弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
被告人を懲役8年に処する。
未決勾留日数中60日をその刑に算入する。
理由
【罪となるべき事実】
被告人は,平成25年10月下旬頃,自身が別件で捜査対象とされてい
ることを察知したため,捜査機関による追及を逃れるために,北海道外へ
逃走しようと考えた。被告人は,その逃走資金を得るために,窃盗や強盗
をするなどして現金を奪うことを企てた。
第1被告人は,平成25年11月4日午後0時21分頃,北海道函館市
a町b丁目c番d号A店事務所において,同店従業員B所有又は管理
の現金約3万5300円,金券4枚(額面合計4000円)及びクレ
ジットカード等8点在中の財布1個(時価合計約1000円相当)を
窃取した。
第2被告人は,平成25年11月18日午前9時14分頃,北海道函館
市a町b丁目e番f号株式会社C店1階南西側男子トイレ内におい
て,清掃作業中のD(当時43歳)に対し,背後からその口を手で塞
ぐなどの暴行を加え,その反抗を抑圧して金品を奪おうとしたが,同
人に悲鳴を上げられるなどして抵抗されたため,その目的を遂げなか
った。
第3被告人は,前記第2の犯行現場から逃走後,犯行発覚を妨げようと
考え,着替え用の上着を窃取することを企て,平成25年11月18
日午後5時24分頃,北海道函館市a町d丁目g番h号生活協同組合
E店1階株式会社F店において,同店店長G管理のダウンジャンパー
1着(販売価格5990円)を窃取した。
第4被告人は,平成25年11月20日午前0時55分頃,北海道函館
市i町j番k号北海道旅客鉄道株式会社H駅北口前敷地内において,
I(当時29歳)に対し,背後からその口を手で塞ぐなどし,更に地
面に倒れた同人の側頭部を手拳で殴るなどの暴行を加え,その反抗を
抑圧した上,同人所有又は管理の現金約5万円及び財布等14点在中
の手提げバッグ1個(時価合計約1万9300円相当)を奪い,その
際,前記暴行により,同人に全治約1週間を要する頭部打撲傷の傷害
を負わせた。
【累犯前科】
被告人は,⑴平成19年7月17日札幌地方裁判所苫小牧支部で窃盗罪
により懲役1年10月に処せられ,平成21年5月4日その刑の執行を受
け終わり,⑵その後犯した公用文書毀棄罪,器物損壊罪により平成24年
3月21日仙台地方裁判所で懲役1年に処せられ,平成25年2月28日
その刑の執行を受け終わったものであって,これらの事実は検察事務官作
成の捜査報告書によって認める。
【法令の適用】
罰条
判示第1の行為刑法235条
判示第2の行為刑法243条,236条1項
判示第3の行為刑法235条
判示第4の行為刑法240条前段
刑種の選択
判示第1及び第3の各罪についていずれも懲役刑を選択
判示第4の罪について有期懲役刑を選択
累犯加重刑法59条,56条1項,57条(前記
各前科との関係で,判示各罪の刑にそれ
ぞれ3犯の加重。ただし,判示第2及び
第4の各罪の刑については刑法14条2
項の制限に従う。)
併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(最
も重い判示第4の罪の刑に刑法14条
2項の制限内で法定の加重)
未決勾留日数の算入刑法21条
訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書
【量刑の理由】
本件において,量刑上最も重視すべきであるのは,法定刑の重さからし
て,判示第4の強盗致傷に関する犯情である。被告人は,周りに人がいな
い状況で,女性に対し,その背後から手で口を塞いで襲いかかった上,被
害者の頭部を,手拳で殴り,アスファルトの地面に打ち付けさせるという
暴行を加えている。このような犯行態様は,卑劣であり,かつ,素手によ
る暴行としては粗暴で危険なものである。また,被害者の受けた財産的損
害や精神的苦痛も軽視できるものではない。しかし,被告人が凶器を使用
していないことや傷害の程度が結果的に全治約1週間にとどまっているこ
とからすれば,判示第4の事案は,類型的には,強盗致傷罪の事案の中で
は比較的軽い部類に位置づけられる事案といえる。
これを前提に,更に被告人の犯情についてみると,被告人は,判示第4
の強盗致傷のほかに強盗未遂や窃盗2件の犯行に及んでいる。このうち,
判示第2の強盗未遂の態様は背後からいきなり女性を襲ったという悪質な
ものであり,被害者の受けた精神的苦痛も軽視できない。また,捜査機関
からの逃走資金を得ようとして思うがままに本件各犯行に及んだという動
機や経緯は,短絡的で身勝手極まりないものである。さらに,被告人は,
2週間余りの間に,本件各犯行に連続的に及んでおり,しかも,その内容
をエスカレートさせている。このような被告人の態度に対しては強い非難
が加えられるべきである。
これらの事情に加えて,被告人は,窃盗罪等の服役前科を有しているこ
と,前刑の執行を受け終わった後,8か月余りで本件各犯行に及んだこと
等の事情を併せて考慮すれば,被告人の刑事責任は前記のとおり強盗致傷
罪の中では比較的軽い部類に位置づけられるものの,その刑期は強盗致傷
罪の処断刑の下限である懲役6年付近にとどまるものということは到底で
きない。そこで,被告人に対しては,その処断刑の下限をやや上回る懲役
8年の刑に処するのが相当であると判断した。
なお,判示第2の犯行態様等について,被害者及び被告人の各公判供述
には一致しない点がみられる。この点,被害者は,自らの体験を記憶して
いるとおりに率直に述べているものと認められる。しかし,被害者の供述
は,背後からいきなり襲われたことによる恐怖感や驚がくの影響を少なか
らず受けているとも認められる。また,供述内容の違いは,上記のような
事件当時の被害者の精神状態に加え,両者の体格差等からくる両者の受け
止め方の違いに由来するところも多いと考えられる。もっとも,両者の供
述の違いは,少なくとも公訴事実の限度では符合している上,被告人の行
為の悪質さについての評価に影響を及ぼすものではないと認められる。
(検察官佐藤慎也及び同栂野芳徳並びに国選弁護人丹澤友佑〔主任〕及び
同田中綾太郎各出席)
(検察官の求刑・懲役9年,弁護人の意見・懲役7年)
平成26年5月29日
函館地方裁判所刑事部
裁判長裁判官佐藤卓生
裁判官大倉靖広
裁判官宍戸崇

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛