弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣意は,保釈された者が確定判決に基づき刑事施設に収容された後に
おいても保釈保証金を没取することができるとした原決定は,大阪高等裁判所昭和
38年(く)第6号同年2月2日決定・大阪高等裁判所刑事判決速報昭和38年1
号20丁裏と相反する判断をしたというものである。原決定が上記判例と相反する
判断をしたことは,所論指摘のとおりである。
しかしながら,刑訴法96条3項は,保釈された者について,禁錮以上の実刑判
決が確定した後,逃亡等の所定の事由が生じた場合には,検察官の請求により,保
証金の全部又は一部を没取しなければならない旨規定しているが,この規定は,保
釈保証金没取の制裁の予告の下,これによって逃亡等を防止するとともに,保釈さ
れた者が逃亡等をした場合には,上記制裁を科することにより,刑の確実な執行を
担保する趣旨のものである。このような制度の趣旨にかんがみると,保釈された者
について,同項所定の事由が認められる場合には,刑事施設に収容され刑の執行が
開始された後であっても,保釈保証金を没取することができると解するのが相当で
ある。これと同旨の原決定は正当である。
したがって,所論引用の判例を変更し,原決定を維持するのを相当と認めるか
ら,所論の判例違反は,原決定取消しの理由とならない。
よって,同法434条,426条1項により,裁判官全員一致の意見で,主文の
とおり決定する。
(裁判長裁判官涌井紀夫裁判官甲斐中辰夫裁判官宮川光治裁判官
櫻井龍子裁判官金築誠志)

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