弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
1 1審原告らの控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。
2 1審被告会社及び同Aは,連帯して,1審原告らそれぞれに対し,以下の各金員
及びこれに対する平成11年5月19日から支払済みまで年5分の割合による金員
を支払え。
(1) 1審原告Bに対し,225万1000円
(2) 同Cに対し,225万1000円
(3) 同Dに対し,236万1000円
(4) 同Eに対し,219万8000円
(5) 同Fに対し,246万2000円
(6) 同Gに対し,249万5000円
3 1審原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4 1審被告らの控訴をいずれも棄却する。
5 訴訟費用は第1,2審を通じてこれを3分し,その1を1審被告らの負担とし,その
余を1審原告らの負担とする。
6 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
(略語は原判決に準じる。)
第1 当事者の求めた裁判
1 1審原告ら
(1) 原判決中,1審原告ら敗訴部分を取り消す。
(2) 1審被告会社及び同Aは,連帯して,1審原告らそれぞれに対し,以下の各金
員及びこれに対する平成11年5月19日から支払済みまで年5分の割合による
金員を支払え。
ア 1審原告Bに対し,787万9200円
イ 同Cに対し,827万9200円
ウ 同Dに対し,841万9200円
エ 同Eに対し,885万4400円
オ 同Fに対し,628万8800円
カ 同Gに対し,626万6800円
(3) 訴訟費用は第1,2審とも1審被告らの負担とする。
(4) 仮執行宣言
2 1審被告ら
(1) 原判決中,1審被告ら敗訴部分を取り消す。
(2) 上記取消にかかる部分についての1審原告らの請求をいずれも棄却する。
(3) 訴訟費用は第1,2審とも1審原告らの負担とする。
第2 事案の概要
1 本件は,①1審原告らが,1審被告会社との間で,その代表者である1審被告Aの
説明及び締結行為により交わした空調機器清掃工事等の営業に関する「P.C.G
ダクリンボーイ」フランチャイズ契約(本件契約)につき,公序良俗違反,錯誤無効
若しくは詐欺取消により本件契約の効力がないこと(①-1),本件契約を締結す
る過程での情報提供義務の違反(①-2)若しくは不法行為(①-3)があったこと
を理由として,また②1審原告Dが,本件契約に関する交渉中に1審被告Aから暴
行を受け,これが不法行為であるとして,それぞれ次の請求をする事案である。
(1) 1審原告らそれぞれが1審被告会社に対し,不当利得に基づく利得金の返還
(①-1),債務不履行に基づく損害賠償(①-2),又は不法行為(1審被告会
社自体によるもの,若しくは代表者の不法行為による法人の責任)に基づく損害
賠償(①-2,3,遅延損害金も含めて後記1審被告Aと連帯)及びそれぞれに
対する訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延
損害金
(2) 1審原告らそれぞれが1審被告Aに対し,不法行為に基づく損害賠償(①-2,
3)及び上記同様の遅延損害金(いずれも上記1審被告会社と連帯)
(3) 1審原告Dが1審被告会社(代表者の不法行為による法人の責任)及び1審被
告Aに対し,連帯して,不法行為に基づく損害賠償(②)及び上記同様の遅延損
害金
上記1審原告らの請求に対し,1審被告らが責任原因と損失・損害額等を争った
ところ,原審は,本件契約につき,公序良俗違反,錯誤及び詐欺の事実は認めら
れないとしたものの,1審被告らの情報提供義務の違反を認め,1審原告らの過失
割合を6割として過失相殺をし,また,1審原告Dに対する1審被告Aの暴行を認
め,1審原告らの1審被告両名に対する本件請求(上記①-2,3,②)の一部を認
容した。そこで,双方が事実誤認等を主張して控訴した。
2 争いのない事実等,争点及び争点に対する当事者の主張は,次のとおり改める
ほかは,原判決「事実及び理由」第2の1ないし3のとおりであるから,これを引用
する。
(1) 原判決4頁5行目の「エアコンあるいは厨房ダクトの洗浄業務」を「1審被告会
社の独自のノウハウにより開発されたエアコンあるいは厨房ダクトの洗浄業務」
と,16行目の「平成11年1月8日,」を「平成11年1月8日に到達した書面によ
り,」とそれぞれ改め,18行目から20行目までを削る。
(2) 原判決6頁21行目と22行目を「 平成7年1月から平成10年8月までに愛知
県内で新規に加盟した62店は殆ど廃業し,現在まで残っているのは4店に過ぎ
ない。その理由は1審被告らから教えられたとおりに努力しても売上げが伸び
す,生活が維持できないからである。」と,11頁1行目の「原告D」を「1審原告
B,同D」とそれぞれ改める。
第3 争点に対する当裁判所の判断
1 争点(1)(本件契約の無効及び取消原因の存否並びに1審被告らの情報提供義務
違反及び不法行為の成否)について
当裁判所も,本件契約につき,公序良俗違反,錯誤及び詐欺等,本件契約の無
効及び取消原因並びにこれを理由とする不法行為を認めることはできないが,1審
被告らの契約締結上の情報提供義務違反は認めることができ,これは不法行為を
構成するものと判断する(なお,契約締結上の情報提供義務違反についての1審
原告らの主張及び原判決の記載は,その法的構成につき必ずしも明白ではない
が,それぞれの主張及び右原判決の記載の内容からすると,債務不履行又は不
法行為であるとの主張であり,原判決は不法行為に基づく請求を認容したものと解
される。)。その理由は,次のとおり改めるほかは,原判決「事実及び理由」第3の
1のとおりであるからこれを引用する。
(1) 原判決11頁15行目の「特許も取得した。」を「平成4年にダクト内清掃方法等
に関して複数の特許を取得した。」と改め,13頁3行目の「昭和60年代に入っ
て」及び7行目から8行目にかけての「他の業者が参入するようになった。」をい
ずれも削り,10行目の「多数参入するようになった。」を「多くなった。」と改める。
(2) 原判決13頁15行目の「以下のとおり推移している。」を「以下のとおり推移し
ており,合計189店が加入し,93店がフランチャイジーから離脱した計算にな
る。また,平成7年1月から平成10年8月までの間に,愛知県内で1審被告会社
のフランチャイズ・ダクリンボーイに加盟した約60店のうち,現在も同フランチャ
イジーとして残っている店舗は4店舗に過ぎない。」と,21行目から14頁5行目
までを次のとおり,それぞれ改める。
「(イ) 1審原告らが行ったアンケートには40の加盟店が回答したが,そのうち営業
期間が1年以上に及んだものは14店であって,その月平均売上高は27万
円に届かない。アンケート回答者のうちで1審被告会社から施工報告シート
が提出された16店について見ると,営業期間の平均は9.38月,総売上高
の月平均は27万円余であった。1審原告らの営業期間は6か月から10か月
であり,その施工報告シートには加筆があって判然としない部分があるが,月
平均売上高は概ね13万円から30万円であった。(甲10の1ないし40,乙4
6,51ないし54の各1,乙55の1ないし3,5,6,9.10,15,16,18,2
3,31,34,36ないし38)」
(3) 原判決15頁4行目の「ただし,」から5行目の「準備が必要である。」まで及び
9行目の「しかし,」をいずれも削り,同行の「結構いる。」を「結構いるが,儲から
なくて辞めた者はいない。」と,16行目の「競業他社の存在,」を「競業他社の存
在及び需要の予測等,市場状況についての個別具体的な情報,」と,17行目の
「資料は」から18行目までを「資料は示されなかったし,具体的な説明もなく,1
審原告らは売上げ等に関し,既存加盟店全体の平均的なデータや最低レベル
のデータの開示を求めていたのに,1審被告Aは,個別の加盟店の具体的デー
タや,ある時点の具体的データだけを示すに止め,平均的データ等を一切示さ
なかった。そのため,ある店の1年目の売上げが月100万円であるとの説明
が,1年目の「年間の」又は「加盟店全体の」平均売上げが月額100万円である
と誤解されかねない状況である等した。」と,22行目の「また」を「また,本件契
約の証書の本文1頁目及び」とそれぞれ改め,24行目の「以上,原告らは当然
このことを理解していたと認められる。」を削る。
(4)原判決16頁1行目の「フランチャイジー」から7行目の「認められる。」までを次
のとおり改める
「フランチャイジーのうち営業期間が1年以上に及んだ店の月平均売上高は27
万円に届かない額であって,回答者の多くは開業後1年に満たない期間で廃業
したものである。ところで,1審被告Aは加盟希望者に対し,営業を継続した場合
の1年目,2年目などの一定時期における特定の業者の売上高の例を示すなど
して説明していたものである。」
(5) 原判決17頁5行目の「被告A」から7行目の「認められない。」までを「1審被告
Aの行った説明が,1審原告ら主張の不法行為を構成するが如き虚偽のもので
あったと認めるには至らない。」と改め,18頁15行目の「被告会社が」から16
行目の「開拓が始まり,」まで及び18行目の「また」から19行目の「結果,」まで
をいずれもを削り,19頁13行目の「説明したにとどまり,」を「説明したにとどま
り,平均的なデータや下限のデータを一切示さなかったし,出店予定地域の競
業他社の存在や需要予測等市場状況についての情報も伝えなかったのである
から,」と,20行目の「したがって,」から22行目までを「したがって,1審被告A
も,1審原告らに対し,過失により情報提供義務を怠ったものといえ,1審被告ら
は1審原告らに対し,連帯して情報提供義務違反に基づく不法行為責任を負担
するといわざるをえない。」とそれぞれ改める。
2 争点(2)(1審原告Dに対する暴行の有無等)について
この点についての当裁判所の判断は,原判決「事実及び理由」第3の2のとおり
であるからこれを引用する。
3 争点(3)(損害額,過失相殺等)について
この点についての当裁判所の判断は,次のとおり改めるほかは,原判決「事実
及び理由」第3の3のとおりであるからこれを引用する。
(1) 原判決21頁8行目から22頁2行目までを次のとおり改める。
「 1審被告らは,1審原告B,同D,同C及び同Eが,1審被告会社との契約終了
後も,エアコンクリーニング業を独自に行っていると主張する。しかし,同1審原
告らが,1審被告会社との契約終了後もエアコンクリーニング業だけを独自に
営んでいると認めるに足りる証拠はなく,証拠(甲55ないし57)及び弁論の全
趣旨によると,1審原告B,同D及び同Cは共同して,クリーンエアシステムの
商号で,エアコンの洗浄だけでなく,エアコンの修理及び販売等の業務を行っ
ており,同Eは電気工事業を営み,同Bらからエアコン修理等の仕事を受注す
ることもある事実が認められる。
そうすると,同1審原告らは1審被告会社との契約終了後もエアコンクリーニ
ング業に関連のある業務に従事しているのであるから,1審被告会社に支払っ
た研修費用(エアコン洗浄事業のノウハウ取得するための対価)及び資機材費
等(同事業のために必要な資機材の対価等)のすべてを1審被告らの情報提
供義務違反と相当因果関係のある損害と認めることはできず,上記判示の事
実によれば,その2分の1に限って損害と認めるのが相当である。また,車両
については,上記4名の現在の事業の営業に利用することが可能なものであ
るから,いずれもその購入費用を損害と認めることはできない。
よって,1審被告らの情報提供義務違反と相当因果関係のある損害として
は,加盟金及びロイヤルティとして支払った額の全部並びに研修費用及び資
機材費等として支払った額の半額に限り認めることができる。そうすると,損害
額合計は,1審原告B,同C及び同Dが各341万円,同Eが333万円となる。」
(2) 原判決22頁16行目から23頁22行目までを次のとおり改める。
「 しかも,1審被告Aが1審原告らに対し,ビラ・チラシを撒くだけの営業で足り
る旨説明したことを認めるに足りる証拠はなく,原告らに交付されたマニュア
ル(乙64の4)にも,詳細な営業活動の方法が記載されている。
しかしながら,1審被告Aは,1審原告らの出店予定地域の競業他社の存
在や需要の予測等,市場状況についての個別具体的な情報提供を怠った
上,既存加盟店の経営状況の平均的データを把握できる立場にありながら,
加盟希望者にもそのデータを示さず,既存加盟者の個別データのうち好都合
なものだけを示して勧誘するという,不正確で恣意的ともいえる情報提供によ
り勧誘したものであり,他方,本件契約の目的とする空調機器の清掃工事等
は,その当時一般的営業であったとも窺えないから,1審原告らにおいて独
自に情報を得ることが容易であったとも考えられない。これらを勘案すれば,
本件においては,1審被告Aの過失を軽視できず,1審原告らの過失割合を4
0%に留めるのが相当である。」
(3) 原判決24頁2行目の「1割」を「1割(1000円未満四捨五入)」と,5行目を次
のとおり,それぞれ改める。
「 本判決別紙記載(2)損害額一覧表のとおりである(なお,本判決別紙記載(1
)支払費用一覧表は原判決と変更はないが,理解の便宜のために,別紙に付
加する。)。」
4 以上によれば,1審原告らの1審被告らに対する不法行為に基づく請求は,上記
の損害金及びこれに対する不法行為の後である訴状送達日の翌日であることが
原審記録上明らかな平成11年5月19日から支払済みまで民法所定年5分の割
合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある(なお,1審原告らの情報
提供義務違反の主張につき,これを債務不履行としても,上記損害額を超えては
認められない。)。
第4 結論
よって,上記認容すべき損害額を認めなかった限度において原判決は失当であ
るから,1審原告らの控訴は一部理由があるので,原判決を上記にしたがって変
更し,1審被告らの控訴は理由がないのでこれを棄却することとし,訴訟費用の負
担割合を定め,主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所民事第1部
裁判長裁判官    田   村   洋   三
裁判官    小   林   克   美
裁判官    戸   田       久

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛