弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人道工隆三、同井上隆晴、同柳谷晏秀、同中本勝の上告理由第一につい

 一 所論の点に関し原審が適法に確定するところは、おおむね、次のとおりであ
る。
 1 Dは、傷害、暴行、脅迫、強姦未遂などの粗暴犯一九犯を含む二三犯の前科
を有する者で、昭和四五年七月二八日佐世保刑務所を出所したのち、同年一一月か
ら大阪にきてa区b町の飯場に住み土工として働いていた。
 2 Dは、同月一二日夕刻飯場でウイスキーを一合飲んだのち、c駅付近でビー
ル七、八本を飲み、その後一〇時すぎころ、同区d町e丁目f番地の「スナツクE」
(F経営)に入つた。Dは、「スナツクE」に入ると、腹巻から本件ナイフ(刃体
の長さ七・五センチメートルの鋭利な飛び出しナイフ)を出して刃を開き、これを
持つて店の中を歩きまわつたため、客のなかにはこわがつて店から退出したものも
いた。そこで、バーテンのGは、Dを西隣の「スナツクH」(F経営)に連れて行
つたが、同人は、その途中、Gに対し本件ナイフを出して「殺してやる」と脅し、
「スナツクH」に連れられて行つてからも、店員や客に対し、刃体の開いた本件ナ
イフを見せて「馬鹿野郎」とか「刺されたいか」などと怒鳴つた。
 3 そこで、「スナツクH」の支配人のIと前記Gが、同日午後一一時五分ころ、
Dを約一五〇メートル離れた淡路警察署に連れて行つた。そして、Iらは、警察官
にDを引渡し、同人が「スナツクH」などで本件ナイフを出して店の客を脅かし危
いので連れてきたと告げ、途中で同人から取り上げた本件ナイフを警察官に渡した。
 4 淡路警察署の警察官は、Dに対し本籍、住所、氏名を問い、所持品を見せる
ように求めて身体検査をした結果、同人が佐賀県神崎郡g町に本籍のある昭和五年
一月九日生れの男であり最近郷里の佐賀県から大阪にきたものであることを確認し
た。そこで、右警察官は、大阪府警察本部に対しDの前科及び指名手配の有無を照
会したところ、同本部では、本籍、犯行場所、言渡裁判所が大阪府外である者の前
科は登録されていないため、同人の前科は発見されなかつたが、同人の両眉及び左
首より胸の付近には入墨があり、入墨をした者には粗暴犯の常習者が少なくないの
にかかわらず、同人に対し前科の有無を尋ねることをしなかつた。
 5 また、警察官は、Dの所持していた本件ナイフが鋭利な飛び出しナイフであ
ることを確認したうえ、同人に本件ナイフの所持目的と「スナツクH」での行動に
ついて質問したところ、同人は、ナイフは果物の皮をむくために所持しているので
あり、「スナツクH」ではナイフは刃を開かずにカウンターの上に置いただけであ
る旨答えたが、同人は相当酩酊していて当夜の行動を明確に記憶していないほどで
あり、その供述態度も反抗的であつて必ずしも信用できるものではなかつた。しか
し、警察官は、Dを警察に連れてきたIらに対し、Dの「スナツクH」での具体的
行動について確認することはしなかつた。
 6 警察官は、酒を飲んだ者が深夜腹巻にナイフを忍ばせて外出することは異常
と思つたが、Dの行為は犯罪を構成せず、逮捕、保護又は引取りを手配し、ナイフ
を領置、保管したりする必要はないと考え、同人に本件ナイフを持たせたまま帰宅
させた。
 二 以上の事実関係からすれば、Dの本件ナイフの携帯は銃砲刀剣類所持等取締
法二二条の規定により禁止されている行為であることが明らかであり、かつ、同人
の前記の行為が脅迫罪にも該当するような危険なものであつたのであるから、淡路
警察署の警察官としては、飲酒酩酊したDの前記弁解をうのみにすることなく、同
人を警察に連れてきたIらに対し質問するなどして「スナツクH」その他でのDの
行動等について調べるべきであつたといわざるをえない。そして、警察官が、右の
ような措置をとつていたとすれば、Dが警察に連れてこられた経緯や同人の異常な
挙動等を容易に知ることができたはずであり、これらの事情から合理的に判断する
と、同人に本件ナイフを携帯したまま帰宅することを許せば、帰宅途中右ナイフで
他人の生命又は身体に危害を及ぼすおそれが著しい状況にあつたというべきである
から、同人に帰宅を許す以上少なくとも同法二四条の二第二項の規定により本件ナ
イフを提出させて一時保管の措置をとるべき義務があつたものと解するのが相当で
あつて、前記警察官が、かかる措置をとらなかつたことは、その職務上の義務に違
背し違法であるというほかはない。これと同旨の原審の判断は、正当として是認す
ることができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、右と異なる独自の見解に立つ
て原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
 同第二について
 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯する
に足り、右事実関係のもとにおいて、所論警察官の違法行為とIの受傷により被つ
た損害との間に相当因果関係があるとした原審の判断は、正当として是認すること
ができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 同第三について
 所論は、原判決の違法をいうものでないことが明らかであるから、適法な上告理
由にあたらない。論旨は、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    環       昌   一
            裁判官    横   井   大   三
            裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    寺   田   治   郎

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