弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人安藤真一の上告趣意第一、二点について。
 論旨は、被告人Aは棉花の指定輸入実務取扱業者の業務を指揮監督するような法
令上の職務を有するものではなく、原判決が同被告人にかかる職務ありとしたこと
は、法令の解釈を誤り事実を誤認したものであるというに帰し、刑訴四〇五条の上
告理由に当らない。のみならず貿易公団法に依れば、繊維貿易公団(以下単に公団
と略称する)の役職員はすべて政府職員とされ、上司の監督の下に同法一六条の定
める公団の業務を行うべき一般的職務を有し、特に輸入品については、同法一七条
に基いて定められた公団業務方法二二条、一六条によりその種類に応じて輸入実務
取扱業者の指定並びにこれら取扱業者との輸入実務委託契約の締結に関する公団の
業務を行うべき職務を有していたと共に、公団神戸支所職制並びに同分課規程等に
依れば、棉花の輸入実務取扱業者と連絡し、必要な報告を徴し又は実務処理の状況
につき調査する等輸入実務取扱業者を監督指導することも棉花課長たる被告人Aの
職務に属していたことは疑をいれないところである。論旨は、なお、公団と輸入実
務取扱業者との関係は私法上の契約関係に過ぎないとして、被告人Aの輸入実務取
扱業者に対する職務関係を否認するけれども、同被告人が輸入実務取扱業者に対す
る公団の実務委託契約上の権利を行使することは、一面において私法上の権利行使
であると同時に他面において同被告人の法令上の職権行為であると認められるので
あるから、公団と輸入実務取扱業者との関係が私法上の契約だからといつて、その
一事を以て同被告人の職権行為を否定することはできない。尤も、原判決は所論の
ように、公団と輸入実務取扱業者との関係は「従的不可分の関係」であり「当事者
対等の関係を前提とする単なる私法上の契約関係」ではないと判示している。そし
てこの点から見ると、原判決は輸入実務取扱業者を以て公団の下級行政機関と解し、
公団はこれらの者に対し行政法上の指揮監督権を有していたものとするようであり、
その指揮監督権が私法上の契約にもとずく権限以上のものを意味するもののようで
あつて、かかる指揮監督権を認めることは法令上の根拠を欠くものであること所論
のとおりであるが、しかし、被告人Aは公団神戸支所の棉花課長として前記のごと
き法令上の職務を有していたものであり、本件収賄行為はその職務に関してなされ
たものであると認めることができるから、刑訴四一一条を適用すべきものとは認め
られない。
 同第三点について。
 所論は、被告人Aについて量刑不当を主張するに過ぎず刑訴四〇五条の上告理由
に当らない。
 同第四点ないし第六点について。
 論旨は、第一審判決判示の第六、第七、第九の事実につき被告人Bに共同主犯の
責任を負わせたことは法令違反、事実誤認であるというに帰し、刑訴四〇五条の上
告理由に当らない。
 同第七点について。
 論旨もまた、事実誤認の主張に帰し刑訴四〇五条の上告理由に当らない(所論下
請業者は、公団に対する輸入実務取扱業者の契約上の義務に関する履行補助者であ
るから、輸入実務委託契約上公団と下請業者との間に直接の法律関係を生ずるよう
な特段の定がない場合でも、間接的には公団の輸入実務委託契約上の権利に服する
ものというべく、従つて、被告人Aが公団の職員として下請業者を監督指導するこ
とは同被告人の職務自体には属しないとしても、その職務と密接な関係を有し同被
告人の職務に関するものと解するのが相当である)。
 同第八点について。
 所論は、第一審判決判示第十の事実につき事実誤認を主張するに帰し、刑訴四〇
五条の上告理由に当らない。
 同第九点について。
 所論は、憲法三二条違反をいうが、その実質は単なる訴訟法違反の主張に帰し、
刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして所論原審弁護人平田栄之助の控訴趣意
第二点の二は、同弁護人が被告人Bの弁護人として第一審判決判示第七の事実に関
し事実誤認を主張するに当り、その一事由として記述したもので独立の論旨として
理由齟齬を主張したものとは認められないし、原判決が所論のような事実誤認はな
いと判断している以上、同判決には判断遺脱の違法もない。
 弁護人有安堅三の上告趣意第一点について。
 しかし、原判決は、所論の指揮監督権は被告人Aの法令上の職務であるとの前提
の下に事を論じているものと解されるから、所論引用の判例と相反する判断をした
ことにはならない。すなわち、判例違反の論旨はその理由がなく、所論は、結局、
同被告人の職務に関する法令の解釈を誤つた違法ありと主張するに帰するところ、
この点については、前記安藤弁護人の論旨第一、二点について説示したとおりであ
る。
 同第二ないし第五点について。
 第二点は、被告人Aについて量刑不当を主張するに過ぎず、第三点は、事実誤認
の主張に帰し、第四点、第五点は法令違反、事実誤認の主張を出でないものであつ
て、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても、本件につ
き同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三二年二月二二日
     最高裁判所第二小法廷
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
 裁判長裁判官栗山茂、裁判官谷村唯一郎は、各退官につき署名押印することがで
きない。
            裁判官    小   谷   勝   重

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛