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主文
1本件控訴をいずれも棄却する。
2控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴人
()原判決を取り消す。1
()処分行政庁が参加人に対し平成18年3月31日付けでした名古屋都市2
計画道路事業3・5・118号池内猪高線に係る事業計画の変更認可(変更
後の事業計画は原判決別紙事業目録記載3のとおり)を取り消す。
()訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。3
2被控訴人
主文と同旨
第2事案の概要
1控訴人らは,参加人の施行する原判決別紙事業目録記載の都市計画事業に係
る事業地の周辺住民であるところ,上記都市計画事業は,愛知県知事から,平
成5年9月3日,都市計画事業の認可を受け,その後,平成12年3月24日,
平成14年3月22日及び平成18年3月31日に,事業計画の変更認可を受
けた(以下,この都市計画事業を,事業計画の変更の前後を通じて「本件道路
事業」という。)。
本件は,控訴人らが,本件道路事業に係る事業計画の変更認可のうち,愛知
県知事(処分行政庁)が,都市計画法63条1項に基づき,参加人に対して平
成18年3月31日付けでした変更認可が違法であると主張して,その取消し
を求めた事案である。
原判決は,控訴人らの請求をいずれも棄却した。そこで,控訴人らが控訴し
た。
2前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,以下のとおり原判決を付
加訂正するほか,原判決の「第2事案の概要」欄の1及び2,並びに「第3
争点に関する当事者の主張」欄の1ないし3に記載のとおりであるから,こ
れを引用する。
3原判決の付加訂正
()原判決21頁23行目末尾を改行のうえ,次のとおり付加する。1
「キ道路構造令の違反について
本件区間の計画交通量を1日当たり1万台と定めたことは適切であり,
その結果,本件区間の車線の数が2となったものであるから,道路構造
令の違反は存しない。
この点についての主張の詳細は,後記3の争点()についての被控訴3
人及び参加人の主張()に記載のとおりである。」1
()原判決30頁1行目の「機能してきたものでり」を,「機能してきたも2
のであり」と改める。
()原判決30頁10行目末尾を改行のうえ,次のとおり付加する。3
「オ道路構造令の違反について
道路構造令によれば,計画交通量が1日当たり1万2000台を超え
る道路については,車線の数を4以上としなければならないところ,計
画交通量の算定を適切に行えば,本件区間の計画交通量が1日当たり1
万2000台を超えることは,明らかである。
にもかかわらず,本件区間の計画交通量を1日当たり1万台と定め,
平成4年決定を行ったこと自体,計画交通量の決定における裁量を逸脱
濫用して,違法である。
なお,この点についての主張の詳細は,後記3の争点()の控訴人ら3
の主張()に記載のとおりである。」1
()原判決30頁13行目冒頭の「(ア)平成15年1月23日」を,次の4
とおり改める。
「(ア)参加人が,平成3年7月17日及び同年12月18日に,住民に対
し行った事業計画説明会は,中身が乏しく,住民と話し合おうという姿
勢を欠くものであったが,さらに,平成15年1月23日」
()原判決33頁24行目末尾を改行のうえ,次のとおり付加する。5
「なお,控訴人らは,国土交通省住宅局作成の「平成15年度住宅局関係
予算概要」(甲108)や,国土交通省中部地方整備局作成の「平成19
年度に実施した中部地方整備局所管事業における事業評価結果について」
(甲109)において,計画交通量が1日当たり1万3500台とされて
いることを根拠に,本件変更認可が行われた時点の計画交通量は,1日当
たり1万3500台であるから,本件区間を2車線として事業を行うこと
は,道路交通令に違反する旨主張する。
しかし,甲108及び109に記載された「計画交通量」という文言は,
道路構造令に規定された「計画交通量」とは,意味を異にし,したがって,
甲108及び109の記載から,道路構造令に規定された「計画交通量」
が変更されているということはない。
すなわち,道路構造令に規定された「計画交通量」の定義は,本件計画
交通量定義のとおりであり,地域の発展の動向や将来の自動車交通の状況
等の政策的な判断を伴う諸般の事情を総合的に考慮して判断されるもので
あり,ある一時点の実測値をもって定めるものではない。これに対し,甲
108及び109は,事業の効率性及び透明性の一層の向上を図る目的で,
公共事業の再評価を行った結果を記載したもので,甲108は,平成15
年度再評価(事業採択後10年継続中の事業に対する),甲109は,平
成20年度予算に向けた再評価(再評価実施後5年経過の事業に対する)
に,それぞれ係るものである。そして,街路事業に対する再評価において
は,費用対効果分析(事業の便益と費用との比較)を行うこととされると
ころ,便益を算定する基礎として,将来交通量を推計する必要があるとさ
れ,その将来交通量の推計については,都市の道路ネットワーク上で計画
路線の有無別に交通配分を行い,ネットワーク上の総費用を比較して求め
ることとされる(丙61)。そこで,甲108及び109にいう「計画交
通量」とは,上記将来交通量の意味であり,道路構造令に規定される計画
交通量とは,自ずと意味を異にするものである。なお,甲108及び10
9にいう計画交通量が1日当たり1万3500台とされたのは,平成16
年交通量推計によって平成32年の交通量が1日当たり1万3500台と
の結果が得られたためである。」
()原判決38頁3行目冒頭の「本件環境予測は,」を,次のとおり改める。6
「道路構造令によれば,計画交通量が1日当たり1万2000台を超える
道路については,車線の数を4以上としなければならない(なお,参加人
は,本件区間の道路の区分を4種2級と定めているところ,4種2級の道
路については,計画交通量が1日当たり1万台以下のものが,車線の数2
とされる。)とされる。
この点,後記のとおり,本件変更認可がなされた時点では,計画交通量
は1日当たり1万3500台とされていたのであり,車線の数を2とする
本件道路事業は,道路構造令に違反する。
また,平成4年決定が行われた時点でも,計画交通量の算定を適切に行
えば,本件区間の計画交通量が1日当たり1万2000台を超えることは
明らかであったのであり,したがって,それにもかかわらず,本件区間の
計画交通量を1日当たり1万台と定め,平成4年決定を行ったこと自体,
計画交通量の決定における裁量を逸脱濫用したものであって,違法である。
すなわち,まず,参加人は,上記のとおり,本件区間の計画交通量を1
日当たり1万台と定めているが,計画交通量の算定に当たり,考慮すべき
要素を考慮していない。計画交通量は,道路の重要な要素である道路の構
造を定める,重要な役割を担っているのであるから,計画交通量の決定は,
客観的・科学的な資料に基づきなされるべきもので,全くの自由裁量によ
るということはあり得ない。ところが,参加人は,本件区間の計画交通量
を1日当たり1万台と定めるに当たり,現況分析やその際必要とされる各
種指標の収集さえ,十分に行った様子がなく,必要な手順が踏まれていな
い。
また,参加人は,計画交通量の算定に当たり,考慮すべきでない要素を
考慮している。すなわち,参加人は,その際の考慮要素として,被控訴人
及び参加人の主張のとおり,①本件区間の道路が,補助幹線道路となると
判断すべきところ,標準幅員通達によれば,補助幹線道路については,都
市部にあってはその幅員は16mを標準とし,車線の数は2を原則とする
こと,②幹線道路として4車線で整備するためには30m前後の幅員が必
要であり,本件区間についてこのような位置付けをすることは妥当でなく,
非現実的でもあること,③池内猪高線については,平成4年当時,本件区
間以外は,既に2車線で供用されており,本件区間の道路を4車線で整備
すると,かえって前後のバランスを欠くこと,④昭和21年の都市計画決
定においても,幅員は15mと定められていたこと,その他,⑤住宅地域
の良好な住環境の保全を図るためには,4車線の道路は望ましくないこと,
⑥本件区間の道路の区分が,4種2級と定められていること等を挙げる。
しかし,道路構造令によれば,計画交通量が定まって,幅員や車線の数が
定まるのであるから,①ないし④及び⑥については,根拠と結論が逆転し
ている。また,⑤についても,住宅地域の良好な住環境の保全が必要であ
るとしても,交通量にかかわらず無理に2車線としたりすれば,自動車の
大渋滞を招くなどして,かえって周辺環境に悪影響を与えるおそれがあり,
地域性によって車線の数を決定することはできず,交通量の予測をもとに
するほかないのであるから,やはり理由がない。
また,本件変更認可についてみると,本件環境予測は,」
()原判決38頁9行目冒頭から同頁12行目末尾までを,次のとおり改め7
る。
「ところで,上記1日当たり1万3500台という数字自体,適切かどう
か(過少ではないか)疑問のあるところではあるが,国土交通省住宅局作
成の「平成15年度住宅局関係予算概要」(甲108)や,国土交通省中
部地方整備局作成の「平成19年度に実施した中部地方整備局所管事業に
おける事業評価結果について」(甲109)においては,計画交通量が1
日当たり1万3500台とされている。
そうであるとすれば,本件変更認可がなされた時点では,本件区間の計
画交通量は1日当たり1万2000台を超えることは明らかであり,また,
平成4年決定が行われた時点でも,計画交通量の算定を適切に行えば,同
様であるといい得るから,車線の数を2とする本件道路事業は,道路構造
令に違反する違法なものである。」
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人らの請求はいずれも理由がないから棄却すべきものと判
断するが,その理由は,以下のとおり,原判決を付加訂正するほかは,原判決
「第4当裁判所の判断」欄の1ないし4に記載のとおりであるから,これを
引用する。
2原判決の付加訂正
()原判決65頁25行目冒頭から66頁3行目末尾までを,次のとおり改1
める。
「イ控訴人らは,本件変更認可がなされた時点では,本件区間の計画交通
量は1日当たり1万2000台を超えることは明らかであり,また,平
成4年決定が行われた時点でも,計画交通量の算定を適切に行えば,同
様であるといい得るところ,道路構造令によれば,計画交通量が1日当
たり1万2000台を超える道路(参加人が定めたとおり,道路の区分
が4種2級であれば,1日当たり1万台を超える道路)については,車
線の数を4以上としなければならないのであるから,車線の数を2とす
る本件道路事業は,道路構造令に違反する違法なものである旨主張す
る。」
()原判決66頁25行目冒頭から67頁6行目末尾までを,次のとおり改2
める。
「そこで,本件交通量定義によれば,計画交通量は,地域の発展の動向や
将来の自動車交通の状況等の政策的判断を伴う諸般の事情を総合的に考慮
して判断されるものであるから,前記ウの諸事情を考慮して,当初計画交
通量を1日当たり1万台未満と定めたことに,裁量の逸脱濫用があるとは
認められない。
控訴人らは,計画交通量の決定は,客観的・科学的な資料に基づきなさ
れるべきものであり,平成4年決定が行われた時点でも,計画交通量の算
定を適切に行えば,本件区間の計画交通量は1日当たり1万2000台を
超えるはずである旨主張する。しかし,当時の現況分析において,1日当
たり1万2000台という計画交通量を導き出すことができるような客観
的・科学的資料が存在したのか否かについては,これを認めるに足りる証
拠はない。
また,本件交通量定義によれば,計画交通量は,ある1時点の交通量の
実測値をもって定めるものではないと認められるから,当初,計画交通量
を1日当たり1万台未満と定めて道路事業を進め,その後に実施された平
成16年交通量推計によって平成32年の交通量が1日当たり1万350
0台であるとの調査結果が得られたとしても,そのことから,本件道路事
業を4車線に変更しなければならないとは解されないし,また,2車線の
ままで施行する本件道路事業が道路構造令に違反するということもできな
い。
ところで,証拠(甲108,109)によれば,「平成15年度住宅局
関係予算概要(国土交通省住宅局作成)」及び「平成19年度に実施した
中部地方整備局所管事業における事業評価結果について(国土交通省中部
地方整備局作成)」の費用便益分析の項に,「計画交通量1万3500台
日」という記載があることが認められるところ,控訴人らは,これらも/
根拠として,本件変更認可がなされた時点では,本件区間の計画交通量は,
1日当たり1万3500台とされていたはずである旨主張する。
しかし,証拠(甲110)によれば,道路についての費用便益分析とは,
交通流の推計から,走行時間の短縮,走行経費の減少,交通事故の減少と
いう便益と道路の整備,維持管理に要する費用とを比較しようとするもの
で,計画交通量は,上記交通流の推計に関連する数値であるとみられるが,
交通流の推計は,道路交通センサスベースの表を用いて発生集中交通OD
量の推計,分布交通量の推計,路線配分という過程を経て行うものとされ
る。
そうすると,費用便益分析における計画交通量は,本件計画交通量定義
にいう計画交通量と,その趣旨や内容を異にするものというべきであるか
ら,「平成15年度住宅局関係予算概要(国土交通省住宅局作成)」及び
「平成19年度に実施した中部地方整備局所管事業における事業評価結果
について(国土交通省中部地方整備局作成)」にある数値が,そのまま道
路構造令にいう計画交通量とみることはできず,この点に関する控訴人ら
の主張は,採用することができない。」
()原判決73頁12行目冒頭の「4以上によれば,」を,次のとおり改3
める。
「4その他,控訴人らは,住民の意思を軽視している,あるいは,個々の
住民に対する工事計画について説明が変遷するなど,住民に対する配慮
を欠いているなどと主張する。
しかし,平成4年決定及び本件変更認可が,手続的にも適法に行われ
たと認められることは,前記認定のとおりであり,控訴人らの上記主張
は,本件変更認可の違法につながるものとはいえず,採用することがで
きない。
以上によれば,」
第4よって,原判決は相当であって,控訴人の本件控訴はいずれも理由がないか
ら,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所民事第3部
裁判長裁判官高田健一
裁判官尾立美子
裁判官堀禎男

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