平成一一年(ネ)第八三六号 商標権侵害差止等請求控訴事件(平成一二年一月二七
日口頭弁論終結。原審・東京地方裁判所平成六年(ワ)第五五六三号)
判 決
控訴人(被告) 株式会社ミニボックス
代表者代表取締役 【A】
訴訟代理人弁護士 上 條 義 昭
高 木 一 嘉
被控訴人(原告) キャラウェイ ゴルフ カンパニ
ー
代 表 者 【B】
訴訟代理人弁護士 中 川 康 生
山 川 博 光
主 文
一 本件控訴に基づき、原判決主文第二、第三項を次のとおり変更する。
「 二 控訴人は、被控訴人に対し、三〇七三万二五二四円、並びに、内一五一三
万七〇九八円に対する平成六年四月二六日から、内五三〇万七八〇八円に対する同
年四月三〇日から、内六九三万九五八八円に対する平成七年四月三〇日から、内二
五八万五一七七円に対する平成八年四月三〇日から及び内七六万二八五三円に対す
る同年八月二九日から、それぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 被控訴人のその余の請求を棄却する。」
二 その余の本件控訴を棄却する。
三 訴訟費用は、第一、第二審とも、三分の二を控訴人の負担とし、その余を被
控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一 控訴人の求めた裁判
「原判決中、控訴人敗訴の部分を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。」との
判決。
第二 事案の概要
一 争いのない事実等は、原判決五頁以下の「一」の項に示されているとおりで
あり、争点は、原判決一二頁以下の「二」の項に示されているとおりである(ただ
し、損害算定方法につき、以下の二3(控訴人)及び三3(被控訴人)記載のよう
にそれぞれ主張の一部に変更がある。)。
二 原判決の認定、判断につき、控訴人は次のとおり主張した。
1 真正品であることの証明
原判決が、被告ゴルフクラブ等の販売が非真正品(被控訴人又はこれと同視し得
る者の意思に基づき流通に置かれたものとは認められない商品)に関するものであ
ると認定したのは、次の二点からみて誤りである。
(一) 平成一一年六月二五日、控訴人の倉庫に保管されていたキャラウェイゴ
ルフクラブのシャフト一五七五本を調査した結果、グリップ部分に製造番号を刻印
したシールが貼付されていることが判明した。番号がないのは一一本、番号不明は
八本にすぎなかった。この結果、控訴人が被控訴人の非正規代理店から輸入したと
原判決で認定されたゴルフクラブ二九八一本(原判決別表Gの「非真正品」)のほ
とんどが、被控訴人ないしこれと同視し得る者の意思によって流通に置かれたもの
で、真正な商品であったと推測できる。
(二) 原判決は、一六四一本のゴルフクラブが非真正品であるとした(一二
頁)。しかし、非正規代理店とされているうち、一七三五本の仕入元であるジャパ
ンインターナショナルは、米国エドウィンワッツという被控訴人の正規代理店から
仕入れている。他の七五九本は、株式会社アクティブインポートが、被控訴人の正
規代理店であるスポーツワールドセンターから仕入れたものである。これらの事実
からすると、原判決の右認定は誤りである。
2 損害不発生
被控訴人は、正規代理店に真正品を卸した段階で既に取引上の利益を得ている。
控訴人が仕入れた真正品一四六一本のうち六二八本は他社のシャフトに付け替えた
が、これによって、被控訴人がいったん確保した取引上の利益が遡及的に損なわ
れ、新たに被控訴人に損害が発生するということは考えられない。控訴人が非正規
代理店から輸入したゴルフクラブについても、もともとは被控訴人が正規代理店に
卸した商品であったから、被控訴人は、この段階で取引上の利益を取得している。
3 損害算定方法
(一) 原判決は、固定費をゴルフ売上額からの控除を認めなかった。しかしなが
ら、次の固定費のうちゴルフ売上と関連性があるものは、売上額から控除すべきで
ある。
人件費(役員報酬、従業員給料、賞与、法定福利費)、支払手数料(会計事務所
と社会保険労務事務所への支払)、自動車経費、通信費、事務消耗品費、事業維持
費(消耗品費、水道光熱費、修繕費)、減価償却費、地代家賃、租税公課(本社の
土地建物にかかる固定資産税)、保険料、リース料、管理警備料。
(二) 控訴人は、控訴人全社の経費を本社経費、自動車事業に関する経費、ゴル
フ事業に関する経費の三つに区分し、一三期から一七期ごとに集計したが、本社経
費について、各事業の粗利益率等を基準として、ゴルフ事業に関係する経費と自動
車事業に関する経費に配賦した結果、ゴルフ事業部門における経常利益は、次のと
おりとなる。
一三期(平成四年五月から五年四月) 一〇九二万四四九七円
一四期(平成五年五月から六年四月) 二七四五万三九〇八円
一五期(平成六年五月から七年四月) 一八三三万九八四八円
一六期(平成七年五月から八年四月) 一〇九一万三三九四円
一七期(平成八年五月から同年八月) 一八二一万八三〇六円
(三) このうち、キャラウェイ商品(他社製造のシャフトに交換して販売した
分、非真正品販売分、ヘッドのみ販売分)の利益部分を算出すると、別紙「キャラ
ウェイ損益計算試算表」のとおりである。各期における本件商標権を侵害したとさ
れる商品を販売したことによる経常利益は、同別紙の各期のキャラウェイ欄の経常
利益の箇所に記載のとおりである。すなわち、
一三期 二〇八万六五七九円
一四期 二五五万三二一三円
一五期 一四六万七一八八円
一六期 四一万四七〇九円
一七期 三四万六一四八円
(四) 損害賠償額を算定するには、これから更に、他社製のシャフト部分の利益
を控除しなければならない。
三 被控訴人の反論
1 真正品の主張について
(一) 被控訴人は、平成四年(一九九二年)から平成八年(一九九六年)までの
間、ゴルフクラブのシャフトのグリップ部分に製造年月日を特定する番号を付して
いたことがある。しかし、その期間、非常に多数の同じ番号配列の模造キャラウェ
イゴルフクラブが市場に氾濫し、右番号配列をもって被控訴人の真正品と判定する
ことが困難になり、コスト面も考えて、被控訴人は一九九七年以降この番号付けを
行っていない。
(二) 控訴人が、製造番号を確認したことによって真正品であると主張するゴル
フクラブには、正規代理店から購入したゴルフクラブのシャフトを使用したものも
含まれるはずであり、これは、三分の一程度存在する。また、同じ表示の模造品が
市場に出回っていたことも考えると、棚卸しの結果をもって、真正品が原判決が説
示する以上に存在していたとする控訴人の主張は、理由がない。そもそも、本件登
録商標の付されたゴルフクラブのシャフトを他社のシャフトと付け替えて販売の対
象となった控訴人のゴルフクラブは、それが真正品か非真正品かを問わず、本件商
標権を侵害している。
(三) 控訴人主張のスポーツワールドセンターは、被控訴人の正規代理店ではな
い。また、米国エドウィンワッツは被控訴人の代理店ではあるものの、控訴人がジ
ャパンインターナショナルから仕入れた一七三五本のゴルフクラブが、米国エドウ
ィンワッツからジャパンインターナショナルに仕入れられたとする証明はない。
2 損害不発生の主張について
控訴人の損害不発生の主張は、商標権消尽の理論に基づくが、本件では、控訴人
は被控訴人商標の付されたゴルフクラブのクラブヘッドと他社のシャフトを組み合
わせ、被控訴人のゴルフクラブと同一性のないものにして、販売している。このよ
うな控訴人の行為に商標権消尽の理論の適用の余地はない。
3 損害算定方法の主張について
(一) 被控訴人は、既に被控訴人商品の開発を完了し、現実に営業的製造、販売
を大々的に行っている。既存商品の組換等の加工を行い市場に流通させているにす
ぎない控訴人の営業と同様の方法でその営業(加工、販売)を被控訴人が行う場合
には、控訴人商品の販売個数は、被控訴人が新たな商品開発のための投資や従業員
の雇用を要することなく、そのままの状態で加工、販売ができる個数の範囲内にあ
る。このような場合には、逸失利益推定の前提事実である控訴人が商標権侵害行為
により受けた利益も、商標権侵害商品の売上額から、その加工、販売のための変動
経費のみを控除した額と考えるべきである。
(二) 当控訴審において、控訴人は、販売及び一般管理費を「自動車事業部」、
「ゴルフ事業部」、「本社事務所」に部門分けして、各部門ごとの直接費用内訳書
を作成して提出したが、右各直接費用として記載された金額自体は争わない。
控訴人は、「本社事務所」費用のうちの一部を「ゴルフ事業部」に関係する販売
費及び一般管理費として、ゴルフ部門の売上から控除すべきであるとするが、争
う。控訴人は、「ゴルフ事業部」に直接関連する費用として、固定資産税及び減価
償却費を挙げるが、これも争う。控訴人が主張する固定資産税及び減価償却費の対
象となる土地建物は、昭和五九年、六一年に取得されており、控訴人がゴルフ事業
を開始する前からの所有であって、非変動の原価要素であり、本件では取り上げる
必要のない費用である。
(三) 以上の主張に基づき、控訴人によって販売された本件商標権侵害の対象と
なる被告ゴルフクラブ等の各期ごとの売上額に、控訴人のゴルフ用品販売の限界利
益率を乗ずることにより得られる被控訴人の逸失利益(損害)額は、次のとおりで
ある。
一三期 一二一三万七〇九八円
一四期 五三〇万七八〇八円
一五期 六九三万九五八八円
一六期 二五八万五一七七円
一七期 七六万二八五三円
第三 争点に対する判断
一 争点1(違法性欠如の有無)に関する判断
1 被告ゴルフクラブ等(原判決別紙目録(一)ないし(八)のゴルフクラブヘッド
及びゴルフクラブ)の販売が、真正品を販売したものとして違法性を欠くかについ
ての争点1に対する判断は、原判決三一頁以下の「一」の項に示されているとおり
であり、当裁判所も、この点に関する控訴人の主張は理由がないものと判断する。
2 控訴人は、原判決後に調査した結果、被告ゴルフクラブ等のグリップ部分に
製造番号が付されたものが大部分であることが判明したので、被告ゴルフクラブ等
は被控訴人ないしこれと同視し得る者の意思によって流通に置かれたものであるこ
とが推測できると主張する。しかしながら、この製造番号が被控訴人ないしこれと
同視し得る者の意思に従って付されたことを認めるべき的確な証拠はない。被控訴
人の主張によれば、控訴人主張の製造番号は単に製造年月日を特定するためだけの
ものであり、この表示を模造した商品が多数出回ったというのであって、これに対
し控訴人からは的確な再反論の主張はない。したがって、原判決において認定の前
提とされた正規代理店以外からの購入品二九八一本(原判決別表G)の中に、控訴
人の主張する製造番号が控訴人又はこれと同視し得る者によって付されたものがあ
るものと認めることはできない。また、この事実を具体的に認めるに足りる的確な
証拠もない。
よって、控訴人の右主張は理由がない。
3 控訴人は、スポーツワールドセンターが被控訴人の正規代理店であると主張
し、スポーツワールドセンターを経由して控訴人が購入した商品も存在すると主張
するが、スポーツワールドセンターが被控訴人の正規代理店であることを認めるべ
き証拠はない。また、控訴人主張のように、ジャパンインターナショナルにおいて
被控訴人の正規代理店である米国エドウィンワッツから仕入れた商品があると認め
るべき証拠もない。
4 なお、控訴人は、本件口頭弁論終結後、平成一二年三月八日付け準備書面を
提出し、その中に、「顧客は、自分に合ったシャフトの選択を求めたり、当時のプ
ロがゴルフクラブヘッドに他社製のシャフトを付け替えたゴルフクラブを使用して
いた方法を真似てプレーするのを一種のあこがれとしていた。そのため、控訴人が
この顧客の需要を満たす販売方法を取ったからこそ、売上を伸ばすことができた。
つまり、被控訴人製のクラブヘッドに他社製のシャフトが付け替えられたゴルフク
ラブだからこそ、売上を伸ばすことができたのである。控訴人が実施したアンケー
ト結果でも、シャフト交換を希望した顧客は約七〇%に達している。」旨の主張部
分がある。
しかしながら、控訴人が主張するような販売態様によって、本件商標を付した被
控訴人の真正品の販売が侵害されたことは、控訴人の主張自体からも自明のことで
ある。右主張は、本件商標権侵害ないしこれに伴う被控訴人の損害発生を更に裏付
けるものでこそあれ、被控訴人の本訴請求を何ら左右するものでない。控訴人の右
主張は理由がない。
二 争点2(損害)についての判断
1 控訴人は、被告ゴルフクラブ等は、ゴルフクラブそのままであるにしろ、シ
ャフトを付け替えたものであるにしろ、もともとは、被控訴人が正規代理店に卸し
た商品であったから、その段階で被控訴人は取引上の利益を得ていると主張する。
しかしながら、まず、被告販売クラブヘッド(原判決一〇頁の(1))及び被告製造
ゴルフクラブ(原判決一〇頁の(2))が、被控訴人が行っていない態様によるもの
で、被控訴人ないしこれと同視し得る者の意思に基づいて流通させた真正の商品で
はないことは、原判決の説示するとおりである(三〇頁以下の1、2の項)。この
ような態様の被告販売クラブヘッド及び被告製造ゴルフクラブを販売する行為は本
件商標権を侵害するものであって、商標権侵害による損害が発生していないとする
控訴人の主張は、到底採用することができない。
被告輸入ゴルフクラブ(原判決一一頁の(3))は、控訴人が非正規代理店から購入
したものであるが、前記のとおり、これらが控訴人ないしこれと同視し得る者の意
思に基づき流通過程に置かれたものであるものと認めることはできないので、商標
権侵害の事実は明らかであり、商標権者である被控訴人の損害が発生していないと
認めることもできない。控訴人の主張は、いわゆる消尽論に依拠するものと理解さ
れるが、仮に消尽論を適用するにしても、これによって商標権侵害が違法性を欠き
あるいは損害が発生していないといえるためには、当該商品が商標権者ないしこれ
と同視し得る者の意思に基づいていったん流通に置かれたことが前提として認めら
れなければならないところ、本件においては、この前提事実を認めることができな
いので、消尽論を適用することもできない。
よって、本件商標権侵害について、損害が発生していないとする控訴人の主張は
理由がない。
2 損害額について判断する。
(一) 本件商標権を侵害する被告ゴルフクラブ等の販売によって得た控訴人の
利益額について
(1) 本件において控訴人の得た利益額を算定するに当たっては、粗利益率(売
上額から売上原価を控除した額の売上額に対する割合)から、変動経費率(売上に
伴って変動する経費額の売上額に対する割合)を控除した利益率を算定の基礎とす
るのが相当である。
ア 控訴人の営む事業のうち、ゴルフ用品の販売に係る売上総利益率(粗利
益率)は、甲第五八号証ないし第六五号証及び甲第七七号証並びに弁論の全趣旨に
よれば、第一三期(平成四年五月一日ないし平成五年四月三〇日)、第一四期(平
成五年五月一日ないし平成六年四月三〇日)、第一五期(平成六年五月一日ないし
平成七年四月三〇日)、第一六期(平成七年五月一日ないし平成八年四月三〇
日)、第一七期(平成八年五月一日ないし同年八月二八日)において、順に四七・
一五%、三四・二六%、三六・〇九%、三四・〇六%、三六・〇〇%であると認め
られる。
イ 変動経費額については、控訴人の事業における全販売費及び一般管理費
から、①ゴルフ用品売上と無関係の費用、②固定費(支払報酬、減価償却費、役員
報酬、地代家賃、租税公課、保険料、諸会費、リース料、寄付金、雑費、管理警備
料等の間接費)の合計額を控除した額を、ゴルフ用品売上金額の全売上金額に対す
る割合で按分した金額とすべきであり、変動経費率は、右変動経費額を基礎として
算定することができる。
甲第五九号証、第六三号証ないし第六六号証及び甲第七七号証並びに弁論の全趣
旨によれば、右の方法により算定した結果は、第一三期(平成四年五月一日ないし
平成五年四月三〇日)、第一四期(平成五年五月一日ないし平成六年四月三〇
日)、第一五期(平成六年五月一日ないし平成七年四月三〇日)、第一六期(平成
七年五月一日ないし平成八年四月三〇日)、第一七期(平成八年五月一日ないし同
年八月二八日)のゴルフ用品関連の変動経費率は、順に一八・七四%、二〇・二八
%、二二・六五%、二三・二四%、二〇・〇四%となり、したがって、右各期のゴ
ルフ用品売上の利益率は、順に二八・四一%、一三・九八%、一三・四四%、一
〇・八二%、一五・九六%となることが認められる。
控訴人は、利益率の算定に当たって、支払報酬、減価償却費を控除した額を基礎
とすべきであると主張する。しかし、控訴人は車両販売及びゴルフ用品販売の二つ
の事業を営んでいるが、控訴人における被告ゴルフクラブ等の販売が控訴人の営む
事業全体の中で占める比率は少ないこと、被告ゴルフクラブの販売態様は、雑誌広
告に基づく通信販売によるものであること等の点に照らすならば、右支払報酬、減
価償却費は、被告ゴルフクラブ等の売上額の増減に伴って変動する性質を有するも
のと解することはできず、結局控訴人の右主張は採用することができない。
また、甲第七三号証ないし第七六号証によれば、控訴人が所有する土地建物は、
本件控訴人の商標権侵害行為が開始された平成四年よりも前の昭和五九年ないし昭
和六一年に、控訴人が組織変更及び商号変更前の有限会社松本商事名義で取得した
ものであることが認められる。他に、控訴人所有の不動産がゴルフクラブの営業の
ために取得したものであることを認めるべき証拠はないので、控訴人が主張する租
税公課のうちの固定資産税及び減価償却費をゴルフ用品売上に関係する費用と認め
ることはできない。
他に、控訴人が準備書面に添付して提出した各期の損益計算書及びその他の資料
を分析して控訴人のゴルフ事業部の利益率を算定した公認会計士【C】作成の甲第
七七号証の計算過程に疑問を呈すべき事実関係を認めるべき証拠はない。
(2) 以上の利益率を適用して控訴人の利益を計算すると、以下のとおりとな
る。
なお、右売上額は、①被告販売クラブヘッド、②被告製造ゴルフクラブ、③被告
輸入ゴルフクラブ(ただし、正規代理店以外から購入したゴルフクラブに限った。
正規代理店以外から購入したゴルフクラブの販売個数のキャラウェイ・シャフト・
ゴルフクラブの総販売個数に対する按分比率で算定した。)の各売上額の合計であ
る。
ア 第一三期(平成四年五月一日ないし平成五年四月三〇日)
被告ゴルフクラブ等の売上額は、四二七二万一二二〇円。
5,188,222+34,631,443+4,374,435*1,641/2,474=42,721,220
これに、利益率二八・四一%を乗じると、控訴人の利益額は一二一三万七〇九八
円となる。
42,721,220*28.41%=12,137,098
イ 第一四期(平成五年五月一日ないし平成六年四月三〇日)
被告ゴルフクラブ等の売上額は、三七九六万七一五九円。
125,980+27,896,360+14,992,982*1,641/2,474=37,967,159
これに、利益率一三・九八%を乗じると、控訴人の利益額は五三〇万七八〇八円
となる。
37,967,159*13.98%=5,307,808
ウ 第一五期(平成六年五月一日ないし平成七年四月三〇日)
被告ゴルフクラブ等の売上額は、五一六三万三八四二円。
90,100+18,355,320+50,035,440*1,641/2,474=51,633,842
これに、利益率一三・四四%を乗じると、控訴人の利益額は六九三万九五八八円
となる。
51,633,842*13.44%=6,939,588
エ 第一六期(平成七年五月一日ないし平成八年四月三〇日)
被告ゴルフクラブ等の売上額は、二三八九万二五八一円。
16,925,654+10,503,460*1,641/2,474=23,892,581
これに、利益率一〇・八二%を乗じると、控訴人の利益額は二五八万五一七七円
となる。
23,892,581*10.82%=2,585,177
オ 第一七期(平成八年五月一日ないし同年八月二八日)
被告ゴルフクラブ等の売上額は、四七七万九七八五円。
2,207,740+3,877,660*1,641/2,474=4,779,785
これに、利益率一五・九六%を乗じると、控訴人の利益額は七六万二八五三円と
なる。
4,779,785*15.96%=762,853
カ 以上の合計利益額は、二七七三万二五二四円となる。
そうすると、控訴人が本件商標権を侵害したことによって被控訴人が被った損害
額は、右同額と推定される。よって、控訴人はこれを賠償する義務を負う。なお、
遅延損害金については、被告ゴルフクラブ等の販売は、遅くとも各決算期の末日ま
でに行われたと認められるから、各決算期の最終の日から起算すべきである。
(3) 控訴人は、被告ゴルフクラブ等の販売事業は、控訴人の営む事業のうちの
わずかなものなのに、その利益額が多額に過ぎる旨主張するが、右主張は、前記認
定に照らし採用することができない。また、控訴人は、他社製のシャフト部分の利
益も控除される必要があると主張する。しかし、前記のとおり、控訴人が当該ゴル
フクラブを販売したことによって得られた利益に基づき算定すべきであるところ、
控訴人の右主張によってもこの算定結果を覆すべき具体的な事実関係は明らかでな
いので、右主張も採用することができない。
(二) 弁護士費用について
本件事案の性質、内容、訴訟の経過等の諸般の事情を総合すれば、控訴人の本件
商標権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用に係る損害としては、三〇〇万円
をもって相当と認める。なお、これに対する遅延損害金は、本件侵害行為を一体と
みてその当初から起算すべきである。
第四 結論
以上のとおり、本訴請求は、被告ゴルフクラブ等の販売、頒布、販売広告の差止
めと、損害賠償金三〇七三万二五二四円、並びに、内一五一三万七〇九八円に対す
る平成六年四月二六日(平成五年四月三〇日の後の日)から、内五三〇万七八〇八
円に対する平成六年四月三〇日から、内六九三万九五八八円に対する平成七年四月
三〇日から、内二五八万五一七七円に対する平成八年四月三〇日から、及び内七六
万二八五三円に対する同年八月二九日から、それぞれ支払済みまで民法所定利率に
よる遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
よって、原判決中、金銭支払を命じた部分を右の趣旨に変更し、差止めを命じた
部分についての控訴を棄却することとする。
東京高等裁判所第一八民事部
裁判長裁判官 永 井 紀 昭
裁判官 塩 月 秀 平
裁判官市川正巳は、転補のため署名押印することができない。
裁判長裁判官 永 井 紀 昭
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