弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人の上告趣意第一点について。
 麻薬は、その用法によつては人の心身にきわめて危険な害悪を生ずるおそれがあ
るから、麻薬取締法(昭和二三年七月一〇日法律第一二三号)が、その取扱に厳重
な規制を加え、またこれを取扱う者の資格についても特定の制限を設け、免許制度
をとつていることは、公共の保健衛生の要請からいつて正当な処置であり、そして
また同法一四条が、麻薬取扱者に対し業務所ごとに帳簿を備え、麻薬に関する所定
の事項の記入を命じ、この違反に対し同法五九条に刑罰制裁を定めていることは、
前示のような麻薬の性能にかんがみ、その取扱の適正を確保するための必要な取締
手続にほかならない。従つて所論帳簿記入に関する規定そのものは、憲法三八条一
項の保障とは関係がなく、この規定を適用した原判決に違憲のかどはない。所論は
採用することはできない。
 同第二点について。
 被告人に対し懲役二年及び罰金四万円、四年間右懲役刑の執行を猶予する旨言渡
した本件第一審判決は、量刑軽きに過ぎ不当であるとして、検察官から控訴の申立
があつたところ、原審はなんら事実の取調をしないで検察官の控訴趣意書を理由あ
りと認め、第一審判決を破棄し、被告人に対し、第一審判決より重い懲役八月及び
罰金四万円の刑を言渡したことは所論のとおりである。論旨は、控訴審がなんら事
実の取調をしないで第一審判決の刑を重く変更することは、憲法三七条の保障する
公平な裁判所の裁判を受ける権利を奪うものか、少くとも法令の解釈を誤つたもの
で原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものであるというのである。
 しかし、控訴審が検察官からの第一審判決の量刑は不当であるとの控訴趣意に基
き第一審判決の量刑の当不当を審査するにあたつては、常に控訴審自ら事実の取調
をしなければならないものではなく、訴訟記録及び第一審に於て取り調べた証拠に
よつて、その量刑の不当なことが認められるときは、控訴審は自ら事実の取調をし
ないで、第一審判決の刑より重い刑を言渡しても刑訴四〇〇条但書の解釈を誤つた
ものということはできない。また裁判所の言渡した刑が被告人から見て重いと思わ
れるものであつてもその裁判を公平な裁判所の裁判ではないということはできない
(昭和二二年(れ)第四八号同二三年五月二六日大法廷判決、集二巻五号五一一頁)。
 弁護人神川貫一の上告趣意について。
 所論の趣旨は、違憲に論及している部分もあるが、実質は原審が第一審の執行猶
予を実刑としたことについてその量刑と訴訟手続とを非難するに過ぎず、刑訴四〇
五条の上告理由に当らない(なお訴訟手続に関する論旨については、被告人上告趣
意第二点に説示したとおりである)。
 その他記録を調べても刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。
 よつて刑訴四〇八条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は、被告人の上告趣意第二点及び弁護人神川貫一の上告趣意について裁
判官栗山茂、同真野毅、同小谷勝重、同谷村唯一郎、同小林俊三の後記少数意見が
あるほか裁判官の一致した意見である。
 裁判官栗山茂、同真野毅、同小谷勝重、同谷村唯一郎、同小林俊三の少数意見は
次のとおりである。
 原判決は、第一審が本件被告人に言渡した懲役二年執行猶予四年罰金四万円の判
決を破棄自判し、右罰金刑とともに懲役八月の実刑を言い渡したのであるが、記録
によれば、その手続は書面上の調査のみによつたのであつて、事実の取調を行つた
形跡は認められない。このように第一審の執行猶予を附した判決を第二審において
破棄し自判によつてこれを実刑に改めるには自ら事実の取調を行うことを要し、さ
もなければ第一審に差し戻すべきものである。この点において原判決は違法たるを
免れないから破棄すべきものである。
 なお裁判官栗山茂、同小谷勝重、同谷村唯一郎、同小林俊三は、昭和二六年(あ)
第一六八八号同三〇年六月二二日大法廷判決(判例集九巻八号)において述べた少
数意見をそれぞれここに引用するほか、裁判官小林俊三は昭和二七年(あ)第五九
七号同二九年六月八日第三小法廷判決(判例集八巻六号八二一頁)において述べた
少数意見を引用する。
  昭和三一年六月二七日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    田   中   耕 太 郎
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    垂   水   克   己

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛