弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人浦本貫一上告越意第一点について。
 原判決の証拠により認定したところによれば、被告人Aは、漁業用資材買入の代
金として、封鎖預金一〇万円をその兄Bに支払つたが、その後買入契約を解除して
右代金の返済を受けるにあたり封鎖支払にあらざる現金一〇万円を、二回にわたつ
て受領したというのである。金融緊急措置令及びその附属法令は購買力を抑制して
悪性インフレーシヨンを防止するために、金融機関における預金等を封鎖し、特定
の場合の外これが支払を禁止し、且つ特定の場合に認められる支払についても、所
謂自由支払を極度に制限し、原則としては封鎖支払の方法に依るべきことを規定し
ている。本件の被告人が、漁業用資材の買入代金に充てるための一〇万円を、その
封鎖預金の中から封鎖小切手により払出を受けることができたのは、右の漁業用資
材の買入が、金融緊急措置令施行規則第六条五号(乙)所定の「公認セラレタル平
和産業ノ業務ノ遂行ノ為ニ必要ナル原材料施設又ハ用役ノ入手」の場合に該当する
ことを認められたからであること明かである。のみならず同条同号は、「当該原材
料施設又ハ運送其ノ他ノ用役ノ必要ニシテ且公認セラレタル価格ニ依ル入手ノ確実
ナルコトヲ証スルニ足ル書類ノ呈示アリタル場合ニ限」り、かような「使途ニ充ツ
ル為必要ナル費用ニシテ大蔵大臣ノ定ムル基準ニ依リ認メラレタル金額」を封鎖支
払に依つて支払うことを許しているのであるから、右の一〇万円は、かような条件
を具備するものと確認せられた前記漁業用資材の買入以外の目的に費消することの
できないものである。しかるに原判決引用の証拠の示すところによれば、被告人は、
右の一〇万円の封鎖小切手をその兄Bに交付した後僅かに数日の中に事業資金に行
詰つたという理由で買入契約を解除し、一〇万円の中の大部分八万円を現金で受領
し、更らに約一ケ月半の後に残額二万円をやはり現金で受領してこれを事業資金と
して他に費消している。若しかような手段によつて封鎖預金を容易に現金化し、こ
れを最初払出を受けた目的とは異なる目的のために自由に費消することが合法的に
できるものとするならば、前掲法条の厳重な統制規定は充分な効果を挙げることが
できなくなるであらう。金融緊急措置令の目的とする金融統制の成果を挙げるため
には、かような抜け道を塞ぐ規定がある筈である。果して金融緊急措置令施行規則
第一三条の二第三号には、「預リ金其ノ他之ニ準ズル債務ニシテ自由支払以外ノ方
法ニ依リ為サレタ」金銭債務の弁済付封鎖支払の方法に依つて為すべきことを要求
している。本件のような契約解除による原状回復義務に基く返戻金債務は、預り金
の返還債務ではないが、両者共に前に交附を受けた金銭を債権者に返還することを
内容とする債務である点に於ては、共通の性質を有するから、これを「預リ金ニ準
ズル債務」として、その弁済は封鎖支払の方法によつてなすことを要すると解する
のが相当である。
 従つてこの場合の債権者は、同規則第一三条の五に従い、現金支給に依る弁済を
受領することを得ないものとしなければならぬ。しかるに被告人は、この債務につ
き現金支払の方法による弁済を受領したのであるから、原判決がその所為を金融緊
急措置令第七条、第一一条、同施行規則第一三条の五、第一三条の二、刑法第五五
条に該当するものとしたのは相当であつて、所論のように法令を不当に適用した不
法はない。本件の如き場合においては、金融緊急措置令の立法の目的に照らして、
金融機関から封鎖預金を引出した行為より返還金の受領に至る迄の一聯の所為を綜
合的に判断すべきであるに拘らず、論旨は、これを分断して個々の行為の適法なる
ことを主張し、ために同令の趣旨を看過するに至つたものであつて、理由がない。
(昭和二二年(れ)第一二〇号事件 同二三年二月一〇日言渡最高裁判所第三小法
廷判決参照)。
 同第二点について。
 金融緊急措置令第一一条は、同令違反の行為を為した者に対する罰則であり、同
第一二条は、所謂両罰規定であつて、法人の代表者又は法人、若は人の代理人、使
用人等が其の法人又は人の業務に関し違反行為を為したときは、その行為者の外そ
の法人又は人をも処罰する旨の規定であるが、本件に於ては行為者は被告人Aであ
り、起訴されたのも同人であるから原判決が同令第一一条を適用して第一二条を適
用しなかつたのは正当であつて、所論のように不当に法令を適用した違法はない。
論旨は理由がない。
 弁護人鍛治利一は上告趣意書を提出していないから、これに対する判断を示すこ
とができない。
 以上の理由により刑事訴訟法施行法第二条、旧刑事訴訟法第四四六条により主文
の通り判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。
 検察官 小幡勇三郎関与
  昭和二四年一月一八日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介

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