである。
 3 時効中断の有無
 控訴人は、更に、右の主張が認められないとしても、被控訴人らが主張する消滅
時効は中断しているとして、次のとおり主張した。
 (1) (差押え)
 控訴人は、前記のとおり、本件各土地につき根抵当権の実行としての競売の申立
てをし、東京地方裁判所及び千葉地方裁判所佐倉支部は、本件各土地を競売のため
に差し押さえた。したがって、被控訴人らの連帯保証人である抵当債務者都市開発
の本件連帯保証債務の消滅時効は、右の差押えにより、中断した。そして、補助参
加人らと都市開発及び被控訴人らは一体の関係にあったから、右の時効中断の効果
は、被控訴人らに対しても及ぶものである。
 控訴人は、右時効中断中の平成元年一〇月二六日に本件訴訟を提起しているの
で、消滅時効は完成していない。
 (2) (裁判上の請求)
 更に、控訴人がした右の根抵当権の実行としての競売の申立ては、裁判所の競売
手続を通じて継統的に権利行使をするものであるから、時効中断事由である差押え
のほかに、抵当債務者都市開発に対する「裁判上の請求」としての効力がある。特
に、千葉地方裁判所佐倉支部の競売事件においては、控訴人は、昭和六三年四月二
三日に債権計算書を提出し、その内容に基づいて配当表が作成された上、配当期日
の呼出状が都市開発に送達されているのである。したがって、右の競売申立事件が
係属している間は「裁判上の請求」としての効果が継続しているものというべきで
ある。そして、連帯保証人である都市開発に対する裁判上の請求は、民法四五八
条、四三四条により、主債務者である被控訴人行方及び他の連帯保証人である被控
訴人向後に対しても効力を生ずるから、昭和五九年一〇月二九日の本件競売の申立
てにより消滅時効は中断しており、控訴人は、右時効中断中の平成元年一〇月二六
日に本件訴訟を提起しているので、消滅時効は完成していない。
 (3) (裁判上の請求に準ずる応訴)
 補助参加人らは、前記のとおり、控訴人を被告として、本件不動産について、前
記根抵当権設定登記の末梢手続を求める別件訴訟を東京地方裁判所に提起した。控
訴人は、直ちに応訴して請求棄却を求めるとともに、被控訴人行方の本件主債務、
都市開発の本件連帯保証債務及び補助参加人らの本件物上保証債務の存在を主張、
立証した。したがって、別件訴訟における控訴人の右の主張には裁判上の請求に準
ずる効力があり、この効力は、補助参加人らと一体の関係にある被控訴人ら及び都
市開発に対しても及ぶから、消滅時効は中断した。そして、控訴人は、右時効中断
中の平成元年一〇月二六日に本件訴訟を提起しているので、消滅時効は完成してい
ない。
 (4) (裁判上の催告)
 控訴人の前記(1)の根抵当権の実行としての本件競売の申立ては、裁判所の競
売手続を通じて継続的に権利行使をするものであるから、被控訴人らの連帯保証人
である抵当債務者都市開発に対する「裁判上の催告」としての効力がある。特に、
千葉地方裁判所佐倉支部の競売事件においては、控訴人は、昭和六三年四月二三日
に債権計算書を提出し、その内容に基づいて配当表が作成された上、配当期日の呼
出状が都市開発に送達されているのである。したがって、右の競売申立事件が係属
している間は「裁判上の催告」としての効果が継続しているものというべきであ
る。また、控訴人の前記(3)の別件訴訟に対する応訴も「裁判上の催告」として
の効力があり、別件訴訟が係属している間はその効果が継続しているものというべ
きである。そして、民法四五八条、四三四条により、又は補助参加人ら、都市開発
及び被控訴人らが一体の関係にあることにより、都市開発に対する催告は、被控訴
人らに対しても効力を生ずるから、本件競売の申立て又は別件訴訟に対する応訴に
より消滅時効は中断しており、控訴人は、右時効中断中の平成元年一〇月二六日に
本件訴訟を提起しているので、消滅時効は完成していない。
 (5) (債務の承認)
 補助参加人らは、別件訴訟の第一審の和解期日において、当初は、支払額を明示
はしなかったが、和解に応じる態度を示し、被控訴人らの主張する消滅時効期間が
経過した後には、極めて低い金額ではあったが、支払額を明らかにして、和解案を
提示した。補助参加人らの右の和解案は、物上保証の本件被担保債権の存在を認
め、それについて支払の猶予を求めるとともに、その一部を支払って、その余の債
務を免れようとする意思の表示であるから、時効の中断事由である債務の承認に当
たる。そして、被控訴人ら及び都市開発が補助参加人らと一体の関係にあることは
前記のとおりであるから、右の債務の承認による時効中断の効果は、被控訴人らに
も及ぶものというべきである。
 したがって、第三の争点は、時効中断の有無である。
 4 控訴人の被控訴人行方に対する不法行為の成否及び右不法行為に基づく損害
賠償請求権を自働債権とする相殺の成否 被控訴人らは、次のように主張した。
 控訴人の融資担当者であるAは、本件預金口座に振り込まれた融資金を払い戻す
ための払戻請求書を被控訴人行方から預かった上、都市開発と共謀して、右払戻請
求書により右預金口座に振り込まれた融資金を恣に払い戻して他の目的に使用し
た。そのため、同被控訴人は、売買の目的となったマンションの所有権を取得する
ことができず、その売買代金相当の金二九五〇万円の損害を被った。これは同被控
訴人に対する背任であり不法行為を構成するから、控訴人は、同被控訴人に対し、
民法七〇九条、七一五条に基づき右損害の賠償をする義務がある。そこで、同被控
訴人は、控訴人に対し、原審の第二回口頭弁論期日(補助参加人らは第一回口頭弁
論期日)において、右の金二九五〇万円の損害賠償請求権を自働債権として、本訴
請求金と対当額で相殺する旨の意思表示をした。
 したがって、第四の争点は、右主張の不法行為の成否及び相殺の成否である。
 第三 争点に対する判断
 一 争点1(貸金の交付の有無)
 甲一三の一、二、丙一二、一三によると、控訴人の融資担当者であるAは、被控
訴人行方から本件預金口座に振り込まれる住宅ローンの融資金を払い戻すための払
戻請求書を預かる際に、同被控訴人に対し、払い戻した融資金を同被控訴人が購入
したマンションの代金として売主である都市開発に支払う趣旨であることを説明
し、同被控訴人もこれを了解して右払戻請求書を預けたことが認められる。したが
って、被控訴人行方がAに右の払戻請求書を預けたのは、同被控訴人の意思に基づ
くものであり、本件融資金の本来の目的に使用するためであったものと認められ
る。また、被控訴人行方が右の払戻請求書をAに預けても、同被控訴人は本件預金
口座に振り込まれた融資金の払戻しを受ける権利を失うわけではなく、同被控訴人
の預金に対する支配は失われないから、本件預金口座への控訴人からの前記貸金の
振込の方法による送金があった以上は、右の払戻請求書をAに預けたことをもっ
て、同被控訴人に対する本件貸金の交付がなかったものということはできないか
ら、本件貸金は、本件預金口座に振り込まれた時点において、被控訴人行方に対す
る交付がなされたものというべきである。(仮に、被控訴人行方が、右融資金を都
市開発の営業資金に流用されることを承知しており、実質的に住宅ローン融資を受
ける名義貸をしていたのに等しいとしても、右の関係は、被控訴人行方が控訴人よ
り融資を受けた金員を都市開発に更に転貸した法律関係になるだけにすぎないもの
というべきである。)
 したがって、この点に関する被控訴人らの主張は、理由がない。
 二 争点2(本件貸金返還請求権の消滅時効を援用することの可否)
 1 前記事案の概要中、「一 争いのない事実と証拠及び弁論の全趣旨により明
らかに認められる事実」に、甲一一の一ないし三、甲一二の一ないし五、甲二二、
丙九、一一、一六、二〇及び弁論の全趣旨を併せると次の各事実が認められる。 
(一) 控訴人は、保証業務、住宅ローン融資などの金融を主たる目的とする会社
であり、都市開発といわゆる住宅ローン斡旋の提携を結んでいた。補助参加人ら
は、都市開発からの不動産購入者の控訴人に対する金銭消費貸借契約に基づく貸金
(住宅ローン)債務を連帯保証した都市開発の連帯保証債務を物上保証することを
承諾して、補助参加人東京企画は本件一、二不動産につき、補助参加人小郷建設は
本件三ないし八不動産につき、右の連帯保証債務を被担保債権(極度額一億一〇〇
〇万円)として、控訴人のために根抵当権を設定した。
 (二) 控訴人は、昭和五九年一〇月二六日に、都市開発に対する被控訴人行方
を含む不動産購入者九名分の連帯保証債務の履行請求権(利息及び遅延損害金を含
む。)のうち一億一〇〇〇万円を請求債権として右の根抵当権に基づき、前記第二
の一の8のとおり競売の申立てをし、その競売手続が経由した。
 (三) 右の各競売開始決定に対しては、異議や不服の申立てがないまま手続が
進行した。
 特に、千葉地方裁判所佐倉支部の事件については、売却許可決定(売却代金一〇
〇六万五〇〇〇円)を経て、昭和六三年三月二四日には代金の納付もなされ、執行
裁判所は、配当期日を同年五月一六日午後一時三〇分と指定し、控訴人に対して配
当期日呼出状と計算書提出の催告書を送達した。そして、控訴人は、昭和六三年四
月二三日に債権計算書を同裁判所に提出した。右債権計算書により、被控訴人行方
に対する本件貸金債権については、元本金二三五〇万円、利息金二四万二三二六
円、損害金一二五六万一七二一円と届出がなされた。右の配当期日においては、右
競売事件の所有者である補助参加人小郷建設から異議があったが完結しなかったた
め、同補助参加人から所定期間内に配当異議の訴えが提起され、右訴訟が千葉地方
裁判所佐倉支部に継続している。
 (四) 補助参加人らは、昭和六〇年四月九日に控訴人を被告として本件各不動
産について、前記根抵当権設定登記の末梢登記手続を求める別件訴訟を東京地方裁
判所に提起した。
 (五) 別件訴訟については、平成二年三月二八日に第一審の判決言い渡しがあ
り、控訴人主張の補助参加人らの消滅時効の援用に関する主張が判決上摘示されて
おり、右の判決は、この消滅時効の援用により、被控訴人行方の本件主債務は消滅
しており、前記根抵当権の被担保債権である控訴人の都市開発に対する連帯保証債
権は、保証債務の附従性により消滅したから、右根抵当権も消滅したとの理由で、
補助参加人らの請求を認容するものであった。
 (六) 別件訴訟の右第一審の判決には、補助参加人らの右の消滅時効の援用が
禁反言、信義則違反又は権利の濫用として許されない旨の主張は摘示されていない
(控訴人らは、右第一審においては、その主張をしなかったものと推認され
る。)。
 (七) 補助参加人小郷建設は、都市開発が販売する中古マンション、建物の内
装、修理工事を請け負っている業者であり、その代表取締役Bは、都市開発の事業
を支援するいわゆるスポンサーとなっており、都市開発の役員を兼務していたこと
もあった。補助参加人東京企画はBの妻Cが代表取締役となっているが、Bが実質
的にその経営を支配していた。被控訴人行方は都市開発からマンションを購入した
者であり、被控訴人向後は被控訴人行方の依頼によって控訴人に対し連帯保証した
者であり、被控訴人らは都市開発と補助参加人らとは、右のマンション購入に係わ
る関係以外に取引上、経済上の関係を有しない。
 (八) 別件訴訟の第一審において、和解の勧試があり、補助参加人らも和解手
続に応じていたが、和解金額の提示をなかなか明らかにせず、期日を重ねた後に低
額の支払額を提案した。そのため、控訴人が納得するに至らず、和解手続は打ち切
られた。補助参加人らは、右和解手続打ち切りの後の口頭弁論期日において、主債
務者である被控訴人行方の本件主債務につき消滅時効を援用をする旨の主張をし
た。
 控訴人は、補助参加人らは別件訴訟の和解の席上で和解に応じるような態度を示
しながら、徒に期日を重ねて時間を稼ぎ、消滅時効期間が経過したころに態度を急
遽硬化させて、控訴人が到底承服しがたい低額の支払額を提示して和解を打ち切ら
せ、右消滅時効を援用するに至った旨主張するが、補助参加人らが本来主債務金額
相当の支払義務ないし責任を認めるような言動をして控訴人を油断させ、詐術的に
右和解手続を利用したことを認めるに足りる証拠はない。まして、被控訴人らが、
本件主債務の支払義務を認めるような言動をして、右の詐術的な和解手続の利用を
したことを認め得る証拠はない。また、控訴人は、被控訴人らが、都市開発ととも
に、補助参加人らと一体の関係にある旨主張するが、補助参加人らと都市開発が取
引上協力関係にあることは認め得るも、被控訴人らは都市開発と取引上対向する関
係にあるのみであり、被控訴人行方がローン債務の分割払金の第一回分から支払っ
ていないことから、被控訴人行方が都市開発に名義貸ないし融資金の都市開発への
転貸をしていたのではないかとの疑いも生じないわけではないが、被控訴人らが都
市開発に住宅ローン融資を受ける名義貸ないし融資金の転貸をしていたことを認め
るに足りる確たる証拠はなく、他に被控訴人らが都市開発や補助参加人らと取引上
もしくは経済上一体とみるべき事情を認めるに足りる証拠はない。
 2 そして、右に認定した事実を総合しても、被控訴人らの本件訴訟における前
記の消滅時効の援用が禁反言の原則に反し、又は信義則に違反するものと認めるに
足りない。
 更に、右認定の事実によると、控訴人は金融を主たる目的とする会社であるか
ら、債権管理のための組織を有し、かつ、債権管理に精通した人員を配置している
ものと推認されるところ、そのような控訴人であれば、本件消費貸借契約に基づく
被控訴人行方に対する貸金債権及び被控訴人向後に対する連帯保証債権の消滅時効
期間が前記期限の利益喪失の日から五年間であること、右の各債権の消滅時効の完
成を阻止するためには、主債務者である被控訴人行方又は連帯保証人である被控訴
人向後に対して直接本件訴訟のような給付訴訟を提起すれば足りることは容易に知
り得るものと考えられること、したがって控訴人としては、本件不動産に対する競
売の申立てはしたものの、補助参加人らから別件訴訟を提起されているのであるか
ら、本件各債権の保全については格別の注意を払って万全を期するのが債権管理上
当然であるにもかかわらず、控訴人は、右の基本的な注意を怠り、右の期限の利益
喪失の日から五年を経過した後に本件訴訟を提起するまでは、直接主債務者である
被控訴人行方又は連帯保証人である被控訴人向後に対する時効中断の措置を取らな
いままに推移していたのである。控訴人としては、僅かの注意を払いさえすれば、
本件各債権の消滅時効が完成することを防止し得たものといわざるを得ないのであ
る。控訴人の側にこれらの事情の認められる本件においては、前記認定の各事実を
総合しても、被控訴人らの本件訴訟における前記消滅時効の援用が権利の濫用に当
たるものと認めるには足りない。
 したがって、争点2に関する控訴人の主張は、理由がない。
 三 争点3の(1)(差押えによる時効中断の有無)
 1 根抵当権実行のためにする民事執行法による競売は、被担保債権に基づく強
力な権利実行手段であるから、時効中断の事由として差押えと同等の効力を有する
というべきである。そして、差押えによる時効中断の効果は、原則として中断行為
の当事者及びその承継人に対してのみ及ぶものである(民法一四八条)が、他人の
債務のために自己所有の不動産につき根抵当権を設定した物上保証人に対する競売
の申立ては、被担保債権の満足のための強力な権利実行行為であり、時効中断の効
果を生ずべき事由としては、債務者本人に対する差押えと対比して、差異を設ける
べき実質的な理由はない。民法一五五条は、右のような場合について、同法一四八
条の右の原則を修正し、時効中断行為の当事者及びその承継人以外で時効の利益を
受ける者にも及ぶことを定めるとともに、これにより右のような時効の利益を受け
る者が中断行為により不測の不利益を被ることのないように、その者に対する通知
を要することとして、債権者と債務者との間の利益の調和を図っているのである。
したがって、債権者から物上保証人に対し、担保権の実行としての競売の申立てが
なされ、執行裁判所がその競売開始決定をした上、競売開始決定正本を当該債務者
に送達した場合には、債務者は、民法一五五条により、当該被担保債権の消滅時効
の中断の効果を受けるものと解すべきである(最高裁判所昭和五〇年一一月二一日
第三小法廷判決・民集二九巻一〇号一五三七頁参照)。そうすると、本件において
は、補助参加人ら所有の本件各不動産に対する競売開始決定正本が被担保債権の債
務者である都市開発に送達されたことにより、都市開発の控訴人に対する連帯保証
債務について消滅時効が中断されたということができる。
 2 しかしながら、連帯保証人について生じた時効中断事由のうち、主債務者に
対しても中断の効力を有するのは、連帯保証人に対する履行の請求の場合(民法四
五八条、四三四条)に限られるのであって、本件において都市開発に生じた消滅時
効の中断事由は、右のとおり民法一四七条二号の差押えであり、これに当たらない
ことは明らかであるから右の中断事由は主債務者である被控訴人行方に効力を及ぼ
さないといわなければならない。そして、被控訴人行方の連帯保証人である都市開
発に生じた時効中断の効力が他の連帯保証人である被控訴人向後に対して、直接効
力を及ぼすものでないことも明らかである。
 なお、控訴人は、補助参加人らと都市開発及び被控訴人らは一体の関係にあった
から、右の時効中断の効果は、被控訴人らに対しても及ぶものであると主張する
が、補助参加人らと都市開発及び被控訴人らは一体の関係にあったとの主張事実を
認めるに足りる証拠がないことは先に説示したとおりであるから、右主張は、理由
がない。その他、本件に現れたすべての事情を併せても、補助参加人ら及び都市開
発に生じた右の時効中断の効力が被控訴人らに及ぶものと解すべき事情を認めるこ
とはできない。
 四 争点3の(2)(裁判上の請求による時効中断の有無)
 1 控訴人は、前記根抵当権の実行としての競売の申立ては、裁判所の競売手続
を通じて継統的に権利行使をするものであるから、時効中断事由である差押えのほ
かに、抵当債務者都市開発に対する「裁判上の請求」としての効力があり、右の競
売申立事件が係属している間はその効果が継続しているものというべきところ、連
帯保証人である都市開発に対する裁判上の請求は、民法四五八条、四三四条により
主債務者である被控訴人行方及び他の連帯保証人である被控訴人向後に対しても効
力を生ずると主張する。しかし<要旨第一>ながら、前説示のとおり、根抵当権実行
のためにする民事執行法による競売は、時効中断の事由として差押えと
同等の効力を有するというべきであるが、差押えは、債権者が債権の弁済を得るた
めに行う権利実行行為であり、債務者に対する意思表示の方法ではないから、債務
者に対する履行を受けることを欲することの意思表示である「請求」と同一視する
ことはできない。このことは、民法一四七条が「請求」と「差押え、仮差押え又は
仮処分」とを明確に区別していることからも明らかである(大審院大正三年一〇月
一九日第二民事部判決、民録二〇輯七七七頁参照)。競売の申立てが債務者自身の
財産に対して行われるのではなく、自己の財産をもって他人の債務の担保に供した
物上保証人の財産に対して行われる場合についてこれを検討してみると、物上保証
人は何らの「債務」を負担するものではないから、債権者に対して給付すべき義務
を負わず、単に担保権の実行を受忍すべき義務を負うにすぎない。したがって、自
己の不動産に債務者のために根抵当権を設定した物上保証人の不動産に対する競売
の申立ては、物上保証人に対して「債務」の履行を請求するものではあり得ない。
また、物上保証人の不動産に対する競売の申立ては、担保に供された抵当不動産の
換価により、債権の満足を図ろうとする権利実行行為であるから、競売開始決定が
債務者に送達すべきものとされている(民事執行法一八八条、四六条一項。なお、
物上保証人の不動産に対する競売開始決定の場合においては、四六条一項所定の
「債務者」は、「所有者及び債務者」と読み換えるべきである。)ことを考慮に容
れても、これを債務者に対して債務の履行を求める意思表示である「請求」と解
し、又は債務者に対する「請求」の意思表示を含むものと解する余地はないという
べきである。なお、民事執行法は、担保権の実行としての競売について、債務者を
所有者とともに競売の申立人の「相手方」としていると解される(同法一八一条四
項、一八二条、一八九条、一九一条、一九六条)が、これは、担保権実行の手続に
よって債務者の負う債務の消長を来たし、それ故に債務者が担保権の不存在又は消
滅を理由として競売開始決定に対し執行異議の申立てをすることができる道を与え
る目的に出たものにほかならないのであって、これをもって、物上保証人の不動産
に対する担保権の実行としての競売の手続が債務者に向けられた債務の履行を求め
る「請求」の手続又は「請求」を含む手続であるということはできない。
 これを本件についてみるに、控訴人は、物上保証人である補助参加人ら所有の本
件各不動産に対して、根抵当権の実行として競売の申立てをし、その競売手続が進
行していたにすぎないのであるから、これをもって、債務者である都市開発に対す
る裁判上の請求としての効力があるとすることはできない。
 2 また、前記認定事実によると、控訴人は、千葉地方裁判所佐倉支部に係属し
ている競売事件において、昭和六三年四月二三日に被控訴人行方に対する本件貸金
債権を元本金二三五〇万円、利息金二四万二三二六円、損害金一二五六万一七二一
円とする債権計算書を同裁判所に提出していることが認められる。
 しかし、債権の届出は、執行裁判所に対して不動産の権利関係又は売却の可否に
関する資料を提供することを目的とするものであって、届出に係る債権の確定を求
めるものではないから、不動産競売事件において債権を主張して、その確定を求
め、又は債務の履行を求める請求であると解することはできない(最高裁判所平成
元年一〇月一三日第二小法廷判決、民集四三巻九号一頁参照)。
 3 その他、前記競売の申立て及び各競売事件において行われた各手続が、補助
参加人らと都市開発とが取引上協力関係にあることを考慮に容れても、都市開発に
対して時効中断の効力のある「請求」に当たるものと認めることはできない。控訴
人の前記主張は、理由がない。
 五 争点3の(3)(裁判上の請求に準ずる応訴による時効中断の有無)
 控訴人は、補助参加人らが提起した別件訴訟において請求棄却を求めるととも
に、被控訴人行方の本件主債務及び都市開発の本件連帯保証債務の存在を主張した
から、別件訴訟における控訴人の右の主張には裁判上の請求に準ずる効力があると
主張する。しかし、補助参加人らは単なる物上保証人であって、債務を負担するも
のではないから、このような補助参加人らに対する債務の履行の請求ということは
あり得ない。また、別件訴訟における控訴人の右の主張は、前記根抵当権が有効に
存在することを主張する前提として、その被担保債権の存在を明らかにするために
のみするものにすぎず、控訴人が直接被担保債権の債務者である都市開発に対して
被担保債権の存在を主張するものではない。したがって、別件訴訟における控訴人
の本件被担保債権の存在に関する主張は、裁判上の請求に準ずる応訴として、都市
開発又は被控訴人らに対して時効中断の効果を生ずるものと解することはできな
い。その他、別件訴訟における控訴人の本件被担保債権の存在に関する主張が被控
訴人らの本件主債務の消滅時効を中断させるものと解すべき事情は認められない。
したがって、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の右の主張は、理由
がない。
 六 争点3の(4)(裁判上の催告による時効中断の有無)
 1 控訴人は、控訴人の根抵当権の実行としての本件競売の申立ては、裁判所の
競売手続を通じて継続的に権利行使をするものであるから、被控訴人行方の連帯保
証人である抵当債務者都市開発に対する「裁判<要旨第二>上の催告」としての効力
があると主張する。しかしながら、根抵当権実行のためにする民事執行法による 要旨第二>競売は、時効中断の事由として差押えと同等の効力を有するというべきで
あるが、差押えは、債権者が債権の弁済を得るために行う権利実行行為であり、債
務者に対する意思表示の方法ではないから、「催告」と同一視することはできな
い。しかも、物上保証人である補助参加人らは何らの「債務」を負担するものでは
ない(補助参加人らと都市開発と被控訴人らとが一体の関係であるとの控訴人の主
張が理由のないことは、既に説示したとおりである。)から、控訴人に対して給付
すべき義務を負わず、単に担保権の実行を受忍すべき義務を負うにすぎない。した
がって、控訴人のした本件競売の申立てが補助参加人らに対して「債務」の履行を
催告するものではあり得ない。そしてまた、本件各競売手続が債務者である都市開
発に対して向けられた手続でないことは、前記第三の四の1において説示したとこ
ろがら明らかであるから、本件競売の申立てが都市開発に対する「催告」としての
効力を有するということもできない。更に、控訴人が千葉地方裁判所佐倉支部にし
た債権の届出は、執行裁判所に対して不動産の権利関係又は売却の可否に関する資
料を提供することを目的とするものにすぎないから、これをもって、補助参加人ら
あるいは都市開発に対する「催告」と解する余地もない。
 その他、本件競売の申立て及び各競売事件において行われた各手続をもって、都
市開発に対して時効中断の効力のある「催告」に当たるものと解すべき事情を認め
ることはできない。控訴人の前記主張は、理由がない。
 2 控訴人は、前記別件訴訟に対する応訴も「裁判上の催告」としての効力があ
り、別件訴訟が係属している間はその効果が継続しているものというべきであると
も主張する。しかし、補助参加人らは単なる物上保証人であって、債務を負担する
ものではないから、このような補助参加人らに対して債務の履行を催告するという
ことはあり得ない。また、別件訴訟における控訴人の被担保債権の存在に関する主
張は、本件根抵当権が有効に存在することを主張する前提として、その被担保債権
の存在を明らかにするためにのみするものにすぎず、控訴人が直接被担保債権の債
務者である都市開発に対して被担保債権の存在を主張するものではない。したがっ
て、別件訴訟における控訴人の本件被担保債権の存在に関する主張は、裁判上の催
告(に準ずる応訴)として、都市開発又は被控訴人らに対して時効中断の効果を生
ずるものと解することはできない。その他、別件訴訟における控訴人の本件被担保
債権の存在に関する主張をもって、都市開発又は被控訴人らに対して時効中断の効
力のある「催告」に当たるものと解すべき事情を認めることはできない。控訴人の
前記主張は、理由がない。
 七 争点3の(5)(債務の承認による時効中断の有無)
 前記第三の二の(八)で述べたとおり、別件訴訟の第一審の和解期日において、
補助参加人らが、当初は支払額を明示はしなかったが、和解に応じる態度を示し、
最終的に極めて低い金額の支払額を示して、和解案を提示したとの主張事実を認め
ることができるが、補助参加人らが本件主債務の存在を一応認めた上で和解手続に
応じていたこと、並びに補助参加人らと被控訴人らが法律上一体と同視すべき事情
を認めるに足りる証拠はない。その他、本件請求にかかる各債権について、その消
滅時効の中断事由としての「承認」がなされたものと認めるべき事情を認めるに足
りる証拠はない。したがって、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の
前記主張は、理由がない。
 八 そうすると、控訴人が本件訴訟を提起したのは、被控訴人らが本訴において
援用した本件貸金債権及び連帯保証債権の消滅時効期間が経過した後であることは
前記認定事実及び本件記録上明らかであるから、右各債権は時効の援用により消滅
しているものといわざるをえない。
 第四 結論
 以上の認定及び判断の結果によると、控訴人の本件請求は、争点4(控訴人の被
控訴人行方に対する不法行為の成否及び右不法行為に基づく損害賠償請求権を自働
債権とする相殺の成否)について判断を加えるまでもなく、いずれも理由がないか
ら、これを棄却すべきである。よって、当裁判所の右の判断と同旨の原判決は相当
であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担に
つき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 鬼頭季郎 裁判官 渡邉等 裁判官 富田善範)
     物 件 目 録
 (一及び二の所有者は補助参加人東京企画、三ないし八の所有者は同小郷建
設。)
 一 東京都杉並区ab丁目c番d
      宅地  四四・七九平方メートル
      (持分 五分の一)
 二 (一棟の建物の表示)
   東京都杉並区ab丁目c番地d
     鉄骨一部鉄筋コンクリート造陸屋根地下一階付四階建
       床面積 一階       八七・七〇平方メートル
           二階ないし四階 各三二・〇八平方メートル
           地下一階     三一・二三平方メートル
   (専有部分の建物の表示)
   家屋番号 ab丁目c番dのe
     鉄筋コンクリート造一階建  店舗
       床面積 地下一階部分 二五・一〇平方メートル
 三 東京都板橋区fg丁目h番i
       山林  二一九平方メートル
 四 東京都新宿区j町k番地l
   家屋番号 m番n
     鉄筋コンクリート造陸屋根二階建  居宅・倉庫
       床面積 一階 一三二・九〇平方メートル
           二階 一一一・七八平方メートル
 五 千葉県印旙郡o村p字qr番s
       宅地  六三・五四平方メートル
 六 千葉県印旙郡o村p字qr番t
       宅地  九九・八七平方メートル
 七 千葉県印旙郡o村p字qr番u
       公衆用道路  四四平方メートル
 八 千葉県印旙郡o村p字qr番地s、同番地t
   家屋番号 v番w
     木造瓦葺二階建   居宅
       床面積 一階 四五・五四平方メートル
           二階 三三・九五平方メートル

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◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

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残り応募人数(2019年5月1日現在)
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独立支援は3名

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